『ゆずの香り』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
お題『ゆずの香り』
たまに飲むと美味しいものがある。
ジャムみたいなびんにゆずを果実の蜜に漬けたものが入っていて、それをスプーンでひとさじコップに入れてそこにお湯を注ぐ。
それを飲むと甘くて温かい飲み物が完成する。湯気からほんのりゆずのいい香りが漂ってきてそれがまたいいんだ。
柚子の匂いだ…
と彼が云う
周りをスンスンと匂いを嗅ぐと
たしかに微かに柚子の匂いがする。
でもよく匂わないと分からない位
微かなものだ
彼の敏感な感覚や感受性が強い所には
感心する。
ただ、人の言葉を真正面から受け取り
弱音を吐く事も多々有る。
所謂、人との境界線が薄いと思う
だが、私とは正反対な所に惹かれている私としては。
其の心を忘れずにこれからも生きていてほしいとさえ
思ってしまう。
柚子か…
柚子のアロマはみんなを癒してくれる。
彼も私を癒してくれる。
「貴方も柚子の匂いだね」
彼は何のこと?と云う顔をするが、
私しか知らなくていい。
貴方に癒やされていることなんて。
「ううん?何でも?早く帰ろ。鍋を作るんだから」
彼の手を引いて帰路を急いだ。
柚子風呂に入る時に時々思う
柚子から薫るあの匂いの正体は
一体どこに行き着いてしまうのだろうと
柚子の甘酸っぱい薫りは
私の体に今染みている
先日転んだ時に不本意にできてしまった
小さな傷にさえも
じわじわと染みていく
私の体に染みていくこの薫りは
私が柚子を入れる前から既に薫っているものであり
風呂に入れた瞬間に薫りが染みていくといったことは
決してない
柚子の薫りは当然
柚子から生まれるものである
だが元を辿って行けばきっと
実から枝へ
枝から幹へ
幹から根へと
そして土壌へと
薫りはきっとそこからやってくる
風呂に柚子を入れ入浴する
ただそれだけのことなのにも関わらず
私はこんな思考を無駄に張り巡らせ
頭を疲れさせる
浮かんでいる数多の柚子たちは
相変わらず薫りを放っている
その先にあるのは
一つの幸せと
温もり
ゆずの香り
香水、入浴剤、ハンドクリーム、芳香剤、制汗スプレー、およそ、ゆずの香りを謳っているモノで、本当にゆずの香りがした試しがない。(ポン酢やドレッシングなど、食べ物関係は違う。本当のゆず果汁が入っているからだ)
バラやムスクは、けっこう近いかなと思うが、してみると、ゆずの香りの再現は難しいのだろう。シトラスと謳っているものは、なんとなく柑橘系かなと思うのだが、柚子は違うんだなぁ。
バラの香りを再現するために、調香師はほんのほんの少しだが、うんちの香を混ぜるそうだ。香りの再現はそんなデリケートなものなんだね。
もしかしたら、香り界隈では、ゆずの再現はノーベル賞レベルだったりして。
ゆずの香り
ゆず油というヘアオイルがある。
妻の横を通って柑橘系、っぽい匂いがすると言ったら
そんなことを言われた。
爽やかな香りで清々しい、いい匂いだなと思ってたら
冬至だから柚子買ってきて、寒空でていく羽目になった
冬の柑橘の爽やかな香り
冬の恩恵のハツラツな黄
私は参考書の山の上にひとつ柚子を置いてみる
エクスプロージョン!
私の心を終始押さえ付ける受験への不吉な魂を吹き飛ばしてくれ!
