ゆずの香り』の作文集

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ゆずの香り』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

12/23/2023, 9:35:13 AM

ゆず香る お部屋にうっとり できません
ホテル清掃 ニオイは許さぬ

ニオイの処理はほんと面倒なので
泊まるときはできれば控えてもらいたい

12/23/2023, 9:31:07 AM

【ゆずの香り】

控えめな淡い甘さが鼻を擽る。
目を閉じて息を大きく吸い込むと、淡い甘さと自然特有の青々とした匂いが体に満ちていく。

「っさて、」

――本当にここはどこなんだ??

いい匂いを嗅いで少し落ち着いた頭で、放ったらかしにしていた問題を再び考え始めた。
周りを見渡すと、白い可憐な花を付けた木が沢山生えている。
人通りが多い東京のアスファルトの道に立っていた筈だが、いつの間にかこの自然の世界に放り込まれていた。
帰りたいが、ぱちっと瞬きをしたらいつの間にかこんな鬱蒼とした木に囲まれていたのだから、どうもこうもしようが無い。
東京では中々嗅がないような常に鼻を刺激する淡い甘さに、酒でもないのに酔いそうになってしまう。

多分この甘さの発生源は、木に飾りのように付いている白の花だろう。
確認をするために花に顔を近付けて匂いを嗅ぐと、予想は合っていたようで濃くなった甘さが鼻腔を揺らした。

「にしても、どうするか…」

花から顔を離して再び考える。
本来ならこんな場所に来てしまったことにもっと焦るべきなのだろうが、小さい頃からこういった減少に度々巻き込まれていたので慣れてしまった。
なんなら変なバケモノも居ないし良心的な空間だろう。
ずっと立って考えているのも疲れてきたので、草に覆われている地面に腰を下ろした。

うーん、と腕を組んで頭を悩ませている時だった。
どこからともなく、柑橘類の匂いが漂ってきた。

「…ゆず?」

心当たりのある匂いに頭を傾げていると、いきなりぐにゃっと眼の前の空間が歪んだ。
地震だとか、何か出てくるかとか、幽霊とかそういう系かとか…色々一瞬で考えたが、多分全部違う。

これ、私の目がおかしくなってる。

咄嗟に地面に置いた手は通常通りの感触を脳に伝えてくるし、歪んだ空間に腕を出すと腕まで歪む。
だとしたら、おかしくなってるのは私で。
治らない視界の歪みに焦っていると、鍋で煮詰めてどろどろになったような柚子の香りが鼻を刺した。
ぐにゃり、と歪みが酷くなって、頭が痛みだす。
匂いを嗅いだらヤバい、と鼻を腕で塞いだ時には、私の意識は大分朦朧としていた。

「や…ば、」

腕の隙間から、もはや痛いほどの柚子の匂いがする。
朦朧とした頭には、もう黒の暗幕が落ちかかっていて。

ふっと、私は呆気なく意識を飛ばした。



「ん゙…あたまいた…」

痛む頭に閉じていた目を開けると、私は自室のベッドで横になっていた。
まだ鼻の奥で香ってくる柚子に顔を顰めて、横を向く。
時計を求めていた目は、それとは違うものを視界に入れた。


ひとつの立派なゆずと、白い可憐な花。


…収まった頭痛が、また再び主張を始めた。

12/23/2023, 9:14:33 AM

メモリーズ


君は出ていった
ある日突然僕の側から去っていった
教えてくれないか?
僕に何ができたのかを
君は知っていたはずだよ
僕が泣き虫なのを知っていただろう?
僕が弱虫なのを知っていただろう?
僕が本当に傷つきやすいヤツだって知っていたはず

君は帰って来ない
もう何もかもが空っぽなんだ、あるのは残り香だけ
教えてくれないか?
僕に何ができたのかを
僕は信じていたんだよ
君がいつも僕の側にいてくれることを
君が実は繊細な心の持ち主だってことを
君が心の底から幸せを願っていたことを

