『バレンタイン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
思いきって言おう。
あ、あの人に愛の告白❤️などではなく。初めて好きな子にあげたチョコレートの話。
中学1年の頃、なぜかわからないけれど、今でいうイケメンではない普通の彼に恋をした。(すごく失礼、ごめんなさい)ついでに申しますと私の容姿は言わずもがなと言うことであしからず。(じゃあ言うな、ですね)
何がきっかけが覚えてないのだけど、めでたくその彼と両想いになれたその年のバレンタイン。
初めて作ったのが、直径15㎝はあろうかと言う大きなまん丸のチョコレート。家にあったホットケーキ用の型を使ったんだろうな。
その厚さ1㎝弱。
そこにチョコペンで何やら書いたと思うけれど記憶にない。よかった。思い出したくない。
おそらくハート形のナントカくん大好き❤なんて書かれたチョコを想像して開けたであろうあの彼。
どう思ったのだろう。
知りたくない。
謝りたい。
ただ忘れて欲しい。
私は忘れられないけど。
end
「バレンタイン」
わたしはお菓子の国のお姫様。
ケーキとシュークリームでできたお城に住んでいるの。
この国とその民は忘れられた少年少女達の夢と秘密の魔法でできていて、美しくて可愛いものしかいないの。
とても素敵な国よ。いつかあなたもおいでなさい。
でも、わたしはとっても退屈しているの。
何故なら、満たされすぎているから。
異国の宝石も、楽園のドレスも、望めば全部手に入っちゃう。
嗚呼、今日も退屈。アイスクリームみたいに融けてしまいそう。
そう思っていたある日、わたしは運命のひとに出会いました。
お隣の、猫の国に暮らす王子様。
三角のクッキーみたいな耳。
夕焼けに照らされると菫キャンディーの色になる柔毛。
鼈甲飴のように輝く円い瞳。
わたしはつい、貴方に声をかけてしまいました。
でも貴方はわたしには一瞥もくれず、綿菓子の花に夢中でした。
それからというもの、わたしは貴方に
お手紙を送るようになりました。
春には桜の花びらをラングドシャクッキーに、
夏にはひまわりの花をタルトに、
秋には紅葉をゼリーに、
冬には雪の結晶をシャーベットにしたためて。
貴方はとても気まぐれなお方だったので、
お返事は殆ど来なかったけれど、ある時猫の国から来たお使いの少女が言っていたの。
お菓子の国のお姫様からのお手紙が来るたびに、
王子様は尻尾を立てているって。
どういうことかしらとお聞きすると、
猫は嬉しさを尻尾を立てて表すと教えてくれたわ。
嗚呼、わたしの王子様。
わたしのかわいい、気まぐれな王子様。
おくびにも出さないけれど、わたしのお手紙を
喜んでくださっているのね。
そういえば、もうすぐバレンタインだわ。
もし、この日に愛のチョコレイトを贈ったら、
王子様は喜んでくださるかしら?
退屈だった日々に恋の夢と彩りを与えてくださったあの方の為に、わたしは国の総力を尽くして、
世界一我儘で、世界一愛のこもった、
世界一美しいチョコレイトを沢山作りました。
あの方はレーズンがお好きかしら?
それともオレンジ?
ミルクをふんだんに使った生チョコレイトがいいかしら?
ひとつにしようと思ったのに、貴方への気持ちが
溢れて止まらないから全部贈ることにしました。
でも、わたしが贈ったとみんなに知れてしまったら
国中のスキャンダルになってしまうから、
名前は書かずに、ひっそりと。
貴方は喜んでくださるかしら?
わたしは貴方の反応が気になって、三日三晩眠れなかったわ。
豪華絢爛、百様玲瓏のチョコレイトを届けてから数日。
わたしは貴方が永遠の眠りについたと聞きました。
なんでも、あの方は2月14日に誰かから贈られた
「毒」を沢山飲み込んでしまったから、
三日三晩、国の総力を尽くして治療にあたった末に
彼岸へと旅立ったのだそう。
どうして?どうして貴方が?
毒。どく?あの方が毒を?
わたしの心を奪った、あの王子様が、何故?
わからない。わからないわ。
もしかして、わたしの「愛」は猛毒だったの?
わたしのせいで、あの方は命を失ってしまったの?
