Morita

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今日、バレンタインだったのか。

起きたら午後の4時で、狭い4畳間からは夕焼けが見えた。布団に横になったまま、日が暮れるのをぼんやり眺める。

子供の頃はモテたのにな。
中学生の頃は、登校して靴箱を開けるとチョコと手紙がたくさん入っていて、カバンに隠しきれずに持ち物検査で引っかかっていた。

夕日がビル街の向こうに沈んでいく。街がガスっているせいで、太陽の光はにじみ、溶けていくチョコレートのようにも見えた。

どこで道を間違えたんだろう。

「ねえまだ?」
「やっと起きた」
「ごはんごはん」
「はいはい、今やるから」

声にせかされて、ようやく布団から起き上がる。
枕元には、白玉みたいにもちもちした生き物たち。台所に向かう俺の後ろを、ぴょこぴょこ跳ねてついてくる。

「おいしごはん」
「たのしいごはん」
「やったやった」

冷蔵庫から昨日作ったチョコを取り出す。小分けにして皿に盛り付けて床に置くと、白玉たちはわーわー言って飛びついた。

こんなパティシエ崩れの作ったチョコでも、喜んで食べてくれるんだな。

この部屋に越してきたら出てきた、謎の白玉たち。
なんなのか分からないが、大の甘党の彼らの腹を満たすのが、なんの取り柄もない俺の、日々のささやかな楽しみだった。

【お題:バレンタイン】

2/14/2024, 2:31:45 PM