もう泣き疲れたよ
それなのに涙はまだ止まらないんだ
君は白い箱の中で笑顔に眠っている
君の大好きだった花を添えた
ねえ、僕はどうすればよかった?
ねえ、これから僕はどうやっていけばいい?
教えてくれないか?
何が君を遠くの国へ連れて行ったのかを
僕もそこに行けば君と再開できるのかを

いつまでも泣いてちゃいけないよな
君もきっとそれを望んじゃいないよな
分かってる
分かってるよ
だけどお願いだ
いつまでも僕のことを忘れないでおくれ
この弱虫で泣き虫な僕のことをさ

12/23/2023, 8:52:56 AM

ゆずの香り


冬には毎年作るゆず大根。甘酸っぱい漬け汁にしんなりした大根、そしてゆずの香り。疲れた身体に沁みてきます。

毎年、叔母がゆずを送ってくれます。そのゆずをたっぷり使い、ゆずの香り満点に作るのが、わたし流です。


有名どころの菓子折りなんかより、ずっと嬉しい頂きのゆず。
おばさん今年もありがとう!
来年もよろしくね!

12/23/2023, 8:48:48 AM

久しぶり銭湯に行くと、柑橘類の香りがした。
 一瞬不思議に思ったが、今日は冬至で、ゆず湯をやっていることに思い至る。

 浴槽を見ると、ゆずがたくさん浮かんでいた。
 俺は最近まで知らなかったのだが、あのゆずは潰してはいけないらしい。
 何でも風呂の掃除が大変になり、時には配管が詰まるとのこと。

 若い頃の俺は、アレは潰して楽しむものばかり思っていた。
 だっていつ行っても潰れているだよ。
 そういうものとばかり…

 確か去年か一昨年の今頃、ツイッターで話題になってた気がする。
 その時の反応を見ても、やっぱり知らない人が多いようだった。
 やっぱり張り紙なり何なりやっとくべきだと思う。

 当たり前のことだから、知らないほうが悪いというのは傲慢な考えだ。
 誰だって知ってる事しか知らないのだ。

 ここの銭湯の利用客はこのことを知っているのか、潰れたゆずはなかった。
 良いことだ。
 銭湯の人が掃除する時、苦労することはないだろう。
 
 風呂は癒やされに来る所なので、誰かが不幸になるのはいただけない。
 不幸になる人がいないことに安心して、風呂に浸かる。
 いい湯加減の湯とゆずの香りでリラックスする。
 これで、悪い気を払い、病気にならなくなるのだから、お得である。

 やはり、ゆず風呂はいいものだ。

12/23/2023, 8:20:18 AM

ゆずの、柑橘の匂い
甘酸っぱい匂い
冬の寒さを感じさせる匂い
また雪がふる。

12/23/2023, 8:13:25 AM

父がよく柚子胡椒を使っていた。

あの独特の強い香りが苦手で、私を含めた家族は殆ど手を伸ばさなかった。
それでも、柚子胡椒はよく食卓の上にある存在だった。
幼い頃は父が一番偉かったのだ。

今ではすっかりトイレの扉を開けたままで致すだけの酔っ払いの人になってしまっている。
柚子胡椒もそんなには食卓にないようで、行方を母に尋ねたら「皆あまり好きじゃないから」と言われた。年月の香りよ。
(柚子のかおり)

12/23/2023, 8:01:52 AM

ゆずの香り

冬が来るとスーパーなどにゆずが店頭に並ぶよね。

冬至の日にゆず湯をするといいとかいうよね。僕はゆずの香りが大好きだ。

ゆず味の飲み物も好き。食べ物もいいよね。

ゆずの香りが効いていて食欲がわくから大好きだ。

みんなはもうゆず湯に入ったのかな?

