『カーテン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私が住んでいるマンションの一室からは、向かいのマンションが見えた。道路を挟んで、距離は百メートルと少しほど。バルコニー同士が向かい合う形で建っており、バルコニーの柵はプライバシー重視なのか、両方ともに壁タイプで作られていた。
しかし、とある日の深夜。スマホの時計は午前三時だった。妙に目が冴えて眠れなかった私は、タバコを吸うためにバルコニーへ出た。春先で夜風が肌寒かったのを覚えている。
火を付けて煙を吸った時ふと、向かいのマンションに、煌々と明かりが灯る一室を見つけた。カーテンをしていないのだった。
ふぅーっ……と紫煙を吐き出す。少し湿った夜の空気をはらんで、人の気配だけが寝静まっている街に灯る一室の電気の光は、なんだか妙な好奇心を湧き起こした。
見ようと思えば、案外見えるものだ。
(疲れたので終わり…すみません)
【カーテン】
「おはよう」と、いつもカーテンを開けてくれる君がいない朝が来た。
いつもと変わらない朝だ。
道路を駆けていく子どもたちの声、天気予報を告げる朝のテレビ、変わりない出来栄えのコーヒー。
君がいなくても、今日は始まる。
ぼんやりとしながら茶色い液体を喉に流し込んで、僕は今日も雑踏に紛れ込む。
灰になってしまったのは、君だけではないらしい。
君がいなくても、日は沈む。
メルルは唐突に実感した。前よりももっと彼を意識している自分に。
付き合ってるんだから…そのうちキスをしたり抱き合ったりするんだと思ったら照れくさくて。
こんなに意識をしているのは私だけかもしれない。
恥ずかしくて顔が真っ赤になる。メルルは彼の男友達の前から逃げ出した。
「ご、ごめんなさい」
「メルル!」
友人に「バカ野郎!茶々いれんな!」と叱って、追いかけてくる気配がある。
スカートを翻しながら走るけど、あっという間に追い付かれてしまった。
「あっ」
転ぶ。と思って覚悟をしたけれど、一瞬身体が浮いて、がっちりと抱き止められた。
「危な」
彼が庇うようにメルルと身を入れ換えていた。
「ヒ、ヒムさん」
「どこも痛くないか?」
彼の問いにこくこくと頷く。
「ヒムさんは」
「丈夫なだけが取り柄だからよ」
良かった…。メルルの黒髪がさらさらとカーテンのように落ちて彼を覆っていく。
(近い)
どうしたらいいの。あんなにいっぱい喋っていた彼の口がすっかり黙ってしまって。いつもよりずっとカッコいい。
ああ、もう逃げられない…。
頬を支えられ、メルルはゆっくりと目を閉じる。腹筋で顔を起こしてきた彼に、一気に唇を奪われた。
長年使い込まれた色をした机の上に光が差していた。
誰もいない放課後の教室、窓際の席。
机に差した光は机の色しか返さないはずなのに穏やかな茜色をそこから感じ取れるのは何故だろうか。
そんな役体もないことを考えながら視線を窓の外に向ける。3階の教室から見える景色は道路とその先に広がる住宅街。田舎の学校ということもあり学校の敷地内の緑、景観保持のための植樹、子どもたちがまさに帰ろうとしている公園の緑が目に入る。空は先ほど光から感じ取れた茜色とはまた一味違う、オレンジと紫と青のグラデーション。やはり先程の光から感じた温度は錯覚らしい。人間の感覚はなんと当てにならないことか。
開け放たれた窓から涼しい空気の奔流が僕の体に向かってくる。夏とはいえ9月にもなると逢魔時は心地よく涼しいものだ。
三週間前の足の骨折で松葉杖生活になって以来、迎えを待つ間教室で1人で過ごす時間が増えた。普段は怪我をしていても部活動に赴いているが、テスト期間に入って以来はこうして教室で1人本を読んでいることが多い。
物語は素晴らしい、自分をここではないどこかへ連れて行ってくれる、そんな気がするから。
どれだけ練習しても上手くならない野球、そんな野球中に怪我をしてしまい、これまでの練習の成果が泡と消えていくことをまざまざと見せつけてくる細ったふくらはぎ。そんな不安からこの一時は解放されるような気がしていた。
教室のスピーカーから家路が流れる。そろそろ親が迎えにくる時間だ。荷物をカバンにしまっていつでも帰れる準備を整えたが席は立たない。何故ならもうじき、、、
ガラッと引き戸が開け放たれる音。同時に華のような、果実のような、そしてどこか石鹸のような優しい匂いが風に乗って運ばれてきた。目を向けなくともわかる、いつものように彼女がそこにいた。
目が合うと彼女は笑うでもなく、声を発するでもなく、ただゆったりとした足取りで近づいてきて、僕の前の席の窓ベリに腰掛けた。
彼女は一言も話さない、僕も話さない。だけども満たされた一つの世界がその教室にはあった。我が身の不幸からくる不安、きっかけや原因なんてない漠然とした不安、高校生らしい青臭い不安もその時だけは世界の片隅に押しやることができた。
物語からでは得られないこの充実感、この感情の名前はなんなのかをなんとなくは理解している。けれど意図的に考えないように、形を与えないようにして今を大切にしたいと思った。
怪我をして悪いことばかりじゃなかったなと、ここ数週間に何度も思ったことを改めて考えながら、カーテンの奥に見え隠れする彼女の横顔を眺めていた。
朝の陽射しが眩しいけど
カーテンを開けようよ
ね…
気持ちいいでしょ?
