『バカみたい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『バカみたい』
推しの方は私の存在すら認知してないのに、ちゃんとメイクもして髪の毛も整えて可愛い姿の時でないと視界に入る事すら烏滸がましいなんて言って、推しが近くにいたり、すれ違ったりする瞬間に誰かの背中やどこかに隠れてしまう癖をやめたい。
推しの方は私の事なんて微塵も気にしてないのに、バカみたい。
どんなに気を遣ったって、相手に届かない。
こちらが何かを言えば「でも…」で不幸マウント取ってくる。
できるだけ聞き役に徹すれば「自分がないの?」。
それではと意見を言えば「あなたはすごいね…」。
挙句の果てには「あなたにめちゃくちゃにされた。もう◯ぬ!」……。
ああ、もう馬鹿みたい。
「バカみたい。」
テレビでニュースを見ていると、つい出る独り言。
ああ、ダメだ。
こんな汚い事を言ってしまっては。
と、思うのに、
またすぐ、「バカみたい。」
私はあまりニュースを見ない方がいいのかもしれない。
「あれ?池永じゃん。」
聞き覚えのある声に振り返って、即、後悔した。同じ文芸部の藤代登吾が、私服姿でアイスクリームチェーン店のワッフルコーンに噛りついているところだった。
「なにしてんの?1人?買い物?」
質問が多い。
「…質問は1個にして」
はぁぁぁ、と長い溜め息と共にどうにか返した。
待ちに待った推し活イベント当日、なぜ部活の同級生に遭遇する羽目に…。しかも、絶対に見られたくない相手に、よりにもよって!
「んじゃあ、なにしてんの?」
私の格好を見て、わざと言ってるのか、コイツ。
「見てわかんない?」
「えー、質問に質問返しはルール違反じゃん。就活で嫌われるやつ」
そんな話してないし。
「和装…で街コン?」
バカじゃないの、コイツ。
「あのね、和装は和装だけど、これは推し活なの!」
「推し活ぅ?」
登吾がぽかんとしている。半開きの口の端にチョコレートが原因と思われる汚れが付いていた。
私は自分の口の端を指差して、登吾に汚れを伝えようとした。
「あ、わりぃ」
気づいた登吾は、手の甲で口の端をこすり、一口に残りのワッフルコーンを入れると咀嚼もそこそこに飲み込んだ。
「で、どのあたりが推し?」
改めて私の頭のてっぺんから爪先まで見て、登吾は尋ねた。
私は背筋を伸ばすと、言い放った。
「私の推しは、明治期から昭和初期に活躍した文豪なんです」
何でこんな説明をしてるんだろう、私は。
「推しの命日に、その時代の女性になりきって、その尊さを偲んでいるんです」
予想外だったのだろう。登吾は今度こそ開いた口が塞がらない様子だった。
バカみたいだ。
苦手な奴に自分のことを分かってもらおうなんて。
「そういうことだから、別に学校の誰に喋っても気にしな…」
言い終わらないうちにガシッと両肩を掴まれた。目の前に登吾が迫っていた。
「なに言ってンだよ!いいじゃん、推し活!カッコいいよ!」
登吾が快活に笑った。
今度は私が、ぽかんと開いた口が塞がらなかった。
「なんつーの?こう、好きなことに真っしぐらってやつ?俺、羨ましいわ」
「はぁ……」
なんだか、登吾に掴まれた肩と頬が熱く感じられてくる。
手を放して、登吾は伏し目がちに言った。
「俺、正直のめり込むほど好きになったことって、無いんだわ。何でも、とりあえずほどほどにしとけばいいか、みたいな感じでさ。なんか、冷めた目で外側から見てる俺がいるんだよな」
初めて聞いた。登吾がそんな風に自分自身のことを捉えていたなんて。
「だからさ、俺も推し活、やってみたい」
ん?
「え??ちょ、ちょちょ、ちょっと!話がよく見えないんだけど」
登吾は笑顔だった。
「かいつまんで言うとさ、俺に推し活のいろはを教えてほしいってこと!よろしくねぇ、池永セ・ン・セ」
ふぅーっと左耳に息を吹きかけられた。顔に血液が集まってくるのが分かる。熱い。
あぁ、やっぱり、苦手な奴に自分のことを分かってもらおうなんて、ほんの少しでも思うんじゃなかった。
私は和装姿で大きく溜め息をついた。
藤代登吾 × 池永由良
『バカみたい』
【バカみたい】
くだらないことで
バカみたいに笑っていたあの頃。
久しぶりの今日も
やっぱりバカみたいに笑ってる。
なんだこれ。
幸せってこういうことか?
