『セーター』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あったかいけど、首元がチクチクするから、あまり着たくない。けど、かわいいから着てしまう。罪な服。
「はい、いつものね」
ことり、とグラスの置かれる音と共にはっ、と顔をあげる。注文していたジンジャエールが届いたらしい。
騒々しい店内は活気が止むことなく、まるであちらこちらで反響しているみたいでなんとなく楽しい。
仲間内でわいわいと酒を盛る時間はさぞ、楽しかろう。パーティを組むことの良さは卒業までに散々叩き込まれたつもりだ。......私の不甲斐なさも。
今の私にはパーティではなく、実力が必要なのだ。彼らに見合うほどの実力が。
「すいません、さっきの依頼ご一緒しても良いですかね?」
「はっ!え......?」
ジンジャエールをつまみに回想に浸っていた私は突如声を掛けられ現実に戻された。
顔をあげると、そこには制服のブレザーの下にセーターまで着込んだ青年と、同じくブレザーを着用した背の低い少年がいた。
一瞬ナンパ関連かと思ったが、そうではないらしい。でなければ横にいる少年がこんなにも愕然とした表情をすることは無いだろう。
「お前、まじかよ......」
飲み込むことが出来なかったらしい少年の言葉は青年に届いたのか否か、店内の騒音に消されていった。
『セーター』
セーター
昔、友達が着ていたミルクティ色のセーターは、おばあちゃんが編んでくれたものだと言っていた。 丁寧に編まれたとてもきれいで凝ったセーターだったと思う。
「すごいね! 手編みって分からなかったよ」と言うと、友達は随分誇らしげな顔をしてたっけ。
心も体も温かくしてくれるセーターだったね。ちょっとうらやましかったな。
まだ覚えているよ。
#98
『赤いセーター』
目が覚めると、外はまだ暗いようでカーテンの隙間から光は入り込んでいなかった。私は、眠い目を擦りながら布団から這い出て、顔を洗いに行く。カレンダーを見ると、今日は木曜日。燃えるゴミを捨てる日だ。普段なら前日に準備して寝るのだが、完全に忘れて寝てしまっていた。急いで各部屋に散らばっているゴミをかき集める。最後の部屋である寝室のゴミも粗方集めきったところで椅子にかかっているモノに目が留まった。赤いセーター。滅多に着ない色をしたその服は、そこが自分の特等席であると言わんばかりに鎮座している。
昨日着ていたセーター。きっと気にいるだろうと思って買ってみたモノだった。この服を着ている間は、私が私でなくなるような気がして、特別な気持ちになった。周りからも普段とは違う視線を向けられ、口角が上がってしまうのを我慢するのが大変だった。
私は、そのセーターを、ゴミ袋に突っ込んだ。
セーターとスウェットは、同じ語源だったよね。汗を吸うって意味が有ったよね。
#2 セーター
お気に入りのお店のシュトーレン。
大人気のクリスマスケーキは予約済み。
クリスマスツリー柄のタペストリーもセットして、インテリアにもさり気なく赤と緑を追加した。
当日のご馳走は、デパ地下で予約したローストチキンと、お惣菜と、腕によりをかけたクリームシチュー!
いつもはイベントをスルーする私だけれど、一緒に過ごす人がいるなら話は変わる。
あれをしようこれようしようと準備するのは楽しくて、気付けばもうクリスマスは眼の前。
何ならヘアスタイルだってふわふわウェーブにしてみた。
あとは、クリスマスプレゼントを用意するだけ!
………するだけ、なのだけれど。
スマホに映るお急ぎ便画面を見つめながら、私は重いため息を吐いた。これをタップすれば、注文は完了して、商品は明日には届く。タップさえすれば、簡単に。
「あ〜〜〜」
ぼふん、とクリスマスのために白カバーに変えたソファに倒れ込む。
クリスマスと言えばダサセーターでしょ! なんて、安易に考えた自分は何て浅はかだったんだろう。ローテーブルに投げ出した濃紺の塊は、完成品には程遠い。ころころと、床の上を転がっていく毛糸玉を仇を見るような目で睨みつけた。
濃紺の毛糸に、デカデカとイニシャルを入れるための金色の毛糸。キャラクターを入れるわけでも、クリスマスツリーを入れるわけでもない。とってもシンプルで、でも伝統的なダサさ。今でも大人気な、魔法魔術学校のクリスマスを思い出せるようなセーター。そういうのが大好きな性格だから、喜んでくれるだろう。セーターを編むのは初めてだけど、マフラーを編んだことならある。2ヶ月前から編み始めれば、きっと大丈夫大丈夫!