突然のさようならを受け入れられるほど、わたしは強くない。
どうすれば、どうすればいいの?
あの時贈り物をしなければ、
わたしが彼に恋をしなければ、
あの方は生きていたかもしれない?
わたしは なんということを してしまったのかしら
わたしは、夢と魔法でできているの。
でも、わたしに恋の夢を与えてくれた貴方がいなくなった。
だから、わたしの夢もなくなってしまったの。
この国の人々は夢をなくすと、
魔法が解けてただのお菓子に戻ってしまう。
わたしも彼らと同じように、ただの飴細工になってしまうの。
ただの あめざいくに
そのこころを とじこめて
そのつみを ぜつぼうを
そのからだが とけて なくなるまで
えいえんに せおいつづけるの
また貴方に逢いたい。
でもきっと もうあえない
だって わたしはもう
ただの あめざいく だから
♯バレンタイン
「ね、今日なにかあるの?」
帰り道ふいに聞かれて答える。
「何ってバレンタインでしょ」
「え」
愕然とした顔をしている。
「どした?」
「忘れてた…」
「そっかー。でもコンビニでもスーパーでも特設コーナー出来てるし、CMでもやってたろ?」
俺が聞くと神妙な顔をして答える。
「うん。美味しそうだなー。自分の買うとしたらどれにしようかなー?って思ってた。どうりで学校のみんなそわそわしてる訳だよね」
「気にしてなければそんなもんじゃない?」
「気にしてたのに、気づかなかったの」
俺がそう言うと拗ねたように絞り出した。
「ねえ?誰かからもらったりした?」
「は?もらってるはず無いじゃん、彼女いないし」
「じゃーさ、今からでも間に合う?ちょっとダッシュで行ってくる!」
今にも走り出して行きそうな同級生を思わず引き止めた。
「は?どーゆー意味!?」
「チョコあげたいの」
「はあ!?」
思わず固まる。
「だから、すきだって言ってるの!!」
一瞬が永遠に思えた。
「もう!!馬鹿!!」
走り去る彼女の耳まで赤かった。
バレンタイン
朝からそわそわしてしまう…普段は、お菓子メーカーのイベントだ、とか言っているけど…口では、気にしていないふりをしながら、心の中では、あの人の事を想ってしまう…年に一度だけのイベントにかこつけて、想いを伝えたいって焦ってしまう…周りの、そわそわドキドキを感じ乍ら、一緒になって、このイベントに紛れて…
バレンタイン
「… ꐦ」
今日は2月14日、そうバレンタインの日だ。
漫画でおなじみの靴箱に、な〜んてない。学校にお菓子なんて持ってきてはいけないから。校則ナクナッチマエ!
『はぁ〜、今年もチョコなしかよぉうピエン』
と言っているのはクラスメイトの██。通学路も一緒とそれなりに仲良くしているつもり。
██は顔は中の上くらい顔はいいと噂される程度。でもはっちゃけたりと子供っぽさが抜けてないのがモテてない理由だ。と思ってる。
「はぁバレンタインだ言う前に試験勉強でしょ?」
『えぇ、今日くらい良くない??ダメ?』
██は勉強に集中してやらない。勉強してくれないのが気になって私が勉強できないから、
██に集中させる策はある。そう_____
「集中しなさすぎ」
『やる気でねぇもん』
「集中するには糖分いるらしい、だからはいっ」
私はチョコを置いて
「じゃっ、あ!あげたからには集中してよね?!」
好きな人からはマジ思考ショートだわ…
「(これで出来たら来年もあ〜げよ)」
バレンタイン
趣味でお菓子作りをしている甥っ子が
チョコレートケーキを作り過ぎたからと
こっちにも持って来てくれた。
ハート型にカットされたイチゴが
ケーキの上に飾られていた。
どうしてこんなに美味しいのだろう。
ホワイトデーも何か作ってくれるそうだ。
甥っ子よ。叔母は幸せだ。
今日、バレンタインだったのか。
起きたら午後の4時で、狭い4畳間からは夕焼けが見えた。布団に横になったまま、日が暮れるのをぼんやり眺める。
子供の頃はモテたのにな。
中学生の頃は、登校して靴箱を開けるとチョコと手紙がたくさん入っていて、カバンに隠しきれずに持ち物検査で引っかかっていた。
