『一年後』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『一年後』
「もうそろそろ電車の時間か」
電車の時刻表を確認して、私は呟く。
今日、私はこの地元を去る。用事が出来たからフランスへ行くのだ。
「さて、行くか」
荷物を持ち、適切な手順を踏み、電車に乗ろうとする。その時——
「小夜さん、行くんですか?」
今までずっと近くにいた、ずっと聞いてきた声が私の足を止める。
振り返るとそこには、私の幼馴染の煌驥が居た。
「ああ、少し用が出来てな。フランスへ行く」
「いつ……帰ってくるんですか……?」
悲しさを隠しているような、涙を堪えているような顔で煌驥が聞いてくる。
「わからない。だが、すぐ戻ってくるさ」
思わずそう嘘をついてしまい、罪悪感に苛まれる。
私はそのまま踵を返して電車に乗る。
「俺、小夜さんの事ずっと待ってます。だから、帰ってきてくださいね」
私は、何も言えなかった。もう、嘘をつきたくないから。
だって、私は一年後に死ぬのだから。
あと、一年。
あれから何回も指折り数えた。
彼女達にとっては特別な、私にとっては終わりの日を。
後悔のないようにと。そう思っていた。
はずだった。
最初に感じたのは、強い痛み。
身体の中にある何かを無理やり引き千切るような、そんな無慈悲な痛み。
ただ、名前を呼ばれただけ。彼女達には伝えなかったはずの名前を、目を合わせながら呼ばれた。
『これはもう必要ないわね』
痛みに滲む視界。その隅で、彼女が握り潰した何かを見た。
次に感じたのは、熱。
千切れて痛むその場所に入り込む、何かが発したものか。それとも、その何かを身体が拒んでいるからなのか。
痛みにのたうち回る私を引き寄せ、彼女がもう一度視線を合わせ囁いた言葉。その知らない名前に、生じた熱と共に酷く眩暈がした。
「…っぐ…ぅ…」
少しでもこの苦痛から逃れたくて、背中を丸めて蹲る。
痛い。熱い。苦しい。
入り込んだ何かが心臓を喰い破り、そこから血に混じって身体中を巡っているようだ。
そうして、私という存在を人から人でないモノに変えてしまう。
そんな気がして、只々怖かった。
「少し急ぎすぎだ。壊してしまったらどうする」
低く落ち着いた声音。
「長く苦しめるよりはいいじゃない」
「痛みが増すのは可哀想だ」
抱き起こされて、彼の腕の中。そのままゆるりと背中を撫でられれば、ほんの僅か痛みが消えた気がした。
「いい子。怖くないから、ちゃんと受け入れて」
囁かれる言葉。背中から感じる、手のひらの熱。未だ身体を蝕む痛みと熱に混じり合って、少しずつ波が引いていく。
「翠雨」
名前を、呼ばれた。知らない名前。
「…ゃ……かえ、て…っ…かえ、して……」
うわ言のように、かえして、と繰り返す。
昨日までの私をなかったようにされているようで、苦しかった。
戻れなくなりそうで、怖かった。
「駄目。拒んでも、苦しむ時間が長くなるだけだ。ほら」
「ーーーっ!?」
背中を撫でていた彼の手が離れる。瞬間、全身に走る激痛に、声にならない叫びを上げた。
先程とは比べ物にならない程の、痛みと熱。けれど、その苦しさに喘ぐその背中に再び彼の手が触れれば、痛みも熱も静かに引いていく。
「結局、五月雨も泣かせているじゃない」
「こうした方が分かりやすいだろう」
「残酷ね」
不意に聞こえた彼女の声。次いで伸ばされた腕に抱き寄せられる。
彼の手が離れた事でまたあの痛みを覚悟し身を竦めるが、不思議と痛みも熱も訪れる事はなかった。
「大丈夫よ、ほら。ちゃんと抑えてあげるから」
「…ぁ」
「ねぇ、翠雨」
顎を掬われ、背後の彼女と視線が合わさる。蛇のような深紅の瞳が、ゆるりと弧を描いた。
「わたし達が今まで与えたものを覚えている?そして、それを全て受け入れたのも、ね」