心のカーテンも開けようよ…
いつもと違う景色がみえるかもよ
閉ざしていたら見えないもの
違う風景
ね…
自分らしさが見えてこない?
【カーテン】#16
カーテン
誰もいない教室。カーテンだけが揺れている。
私は教室のドアからその光景を覗く。
この光景は落ち着いていて好きだ。
その光景に浸っているとと誰かが私の名前を呼ぶ。
振り返ると、幼なじみの男子。
「何してるんだ、いっしょに帰らん?!」
と幼なじみは言った。
「いいよ」と私は答えた。
歩いていると、幼なじみは私の手をそっと繋いだ。
君とキスするとしたらだれも見てないとこでするかな?でも、やっぱりカーテンの中でキスしたら案外バレないのかもね?(?)#カーテン
『ッシャッー!!!』『ッシャッー!!!』
左 右 と一気に勢いよく
昨日のこと 見た夢
オールクリアにする号令
”カーテン”を開けると 新しい朝が見える
今日がまたスタートだ!!!
カーテン
ゆらゆらと揺れる
日が昇れば開き
月が顔を出せばまた戻るの
不自由はあんまり好きじゃないでしょ
だから隠してあげる
外の世界から見えなくして
ようやく1人の時を過ごせる
今はゆっくりくつろいで
先の事は今は考えなくていいから
「死にたい」、と言う装置
耳をすましてみても
電子音は聞こえない
いじくり回して
疲れ果ててここに来る
いない
いない
いた
そんな気がして
形見が苦しいんだ
完璧に動作しているのは
思い通りにならない自分と
愛したかった人の影
その根拠のない出生と結びついて
奪いたかった
愚者の振る舞いに
参列したかった
いない
いない
殺した
辱められたことを赦さず
犯罪をいつまでも振り返っている
私の殺人を
私は咎められない
そんな寝床
#カーテン
カーテン
たまに開ける程度
ゲームの邪魔になるから
空を見るのは好きなんだけど
もっぱら外で見るくらい
外や光を遮るもの
内側がある状態
内から外を遮る目的
外は内にはない
内には外しかない
外しか目には入らない
内は外
外とは内にある
内から見えるものは内にある外なのかも
カーテンはどちら側にもあるけど
内の為にある存在
外に理由はない
内には理由がある
誰がどう思おうと見れるのはあなただけ
めくった向こうになにがあるのか
分からないままに
怖がっている
時おり 透けて見える光の先は
あまりにも明るい世界なのだけど。
次の風が吹いて、
このカーテンをめくったら
身体ごと進んでみるんだ
ふわりと 私を誘う
ゆらめきの先を
うっとりと想像してみる
見ないままにあたためてあたためて
あたためている
#カーテン
カーテン
たかがカーテン、
されどカーテン。
わたしには、そう思えます。
カーテンひとつで、その部屋にはどんな人が住むのか、どんな性格なのかわかってきます。暮らし向きさえ伝わることありますね。
オーダーしたであろうカーテン。
ホームセンターで買ったのだろうカーテン。きっと学生の頃頃から使っているだろうカーテン、等。
それに締め方ひとつにも性格出ます。キッチリ閉めて隙間などないとか、脇の方が窓と合わず、隙間あるのとか。そんなカーテンからは、毎日忙しいんだろう、そう伝わってきます。
わたしの部屋のですか?義母のお下がりです。まだまだ使えるし勿体ないから。
一年ぶりに開かれるカーテンが、窓が、埃を舞わせてあなたの目に涙を溜める。ここへはもう二度と来ないつもりだったのに。思いもよらずの短い時間で帰ってきてしまった。あなたの不在に埃たちはひっそりと降り積もって時間を毎秒数えていた。平等な時間がこの部屋にもあったのに。あなたの生きた一年は透明に分裂して、この部屋で埃たちとダンスを踊っていたのだと、もう一度カーテンを閉めるまでのあいだあなたはずっと噛み締めている。
カーテン
私の真っ暗な部屋では
カーテンは閉じたまんま
私の心と同じように
まるで居場所がないみたい
いいや、最初から世界に
私の居ていい場所なんてなかったみたいに
私の夢は????????だった
夢を思い出す度に嫌な思い出が
脳みそにのこびりついて剥がれない
誰かは言った
「諦める程度ならそれ程の夢だったんだ」と
誰か問いかけた
「じゃあ、どうやって生きるのだ」と
生きるということは
ご飯を食べるということなのか
息を吸うことなのだろうか
幸せでいるということなのだろうか
そんなことを毎日毎日うんざりするほど考えた
