『世界の終わりに君と』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
今夜遅く、隕石が降ってきて地球は終わるらしい。
同棲する恋人と話し合って、普段はデートに出かけることが多い僕らだけれど、自宅でゆっくりと過ごそうと決めた。終わりの時を、ふたりきりで迎えよう、と手を握りあって頷いた。それにきっと人波がひどいだろうからと想像して。
実際、朝起きた時には遠くに見える高速道路はみっちりと車で埋まっていた。どこかへ逃れようとするように。
久しぶりに台所に立って、朝食には味噌汁を作った。配信でお気に入りの映画を見て、涼しいくらいにエアコンを利かせてアイスを食べた。通販で購入した新刊を受け取り、読みふけった。少し早めに風呂に入って、代わりばんこに入る彼が出てくるまでの間、ひとりベランダで夜景を眺めていた。
「どうしたの?」
「いや。きみも僕も、インフラ担当の仕事でなくて良かった」
僕は彼女を愛していた。
だから心中する。
世界の終わりに君と。
きっと後悔はしない。
ただ、心中するために生まれてきたのかが知りたい。
愛した彼女と幸せになるために生まれてきてはないのか。
けど、もう知る由はない。
二人で決めたことだから。
【世界の終わりに君と】
世界の終わりにはひとりでいたい。最愛の子ども、信頼できた夫、どちらとも一緒にいたくはない。
心許せた友人も愚痴を言えた姉、私を慈しんでくれた母とも一緒にいたいとは思わない。
人はひとりでは生きられないと誰かに助けられ誰かに理解されながら生きていることは知っている。
でも生まれる時は本来ひとり。
もちろん今は医療関係者の助けを得て出産するが、動物としての人間は本来自力で生まれてきているはずだと思う。
ならば世界が終わるとき、それは死を意味していると思うが、その瞬間もひとりで死んでいきたいのだ。
世界が終わるとき愛する君がいたら悲しくてしょうがない。目の前で君の死を見るのは切なく苦しい。ごう慢かもしれないが終わった世界のどこかで君だけは生きているという望みを持って私は世界の終わりに自分も終えたい。
『 世界の終わりに君と』
世界の終わりに君とずっと一緒にいたい
世界が終わるその時には、きみと、愛する小鳥と、ただ、穏やかな気分で、輪になって座っていたい。
遠くの地平線へ沈む太陽を、君と並んで見送る。互いの手と手を繋いだまま、僕らはオレンジ色の夕景の中で、もうすぐ来るはずの闇色の夜を待っていた。
これが最後の夜だ。君とこの世界で過ごす最後の。
そう思ったけれど口には出さなかった。ただ手のひらに触れる温もりだけを感じ、世界の終焉を受け入れる。
「怖くない?」
彼女がそっと囁くように聞いてきた。
「怖くないって言ったら嘘になるけど、それでもどこか安堵している自分もいるんだ」
僕の言葉に彼女が手を繋ぐ力を強くする。
「うん。私も、そう。何でかな?」
その疑問に僕は答えられない。だってこんな状況で安らいでいるなんて、自分でもよくわからないのだから。
「でもね、私、思うの。今までの人生がどうだったとしても、きっと最期に君といられることが答えなんだって思う」
君と見るこの風景が。君と繋ぐこの手が。
終わりさえ良ければ、たとえどんな理不尽だって許せるなって気がするの。
こんな突然に起きた世界の終わりでさえも。
そう言って微笑んだ君はとても美しく、僕の脳裏に焼き付いた。
【世界の終わりに君と】
『世界の終わりに、君と』AI作文
世界の終わりをあなたと一緒に過ごすことになるとは思ってもいませんでした。 しかし、私たちはここで手を取り合って忘却の端に立っている。
空は不気味な赤の色合いで、空気は灰と煙で濃いです。 炎が地平線をなめ、行く手にあるものすべてを焼き尽くします。 私たちの足の下で地面が揺れ、世界が私たちの周りで崩壊していくのを常に思い出させます。
しかし、この混乱と破壊の真っ只中には、奇妙な静けさの感覚があります。 おそらくそれは、私たちが今やることは何も重要ではないという知識なのかもしれません。 それとも、私たちがチームとして世界の終わりに直面し、一緒にいるという事実なのかもしれません。