【 柚子の香り⠀】
【ゆずの香り】
柑橘系はハズレないから大丈夫だと思っていた時期がありました。苦手というかアレルギー出ちゃう人いるのね。気を付けます。
学のない躾のゆき届いていない私は、みっともなくのたうちまわりながらもなお、いくらかましな者になろうとし続ける。
自分自身の不完全で未熟な人格と学識の低さに惨めさを感じている。
それすら、気付きもせず改めもしない生活の両親にはほとほと嫌気ごして、電話ひとつする気にもなれない。
『ゆずの香り』
早くいなくなってしまいたい
消えてしまいたい
もう忘れ去られてしまいたい
自己嫌悪、自己嫌悪の繰り返し。
冬の夜に静かな街で
積もった雪に静かに
大の字に寝そべった。
頭から足先が震える中で
隣の家の風呂の湯気。
暗がりに佇む白い湯気から
ほんのりと、
ゆずの香り。
こんな状況でも、
なんだか心が落ち着く気がする。
もう息絶えてしまいたいのに。
まだこの世界で生きていたいなんて
「手、すごい荒れてんね。痛くない?」
「あー冬はいつもこう。かーさんがハンドクリーム?塗れって言うけど、面倒で」
「ダメじゃん」
俺の手の甲は、冬はいつもこう。
乾燥してガサガサして、一部は赤ぎれになってて血が滲む。
「早めに塗り始めな」
かーさんは冬が始まる前にハンドクリームを用意してくれる。
だけどなんか忘れて、まぁ良いやと完全に諦める流れがここ数年できている。
「あたしの使ってるやつだけど。手、出して」
隣の席の賑やかな部類の女子が話しかけてきた。言われている意味が今ひとつよくわからない。
手のひらを向けると、チューブタイプのクリームが2センチ降ってきた。
「これ、ハンドクリーム?柚子の香りがする」
「塗り広げると、もっと香るよ」
「へぇ」
ちょうど良い量だったのか、ベタつきもなくサラッと両手に塗れた。
そして柚子の香り。爽やかな柑橘系の香りは嫌いじゃない。寧ろ良い匂いだと思う。
手の甲を鼻にくっつけてクンクン匂っていると、ぷ、と吹き出された。恥ずかしくなって指を伸ばして目元を覆う。
目の前の彼女は耐えきれなくなったのか、可笑しい、と笑い出した。
「良い匂いだと思ったんだよ!」
ああ、逆ギレ。情けない。
「気に入ったならあげるよ」
今ひとつ笑いを納めきれていないまま、明らかにチューブの中身が残り少ないハンドクリームを渡してくれた。
「その手、痛々しくて見てられない。新しいのはあげないけど」
そう言いながらカバンから取り出した真新しいハンドクリームのビニールを破って、彼女は手に塗り広げた。
柚子が香る。俺の手と同じ匂いの、柚子が。
「これ、どこで買ったの?」
「ん?プラザ。イオンモールの」
「プラザかぁ」
明るい店内はいつも混んでいる。中学生くらいの女子から年上の女性でごった返してるイメージだ。
「買ってきてあげようか?今日、行こうかなって思ってたし」
一緒に着いてきて、は流石に言えなかった。流石に。非モテ、インキャの俺にはハードルが高すぎる。
「2本、頼んでも良い?」
「良いけど、めっちゃちゃんと塗ろうと思ってるじゃん」
えらいえらい、と笑ってくれたけど、実は。
「いや、ちゃんと塗ろうとは思ってるけど、かーさんにもあげようかなって。かーさん、柚子好きだし」
「へええー、めっちゃ良いじゃん。あたしもそうしよー」
じゃあまた明日お金ちょうだいねー、と彼女は去って行った。
なんとも思ってない子だったけど、好感度が上がった気がするのはちょっと嬉しい。
手の甲を鼻に近づけて匂いを嗅ぐ。爽やかな柑橘系の良い香り。
あの子と同じ匂い。
「マジで今年こそはちゃんと塗ろうかな」
手荒れ治ったね、と柚子の香りを持つあの子に褒めてもらえるように。
ゆずの香り
冬至は一年で最も昼の時間が短い日。それは知っていたが、日の入りが一番早いのは12月上旬で、日の出が一番遅くなるのは1月上旬、冬至はその中間の日だということを、かなりの年齢になるまで知らずにいた。教わったのに忘れてたのかもしれない。
寒さはこれからが本番だが、日差しがだんだん力強さを増してゆく気がして、少し気持ちが明るくなる。
#ゆずの香り
ゆずの香り
今の季節、ゆずの香りが鼻を掠める。
とても酸味を感じられるが、蜜柑や檸檬とは違う独特の香りがするように思える。
…私はこの香りが大好きだ。
冬至、虚を充す仄かな柚子の香り
果肉を浮かべた淡いお湯
肌を刺す弱酸の針
新年を控えた浮世の上澄み
立ち昇る湯気の信号
星空を泳ぐ電気の鳥
蛍光灯の灯りの元
いつか見た景色
カピバラが、柚子が入っているお風呂に入っている。
その姿を見て私も柚子のお風呂に入りたいと思ったから、柚子の香りの入浴剤を買った。
粉を入れ過ぎて柚子の香りが強くてむせたけど気分は悪くない。
鱠(なます)
甘酸っぱい
紅白の宝物
まともに料理しなかったおふくろが
作った
「美味しい」
思わず、漏れてしまった
私が来ると必ずあった
少し、飽きた
私で、ちょい足し
柚子の皮を少々
新しい宝物を
作ってしまった
テーマ「柚子の香り」より
「ゆずの香り」
どうしても、元々が酒飲みの性分なのか
ゆず胡椒を思い出して、鍋の薬味にしたり、焼き鳥につけて食べる事を想像してしまう。
冬至に柚子湯、昔お客さんでお風呂屋を経営してる女性が「今日柚子湯にするから、いっぱい買ってきたから、1個あげるわ」と頂戴したことがある。