みんな知っている通り答えなんてなかったね
あんなに張り付いていたSNSさえも
だだの空虚でしかない
この頃何にも手が付かない
逃げている
階段を降りる度に
わざと足を踏み外す妄想をしては
その妄想に冷めた気持ちで向き合い
確実な1歩を踏み込む
生きる妄想より
死ぬ妄想の方が心地よい
なんて人間になってしまった私を
誰か、
Theme:カーテン
通勤中、いつも気になる家がある。
一見、なんの変哲もない一軒家だが、道路から見える小窓はいつもカーテンが閉まっている。
何か事件があったか、それとも特別な事情があるのか。
気になりつつも、そのまま通り過ぎる日々が続いていた。
そんな時、友人から面白い話を聞いた。
「ねえねえ、知ってる?あの家に住んでいる人って、魔女らしいよ」
最初はただの噂話だと思った。でも、気になって仕方がなかったため調査することにした。まず、あの家に誰か済んでいるのかどうか。そして、“魔女”とは何なのか。
近所の人に話を聞くが芳しい成果は得られなかった。
そんなある日、私は偶然あの家の敷地に入っていく人の姿を目撃した。
一瞬だったが間違いないだろうと思いそのまま尾行する。
すると、その人はポストに手紙を入れた後、そのままどこかへ行ってしまった。
俺は気になってそっとポストを覗いてみた。手紙を取り出すと開いてみる。
手紙には一言「○○を呪ってほしい」と書いてあった。
見てはいけないものを見てもらったような気がして、俺は慌てて手紙を元に戻した。
それから、それとなくその家を観察していたが、やはりなんの変化もなかった。
所詮、噂話か。
踵を返そうとしたとき、俺は気づいてしまった。
カーテンの隙間から、血走った目がこちらを見ていることに。
お題:カーテン
観客
観客席に座る俺には重いカーテンの向こう側を知る権利なんてないだろう。知る機会もないだろう。重厚感溢れる赤いカーテンが舞台の世界と俺を区切っている。圧倒的な存在感で「こちら側」を。見せないように、見えないように、知らないように、互いが互いに干渉し合わないように世界を隠し区切っている。
カーテンコール
カーテンコール。好き嫌いはあるだろう。良し悪しなんて俺が計り知れたものではない。一概に決めつけるのはナンセンスだ。そう言っておきながら「一度閉じた世界が再び開く、それがカーテンコールだ」と思う。「それは何を意味するのか」尋ねる前に観客席に座ってくれ。
スポットライト
スポットライトを一身に浴びた。光り輝く柱がこちらに落ちてくるのはひどく高揚する。視界が色とりどりチカチカ輝き、観客の頭は光の粒の一つとなる。幻覚を見ている時と酷似している。不安と興奮の間、マーブルの世界。この場所に立ったとき観客席は見ていない。見えないし、見る必要もない。僕は僕だけのスポットライトを知っていればそれでいいのだ。
フィナーレ
拍手喝采、スタンディングオベーション。舞台上で深々とお辞儀をしているあの人はきっと私のことは見ていないだろうし、客席から強く見詰めているあの人は自分の世界で成り立っているし、私はただのエキストラだ。
曽て
スポットライトを浴びたことがある。曽てその舞台に立っていた。重厚なカーテンの向こう側、もう戻れないだろう。小手先の技術を中途半端に手に入れ、磨き上げることなく舞台を降りた俺にも純粋な目だけで見ていた曽てがあった。重いカーテンの向こう側を知った。
レースのカーテン越しに
きらきらと明かりが降りてきて知った
深夜の満月
ホットミルクを飲もう
よく寝れますように
#カーテン
#カーテン
夢を見ていた。
風になびく真っ白なワンピースが似合う、1人の少女。
そして、僕の初恋の人のこと。
向日葵に囲まれたあの夏のこと。
太陽にも負けないくらいの笑顔が、今も脳裏に焼き付いている。
夢から覚めた。
じりじりと肌を焼くような暑さに、蝉の声が響く。
突っ伏していた机からふと顔を上げる。
そして目を見開く。
目の前には、あの少女が立っていたから。
あの頃と少しも変わらない笑顔で、ただ、そこに。
僕は思わず立ち上がり、手を伸ばす。
少女に伸ばしたはずの手は、空を切った。
バサバサと、音が聞こえる。
少女のワンピースにそっくりの、真っ白なカーテン。
風に吹かれて舞い上がると、彼女の笑い声が聞こえてくるような気がした。
僕は天を仰ぎゆっくりと目を閉じる。
夢であれば良かった。
君はもうこの世にはいないってこと。