昔読んだ本にあった、世界の終わりの話。
人類は遂に滅亡する。その瞬間まであと数時間。
例えばテレビの右下にあるワイプ画面。例えば街中にある大きなモニター。例えば選挙カーで演説するかの如く、「世界滅亡まであと○時間!」などと語る者。
世界中のありとあらゆるもの達が、世界の終わりまでのカウントダウンをする。
意識せざるを得ない環境に皆、不安を抱えたまま最期の時を過ごしている。
そして主人公である僕は何も出来ないまま、無事に最期の時を経て……。
「悲しい話だよね」
「そう……だね」
救いようのない話。起承転結が成り立たない話。
本の内容としては破綻しているが、実際にこうなればまあこんなものだろう。
実に現実的で面白い。
「明日人類が滅亡するとしたら、貴方はどう過ごしますか」
それはこの本の最初と最後に記載されていた言葉だ。
僕ならきっと、こうするだろう。
「きみに告白して塵となる……おわり」
言葉に抑揚を付けずに真顔で淡々と。
反応が怖くて思わず彼女に背を向ける。
沈黙が長い。
世界の滅亡など待たずにして今すぐ塵となりたい。
「……それは冗談ですか?」
「いいえ……いいえ……」
二度目のいいえは流石に力が入ってしまう。
お願いだから僕を見ないで。
近付いてくる足音にぎゅっと目を瞑りながら、僕はそんなことを思っていた。
#30 世界の終わりに君と
6/8/2023, 3:17:21 AM