もがいた事で乱れた髪から簪を引き抜き、口付け笑う。
忘れてはいない。その鼈甲の簪も、黒の着物も、櫛も紅も何もかも。
全て、彼女達から与えられたものだ。
「それがどこから持ち込まれたのか、気づいているでしょう?何を食べ、身に纏っているのか」
「ぁ…や、だ……やめ、て…」
「『黄泉竈食ひ』、知っているでしょう?」
聞きたくなかった言葉。
常世の竈門で煮炊きした物を口にすると、現世には二度と戻れないという。
けれど、何故。
「少量なら、身につけた常世のものの気配で誤魔化せるの。ずっと身につけてくれていたものね」
「そうだな。だからこうして馴染んで、今狂いも壊れもしていない。苦しいのも、受け入れればそれでおしまい」
「分かった?翠雨はもう戻れないの。それに、これが翠雨の望みに応えた結果よ。」
くすりと笑う声。楽し気に弾んだ声音が告げる。
「ここにはわたしも五月雨もいるわ。別れを悲しむ必要はない。ただ、在る場所が現世から狭間に変わっただけ。何を拒む必要があるの?」
「っ…な、に…?」
「今の幸せが続けばと、望んだでしょう?」
「……!」
それは、二人には最後まで伝えなかった言葉。
人の身では過ぎる望みだと知っていたから。だから、口を閉ざし続けた唯一の想いだった。
「わたし達は望みに応えた。ならば、今度は翠雨が応えなさい。大人しく受け入れて」
一年前、優しい神様達との逢瀬の終わりの日を知った。
後悔のないように、笑って別れられるようにと必死で気持ちを隠した。
けれども今日、二人から贈られた黒の着物を着付けられ、簪を挿し、連れられた山奥の古びた鳥居を潜った瞬間に気づいた。
終わってしまったのは、現世で生きた時間。特別に新しく与えられたのは、神様と共に在る永久だと。
どこで間違えてしまったのだろう。
鳥居を潜った時か。二人から与えられるものを受け入れた時か。
幸せが続くように望んでしまった時か。
それとも、あの雨の日に彼女の姿に魅入ってしまった時か。
「……うん」
小さく頷いて、瞳を閉じる。
もう、何もかもが分からなかった。
20240509 『一年後』
一年後
【君と出逢って 続編】
登場人物
紬(つむぎ18) 蓮(れん10)
剛志(たかし5)
優斗(ゆうと19) 雅(みやび5)
家に帰ると、まだ熱のありそうな顔をした蓮が飛んできた。
「お姉ちゃん、お土産はなーに?」
「蓮ゴメン🙇♀️今日はいろいろとあって、気付いた時には帰りの電車の中でした。ごめんなさい」
「お姉ちゃんは男が出来...」
「わーわーレレレ蓮君、本当にごめんなさい」
優斗さんと一緒に居られて楽し過ぎて、お土産を忘れたなんてバレたら大変だ。ここは何とか剛志を黙らせて、乗り切るしかない。剛志に目配りをして分かってもらい、ここはひたすら謝るしかない。
「じぁ、風邪が治ったら映画に連れて行って、お昼のマック付きでね」
蓮はやっと納得してくれた。
ひと段落付いたところで考えてしまうのは、やっぱり優斗さんの事だ。
「お姉ちゃん何ニヤニヤしてるの」
気づくと剛志が私の顔をジーと覗いている。
「お姉ちゃん今度の日曜日もあの男とあうんだよね?」
「あの男なんて言わないでよ。優斗さんよ優斗さん!別にいいでしょ」
「ボクも行く」
「えっ、なに言ってるの?」
「ボクも一緒に行く」
「だめよ、今度は遊園地じゃないんだから、剛志を連れて行ったら優斗さんに悪いでしょ」
「雅ちゃんも一緒ならいいでしょ」
「でもなー、映画に行くことにしたのに、何て言えばいいだろう?」
「名探偵のアニメなら、みんなで楽しめるでしょ」
たまたま部屋の前を通りかかった蓮が、「名探偵のアニメ観に行くの、やったー!日曜日までに絶対カゼ治す。」
ヤバイ!蓮まで付いてくる。何とかしなければ。
なんのアイディアも浮かばずに土曜日の夜になった。