夕日がビル街の向こうに沈んでいく。街がガスっているせいで、太陽の光はにじみ、溶けていくチョコレートのようにも見えた。
どこで道を間違えたんだろう。
「ねえまだ?」
「やっと起きた」
「ごはんごはん」
「はいはい、今やるから」
声にせかされて、ようやく布団から起き上がる。
枕元には、白玉みたいにもちもちした生き物たち。台所に向かう俺の後ろを、ぴょこぴょこ跳ねてついてくる。
「おいしごはん」
「たのしいごはん」
「やったやった」
冷蔵庫から昨日作ったチョコを取り出す。小分けにして皿に盛り付けて床に置くと、白玉たちはわーわー言って飛びついた。
こんなパティシエ崩れの作ったチョコでも、喜んで食べてくれるんだな。
この部屋に越してきたら出てきた、謎の白玉たち。
なんなのか分からないが、大の甘党の彼らの腹を満たすのが、なんの取り柄もない俺の、日々のささやかな楽しみだった。
【お題:バレンタイン】
『バレンタイン』(創作)
「何時に帰るの?」
家から出ようとする息子に声を掛けた。
「時間なんて数えてない。」と、靴を履きながら応える息子に、「時間って数えるものだった?」と問い直したところで、わたしは、しまったと思った。案の定、息子は「っるせーな。どうでもいいだろ。」と、毒づいてドアから出て行ってしまった。
しかし、彼はすぐに帰宅した。
「おかえり。早かったね。」と出迎えると、彼は手に紙袋を提げていた。可愛いらしいピンクの紙袋で、彼の風貌には似つかわしくなく、すぐ目に入った。
わたしの目線を察した息子は、「っるせーな。」と言いたそうにそっぽを向く。
今日はバレンタインだ。
あれは、きっと、チョコレートなのだろう。
わたしは、親として、なんとなく嬉しくなって、“バレンタインって素敵なイベントね”と、心の中でつぶやいた。
"バレンタイン"
「よう、お疲れ」
今朝、夕方にいつもの休憩スペースに来るよう、メッセージを送って数分後に【分かった】と返信が来たので、約束通りの時間に休憩スペースに来たら、飛彩の姿が無かったので座って待っていた。
五分程経って飛彩が来たので、片手を挙げて労いの言葉をかける。
「待たせて済まない」
そう言いながら近付いて、椅子を引いて座ると率直に聞いてきた。
「急にどうしたんだ?」
連絡したその日に呼び出されれば、気になって当然だ。
テーブルの下の、もう片方の手の中の物がその答えになる物だ。
百均に売っている、安っぽい小箱。
中には、ココア生地のチョコチップクッキーが入っている。
本当は市販の物を買って渡そうと思っていたが、それは目の前の甘党には、市販の物を渡すなど高難易度すぎるので即却下となった。
そうなると手作りのチョコレート菓子になるが、チョコレートケーキやチョコレートマフィンなどは手間と時間が大幅にかかる。作っている時間が無さすぎる。
消去法で結局、いつも作っているクッキーにアレンジを加えるだけとなった。
生地に溶かしたチョコレートを混ぜようと思ったが、それは牛乳やバターの分量を細かく逆算する必要があり、そこまでしている時間も無かったので、ココアパウダーにチョコチップを混ぜ込む事に決めた。
だが問題は一つ。ちゃんといつも通りの温度と時間で焼いたはずだが、黒っぽい見た目の為焦げているかどうか確認しづらかった。
箱に入れる時に軽く見たが、本当に焦げていないか自信が無い。
「どうした」
黙りこくる俺に痺れを切らしたのか、言葉を促すように言葉を投げかけてくる。
意を決して、箱をテーブルの上に出す。
「……これっ」
やる、と小声で続ける。箱を手に取って「これは?」と箱に向けていた視線を上げて聞いてきた。
「今日……何の日か知ってんだろ」
バレンタインだ、と言うのがとてつもなく恥ずかしくて、遠回しな言い方になる。
だが目の前の本人は「今日?」と呟いた。
──まさか……。
「今日は何日だ?」
と聞いてきた。
「はぁ……」
──やっぱり……。
数週間前、今後の予定の為いつものように分かる範囲内のスケジュールを教えてもらった時に、その可能性を考えていた。
