小絲さなこ

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「当て馬にすらなれない」


はじめは「ちょっとかっこいいかも」だった。
思わず目で追う。
その視線の先に誰がいるかは、すぐに気付いた。

なんて地味な子。
単に幼馴染だから放っておけないだけでしょ。

あの子を見るみたいに、あたしを見て。
優しく見つめる先にいるあの子が羨ましい。

だけど彼の想いは実り、ふたりの間に強引に割って入らなかったことを後悔した。


「釣り合ってないよね」
陰であの子を悪く言う。

「あの子には勿体ないと思わない?」
彼にあんな地味で内気な子、似合わない。

そう言ったあたしに「あの子のこと、よく知らないから」と言うクラスメイト。
あたしもあの子のことは、よく知らない。
でも、そんなのどうでもいい。
あの子を悪く言う理由なんて、彼を独り占めしていることだけで充分。

そう思っていたのに。



彼女の悪評の出どころを彼に知られてしまうなんて、思わなかった。


自分の醜さを認められなかった私。
もうしないと誓っても、きっと赦してくれない。
なぜあんなことをしたのか。
いまさら後悔しても遅いのに。





────バカみたい

3/22/2024, 2:42:33 PM