「お姉ちゃんあの男にボクが行くって連絡したの?」
「あの男って言うな!それがまだなのよ。なんせ、蓮も一緒だなんて言えないわよ」
「お兄ちゃんは、行かないよ」
「えっ、どうして?」
その時、優斗から連絡が入った。
「もしもし、紬です」
「もしもし、優斗です。実はお願いがあって連絡したのです」
「お願いって何ですか?」
「実は明日、雅も行くって言って聞かないんですよ」
「えっ、そうなんですか?剛志もなんです」
「そうだったんですか、よかった。それでは明日は、みんなで名探偵のアニメではどうでしょうか?」
「わたしも、そう思ってました」
「それでは、また明日」
「はい、お休みなさい」
安心したのも束の間
「あっ!いけない、蓮のこと言うのを忘れてた」
その時、蓮が部屋へ入って来た。
「お姉ちゃん明日すっごく楽しみだね。おやすみなさい」と言って出て行った。
「大丈夫だよ、お兄ちゃんは行かないよ。ボクに任せて」
自信たっぷりに言う剛志が怖くなった。
日曜日
蓮は、腹痛を起こして行けなくなった。
「剛志、蓮に何かしたの?」
剛志は不吉な笑みを浮かべた。
「ボクも、お兄ちゃんは来ない方がいいんだ。雅ちゃんはボクのものだ」
その時、紬は悪寒を感じた。
その後も、お姉ちゃん達が会う3回に1回はボク達も付いて行った。ボクと雅ちゃんの家は片道2時間かかるので2人で会う事は出来なかった。
時は流れて1年が経った3月末
「剛志君、アタシお引越しするの」
「えっ‼️雅ちゃん越しちゃうの⁉️」
「うん」
「どこに越すの?」
「わかんないけど、ちょっと遠い所なんだって」
ボクは目の前が真っ暗になり、泣きたくなったが、ボクは強い男だ泣いたりしない。
「手紙書くね、電話もするね」
「剛志くんは寂しくないの?」
「寂しいけど、大丈夫また絶対に会えるから。ボクを信じて」
その後は、涙を堪えるのに夢中で何を話したか覚えていない。
4月になり、ボクは小学1年生になった。初めての教室で、自分の名前が書かれた席に座っていると、
「おはよう、剛志くん」と声をかけられて振り返ると、そこにはピカピカの雅ちゃんがいた。
おわり
〝一年後〟
今日は私の誕生日!
クラス替えもあって去年より友達が増え、
沢山祝ってもらった。
一年後も、みんなのあたたかさの中で笑っていたいな。
【一年後】
今年の最初は何をしたんだっけ。
テレビを見て、ご飯を食べて、寝て。
今やってることと変わらないじゃないか。
思えば、初詣にも行っていない。
来年はどうだろう。
行くのかな。
いや、行かないかもしれない。
来年のことを考えたところで実際にそうするとは限らないし、なんでもいいか。
楽しみだな。
テレビの向こうで楽しそうな声が聞こえる。
今年の話でもしているのだろうか。
お腹いっぱいだし、さっそく寝るとしよう。
1年後は、仕事がわかるようになって楽しく出来たら良いな
”1年後“
毎年元日に1年間の目標をたて
大晦日の日に結果を考える
それが私の1年の始りの終わり
目標も毎回何個かあげる中で
必ずたてる目標がある
それは、
“笑顔でいる事”
”1日一回はありがとうを言う事“
その二つである
この目標をたてるきっかけは
大事な人が亡くなって
後悔と悲しみで押しつぶされそう
なった年があったから
その人の前で
もっと笑顔でいれば良かった
もっと感謝の言葉を
伝えれば良かった
それから目標をたてる癖がついた
あれから10年
自分が後悔しない為に
また今年も目標をたてよう
そして1年後
自分が後悔してないように
楽しく人生を進んで行こう
そんな悠長なこと言ってないで、とっとと会いにきて。
(一年後)
1年後
1年後の私へ
1年後、私は幸せですか?
一人暮らしを満喫していますか?
工事の音が煩くない家に住んでいますか?
美味しいものをおなかいっぱい食べれていますか?
