針間碧

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『赤いセーター』

 目が覚めると、外はまだ暗いようでカーテンの隙間から光は入り込んでいなかった。私は、眠い目を擦りながら布団から這い出て、顔を洗いに行く。カレンダーを見ると、今日は木曜日。燃えるゴミを捨てる日だ。普段なら前日に準備して寝るのだが、完全に忘れて寝てしまっていた。急いで各部屋に散らばっているゴミをかき集める。最後の部屋である寝室のゴミも粗方集めきったところで椅子にかかっているモノに目が留まった。赤いセーター。滅多に着ない色をしたその服は、そこが自分の特等席であると言わんばかりに鎮座している。
 昨日着ていたセーター。きっと気にいるだろうと思って買ってみたモノだった。この服を着ている間は、私が私でなくなるような気がして、特別な気持ちになった。周りからも普段とは違う視線を向けられ、口角が上がってしまうのを我慢するのが大変だった。
 私は、そのセーターを、ゴミ袋に突っ込んだ。

11/25/2023, 9:30:17 AM