私たちは放置された車を見つけ、降り始めた火の雨から身を守るために車の中に入りました。 あなたは私を抱きしめて、私たちは車の窓の外で世界が燃えていくのを眺めます。
「こんな結末になるとは思っていなかった」と私は静かに言う。
あなたは私の額にキスをします。 「でも、少なくとも私たちは一緒にいる。大事なのはそれだけだ」
そして世界が私たちの周りで崩壊していく中、私は世界の終わりをあなたと一緒に過ごせることに感謝せずにはいられません。 私たちは力を合わせて、この激しい大惨事の先にあるものに立ち向かいましょう。
夕暮れ時だった
「これからどうする?あんまり時間ないけど」
微かな希望と諦めが映る。
気楽に考えよう。
残り火を楽しみ、来世に思いを馳せながら
【世界の終わりに君と】
「マルサンゴーサン、被検体C-013の生命活動停止を確認しました」
機械音声の報告に、私たちがいる業務室はいっときざわついた。
「活動が鈍っていたから、そろそろだとは思っていたけど。永遠なんて、ないものね」
私はデータ整理業務を一時中断し、被検体C-013の収容ポッドに向かった。ほかの研究員たちもあとからぞろぞろついてくる。
被検体収容エリアには、研究所内にいるすべての者たちが集まっていた。みんなC-013のことを気にかけていたのだろう。
活動停止したC-013の体は、すでに機械の手によって回収されていた。生体安定剤が満たされた円筒ポッドの中には、接続先を失ったコードの端子だけがゆらゆらと漂っている。
「滅亡の瞬間はちゃんと記録できてる?」
ポッドの近くにいたC-013の担当者に確認する。
「はい、所長。C-013界は終末期も混乱なく、そのまますべての運動が停止しました」
担当者の操作で、ポッド表面のディスプレイに、被検体C-013とその世界に関する記録が表示される。
おおっ、と歓声があがった。
「素晴らしい状態だわ。時間が停止しているだけなんて。このレコードをもとにほかの被検体を起動させれば、世界を引き継ぐことができるかも」
「しかし、被検体はもう、供給がありません」
「そうだったわね。じゃあ、この世界は、ここでおしまい」
研究員たちのあいだから、落胆の声があがる。私も残念でならない。だが、ない袖は振れないのだ。
私たちは量子脳の研究をしている。人間の脳内の量子的な振る舞いを利用して、情報をコントロールしたうえで新たな世界を造る、そういう研究だ。
ポッドに収容された人間の被検体は、常時夢を見ているような状態になる。新しい宇宙の夢だ。その宇宙では、私たちがいる宇宙の何倍もの早さで時間が流れていく。一炊の夢、という言葉が生まれたように、夢を見ているときの脳の処理は高速なのだ。被検体内に生まれた新しい宇宙は、約百億年の時を刻み、地球と同じような惑星を形成する。惑星では、四十億年以上の時間をかけて、アメーバから人類への進化がシミュレーションされる。
被検体はいわば神、創造神なのだ。私たちの仕事は、神の造りし世界を観測および記録すること。そして、世界の安定化と人類の繁殖が認められたときには、私たちを意識のみの存在へと解体し、新たな世界へ、高次元存在として移住させる――それが研究の最終目標だ。
しかし、研究が必要なだけあって、私たちの移住計画はそう簡単にはいかなかった。世界をどのように永続させるかが、この研究の最後にして、最大の難関なのだ。
被検体の死によって、終わりは必ず来てしまう。世界は人間の脳がなければ創造できないが、人間の脳は死を免れない。一度生まれた世界を人間の脳から取り出して別空間に展開し、独立させることができればいいのだが、そうすると世界はたちまち混乱し、隕石だの核戦争だの大災害だのの理由が発生して、滅亡してしまう。どうしても、〈人間の脳〉という神の庇護が必要なのだ。
私たちは研究を重ね、被検体を通常の寿命よりも延命させることに成功した。しかし、もっとも長生きだったC-013も、三百十五年二十日八時間九分三十一秒で停止してしまった。やはり、終わりは必ず来るものなのだ。