私は最近、外の爆音のせいで右耳が使い物にならなくなりました。そろそろ左耳も死にます。でも別にいいかなとか思いますが、1年後には終わっていて欲しいなぁとは思います。
毎日、本物の銃器と透明な銃器の乱射で、もう何も誰も、自分すらも信用できません。人が倒れすぎていて、帰り道が通りにくくなっています。
コンビニの棚は空っぽ。
非常口の緑の人すら逃げ出している。
部屋の黒い天井からは、よく分からない臭いのする黒い灰のような何かが絶えず降り注いでいます。
頭の中の警報が鳴り止まないので、うるさくて寝れない日が続いています。
夢の中の景色のようで、まるで体に悪いぐらい甘すぎる、ドロドロした蜂蜜を一生呑み続けている気分。
1年後どころか、明日にはもう地球が滅んでいても私は驚かないと思います。
1年後の私は生きているかなぁ、なんて思っていた1年前が懐かしいです。
今日も家の隅にあるセイヨウタンポポみたいなものを眺めながら、現実逃避のために1人の妄想世界に入りたいと思います。
1年後の私は、幸せですか
⭐︎ゾディアック姫子の無免許星占い⭐︎
〜蟹座編〜
5月
大きなトラブルはないものの、自分を見つめ直す機会が訪れそう。
普段は見過ごしているような小さな違和感や不快感を意識的に感じ取るようにしよう。自分の好き嫌いや快、不快を自覚することで自分の一番の理解者になってあげよう!
健康運⭐︎⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:バナナクリームタルト
6月
新しい目標を立てる熱意が湧いくる頃。
ずっとやりたかったこと、やりたくてもできなかったことに取り掛かる時期。
目標を立てるときは、自分ファーストで!
会社?知らん!
勉強運⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:メープルシュガーとシナモンのクッキー
7月
今月の蟹座さんはパワーに満ち溢れて最高の運気。気分はスーパーサイヤ人!
フリーザもセルも魔人ブゥも丸ごと獲るつもりで暴れ回ってみて!
健康運⭐︎⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:いちごのショートケーキ
8月
人間関係にトラブル発生の予感。
目上の相手でも毅然とした態度で対応するのが吉。
バットを使うかバールを使うかは慎重に選んで!
歩きスマホはトラブルの元!気をつけて!
恋愛運⭐︎
ラッキーアイテム:チョコミントのアイス
9月
同じ目標を持つ仲間に出会える予感。
今まで他者との交流を躊躇してきた人は、一度アホになってみよう。新しいコミュニティもあなたを待ってるはず。
公共のトイレは綺麗に使うのが吉!
健康運⭐︎⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:イチジクとホワイトチョコのパウンドケーキ
10月
今まで目指してきた目標が達成される予感。
出されたものは遠慮なく受け取ろう。
謙遜や遠慮はNG。
目一杯自分を褒めてあげよう!
仕事運⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:サワークリームオニオンのポテトチップス
11月
好奇心が高まる時。
目標達成で一息つく人もそうでない人も、
今まで目を向けることのなかった世界を見てみよう。
文化の日は各地でイベントが開催されるので積極的に足を運んでみて。
電子決済に慣れると神社のお賽銭に困るから気をつけて!
金運⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:ティラミス
12月
年に一度のクリスマス!
恋人がいないからってツリーに放火はNG。
映画を観ながらゆったり心を落ち着けよう。
オススメはアリ・アスター監督の「ミッドサマー」!
恋愛運⭐︎
ラッキーアイテム:アイリッシュラテ
1月
仲間が増えると同時にライバルを意識する機会が多くなりそう。
仲間の助けは遠慮なく借りて自信を持って行動しよう!
自分だけのライバル名鑑を作ってみよう。
仕事運⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:キャロットケーキ
2月
人生のステージが次に進む時。
新しい目標を立ててみよう。
でも転職は慎重に!採用担当に「いくら欲しいですか?」って聞かれたら高めに吹っかけるのが吉。
仕事運⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:スコーン(ラズベリージャムとクロテッドクリーム)
3月
周囲からの期待が高まる時期。
自分のやりたいことと周囲の求めているものにズレを感じて戸惑うことも。
自分本位から少し外に目を向けてみて。
バットとバールは一時封印⭐︎
健康運⭐︎
ラッキーアイテム:鳩サブレ
4月
立てた目標を飛び越えて大きな舞台に立つことを求められそう。
あまりのスケールの大きさに腰を抜かすことになるかも。
心はいつもスーパーサイヤ人のつもりで乗り越えて!