僕はまだゆず湯してないよ。

温まっていいね。

ゆず湯は気持ちいい。

12/23/2023, 8:01:09 AM

ゆずを買ってきた。
私はゆず湯にしか使わないから、買うのは一年ぶり。
まあ今どき冬至を意識する人は珍しいのかもしれないが、ゆずの香りを楽しむにはお風呂がうってつけなのである。


湯船に浸かりながら、ゆらゆら浮かぶゆずを手に取る。
ごつごつした皮は少し押したぐらいではびくともしない。気持ち強めでむにむに。

そして香りを思い切り吸い込んだ。

酸っぱい…でもレモンよりは芳醇で甘い、くすぐったいような香り。
ほこほこぽかぽか、どこか懐かしい。
今度の君へのお裾分けはゆずにしようかな。

冬至、良い文化。


「ゆずの香り」

12/23/2023, 7:53:34 AM

昨日は冬至だったので、夕飯にカボチャの煮物をいただき
夜はゆず湯に入った。

子供の時にゆず袋係に任ぜられて
当時、ガーゼを並み縫いして作った袋に
半分に切ったゆずを入れ、フロに浮かべた。
家族にいい香りだと言われると得意になったものだ。

今でもゆず袋係は続いているが
頑張って袋を縫ったりはしない。
三角コーナーのごみネットに
楊枝でアチコチぶっ刺したゆずを入れ
袋の上をキツく結んで、フロに浮かべる。

まあ、いい香りなのは変わらないので…

(ゆずの香り)

12/23/2023, 7:09:28 AM

【ゆずの香り】

 電車を降りれば、寂れたホームが私を出迎えてくれる。無人の改札のボックスへと今どき珍しい紙の切符を放り込み、大きく息を吸い込んだ。
 肺を満たす爽やかなゆずの香り。私の生まれ育った町の懐かしい匂いに、帰ってきたのだなという実感がようやく追いついてきた。
「おかえり」
 電話越しには何度も聞いていた君の声。だけど直接耳にするのはもう何年振りだろうか。柄にもなくじわりと視界が滲みかけたのを誤魔化すように明るい笑顔を作ってみせた。
「ただいま!」
 ゆずの香りの漂う素朴で優しい町によく似合う、君の穏やかな微笑みが、私の心をふわりと包み込んでくれた。

