レイ

Open App

#カーテン

夢を見ていた。

風になびく真っ白なワンピースが似合う、1人の少女。
そして、僕の初恋の人のこと。

向日葵に囲まれたあの夏のこと。
太陽にも負けないくらいの笑顔が、今も脳裏に焼き付いている。


夢から覚めた。

じりじりと肌を焼くような暑さに、蝉の声が響く。

突っ伏していた机からふと顔を上げる。
そして目を見開く。
目の前には、あの少女が立っていたから。
あの頃と少しも変わらない笑顔で、ただ、そこに。

僕は思わず立ち上がり、手を伸ばす。
少女に伸ばしたはずの手は、空を切った。

バサバサと、音が聞こえる。
少女のワンピースにそっくりの、真っ白なカーテン。
風に吹かれて舞い上がると、彼女の笑い声が聞こえてくるような気がした。

僕は天を仰ぎゆっくりと目を閉じる。


夢であれば良かった。

君はもうこの世にはいないってこと。

10/11/2023, 2:34:56 PM