「お前……徹夜したりしてねぇよな?」
「していない。必要な睡眠時間の確保をした上でのスケジュールだ」
「ならちゃんと毎日カレンダーを見ろ」
仕方ない、とスマホを取り出してカレンダーアプリを開き、今日の日付けとその下に【バレンタインデー】と書かれた画面を突き出す。
数秒後「あぁ」と声を漏らして顔を上げた。
「中身はチョコレート菓子か」
予想を呟き、「開けていいか?」と聞いてきた。どうぞ、と箱を開けるよう促すと、丁寧に箱の蓋を開けて中を覗き込んで、中から一枚取り出す。
「チョコチップを混ぜ込んだクッキーか。生地はココアか?」
「正解」
一口齧って咀嚼する。数十秒後喉仏が下がって、嚥下した事を確認すると、緊張で心臓の拍動が速くなる。
「……美味い」
その言葉を聞いて、胸を撫で下ろす。
「そりゃあ良かった」
だがそれを表に出さぬよう、平静を装って言葉を発する。
飛彩は静かに一枚を平らげる。気に入ったのか、その顔は僅かに綻んでいた。
平らげると自前のハンカチで手を拭って箱の蓋を閉じた。
「残りは家で大事に食べる。お返しは必ずする」
「いらねぇよ。後で感想くれるだけで良い」
そう言うと「分かった」と答えた。
──これ絶対分かってないやつだ。
小さく呆れのため息を吐く。
「時間大丈夫か?」
そう聞くと、腕時計の文字盤を確認して「そろそろ行かなくては」と小さく呟いて顔を上げる。
「早く行ってこい。俺ももう少ししたら帰る」
「そうか」
そう言って立ち上がり、踵を返して廊下に出ると、こちらを向いて「また」と告げる。俺も「おう、またな」と返す。
俺の言葉を聞くと、柔らかく微笑んで壁の向こうに消えた。
その背中を見送ると、テーブルの下で握り拳を作った。
【バレンタイン】
今日は朝から町中が騒がしい。
なぜだろうか。
何かイベントがあったのか、とカレンダーに目を向ける。
"バレンタインデー"
あぁ、そうか。
今日はバレンタインだった。
すっかり頭から抜け落ちていた。
きっと貴方が居ないからだろうな。
貴方が居なくなってしまってから、何にも身が入らなくなってしまった。
甘いチョコのような生活が恋しいよ。
貴方との生活はとても楽しかったな。
「はやく、帰ってきて、」
このチョコの行く先が無いじゃないか。
貴方の為に作ったチョコ。
バレンタインを忘れていた、なんて寂しさを紛らわすための嘘で。
うっかりチョコを作った自分を忘れようとした。
綺麗にラッピングしたチョコの箱。
包装をビリビリと破き、箱を開く。
不格好なチョコレートが3つ、身を寄せあって並んでいる。
1つ詰まんで口へと入れる。
とても苦い、ビターな味がした。
るあ
バレンタインが 近づいても
全くソワソワもドキドキも
しなくなった……
なんか つまんない……
だから
面白いチョコが無いか?
それだけの為に物色している
父が生きていた頃
哺乳瓶の形の入れ物に入った
オッパイ形のチョコを
見つけて プレゼントした
めっっっちゃくちゃ喜んで
満面の笑みで食べてた♡♡♡
翌年の💩形は あいにくの苦笑い…
すこぶる不評だった www
今は 娘がソワソワドキドキ
キュンキュンしているのを見て
頑張れ〜♡って
陰ながら応援してる…
恋する力って ステキだな…♡♡♡
全国の 恋する皆さん! ♡♡♡
全力で 応援してます! ♡♡♡
#バレンタイン
いつから バレンタインイベントが
日本でメジャーになったのかな?
昔は ドキドキしながら 彼へ💕
そのうち 会社では 義理チョコが流行り
最近では 自分へのご褒美として
ちょっと高級なチョコを買う
なにも 特別な日じゃない
そんな感じ
【201,お題:バレンタイン】
チョコはいつも、友チョコ用と義理用と家族用に
大量生産がしやすいレシピで前日に沢山作り置きしています。
本命は一度だけ、あげたことがあるんですが
残念ながら、返事は帰ってこず...
曖昧なまま何年も経ってしまいました...(苦笑)
今日もまた、みんなに渡しに行ってきます。
バレンタイン…
バレンタインて何する日だっけ?