12/23/2023, 6:53:47 AM

いつものように温い水場について行くと、凄まじい臭いがした。

こんなのに入ろうというのか。

やめておいたほうが良い、と忠告するが君は無視、パパっと服を脱いで水場へ行ってしまう。

水場から桶で掬った湯を身体に掛けている、ザパザパと床に壁に湯が撥ねる度に臭いがドアの隙間から漏れてくる。

あいつはもうだめだ。

てったいてったーい、と引戸をガリガリと爪で掻いて開けるとリビングのソファの裏に逃げ込んだ。

テーマ「ゆずの香り」

12/23/2023, 6:41:16 AM

ゆずの香り、かぁ。
やっぱりゆず湯の印象強いなー。


自分達をパパママと呼び合ってた頃。
我が家でも、ゆず湯やりました。

パパが、
「ばーちゃんから貰った。『おっこってた物だけど』って」
と持ってきた、どでかいゆずで。


……ゆずはゴルフボールくらいだと私は思っていたけれど、テニスボール大の大きさが一般的なのか、そういえば考えたことなかったわ。


『落ちてた』に引っかかりを感じつつも、収穫するものじゃないし、の言葉になるほど? と首を傾げつつ。

よーく洗って、なぜだかキッチン排水口用のネット(新品です使ってません)に入れてお風呂に浮かべた。


——何でこの時、ネットに入れたのかな。
多分、第六感。

記憶は、あった。

祖父母宅の近くにあった銭湯で、ゆず湯やっているから行っておいでと、祖父とともに行った時。

お風呂にプカプカ浮いているゆずが可愛くて、いつもより長湯しちゃったなあ。

祖父は広い脱衣所で近所の人と囲碁しながら待っててくれた。

番頭のおばあちゃんが、「お孫さん出てきたよ」と声をかけてくれて一緒に帰った。

「ゆず、可愛かったね」
と祖父に言ったら、
「そうかー。こっちはネットに入ってたからなあ。風情も何もねぇわ」
とボヤいていた。

「え、そうなの? なんで?」
「知らん」


……別に、これを思い出した訳じゃないのだけれど。

何でネットに入れたのかなー。


ちょうど息子も帰ってきて。
(パパは出張帰り、早目帰還だからパパ祖母宅に寄ってきていた)
二人で一緒にお風呂入ってきちゃいなよ、と声かけた。

小学生高学年の息子は最初こそ渋ってたけれど。

今日はみんな揃ってご飯にするから、さっさとお風呂済ませた方が早くご飯食べられるよ、と言ったら即座にバスルームへ向かってくれた。


さて、こちらはご飯の準備だ。忙しい。

頂いた白菜なんかも下処理しないと、と玄関口へ赴く。

バスルームから、父子の笑い声含んだ会話がうっすら聞こえて、なんか微笑んじゃう。


「ぐあー! 俺、五秒!」
「ワッハッハ、まだ甘いな! オラァ!!」
「ぶはっ! 秒じゃん!!」


背筋にゾワッと悪寒が走り、一瞬ですべてが繋がりました。

私はスリッパ放り出す勢いでバスルームへ駆け込み、扉を開け放って怒鳴った。


「潰してんじゃねええええ!!
 誰が掃除すると思ってんだあああ!!!」



……本当にフザケンナでありますよ。
何で潰すのでしょうねえ、あの脳筋族は。


ほのかに香るゆず湯は良いけれど、ゆず果汁風呂に入りたい人っています?
私はゴメンです、えぇ絶対!



そんな日々も遠い昔。

自分のために、たまにはゆず湯、しましょうかね。

あ——ゆずも、買わなきゃいけないのか。

ふむ。
あひる隊長で、いっか!

12/23/2023, 6:14:14 AM

ゆずの香り

柚子(ゆず)、
カボス、
酸橘(すだち)、
シィークワーサー、
早採りのピンポン球大の青(濃い緑)い温州蜜柑(ミカン)🍊、
檸檬(レモン)。

 京都は絶対に柚子!産地は土佐。
 カボスは大分。酸橘は徳島。
 釣り師は早採り蜜柑(静岡)?
柚子とカボスと酸橘の違いは、大きさ
らしいが、一番小さいのが柚子だと言うが近くのスーパーでは夏蜜柑🍊大の柚子(一番デカイ)が売っている。
 皮がブツブツしている。もう酸味も味もないので香りだけ利用して柚子湯にしたのかな?アロマテラピーかな!
 あんまり料理に使うと、“柚香”は食が進み過ぎて過食になって、あの世に“逝こう”になるみたい!
              78作目
 
柚子とカボスと酸橘と早採り蜜柑とシィークワーサーの違いが、もう一つ分からない 徳博😮

12/23/2023, 6:13:45 AM

#ゆずの香り

高校生がもう終わろうとしているのに
私だけ恋人の1人もできない。
周りの友達はどんどん恋人作っていって…
失恋した時ゆずいっぱいの風呂に入るとゆずの優しい匂いで心が芯からほぐれる。

12/23/2023, 5:56:06 AM

「12月22日は冬至。冬至といえば、カボチャかゆず。まぁ、予想通りよな」
空ネタ、天候ネタ、エモに恋愛に年中行事。
それらでほぼ出題の過半数を占めているだろうこのアプリである。
やっぱりな。某所在住物書きはスマホの通知文を見ながら、ぽつり。
「まぁ、予測可能でも、じゃあそれをお題にしてすぐハナシ書けますかっつーと、別だけど」
「ゆずの香り」ねぇ。物書きはため息を吐く。

ゆず湯くらいしか思い浮かばないが、お風呂シーンなど、誰が求めようか。

――――――

最近最近の都内某所、最低気温0℃な冷え込みの某自然公園を、
藤森という雪国出身者が子犬の日課よろしく、
コンコン子狐にハーネスとリードをつけて、散歩というかマラソンというか、まぁまぁ、しておりました。
藤森のアパートのご近所に、狐住まう稲荷神社がありまして、
子狐はその神社の奥様がいとなむ、茶葉屋の看板狐。
藤森は茶葉屋の常連。お得意様なのです。

藤森がこの茶葉屋に、「冬至限定品のゆず餅とゆず茶、美味しかったです」と、てくてく挨拶に向かったところ、
藤森が来るのを知ってか知らずか、コンコン子狐、ハーネス付けてリードも付けて、「エキノコックス・狂犬病対策済」の木札もぷらぷらさげて、お散歩装備でスタンバイ。
ところでハーネスの胴部分、2次元コードとお店のロゴと、「期間限定!稲荷神社のゆず茶在庫残りわずか」なんてプリントされてますが、気のせいかしらそうかしら……?

