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『バレンタイン』(創作)

「何時に帰るの?」
家から出ようとする息子に声を掛けた。
「時間なんて数えてない。」と、靴を履きながら応える息子に、「時間って数えるものだった?」と問い直したところで、わたしは、しまったと思った。案の定、息子は「っるせーな。どうでもいいだろ。」と、毒づいてドアから出て行ってしまった。

しかし、彼はすぐに帰宅した。
「おかえり。早かったね。」と出迎えると、彼は手に紙袋を提げていた。可愛いらしいピンクの紙袋で、彼の風貌には似つかわしくなく、すぐ目に入った。
わたしの目線を察した息子は、「っるせーな。」と言いたそうにそっぽを向く。

今日はバレンタインだ。
あれは、きっと、チョコレートなのだろう。
わたしは、親として、なんとなく嬉しくなって、“バレンタインって素敵なイベントね”と、心の中でつぶやいた。

2/14/2024, 2:27:44 PM