泡藤こもん

Open App

今夜遅く、隕石が降ってきて地球は終わるらしい。
同棲する恋人と話し合って、普段はデートに出かけることが多い僕らだけれど、自宅でゆっくりと過ごそうと決めた。終わりの時を、ふたりきりで迎えよう、と手を握りあって頷いた。それにきっと人波がひどいだろうからと想像して。
実際、朝起きた時には遠くに見える高速道路はみっちりと車で埋まっていた。どこかへ逃れようとするように。
久しぶりに台所に立って、朝食には味噌汁を作った。配信でお気に入りの映画を見て、涼しいくらいにエアコンを利かせてアイスを食べた。通販で購入した新刊を受け取り、読みふけった。少し早めに風呂に入って、代わりばんこに入る彼が出てくるまでの間、ひとりベランダで夜景を眺めていた。
「どうしたの?」
「いや。きみも僕も、インフラ担当の仕事でなくて良かった」

6/8/2023, 6:14:27 AM