名無しの夜

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ゆずの香り、かぁ。
やっぱりゆず湯の印象強いなー。


自分達をパパママと呼び合ってた頃。
我が家でも、ゆず湯やりました。

パパが、
「ばーちゃんから貰った。『おっこってた物だけど』って」
と持ってきた、どでかいゆずで。


……ゆずはゴルフボールくらいだと私は思っていたけれど、テニスボール大の大きさが一般的なのか、そういえば考えたことなかったわ。


『落ちてた』に引っかかりを感じつつも、収穫するものじゃないし、の言葉になるほど? と首を傾げつつ。

よーく洗って、なぜだかキッチン排水口用のネット(新品です使ってません)に入れてお風呂に浮かべた。


——何でこの時、ネットに入れたのかな。
多分、第六感。

記憶は、あった。

祖父母宅の近くにあった銭湯で、ゆず湯やっているから行っておいでと、祖父とともに行った時。

お風呂にプカプカ浮いているゆずが可愛くて、いつもより長湯しちゃったなあ。

祖父は広い脱衣所で近所の人と囲碁しながら待っててくれた。

番頭のおばあちゃんが、「お孫さん出てきたよ」と声をかけてくれて一緒に帰った。

「ゆず、可愛かったね」
と祖父に言ったら、
「そうかー。こっちはネットに入ってたからなあ。風情も何もねぇわ」
とボヤいていた。

「え、そうなの? なんで?」
「知らん」


……別に、これを思い出した訳じゃないのだけれど。

何でネットに入れたのかなー。


ちょうど息子も帰ってきて。
(パパは出張帰り、早目帰還だからパパ祖母宅に寄ってきていた)
二人で一緒にお風呂入ってきちゃいなよ、と声かけた。

小学生高学年の息子は最初こそ渋ってたけれど。

今日はみんな揃ってご飯にするから、さっさとお風呂済ませた方が早くご飯食べられるよ、と言ったら即座にバスルームへ向かってくれた。


さて、こちらはご飯の準備だ。忙しい。

頂いた白菜なんかも下処理しないと、と玄関口へ赴く。

バスルームから、父子の笑い声含んだ会話がうっすら聞こえて、なんか微笑んじゃう。


「ぐあー! 俺、五秒!」
「ワッハッハ、まだ甘いな! オラァ!!」
「ぶはっ! 秒じゃん!!」


背筋にゾワッと悪寒が走り、一瞬ですべてが繋がりました。

私はスリッパ放り出す勢いでバスルームへ駆け込み、扉を開け放って怒鳴った。


「潰してんじゃねええええ!!
 誰が掃除すると思ってんだあああ!!!」



……本当にフザケンナでありますよ。
何で潰すのでしょうねえ、あの脳筋族は。


ほのかに香るゆず湯は良いけれど、ゆず果汁風呂に入りたい人っています?
私はゴメンです、えぇ絶対!



そんな日々も遠い昔。

自分のために、たまにはゆず湯、しましょうかね。

あ——ゆずも、買わなきゃいけないのか。

ふむ。
あひる隊長で、いっか!

12/23/2023, 6:41:16 AM