家で柚子湯にするわけにもいかず…どうしようと母に相談したかどうかもわからないけど、冷凍秋刀魚を焼いて、すだちの代わりに絞ってみた。
フルーティ秋刀魚
ちょっと汁多めだったけど、こんなに柚子って
香りがいいんだと認識した事ある…
やはり、私の風情は食い気に終始するな。
ゆずの香り~
子供頃に お正月に 食べた 料理かな
大根 薄く切って 中に 柚子の皮を
入れて くる くる 巻いた もの
懐かしいな~
今 思ったら とても体に良い食べもの
それから 柚子風呂 柚子をたくさん入れて
体が ポカ ポカ 暖かくなる
大好きでした
柚子がなる 食べてみたいが 酸っぱそう
柚子がなる 冬の風物 癒される
「昨日は柚子、ありがとうございました」
今日も朝からパンを焼く店長に声をかけた。
「あら、おはよう。柚子湯にしてちゃんと湯船に浸かった?」
「ええ、おかげさまで。香りも良くて、あったまりました」
冬至にあたる昨日、店長は柚子を大量に仕入れてきて、なぜかその日いたバイトに配っていた。そして私には念を押して柚子湯を勧めてくれた。
「習慣って迷信じゃないのよ。柚子に含まれる成分にはリラックス効果とか血行促進とか色んな効果があるの」
直前に私が体調を崩したからだろう、やたら気遣ってくれる。本当にお母さんみたいでありがたい。ちょっと圧が怖いけど…。
そんな店長だが、今日は柚子を使ったお菓子のレシピに悩んでいるようだった。
「マドレーヌもいいし、フィナンシェもいけるわね」
「ここで働いてて今更ですけど、マドレーヌとフィナンシェの違いってなんですか?」
私はパンは好きだけど、スイーツには疎い。それでいて形と色が似ている横文字を覚えるのが苦手だ。
「ざっくり言うと、卵とバターの使い方の違いね。マドレーヌは卵を全部使って溶かしたバターを使うけど、フィナンシェは卵白だけで焦がしたバターを使うの」
ほぉー。聞いておいて特に感想はない。食べてみてもそこまで違いはわからないんだろうな。店長は作るものを決めたらしく、テキパキと準備に取りかかった。
「今日、半日で閉めるんですよね?」
店長がM-1グランプリをリアルタイムで観たいから、という理由で昼過ぎにはお店を閉めることになっていた。
「年に一度の祭典よ。自分の趣味は最優先で生きるって決めてるから」
お笑い好きの店長にとって、今日は大切な日だ。我が道を往く店長は尊敬できる。でも突っ走りすぎるところもある。
「それに私たちにとって年内最後のお祭りは2日後よ。その前に気分を上げていかなきゃ」
スイーツも扱っているこのパン屋さんにとって、クリスマスも売り上げの高い大事な日だ。
「そもそもパン屋さんなんて、朝には全部作っちゃうんだから、お昼にはお店閉めちゃっていいのよ。本当は」
この人は冗談を言うときはいつも極端な事を言う。ってそうじゃなくて。
「あの、そんなにいっぱい作って、売り切れるんですか? 半日で」
いきなり新作を増やして、しかも半日で売れるんだろうか。
「なに言ってるの。売るのよ。『季節限定』『新作スイーツ』『一日遅れの冬至の定番』『M-1のおともに!』なんでもいいから」
「え? あ? そのフレーズはもしかして…」
「あなたの出番よ。POPならお手のものでしょ」
店長からの信頼が日に日に厚くなっている。いつの間にか私は販売促進部長だ。バイトなのに。
店長が調理するのを遠巻きに見ながら「柚子 スイーツ」で検索してどんな味になるのかを調べてみる。それをPOPに落とし込みながら、売れそうなキャッチコピーも考える。
「ノンストップ・ユズ!」「エキセントリックスイーツ!」「ゆず−POP」「ずっとユズダチ」
あ、いけない。途中からM-1のキャッチコピーまとめを見ていた。でも悪くないな。わかる人にわかってもらえたらいいか。
「POPできた? あら素敵じゃない」
一通り作業を終えた店長が近づいてきた。売るフェイズになったら店長のやることはほぼない。
「ねえ、今日のM-1、誰が獲ると思う?」
あーもう、雑談タイムだ。こうなると私も止まらないですよ。
「私はヤーレンズと真空ジェシカが推しですね。令和ロマンも好きですけど、連覇は違うかなーって思っちゃいます」
「わかるわー。私はね、エバースが仕上がってると思うのよね。最近、神保町の配信買ってるんだけど、あのクオリティを決勝で出せれば…」
劇場の配信買ってる人だったのかよ。もう手がつけられない。お笑いの話になると店長はアンコントロールすぎる。
仄かに匂い立つ、柔らかくてどこかさっぱりとした柑橘の香。
湯に浮かぶ黄色く歪な形をしたそれを一つ、手に取ってみる。
「これ、こちらに集中せんか」
すぐ後ろから抱きついてくる男がいなければもっとこの湯を楽しめるというのに。
ぺしりともぎ取られた柚がポイと投げられ、ぷかぷか浮かんで離れていく。
「……柚にまで嫉妬するな」
「いやだね」
面倒くさくて厄介なはずなのに、心は不思議と凪いでいる。
嗚呼柚子湯のせいだと思いたい。
「名は体を表す」とはよく言ったものだ
あの子はピュアであの子は誠実であの子は…
…あの子はいつも甘くて爽やか
あの子から漂う 苦味のある柑橘の香り
妖美な長い黒髪が良く似合うあの子の香り
上品なあの子の
大人びたユズハの
【ゆずの香り】