やなまか

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メルルは唐突に実感した。前よりももっと彼を意識している自分に。
付き合ってるんだから…そのうちキスをしたり抱き合ったりするんだと思ったら照れくさくて。
こんなに意識をしているのは私だけかもしれない。
恥ずかしくて顔が真っ赤になる。メルルは彼の男友達の前から逃げ出した。
「ご、ごめんなさい」
「メルル!」
友人に「バカ野郎!茶々いれんな!」と叱って、追いかけてくる気配がある。
スカートを翻しながら走るけど、あっという間に追い付かれてしまった。
「あっ」
転ぶ。と思って覚悟をしたけれど、一瞬身体が浮いて、がっちりと抱き止められた。
「危な」
彼が庇うようにメルルと身を入れ換えていた。
「ヒ、ヒムさん」
「どこも痛くないか?」
彼の問いにこくこくと頷く。
「ヒムさんは」
「丈夫なだけが取り柄だからよ」
良かった…。メルルの黒髪がさらさらとカーテンのように落ちて彼を覆っていく。
(近い)
どうしたらいいの。あんなにいっぱい喋っていた彼の口がすっかり黙ってしまって。いつもよりずっとカッコいい。
ああ、もう逃げられない…。
頬を支えられ、メルルはゆっくりと目を閉じる。腹筋で顔を起こしてきた彼に、一気に唇を奪われた。

10/11/2023, 3:32:59 PM