ふと真顔になったら
それを見て、また笑い出したよね。
泣くまで笑うことないじゃん。
「だって、バカみたいな顔してたもん」って
おい、失礼だぞ。
サバサバしたカップルよりラブラブしたカップルになりたい。俗に言うバカップルになりたい。
デートの時はいつもペアルックを着たり、愛情表現を忘れなかったり、デート先がどんな所でもバカみたいに楽しみ合える
そんなカップルになりたい。
「当て馬にすらなれない」
はじめは「ちょっとかっこいいかも」だった。
思わず目で追う。
その視線の先に誰がいるかは、すぐに気付いた。
なんて地味な子。
単に幼馴染だから放っておけないだけでしょ。
あの子を見るみたいに、あたしを見て。
優しく見つめる先にいるあの子が羨ましい。
だけど彼の想いは実り、ふたりの間に強引に割って入らなかったことを後悔した。
「釣り合ってないよね」
陰であの子を悪く言う。
「あの子には勿体ないと思わない?」
彼にあんな地味で内気な子、似合わない。
そう言ったあたしに「あの子のこと、よく知らないから」と言うクラスメイト。
あたしもあの子のことは、よく知らない。
でも、そんなのどうでもいい。
あの子を悪く言う理由なんて、彼を独り占めしていることだけで充分。
そう思っていたのに。
彼女の悪評の出どころを彼に知られてしまうなんて、思わなかった。
自分の醜さを認められなかった私。
もうしないと誓っても、きっと赦してくれない。
なぜあんなことをしたのか。
いまさら後悔しても遅いのに。
────バカみたい
その事を
知ったその時
思ったの
自分を無視した
その献身に
「本当にバッッッカみたい!!」
カルナの過去を見たジナコの叫び
(FateEXTRACCC)
バカみたい
(本稿を下書きとして保管)
2024.3.22 藍
昔の人はどうやって恋愛してたんだろ?
スマホ、ケータイ、ポケベルよりも
もっと昔の時
固定電話で連絡するって
家にいる時のほんの一瞬だけでしょ?
それで絆が深まったのかな?
それで全てが理解出来たのかな?
連絡来る来ないで一喜一憂してたのかな?
ポケベル、ケータイ、スマホって
順番に進化していったのに
私たちはどの時代も同じ事で悩んでる
彼から返事が来ないって悩む気持ち
何十年も前から進化できない私たち
いつの時代でも恋愛は
バカみたいに同じことの繰り返しなんだ
降りしきる雨の中、私は行きつけのコンビニでアイスを買っていた。
小さなコンビニカゴにはピスタチオ味のカップアイスが二つある。
(先輩、ピスタチオが好きって言ってたから…これもきっと食べたよね?)
中学校に入学したときに案内係をしていた先輩に一目惚れした私は、三年間、彼を想い続けていた。
学年が一つ上だから話しかけることなんてできなかったけど、ずっと密かに想い続けていたのだ。
先輩の好きな色や食べ物、音楽なんかの情報が入れば片っ端から真似していき、いつか話ができたときの話題にと思ったりもした。
(同じ高校に入れてよかった。)
先輩が受験した高校に無事入学できた私は、今回こそは話しかけようと心に決めていたのだ。
『明日、学校に行ったときに先輩のクラスを探そう』
そう決めてお会計を済ませ、コンビニの外に出た。
まだ振り続ける雨に軽くため息を漏らし、傘をさす。
そして一歩踏み出そうとしたとき、私の前を先輩が横切ったのだ。
(あっ……!)
今が声をかけるチャンスだ。
そう思った私は視線で先輩を追いかけた。
その時…
(え……?)