お風呂に浸りながら どうでもいいことを考える
愛を伝え合うには もう 疎い年代
同じ湯船の黄色いアヒルに聞いてみる
アヒルは「グワッ」としか言わない
バレンタイン…てなんだっけ
春節の一環
いや 違う
29の日と一緒な感覚
いや もっと特別
物を渡すから クリスマスみたいなもの
いや そこまで 特別ではない
なんだっけ
だけど やっぱり チョコは甘くて美味しかった
しあわせ
あぁ そうか このどうでもいいことを チョコでぼやけた頭で 現実から離れてぼぉと考える日だったんだ
『バレンタイン』
腐れ縁であげてるバレンタインチョコ。
知ってた?
実はそれ、
一度も義理チョコだったことないんだよ。
チョコレートが欲しい!
少年は切実にそう願っていた。
世は大バレタイン時代。そう今日はバレンタイン。
最近付き合い始めた彼女からのチョコレートが欲しい。絶対に欲しい。
貰えなかったらどうしよう。いやそんなわけない。彼女なら絶対にくれる。間違いない。くれないはずがない。
そうは思うものの、ドキドキそわそわする。
そんな感じで浮つきながら登校した。
教室に入り、席に着く。彼女はまだ来ていない。
朝のチャイムが鳴り、HRが始まる。
彼女はまだ来ていない……。
え? いない? 来ない?
まさか休み? 何かあった?
慌てて彼女にLINEをしようとして思わず手が止まる。
そんなわけない。そんなことあるわけないけど……もし、もし彼女が自分のことを嫌いになったんだとしたら? 会いたくなくて、学校に来てないんだとしたら?
……いや、それよりも。普通に考えたら体調不良の可能性の方が高いだろーが!
そう思い直し、「なぜいないのか」「休みなのか」、急いで担任に確認した。
彼女は頭を抱えていた。
どうして……昨日までは元気だったのに。
学校から帰ってきて、彼にあげる為のチョコを初めて手作りして、想いを詰め込んでラッピングをして……あとは今日渡すだけだったのに。
なんで、急に熱を出したの。風邪を引いちゃったの。
たしかに心当たりはあって、少し前に弟が風邪を引いて寝込んでたし(すぐに治ってたけど)、あと寒暖差に弱いから最近のこの気温はなかなか厳しかった。
一応インフルエンザやコロナではなかったけれど(まだ陽性が出てないだけかもしれないけど)、それにしても、よりにもよってどうして今日。
「どうしようかな、あのチョコ……」
机の上に置かれたままのチョコをベッドの中から眺める。
もしかしたら、風邪の菌が入ってしまっているんじゃないかと思うと、風邪が治った後も気軽に渡すことなんてできない。
せっかく作ったのにな……。
でもしょうがない。彼に変なものを食べさせることになるくらいなら、ちゃんと作り直そう。
そう決意して眠りに就いた。
どれくらい眠っていたのだろうか。
ゆっくりと目を開ける。
「おはよう」
――夢?
彼の優しい顔がそこにあった。
「夢じゃないぞ」
彼が彼女のほっぺたをそっと抓る。
「……あんまり痛くない……」
「そりゃ軽くしか抓ってないからなぁ」
「って、そうじゃないよ! なんでいるの!?」
急に頭が覚醒する。
なぜここに彼がいるのか。
「学校サボって来た」
「サボっちゃダメだよ!」
「勉強より大切なものがあるから仕方ない」
『大切なもの』――そう言われると嬉しくなってしまう。学校をサボってしまうのは良くないけど。
自分の為にサボってくれた。自分がサボらせてしまった。
そんな嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが混ぜこぜになる。
「んで、家に来たらおばちゃんが丁度仕事行くところだったから、代わりに俺が看病するって伝えて家に入れてもらったんだ」
「いや、学校行くように言ってよお母さーん!」
「俺が来たの、迷惑だったか……?」
彼が悲しそうな顔して彼女を見つめてくる。そんな目で見ないでほしい。
「迷惑じゃない……」
「良かった。はいこれ」
「え?」
彼に温かいマグカップを差し出された。
受け取ると、中には――
「……ホットチョコレート?」
「……バレンタインだし……海外だとバレンタインって男から渡すって聞いたことあるぞ。それと、チョコは風邪に良いってのもなんか聞いたことあるし」
海外ではチョコを渡すイベントじゃないけどね。
それと、チョコが本当に風邪に良いかどうかは、一概には言えないみたいだけど。
そう思っても、そんな野暮なことは言わない。
「嬉しい……ありがとう」
だって、素直に嬉しかった。
心配してすぐに自分のところに駆けつけてくれたことも。こうやって暖かいものを差し出してくれることも。自分の為を思って何かをしてくれるそのことが。
マグカップを両手で包む。……温かい。心も暖かくなったバレンタイン。
「それで、その…………。……俺に、何か、その……」
――チョコレート、用意してない?