全体運⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
ラッキーアイテム:杏仁豆腐
※全部適当に書いているので
何一つ信用してはいけません。
◼️一年後
【1年後】#11
私達の人生は
365×100
36500
ざっと4万日くらい
ね。
結構短いでしょ( *¯ ꒳¯*)
その中で私達は時間を潰して、寿命を削って生きてる。
4万日で戦争が起こり、革命が起こり、
災害が起こり、時代が移り変わる。
たった4万日で。
宇宙では1日の長さかもしれない。
1年の長さかもしれない。
そんな中で私達は短い24時間を生きてる。
こんな事を思ってたら、
自分の悩みなんて…って思うじゃん?
今の悩みが世界の悩み。
貴方が悩むだけで世界が止まる。
平和平和うったってるけれど、
実際見ると小さな戦争が心の中でできている。
赤か青か
優しいか悪いか
もしかしたら、優しいか優しいかもしれない。
自分の悩みを小さくしないで。
自分のことは存分に悩んで。4万日しかない人生を。
人の為にだけに生きないで。4万日しかない人生を。
程々に程々に。
…ほら。そうして忙しくしてたら1年たってる。
1年後もそうなったら楽しいよね。
初恋の日
その名前を素直に呼べなくなった日。
一年後
春を彩る無数の花びらを、一人見上げた。
ふわふわと小さく揺れる桜。なぜか母性を感じた。
変わってもいい。変わらなくてもいい。そう言っているような気がした。ぼんやり佇んでいる私を、桜は許した。理由を尋ねることもせず、ただ柔らかな腕を広げていた。そっと花びらに手を伸ばすと、小さい頃、母親の膝に頭を置き、その頬に手を伸ばした光景が蘇った。
職場でつまずいた。人間関係で、思いっきり。どうやったって元の環境には戻れない。辞める覚悟もなく、かといって続ける気力も持てないまま、今日に縋りついている。
一年を思うのは、決まって桜を見る時だった。生まれ月だからだろうか。桜の木にはいつも私の過去があった。
去年の私は、何を思っていたのだろう。新しい配属先。新入りとして、期待に胸を膨らませていたはず。それが今となってはどうだ。こんな自分をかけらも想像しなかっただろう。
私は、どうすればいいの。
桜の木は答えることなく、ただそこにある。変わらない私と、変わりゆく私を見ていてくれている。そして一年後、また立ち止まる時間をくれるのだろう。
一年後の自分は何を思うだろうか。
わからないけれど、こうして桜を見上げているに違いない。
このままのペースで本を買い続けたら、1年後、本棚がパンクする。
かと言って電子書籍は売ってないし作品は一期一会だから買わない選択肢はないし。
何の話かって?
ウスクテタカイ本の話。
1年、お試し期間ということで付き合うことになった。
絶対好きにさせたるわ、と不敵に笑う目の前の男に、
『鬼が笑うわ』と笑った。鬼の前に自分が笑ってしまった。
良い奴だとは思う。一緒にいて楽しいし、落ち着くし、気の置けない『友人』だ。そう友人、恋愛にはならない。
そもそも同性なんて対象になる訳がない。いくらあいつが綺麗な顔をしているからといっても。あいつだって女の子が好きなはずなのだ、からかっているかとち狂ったかのどちらかに決まっている。気が済むまで付き合ってやろう、どうせすぐ終わるだろう、と思っていた。
お付き合いが始まって、3日。もう既に後悔している。
吹っ切れたこいつが怖いことは知っていたのに。
いやでも、あのトゥーシャイシャイボーイが目を合わして来るとは思わないじゃないか。ビックリしてこちらが目を逸らしてしまった。
そして極めつけには俺を呼ぶ声の甘いこと甘いこと。
身体が砂糖漬けになるかと思った。そんな様子のおかしさに周りはすっかり気づいてしまって。いらない気遣いをされるようになってしまった。むしろ2人きりにしないでくれ俺をこれと。
「ひな、2人きりやねんから俺の事考えてよ」
既にお前のことで頭ん中いっぱいじゃボケ!!