被検体C-013の世界は安定していた。人類は繁栄し、長い歴史の果てに、私たちと同じような研究をする段階まできていた。終わりかたも、被検体の死を前にした混乱による滅亡ではなく、もっとも理想的とされる時間停止。この世界をほかの被検体に引き継がせることができれば、あと百億年以上、世界の寿命が伸びるだろう。私たちが移住し、新たな永遠を研究するのに相応しい世界になっただろう。
だが、次の被検体になれる人間はもういない。
「私たちがアンドロイドでなければ、君の世界を継ぐこともできたのでしょうけど」
私は無線で最上位記録媒体に接続し、被検体C-013が残した記録を自分の中に取り込んだ。私にできることは、そこまでだ。
「さようなら、最後の人間。人間の意識を継いだ私たちの役目も、これでおしまいね」
終わりを知った研究員たちは次々と機能停止していく。全員の停止を見届けてから、私も自分の意識を落とした。
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今週は休むと言っていましたが、面白そうなお題だったのでつい書いてしまいました。世界を滅ぼすのは大好きです。普段はあまり滅亡ネタに偏らないよう気をつけているのですが、今回はお題という大義名分を得て、どうどうと世界を滅ぼすことができました。満足です。
お昼、珍しくあいつを誘った。
卵焼きを多めに作った。
私のお弁当箱から卵焼きだけひょいとつまんで、来週の試合の話なんかしてる。ずっと練習してきたもんね。
呼吸を整えて、笑う。
これで最後なのだから。
#世界の終わりと君と
読み終わる小説
物語の中の終わりって君が読むのをやめた時。
それとも、君がその物語を忘れてしまった時。
覚えている限り、物語は永遠に生き続けるなら、何だかこっちも救われた気持ちになるけど
とりあえずお別れ
世界の終わりと君との時間。
世界の終わりに君と、、なんてことを話したこともあった。
もしもの話だったのに、今では現実でこの世界が終わろうとしているらしい。変な感じだよ。
君が死んだあの日に僕の世界は終わった。
今さら人類の世界が終わってもどうでもいいのさ。
そうだ、最後に、、、猫を吸おう。
「世界の終わりに君と」
世界の終わりに君とって、言われた事ない。
夫は「自分だけで精一杯だから、ムリ」
亡くなった母は私に母性を感じずに、養女に出した。
妹は高熱を出して冷たい飲み物を頼んだ私に
「お腹一杯で動きたくない」とのこと。
そういう私も、いざ大波や地面崩壊が始まったら
相手を突き飛ばすだろう。
映画のようにロマンチックにはいかない。
明日地球が滅ぶとしたら、どんなことをしますか?
そんなありふれた、でも可能性は0ではない問い。
キミといつも通りご飯を食べて、ゆっくり眠ろうかな。
とあなたは言う。
ほんとにそうなったら絶対違うでしょと笑いながらも、あなたのその暖かい眼差しに心が揺れる。
明日地球が滅んでも、キミと。
「なんか、明日世界終わるらしいね」
『へぇ私はあなたと居れればいいからいつ終わっても一緒かな』
「ちゃっかり嬉しいこと言うじゃん笑」
「明日終わるって聞いたのに割とさっぱりしてるね」
『え〜そう?』
『いつか終わるんだし、今終わってもなんかそうねぇって感じ』
「僕は普通に怖いけどね」
『えぇあなたこそさあっさり、「あ〜終わるね」だと思った』
「いや、急に無くなるってなると怖くなるもん」
「こうさ、今まであったものがぱっと無くなるとさ?違和感だったり、喪失感って言うんかな、あったりするじゃん。で、その無くなるものが、大きければ大きいほど不安って多くなると思ってさ、いつも使ってるものとか、人とかね」
『最後らしいこと言うじゃん(笑)』
「空気嫌だね(笑)最後だしなんかする?」
『いつも通り家いるのもありだけど、最後感ですぎなくて、ゆっくり話せて、特別過ぎないことしたい』
「なるほどねぇ。じゃあちょっとゆっくりしてから」
「星でも見に行ってみますか」
『わ〜!いいねぇさすがセンスあるわ』
「では、まずはおうち時間でも過ごしましょうか」