そう聞こうとして彼は気付いた。
彼女はこんな体調なんだ。そんな余裕なんてなかったかもしれない。
いや、正直、机の上にあるラッピングされた箱がめちゃくちゃ気になるけど。
でも、それは全然自分とは関係ないもので、やっぱり自分の分なんてないかもしれない。
なかったとしても、きっとわざとじゃないだろうけど。
などと、そんなたくさんのことをぐるぐると考え始めてしまった。
「……あ、チョコ……」
彼女はベッドから起き上がろうとして、彼に止められた。
「寝てろ」
「ごめん……。その、机の上の箱……」
やっぱり自分のだった!
彼が内心で小躍りする。
「……でも、食べない方がいいかも」
彼女の言葉に、彼は固まった。
「なんで!?」
申し訳なさそうな表情を浮かべて、彼を見る。
「だって風邪引いちゃったし、風邪が感染っちゃうかも――」
彼女の言葉を遮って、そっと唇に柔らかいものが触れた。
「――唇にチョコついてた。……大丈夫。これで風邪が感染っても、まぁ今更ってことで」
それが何だったのか理解した瞬間、二人とも一気に熱が上がってしまった。
暖かいを通り越して、熱いバレンタインになったのだった。
『バレンタイン』
バレンタイン。
1年に1度、多くのリア充が結成する日。
それと同時に、失恋し悲しむ人も多いこの日。
私は重大な選択肢の前にいた。
「チョコ…渡せるかな…」
このご時世、あまり手作りは良くない。
でも、好きな人にあげるとなると、やっぱり自分で作りたくて、初めてお菓子を作った。
〖好きです。〗
そんな手紙も添えて。
置く場所は定番の下駄箱とか、、?
引き出しの方がいいかな。
どんな反応されるだろう。
楽しみのドキドキと、不安のドキドキが同時に来る。
訳の分からない感情のまま、家を出た。
「行ってきます、!」
「バレンタイン」
初めて食べたチョコレート最初はとっても甘かっ
た!だけど最近ビターな味に、私はうんざり…あ
の時食べたあの甘さが恋しくなるぐらいだった。
「ねぇもしかして!貴方は、あの甘さにうんざり
しちゃったのかな?それとも貴方は甘ったるいお
味は苦手?」そんな事を考える。「じゃあ私が作
ったこのチョコも、貴方のお口に合わないかも知
れないわ…ごめんなさいね…でも、今日ぐらいは
良いでしょ?」そんな思い出、静かにあの人の近
くにチョコを差し出した。
そうするとあの人は、私の作ったチョコレートを
一口頬張り、何も言わずにニッコリと微笑んだ。
「何も言わなくても、気持ちは分かるから安心し
てちょうだい」そんな気持ちで、私も何も言わず
に手を握った。ほろ苦く少し甘い調度良い思い出
になった。
バレンタイン
人間には好きな人や友達にチョコを配るバレンタインというイベントがあるらしい。
私もあの人にあげようと思ってチョコを買ってきた。
あの人に夕食時にデザートとして食べてもらったところ
「とても美味しかった。来年は手作りがいいな」
と言われてしまった。
ロボットなので作ること自体は余裕なのだが、今からソワソワしてたまらない。
あぁ、来年が楽しみだ。
女の子全盛期。
友情と確かな技術が試される日は
重い腰を上げてキッチンに向かう。
相手が女の子とタチの悪い小学生時代は
友情の駆け引き。
先生にバレないようにこっそり交換し
味を見定める。
友チョコの皮をかぶった義理チョコは
一体どんな味がしたのだろう。
これを機に愛が芽生える子たちを横目に
関係性と人間らしさが見え隠れする
チョコを口にする
–バレンタイン–