歩いていく先輩の隣に、髪の毛の長い女の人がいたのだ。
仲良さそうに笑いながら話をしていて、視線を少し下ろすと二人の手が繋がってるのが見える。
「ーーーーっ!」
考えてみればわかることだった。
私が好きになるということは、他の誰かも先輩を好きになる可能性がある。
そしてその先輩も、誰かを好きになる可能性があるのだ。
「……バカみたい。」
自分だけが好きだと思っていたことに呆れ、そう呟いた。
雨を避ける為にさしていた傘も、いつの間にか地面に落としてしまっていた。
「……お前はバカなんかじゃないよ。」
そんな声が背中側から聞こえたと同時に、私に当たっていた雨が当たらなくなった。
聞き覚えのある声に、ゆっくり振り返る。
「……もう、なんでいるのよ。」
私の背中側から傘をさしていたのは幼馴染の男の子だ。
幼稚園からずっと一緒で、高校も同じだった。
「…そのアイス、俺の分だろ?早く帰って食おーぜ。」
そう言って幼馴染は私の頭をぽんぽんっと撫でた。
(あ…私、無意識に二つ買ってたんだ…。)
先輩を想って買っていたはずのアイスだけど、気づかないうちに幼馴染と一緒に食べるつもりで買っていたようだ。
「…ふふ、バカみたい。」
「あ?なんだよ?」
「ううんっ、なんでもなーい!」
「?…変なやつ。」
上辺だけの片想いだったことに気づいた私は、バカみたいに一緒にいる幼馴染とアイスを食べたのだった。
バカみたい
君は皆の憧れの存在だった。
真面目で誠実、そして強くて優しい。
仕事が出来て、リーダーシップもある。
後輩から頼られ、先輩から一目置かれて。
そんな君に、俺は恋にも似た憧れを抱いていた。
君と友達になりたい。出来れば親友になりたい。
何時からか、そう願う様になっていた。
今は未だ、君にとって俺は、
何人も居る同僚の1人に過ぎないだろう。
でもいつか。
君の隣で、共に泣き、苦しみを乗り越え、
一緒に笑い合いたい。
不意に意識が、空想から現実に引き戻された。
溜息一つ。俺は、冷静に現実を直視する。
鏡に写る現実の俺は、何処にでもいる冴えない男。
バカみたい。
こんな俺が、君の友達なんかになれる訳がないのに。
そんなこと…
馬鹿だね…
あっ…
ごめんよ…
馬鹿なんて…
馬鹿は…
僕で…
なんで…
大事な日にも…
素直になれなくて…
夜にひとりになって…
寂しくて…
悲しくて…
切なくて…
愛してるなんて…
俺の口から…
ごめんよ…
素直になれなくて…
なりたくて…
………
こんなにも…
さわがしい…
街並みにただづむキミは…
とても小さく…
とても寒がりで…
泣き虫な女の子さぁ…
街角のラブソング口ずさんで…
ちょっぴり僕に…
oh my little girl 尾崎豊
「バカみたい」
あなたとまた笑って過ごせる日がくるかもと
望んでる私なんて...
何日も寝れない日が続いた。
寝なければと目を瞑ると、彼が瞼の裏に浮かんでくる。怒りの様な喜びの様な、色んな感情に振り回されて、歪んでいるような。
それが最後に見た彼の表情だった。
それからどうなったか、記憶の無いまま「居なくなった」と彼の事をよく知る人から伝えられて、寂しくて悲しい、なんて良く分からず、ただ静かに状況を飲み込む。
最後に会う数週間前、彼から別れ話を切り出されて、戸惑ったが一瞬で「そうですか」と、ただその言葉を受け入れた。
特に何も言わず、表情一つ変えなかった彼が、私を殺す時にだけ複雑に歪んだのが心残りで苦しくなる。
浸かっていた顔を水から出す。
温水のプールなのに、体中を包む水は冷たく感じる。ただそれもどうでも良くなってきて、水底に自分をまた沈めた。
重力に逆らって空を見ているよりも、水の中でただ光の揺らめきを見ている方が楽しい。
寂しくて悲しい事も、その感情すら忘れられるような気がして、水の泡が光に吸い込まれるのを見つめる。
手を伸ばしてそれを掴もうとしたが、すり抜けて消えてしまい、何も残らなかった。
結局愛しているかどうか分からずに、関係は終わってしまって、私の愛も嘘だらけだったんだなと嫌になる。
彼に対して何を思っているのか分からなくて、好きでもないのに「愛している」と言われて、愛なら分かると手を取ったのに、最後には一人で何もせず沈んでいる。