『何食べる?作るよ~~』
今日のテーマ
《世界の終わりに君と》
「もしも世界が終わる時がきても、おまえとずっと一緒にいたい」
なんてロマンティックな口説き文句だろう。
まるで物語の台詞か何かのよう。
これを聞いたのがもう少し前だったなら、きっとうっとり酔いしれていたかもしれない。
あたしの中に残る乙女心の残骸が、チリチリ胸を痛ませる。
「よくも、ぬけぬけと」
だけどあたしはそんな未練に蓋をして、怒りを込めて彼を睨む。
彼は意外そうに眉を上げ、それから不思議そうに首を傾げた。
「この場面でその反応って何?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみたら?」
「……全然心当たりがないんだけど」
しらばっくれるつもりなのだろう。
そして、あたしがそんな嘘にあっさり騙されると思ってるんだろう。
そう思うと余計に腹が立つ。
「思い出せないなら思い出させてあげる。一昨日の晩、駅前で見かけた」
「一昨日?」
「綺麗な女の人とデートしてたでしょ」
降って湧いた残業は、終電間際までかかってしまった。
空腹と眠気でフラフラになりながら改札を出て、家路を急ごうとしていた矢先、その光景が目に飛び込んできたのだ。
頬を上気させた綺麗な女の人と、その肩を抱きながら歩く彼の姿。
遠目にも親密な空気が察せられて、冷水を浴びせられたみたいに血の気が引いた。
浮気していたこともショックだったし、こんな見つかりやすい場所でイチャイチャしてるデリカシーのなさにも腹が立った。
ううん、もしかすると浮気はあたしの方だったのかもしれない。
だって彼女はとてもとっても綺麗な人だった。
あたしより少し年下だろうか。
綺麗でありながら、庇護欲を誘う可愛らしさも持ち合わせた女性。
くすくす笑いながら何か言う彼女に、あなたは幸せそうな笑顔を見せていて。
そんな姿を見せつけられて、あたしは世界が終わったようなどん底気分で家に帰った。
だから、昨日「明日会える?」ってメッセージが来た時、別れ話をされるのだろうと覚悟を決めて今日を迎え。
少しでも別れを惜しませてやれればと、戦いに挑むような心境でメイクも髪も服装も、爪の先に至るまで、気合いを入れてこの場に来たというのに。
肝心の話はいつになっても切り出されることなく、帰り間際に言われたのがさっきの台詞というわけである。
ご丁寧に指輪まで捧げられて。
夢に見たプロポーズが、一瞬にして結婚詐欺に遭ったような最低最悪の気分に陥らせる。
こんなのってない。あんまりだ。
涌き出て止まらない恨み言が胸の中で渦巻くけど、それを口にしたら泣いちゃいそうで、だからあたしは最低限の言葉で返す。
「あたしで予行演習か何かのつもり? それとも彼女とは結婚できない理由でもあるの? 仮面夫婦や契約結婚なら他を当たって。そんな虚しい生活するくらいならずっと独身のままでいい。じゃあね」
ぽかんとマヌケ面を晒す彼に吐き捨てると、私はくるりと踵を返す。
もうこれ以上この場にいたくない。
追い縋られて、誤解だと適当な言い訳を並べ立てられたら、絆されてしまうかもしれない。
自分でもチョロい女だと思う。
だからこそ、彼の言い訳は聞いちゃいけない。
まだ捨てきれない愛情のせいで「騙されててもいい」なんて思っちゃいそうだから。
「待って!」
「待たない」
「頼むから話聞いてくれって」
「聞かない」
予想通り追い縋ってきた彼を、鉄の意志で突っ撥ねる。
思い出せ。
一昨日の晩に味わったあの惨めさを。
世界が終わりを告げたような、絶望的なあの気持ちを。
瞼が腫れるほど泣き濡れて、それでも流しきれなかったあの胸の痛みを。
振り返ることも足を止めることもなく、早足で帰ろうとしたあたしの腕を、彼の大きな手が掴む。
節くれ立った、あたしが大好きだった手が。
この手で彼女に触れたんだろうか。
髪を梳き、頬を包み、背を撫でながら抱き締めたんだろうか。
身を焦がすような悔しさと、どうしようもなく込み上げる切なさに、じわりと涙が滲んでくる。
だけど絶対この場では泣きたくない。
