「はい、いつものね」
ことり、とグラスの置かれる音と共にはっ、と顔をあげる。注文していたジンジャエールが届いたらしい。
騒々しい店内は活気が止むことなく、まるであちらこちらで反響しているみたいでなんとなく楽しい。
仲間内でわいわいと酒を盛る時間はさぞ、楽しかろう。パーティを組むことの良さは卒業までに散々叩き込まれたつもりだ。......私の不甲斐なさも。
今の私にはパーティではなく、実力が必要なのだ。彼らに見合うほどの実力が。
「すいません、さっきの依頼ご一緒しても良いですかね?」
「はっ!え......?」
ジンジャエールをつまみに回想に浸っていた私は突如声を掛けられ現実に戻された。
顔をあげると、そこには制服のブレザーの下にセーターまで着込んだ青年と、同じくブレザーを着用した背の低い少年がいた。
一瞬ナンパ関連かと思ったが、そうではないらしい。でなければ横にいる少年がこんなにも愕然とした表情をすることは無いだろう。
「お前、まじかよ......」
飲み込むことが出来なかったらしい少年の言葉は青年に届いたのか否か、店内の騒音に消されていった。
『セーター』
11/25/2023, 9:32:54 AM