『丁度良かった』
茶葉屋の店主さん、言いました。
『ちょっとこの子と一緒に、お散歩に行ってきてくださらない?』
報酬は555円税込みの、5産地から選べる飲み比べお試しティーバッグセットだそうです。


――「おい、子狐、こぎつね!」
ぴょんぴょんぴょん、ぴょんぴょんぴょん!
コンコン子狐、リードをぐいぐい引っ張って、藤森をリードして、人間がいっぱい居る場所探して全速力。
飛んでいく勢いの子狐が、風をきるたび地を跳ねるたび、ふわり、ゆずの香りが周囲に咲きます。
きっと、ハーネスとリードに香り袋か何かで、細工が施されているのでしょう。
わぁ。宣伝上手、商売上手。
だって季節モノのゆず茶の在庫が残りわずか。

「そろそろ止まれ、休憩しよう!」
この藤森、日頃運動なんてしない頭脳派なもので、長距離走など冗談ではありません。
息が上がって、最高気温一桁の空気が、ダイレクトに肺に入ります。マーシレスに肺を冷やします。
子狐コンコン、足を止めてしまった藤森を、振り返って、見上げて、すごく不思議そうです。
だって子狐は疲れてないのです。まだまだ、へっちゃらなのです。

首を傾けて、反対方向にも傾けて、『おとくいさんは、一体全体どうしたのかしら』。
ゆずの香を振りまく子狐は、藤森をじっと観察して、別におやつを持ってる風でも、それを子狐にくれる風でもなかったので、
くるり。 全速力の突撃を、再開しました。

「止まれと、言っているだろう!」
ぴょんぴょんぴょん、ぴょんぴょんぴょん!
コンコン子狐のゆずの香りと、それに引っ張られる藤森の懇願が、最低気温0℃な冷え込みの某自然公園に溶けてゆきます。
「こぎつね!」
悲鳴と香りが、良い具合に宣伝効果になったか、
その日で稲荷神社近くの茶葉屋の、冬至限定品のゆず茶は、無事すべての在庫を捌き終えましたとさ。
おしまい、おしまい。

12/23/2023, 5:51:35 AM

冬至の夜
我が家では柚子を入れて柚子湯にするのが慣わしだった。
ゆずの匂いが充満し、冷えた体を芯から温める。
それだけではなく、いつもと違う浮かんでいるたくさんの柚子が、私はとても楽しみだった。
実家から出た今、わざわざ柚子を入れる暇もなく忙しなく過ごしていたので忘れていた。
今日くらいは、ゆっくりしようかな。

12/23/2023, 5:38:42 AM

何処からともなく柚子の香りが漂う夕刻
駅前の古びた商店街は、全盛期にこそ劣るものの現代では珍しい程活気ついている。

今日は仕事でミスをしてしまった同僚のフォローに追われ昼終わりのシフトだったのがこの時間だ。辺りはすっかり陽が落ちている。まだ午後5時を過ぎた所だと言うのに街頭が無ければ真っ暗だろう。

都会から少し外れただけで、田舎と言うほど田舎でも無い、古き良きが残るこの町が私は気に入っていた。
駅を出て、商店街のアーケードを通りながら、今日はお惣菜でも買って夕食にしようと決めた。
定食屋から漂う良い匂いに釣られてしまいそうだが、今日は消費しなければならない作り置きがある。メインのおかずだけ買って、冷凍してある白米を温めて食べよう。流石に疲れたので、何もしたくない。