なんて、お気楽気分だったのは最初だけで。
絵柄のないシンプルなマフラーと違って、セーターはめちゃくちゃ難しかった。単純に編む量は多いし、ぐるっと輪にしなければいけないし、一目一目同じ大きさ、同じ編み数にしないと前と後ろの長さが違ってくるし、何より柄がガタガタになる。ダサセーターのダサはそういうことじゃない。
編んで、ほどいてを繰り返して、どうにか前に進んではいるけれど、これじゃあとてもクリスマスには間に合いそうにも無かった。
シュトーレンも、クリスマスケーキも、ご馳走も、部屋のセッティングも、思いつくものは全て準備した。
喜んでもらいたくて、笑ってもらいたくて、……一緒にいて、楽しいと思ってもらいたくて。
なのに肝心の、クリスマスプレゼントが用意できない。
何を贈ればいいか分からなくて、ちょっとお茶目なものを選んでしまったけれど、本当はじっくり考えた。クリスマスと言えばダサセーターでしょ、まで辿り着くのにどれだけ悩んだことか。
悩んで、悩んで、これだ!と思ったのに。
でも、クリスマスプレゼントが無いなんて、そんなのきっと興醒めだろう。
だったら、と手の中のスマホを覗き込む。画面はさっきと変わらない。あとは注文確定のボタンをタップするだけ。
でも。
「……やだな」
だって、今さら、簡単に手に入るプレゼントなんて、渡したくないよ。
朝、袖を通したセーターを脱ぐと、パチッと音がした。身体から離してもふよふよと近付いてくるそれを見て、あーもうこんな時期かぁと、まるで他人事みたいに思う。
これが冬の第一のルーティン。ここから、私の夜が始まる。
▶セーター #43
セーター。
私の学校は着ていい色が決まっている。
本当は派手な色が好き。
だけど、地味な紺色。
ただ、温かいから着てる。
だけど、彼が可愛いというから。
少しだけ学校を許してあげた。
オレンジのセーター あなたがくれたセーター あなたはいないけどセーターはわたしを暖めてくれている
今日は特に寒い。昼間は窓際にいれば日向ぼっこできるけど、太陽が沈んだら結構たえられないくらいの冷え込みだ。
今日は遅いのかな、アニキ。早く帰って来ないかなぁ。……腹も減ったし。そろそろ別のもの食わしてくれてもいいのに、いまだにオレはふやかしごはん。ま、文句言えた義理じゃないけど。
とりあえず、帰ってくるまでどっかに潜ってよ。布団の中でいっか。と、思ったんだけどいいもの見つけた。ソファに適当に脱ぎ捨ててあるセーター。これは朝、アニキが一瞬着たけどあまりにも似合わなすぎて脱いでそのままになってるやつだ。なんでも、「俺はアーガイルなんて着ちゃいけねぇな」とかボヤいてた。よく分かんないけどアーガイルというヤツにはアニキは勝てないらしい。
その黄色いセーターの中にもそもそ潜る。けっこうあったかい。いい感じに隠れるし気に入ったぞ、これ。
「ただいまー」
はっ。セーターに夢中になってたら物音に全く気づかなかった。
「寝てんのか?」
いるよ、いるいるここだよ。おかえりなさいアニキ。
「おーアシメ。……って、なんでそんなとこにいるんだよ」
アニキはオレのことを“アシメ”って呼ぶ。アニキが付けてくれたオレの名前。目玉の色がそれぞれ違うかららしい。オレがセーターの中から出てきたのを見て、アニキは「寒かったかなぁ」と言いながらそばのヒーターを着けた。おっ、やったぜこれであったまるーっ。
「今メシにすっから」
へい。よろしくお願いします。あ、でもちょっともう、普通のメシがいいんだけど……
……あーやっぱりダメか。アニキがいつものように皿に出したミルクをレンジに入れたのが見えた。仕方ない。食えないよりはずっとマシだ。
こんなふうに、あったかいとこにいられて。メシをもらえて誰かに撫でてもらえるなんてもう絶対にないと思ってたから。オレはほんとに運がいい。アニキが拾ってくれなきゃきっとあのまま、野垂れ死んでただろーな。オレを拾ってくれて、ありがとうございますアニキ。
「あ?なんだよニャーって。もうできるからちょっと待っとけ」
ちゃんと伝わらないのがくやしくてしょうがないんだけど。ずっとそう思ってるから。アニキのこと、世界一尊敬してるんで、これからもよろしくお願いしますニャァ。
(……after 11/16)
昨日、スフレ的セーターを3つ買った。感謝セール中で、ちょっとお安くなっていたので。
あと、在宅勤務の仕事を辞めて、要通勤の職になるため。
急に冬が来たような空気に尻込みしつつも、月曜の初日が楽しみです。
【セーター】
冬生まれの貴方に
プレゼントとしてセーターを買った
貴方に似合う
落ち着いた色合いのセーターを選んだつもり
サイズもたぶん合ってると思うけど
気に入ってくれるかな?