残ったのは何色にも光ることの出来ない、透明な自分だけで、彼の最後の表情の意味すら感じ取る事が出来なかった。
息が続かなくなってきたけれど、このまま沈んでいけたら苦しさも忘れるだろうか。既に私は死んでいるのかもしれないと思うと、もうどうでも良かった。
彼を愛していると、私みたいなやつでも、
誰かを愛せると勘違いをして、
自分だけ浮かれて、本当に、
「バカみたい」
※再掲
私たちの関係に名前はなかったけれど、
きっと誰よりも近かった。
私たちを縛るものは何もなかったけれど、
いつでも隣で笑っていた。
わたしの1番があなたであるように、
あなたの1番は私だと、信じて疑わなかった。
あなたの口から飛び出す知らない女の人の名前。
見たことの無いあなたの笑顔。
その時に理解してしまった。
あなたの事を好いていたのだと。
そして、失恋したのだと。
私はあなたを引き止められない。
だって私たちの間には、なにもないから。
私もあなたが好きだとか、
私があなたをいちばん分かってるだとか。
口が裂けても言えない。
きっと私は、あなたの事を何も知らない。
近くにいただけで、分かってるつもりでいた。
私はあなたの1番を名乗れない。
私はあなただけだったけれど、
あなたにとっての1番は私ではなかったのね。
「ほんと、バカみたい。」
全てが手遅れになってから気付くなんて。
ずっと知らないままの方が幸せだったわ。
――あんたさえ居なければコンクール出れたのに!
そう言って掴みかかったときの彼女の顔をはっきりと思い出せる。諦観、その一言がよく似合う。聖母マリアより残酷で、鮮烈な微笑を携えた彼女が、ゆっくりと自分の首を絞めていく。
今年が最後なのに、何してくれてんのよ、私が誘ったのに、なんで、なんでよ!
言葉が詰まる。上手く喋れない。息が吸えない。
「ごめんね」
嗚呼、耐えきれない!
本棚の教則本の背表紙をなぞる。
私がオーディションに落ちたのは、彼女のせいじゃない。当たり前だ。
どうしようもなく自分を責め終わったら、相手がいなくなった。矛先は勝手に彼女へ向いた。一番敵いそうな同い年の子。後輩の天才は太陽で彼女は月、私が地球。
届く、そう思った。つくづく楽観的でバカみたいだ。
私は将来音楽で食っていけるなんて微塵も思ってない。
私はきっと普通大学を受験するし、就職したら音楽を辞める。
たかがモラトリアムのライフイベントに、こんなにマジになっている。
私より上手いやつを全員殺してしまいたい!
馬鹿げた考えはゆっくりと現実味を帯びて、冷たく頬に張り付く。
……コンクールに出ないなら、もう練習はしなくて良い。それでも河川敷で吹き鳴らす自分を濁流に沈めてしまいたかった。
【バカみたい】2024/03/22
バカみたい
大雨の中、傘をささないことがあえて、あえてかっこいいと思っていた。
「かっこいい」なんて、そんなバカみたいなことだよな。
バカみたいな人とは関わりたくない
1番バカなのはわたしだけど
毎夜毎夜、仕事で疲れていてもテーマと向き合う。
習慣化故か、はたまた一度でも休むと駄目になってしまう自分の性格を認識しているからか。
答えはまだわからない。
最近は、前以上にココの自由さに甘えて好き勝手書いている。
物語の構造や思考のメモを消さないで残すようにしている事等がいい例だ。
メモは、言葉が出てこないという事がしばしばあるので、思考の助走の為に行っている。
それ故、メモのほとんどは脳直な文だ。
そんなメモを残したままにするだなんて、バカみたいだと冷めた目をした自分もいる。
スマートな文章や作品を目指すなら、脳直な文は残すべきではないだろう。
しかし、思考が脱線しやすい私にとって、思考の跡ともいうべきメモを残すことは、文章制作中の誘導灯代わりになっている。作る文の目標或いは目的が無いと迷子になってしまいがちだ。
制作後は思考の客観視にもメモを利用している。
脳直=素直な自分なので、なかなか侮れない。
何を書くも自由。
どの様に使うも自由。
そんなココの自由に甘えて
メモを残したままにする。
スマートな文は作れない代わりに、
その分自分を知ることが出来るかもしれない。
そんなことを期待しながら。