そのくらいの意地はあたしにだってあるんだ。
「違うから。あいつは妹で、今日の相談に乗ってもらっただけで」
「そんなベタな言い訳なんか聞きたくない」
「いや言い訳じゃなくてマジだって」
「だとしてももうあたしには関係ないから」
「関係あるだろ、これから身内になるんだから」
そう言うと、彼は逃げようとするあたしを軽々腕の中に閉じ込める。
嗅ぎ慣れたコロンの香りに条件反射で安心してしまいそうになるのを必死で振り払う。
だけど力の差は歴然で、どんなに藻掻いてもしっかり抱き締められた彼の腕からは抜け出せない。
どうしてこんなことするの。
あたし以外に女がいるのに、どうして繋ぎ止めようとするの。
このまま別れてしまった方が、絶対お互いのためなのに。
彼はあたしを抱き締めたまま、もぞもぞスマホを取り出してどこかへ電話をかけた。
至近距離から聞こえる呼び出し音。
程なく相手の声がする。
電話越しでも可愛い声に、あたしは一層惨めになった。
「今から出てこられる?」
『何? まさか振られたの?』
「その危機を回避するためにおまえも説明してくれ」
『何それ』
「一昨日の晩、一緒にいるとこ見られて誤解されてる。身分証持って、正真正銘おまえが俺の妹だって証明してくれ」
『何やってんの、お兄ちゃん』
苦々しげな彼の言葉に、電話の向こうの彼女は見た目にそぐわぬ馬鹿笑いをする。
ネットスラングで言うなら『草を生え散らかした』ような笑いっぷり。
ここでようやくあたしは藻掻くのをやめた。
「おまえのせいだろうが。奢りだからって調子に乗って足にくるほど飲んだりするから」
『いやー美味しかったわご馳走さま』
「いいから今来い。すぐ来い。じゃなきゃこいつと今からそっちに行く」
『じゃあ来たら? 未来のお義姉さんにちゃんとご挨拶するし、お兄の身の潔白もちゃんと証明してあげる』
ところどころヒーヒー言いながら彼女が言うのに、彼はため息混じりに「分かった」と答える。
そして抱き締めた腕をゆるめ、でも絶対に逃がさないとばかりに指を絡めて手を繋ぎ、こっちの返事も待たずに歩き出す。
もしかして、本当の本当に誤解なんだろうか。
でも『実は血の繋がらない妹で』なんてオチが待ってたりするんじゃない?
信じたい気持ちと疑う気持ちがシーソーのように揺れ動く。
「さっき『もしも世界が終わる時がきても』なんて気障なプロポーズしたけどさ、まずおまえに振られた時点で俺にとっちゃ世界の終わりも同然だから」
「……」
「あいつに会ってもまだ信じられないっていうなら、信じてもらえるまで何でもする。実家からアルバム持ってきて見せるし、戸籍を取り寄せてもいい」
「……」
「どんなにみっともなくても、他人から笑われても構わない。おまえが俺を嫌いになったとかならともかく、こんな下らねえ誤解で終わらせられてたまるか」
握られた手はいつもより力が籠もっていて少し痛いくらい。
いつもは痛くないように加減してくれてるのに、今はそんな余裕もなさそうで。
そんな彼の必死さが伝わってきて、意固地になってた気持ちがじわじわと解けていく。
それから程なく誤解は解けて、あたしは未来の義妹に妙な勘繰りをしたことを心の底から謝罪した。
彼女の旦那さんも参戦して2人が正真正銘血縁関係の兄妹だと証言してくれたし、そのままなし崩しで夕飯までご馳走になってしまった。
穴があったら入りたいけど、朗らかな義妹夫妻は「気にしないで」と笑ってくれた。
そうして改めて2人きりになった帰り道、彼はもう一度プロポーズしてくれた。
昼間とは少し違う台詞で。
「たとえ世界が終わる時がきても、絶対離さないから。一生おまえだけ愛し抜くから」
力強い眼差しで、宣言するかのように愛を誓ってくれる彼。
もしまた疑うようなことがあったら、今度は1人で泣く前にちゃんと直接聞いてくれ。
そんな言葉と共に抱き締められて、あたしはまた泣きながら頷いた。
もしも世界が終わっても、あたしも絶対に離れない。
死が2人を別つまで、あたし達はこれからずっと一緒に歩んでいく。
テーマ「世界の終わりに君と」
明日で世界が終わる…なんて突然言われたら信じられますか?