男物の服なんて
正直はじめて買ったから
レジを通すのにすごく緊張した
もうこれ以上ないくらい緊張したから
きっと貴方に渡す時は
幾分か和らいだ気持ちで
プレゼントできると思う
早く貴方に会いたいな
【セーター】
今年の秋口、偶然立ちよった雑貨屋で一目惚れしたセーター。
この新しいセーターで、誰と会ってどこに行こうか。
(セーター)
セーターなんてもんはどうでも良くて。
藤井風くん最高にかっこよすぎて召されかけたんやが。
久々限界オタクした
セーター
網目の隙間に埋もれていたい。きっとそれがいちばん温い。
ぎゅっとし過ぎているわけでなく、かといって緩いわけではなく、丁度いい塩梅に、あったかくなるようにしてある。今ではきっと機械で作ってるこれらの始まりは手編みで、その隙間にはなにか、思いやりとか、そういう、物理的な温もり以外の何かがあるのではないかと……いいや、なんだかいい話ふうの、胡散臭い話になってきた。いちばん温いのは、布団だ。布だけで得られる温もりと安心感。あれに勝るものはない。欠点があるとすれば…
『 今日休み? カフェ行かん? 』
友からの連絡が目に入る。スマホに一言、返信する。
『今から起きるから1時間待って』
『おはよ。おっけー』
社会人になって数少ない、突如連絡し合える上に,急に出かけられる距離に居る友人。
布団は温いが、当然ながら外に出られない。
なので、セーターを着る。上着も追加。ホッカイロは…まぁ今日はいいだろう。
ホットコーヒーとスイーツと、友との雑談に浸る、日々の隙間。
俺は自分の衣装箱を漁っていた。
昨日、彼女との会話で
「寒くなってきたね。去年あげたセーターまだ持ってる?あれ、一緒に着てペアルックしようよ」
と言われ、セーターを探している。
愛する彼女の願いに、俺は断るすべを持たない
しかし、おかしなこと仕舞ったはずのセーター見当たらないのだ。
愛する彼女からもらったセーターを捨てるわけがないのだ。
それに加え、仕舞い込んだはずのヒートテック、長袖のシャツ、防寒用上着も見当たらない。
これは異常事態だ。
冬用の衣装が尽くなくなっている。
間違いない
これは妖怪冬着隠しの仕業だ。
メルカリで買った数珠を握りしめ、部屋の中央に立つ。
「妖怪よ。姿を表わせ」
数珠が光り輝き、部屋を光で満たす。
そうして光が収まった部屋には、俺以外に妖怪が立っていた。
そいつは俺のセーターとヒートテックと防寒用上着を着ていた。
犯人は間違いなくコイツだ!
「ちっ。見つかったか」
妖怪はそう言うと、部屋から逃げようとする。
「逃がすか。悪霊退散」
俺は手の持っていた数珠を妖怪に投げつける。
「ぐわー」
数珠が当たった妖怪は悲鳴を上げながら燃え上がる。
「くそ、ただで死んでたまるか」
そう言うと、妖怪は着ていたセーターを粉々に破いて、そのまま、燃え尽きてきた。
「なんてことだ」
俺は膝から崩れ落ちる。
これでは彼女とペアルックが出来ない。
ということにして、彼女に謝ることにしよう。
…怒られるかな
どっちにしろ、セーターは見つからないので謝るしかない
どうやって謝ったものかと考えていると、彼女からラインが来た
「ゴメン。妖怪冬着隠しにセーターをやられた。セーターのペアルックはまたこんどにしようね」
ふと目についた
風になびく解れた毛糸
軽やかに飛び跳ねる
小さな天使の裾に
無邪気な笑い声の横で
秋の縁が過ぎてゆく
10月24日(金よう日)
昨日まで半袖だった男前系女子の小林ちゃんが急にセーターを着はじめた。
凄くびっくりした。だって、小林ちゃんは年がら年中半袖なタイプの子だったから。
うわさによると山田君の事が好きになったんだって。
なんでも山田君がセーター着てる女子って可愛いよなって話しをしてたらしい。
恋って人を変えるって聞いたことがあるけどあれほんとなんだね。
『セーター』
この飛びっきり可愛いセーターは
貴方にだけ見せたい
"セーター"
セーターと聞いてまず最初に思い浮かぶのは、ちくちくとした毛糸かなにかの嫌な感触が手首に触れるあれ。
そして脱ぐときに静電気でとどめをかましてきた、あのセーターだ。
でもかわいくて、白だからどんな色を合わせても割と合って、かつ暖かいため、なんだかんだ着てしまっている。
ちくちくセーターを着る時は下になにか、頭を覆えるくらい襟が大きくて柔らかい服でも重ねた方がいい。