それにしても今日は随分と良い匂いがする。柑橘の香り…この香り知っているが、パッと頭に出てこない。なんだったか。
疲れたせいか頭が回らず、いつもならすぐ出てきそうなこの香りの正解を探しながら、行きつけの肉屋へ立ち寄った。
ここのコロッケが好きでよく買いにくる。今日はガッツリメンチカツも悪くない。さてどうするか。
目に入ったのは柚子入りコロッケ。あ。と頭の中で繋がった。

「それは今日だけの特別商品柚子コロッケだよ。サッパリして美味いから1つどうだい?」

奥から出てきた店の息子が私に言った。時期店長の跡取り息子だ。私が通うからよくおまけをつけてくれる有り難い存在。

「今日だけ?」
「そう。今日だけ。ほら、今日は冬至だろ?だからってんで、母さんに言われて。あとカボチャコロッケもおすすめ、今日は冬至だからってみんな食べるんだ。残り2つ、それで最後だからどっちも買ってかないか?」

そうか。今日は冬至だった。すっかり忘れていた。
町に漂うこの香りは、柚子の香りなんだ。
商店街の上の階は住宅の家が多い。何処もこの時間柚子風呂に入っている。思えば商店街で黄色い物を沢山見かけた気がすした。あれも柚子だったんだ。

「じゃあ、かぼちゃコロッケ2つと柚子コロッケ1つ」
「あいよ。少々お待ちを」

息子は紙袋にコロッケを詰め、お金を受け取ると裏に引っ込み再び出てきた。手にはビニール袋を下げている。

「はい。じゃあこれコロッケと、柚子のお裾分け。あとこれはオマケ。揚げたてコロッケ。火傷しないように」
「わっ、沢山……。ありがとう」
「まいど、気を付けて帰るんだぞ〜」

手から伝わる熱々のコロッケの熱が優しさをじんわりと広げていく様に。噛み締めながら頬張った。

「あっつ」

ザクザクの衣と中のホクホクしたジャガイモの食感を楽しみながら、家路につく。
この歳になって食べ歩きながらの帰宅。青春時代に戻ったようだ。
そして、それを違和感なく出来るこの商店街の雰囲気が好き。町では誰かが食べ歩きをし、店先では井戸端会議が開かれ、ベンチで帰宅前の腹ごしらえをする学生が居る日常。

それを微笑ましく眺めながら、商店街を抜けて路地を曲がった所にある小さなアパートに帰ってきた。

買ってきた物を台所に置き、湯船を溜める。
夕食の支度をし、作り置きのおかずとコロッケを堪能してから、風呂へといった。

湯船に入るのは久しぶりだ。いつもシャワーで済ませてしまうから。
年末前にと早めに行った風呂掃除がこんなタイミングで役立つとは思っていなかったが、溜まった湯船にお裾分けの柚子を浮かべた。
先に身体を洗う。温まった柚子が次第に香りを放ち、風呂場は柚子の良い匂いで充満した。

ゆっくりと足から入浴し、肩まで浸かるとじんわり身体が温まっていく。オマケのコロッケを食べていた時と同じだ。
優しさに包まれて身体に染み渡る感覚。久しぶりにゆっくりと入浴した。

今日は特別だ。残業して頑張った自分へのご褒美。
同僚のミスだって、みんなでカバーしたからどうにか出来たんだ。それで良かった。私もそれに文句は無いし、みんなも文句は言ってない。誰かに優しく出来た。誰かに優して貰えた。今日はその優しさを噛み締める日。そんな事を思いながら、柚子の香りを全身に纏う。

こんな日もたまには悪くない。

#柚子の香り

12/23/2023, 5:38:00 AM

『ゆずの香り』

冬至の柚子湯に使った柚子…捨てるのもったいないよね。まだいい香りするもん。役目が終わったらそこで終わりなんて悲しすぎるもん。突然の解雇。その時浮かんだのは子供の頃の記憶だった。

12/23/2023, 5:30:12 AM

聞きなれた
ベルの音は

もう
あの日から

一度も
鳴ることはなく



名を呼ぶ勇気は
お互い

とうに力尽きて



もう
同じ夢は
二度と

思い描かない



それだけが


哀しく響く確信




「ベルの音」

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