たまに雑誌で書かれている質問でこんなのがある。
「明日で世界が終わるとしたら何をしますか?」
その問いになんて答えるのが正解なのだろうか。
恋人と過ごす?家族と過ごす?やりたかったこと、見たかった景色を見に行く?
推しのライブ映像を観たり、グッズを沢山買うかもしれない。
それともいつも通りの生活をして1日が終わる頃、眠りについて終わりを迎える。
それが一番幸せな終わりなのだろうか?
人によって答えは違うし正解なんて無い質問だから否定も出来ない。
もし、明日世界が終わってしまうなら大切な人と過ごし最期の瞬間まで声を聴いて痛みなく終わる。そんな終わりを望む。
昔読んだ本にあった、世界の終わりの話。
人類は遂に滅亡する。その瞬間まであと数時間。
例えばテレビの右下にあるワイプ画面。例えば街中にある大きなモニター。例えば選挙カーで演説するかの如く、「世界滅亡まであと○時間!」などと語る者。
世界中のありとあらゆるもの達が、世界の終わりまでのカウントダウンをする。
意識せざるを得ない環境に皆、不安を抱えたまま最期の時を過ごしている。
そして主人公である僕は何も出来ないまま、無事に最期の時を経て……。
「悲しい話だよね」
「そう……だね」
救いようのない話。起承転結が成り立たない話。
本の内容としては破綻しているが、実際にこうなればまあこんなものだろう。
実に現実的で面白い。
「明日人類が滅亡するとしたら、貴方はどう過ごしますか」
それはこの本の最初と最後に記載されていた言葉だ。
僕ならきっと、こうするだろう。
「きみに告白して塵となる……おわり」
言葉に抑揚を付けずに真顔で淡々と。
反応が怖くて思わず彼女に背を向ける。
沈黙が長い。
世界の滅亡など待たずにして今すぐ塵となりたい。
「……それは冗談ですか?」
「いいえ……いいえ……」
二度目のいいえは流石に力が入ってしまう。
お願いだから僕を見ないで。
近付いてくる足音にぎゅっと目を瞑りながら、僕はそんなことを思っていた。
#30 世界の終わりに君と
世界の終わりに君へと
二人だけの地球を作っていこう
二人だけの思いが
大丈夫 必ず
作られる
さあ この世界が
なくなると前に
二人の世界へ
「世界が滅ぶときが来たら、せめて愛しい君と一緒にいたい」
一度は夢見た状況だった。
たとえ世界が最悪な状態でも、愛しい人といられれば、万一生き残ってもなんとかなる。
でも、やはり夢物語だった。
遮るものが一切ない荒れた大地を、埃混じりの風が容赦なく撫ぜていく。
周りを見回しても、なにもない。誰もいない。
水も食料も、生きるために必要なものがない。
今までの人生で培った知恵も全く役に立たない。
「こんなことなら生き残りたくなんてなかった! こんな奇跡いらなかった!」
だんだん、互いも終わりが近づいていることを自覚していく。
不思議だね、終わりがやってくるとわかったときはあんなに生にしがみついていたのに、今は手放す日が待ち遠しくてたまらない。
体力が、精神力が並外れていたら。
天才的な頭脳を持っていたら。
夢を現実にする確率が上がったのだろうか。
命が尽きる瞬間も、君といられるのがせめてもの救いかもしれない。
お題:世界の終わりに君と