Ayumu

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「世界が滅ぶときが来たら、せめて愛しい君と一緒にいたい」

 一度は夢見た状況だった。
 たとえ世界が最悪な状態でも、愛しい人といられれば、万一生き残ってもなんとかなる。
 でも、やはり夢物語だった。

 遮るものが一切ない荒れた大地を、埃混じりの風が容赦なく撫ぜていく。

 周りを見回しても、なにもない。誰もいない。
 水も食料も、生きるために必要なものがない。
 今までの人生で培った知恵も全く役に立たない。

「こんなことなら生き残りたくなんてなかった! こんな奇跡いらなかった!」

 だんだん、互いも終わりが近づいていることを自覚していく。
 不思議だね、終わりがやってくるとわかったときはあんなに生にしがみついていたのに、今は手放す日が待ち遠しくてたまらない。

 体力が、精神力が並外れていたら。
 天才的な頭脳を持っていたら。
 夢を現実にする確率が上がったのだろうか。

 命が尽きる瞬間も、君といられるのがせめてもの救いかもしれない。


お題:世界の終わりに君と

6/8/2023, 2:51:33 AM