(1年後が楽しみやなぁ)
(1年持たんやろ)
(そもそもお試しでも付き合っちゃう時点で……やんな)
(鬼ちゃうくても笑うわ、こんなん)
(あーあ、かわいそ)
作者の自我コーナー
いつもの。来年のことを言うと鬼が笑う以前の話。
ものすごく狡い人とものすごい鈍感な人と全部わかってる人達
意外にグイグイいかれると弱いあの人が可愛いです。
1年後は大学院に向けて苦しんでるところだろうね。どうなっているかな。実習は上手くやっているのだろうか。
1年後はからみた1年前の私はいつもみたいに幼く写っているのかな。また後悔を繰り返してるのかな。いや、やっと成長出来ているのかな。そうであって欲しいと願うよ。
なんだかんだ1年生の頃と比べると大分成長したんじゃない?病むことも減ったし病む時は大体PMSの時だし。まぁまだまだ成長し続けるだろうから応援してる。
1年後って割と近いようで遠いかもね。逆かな、遠いようで近いのかな。次はもう21歳か。大きくなってしまったね。楽しく過ごして努力できているといいな。
🍀一年後
卒業式の日、私はこの先やって生きていけるのか本当に不安だった。
大好きな学校、大好きな先生たちが居ない生活なんて考えられなかったから。
なんやかんやで一年後。
仕事の忙しさに追われる中でも先生と会ったり学校に行ったり写真を見返したりして何とか生きている。
毎日のように泣いていたのが一年経つと「あんなことあったな…寂しい」までに軽減されて泣かなくなった。
今でもなお、日常だった大好きな学校に戻りたいと願うけど。
将来の夢は?と小学生の頃から言われ続け、何となく将来は…なんて考えてきたけど……。
この歳にって、「将来」よりも「○年後」を聞かれるようになってきた。
毎日が必死で、明日のことすらまともに考えられないくらいの日々を送っている私に、来年のことを聞かれても難しい。まずは明日で、その次は1週間後。
そんな毎日を繰り返した先にあるのが1年後であり、起きて寝てを繰り返した先にあるだけのもの。
どうなっていたいかを考える未来などではない。
こんな考えが、自分の将来を潰していくのかもしれない。
そして、きっと1年後も2年後も、5年後、10年後すらも、同じように明日すら考えない日々があるのかもしれない。
未来の話は苦手だ
特に今の時期にするのは向いていない気がする
一年後の今頃、わたしはちゃんと志望校に行けてるのだろうか
少しだけ弱音を吐かせて欲しい
今の時代入試の形態も色々あって、私はAOも一般もどちらも受ける方向で動いている
そのせいだろうか、それとも、自分の怠慢のせいか
どちらに対しても中途半端で怒られてばかりの毎日だ
気が滅入るとはまさにこのことか
ちゃんと頑張らないといけないのはわかっているけど
今までちゃんと勉強したことがなかったからハードルが高くなってしまった
毎日悔やんでは自己嫌悪
そろそろ抜け出したい。いや、抜け出せばーか!
【一年後】
「またね。」これが彼と交わした最後の言葉─────
大学4年の春。
いつも学校へ向かうバス停。
近くの家の桜が満開だった。
入学してすぐ、地面が見えなくなるくらいに、花が舞って、
感動したのを、今でも覚えている。
「それからは、毎日楽かったな…。」
ふと、言葉を零して思う。
ずっとここにいたい。って。
でも、それは叶わない願いで、
1年後はもう別の場所にいるんだ。
そう、風にさらわれる花びらを見ながら思った。
次第に時が経って、就活が忙しくなってきた。
大学も週に1、2回に行くくらいになってしまった頃。
いつもの様にバス停で、バスを待っていた。
けれど、いつもと違う。
あの桜の絨毯を作る家が、取り壊しの工事に取り掛かっていた。
あの桜も切られて、見る影もない。
「ああ、1年後またあの風景を見れないんだな…」
自分がもうここに来れないことも悲しいけれど、
それ以上に入学時、私の心を晴らしてくれた、
あの風景に二度と会えないことが悲しかった。
1年後、私はまた別の場所で満開の桜を見る。
けれど、あのバス停にもう桜が降ることは叶わない。
でも、あの景色を忘れることはきっとない。