今日は特に寒い。昼間は窓際にいれば日向ぼっこできるけど、太陽が沈んだら結構たえられないくらいの冷え込みだ。
今日は遅いのかな、アニキ。早く帰って来ないかなぁ。……腹も減ったし。そろそろ別のもの食わしてくれてもいいのに、いまだにオレはふやかしごはん。ま、文句言えた義理じゃないけど。
とりあえず、帰ってくるまでどっかに潜ってよ。布団の中でいっか。と、思ったんだけどいいもの見つけた。ソファに適当に脱ぎ捨ててあるセーター。これは朝、アニキが一瞬着たけどあまりにも似合わなすぎて脱いでそのままになってるやつだ。なんでも、「俺はアーガイルなんて着ちゃいけねぇな」とかボヤいてた。よく分かんないけどアーガイルというヤツにはアニキは勝てないらしい。
その黄色いセーターの中にもそもそ潜る。けっこうあったかい。いい感じに隠れるし気に入ったぞ、これ。
「ただいまー」
はっ。セーターに夢中になってたら物音に全く気づかなかった。
「寝てんのか?」
いるよ、いるいるここだよ。おかえりなさいアニキ。
「おーアシメ。……って、なんでそんなとこにいるんだよ」
アニキはオレのことを“アシメ”って呼ぶ。アニキが付けてくれたオレの名前。目玉の色がそれぞれ違うかららしい。オレがセーターの中から出てきたのを見て、アニキは「寒かったかなぁ」と言いながらそばのヒーターを着けた。おっ、やったぜこれであったまるーっ。
「今メシにすっから」
へい。よろしくお願いします。あ、でもちょっともう、普通のメシがいいんだけど……
……あーやっぱりダメか。アニキがいつものように皿に出したミルクをレンジに入れたのが見えた。仕方ない。食えないよりはずっとマシだ。
こんなふうに、あったかいとこにいられて。メシをもらえて誰かに撫でてもらえるなんてもう絶対にないと思ってたから。オレはほんとに運がいい。アニキが拾ってくれなきゃきっとあのまま、野垂れ死んでただろーな。オレを拾ってくれて、ありがとうございますアニキ。
「あ?なんだよニャーって。もうできるからちょっと待っとけ」
ちゃんと伝わらないのがくやしくてしょうがないんだけど。ずっとそう思ってるから。アニキのこと、世界一尊敬してるんで、これからもよろしくお願いしますニャァ。
(……after 11/16)
11/25/2023, 8:52:22 AM