『やわらかな光』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
赤ちゃんはやわらかな光に
包まれているというが
本当かもしれない
初めての子のお宮参りは
ずっと昔 シャッターを切って
現像して写真にしてもらう時代
出来上がった写真には
義母と子を抱いた私の後ろから
虹色の淡い光
光が子のまわりを包む
旧型のカメラが限界だったか
それとも
久しぶりのお宮参り客を
誰かがおもしろがって見ていたか
時折見られる、薄い雲の後ろに隠れた月が好きだ。普段よりも更にやわらかい光を放ち、その前を雲がゆっくりと形を変えながら流れてゆく、ずっと見ていても飽きない月だ。
ーやわらかな光ー
ハロウィンには
かぼちゃのランタンの
光がぼんやりと漂うが、
元々は
かぶだったらしい。
真っ白よりも、
オレンジ色の方が
暖かさを感じるような気がする。
本来は魔除けのためだろうが
私は街角にかぼちゃのランタンを
見つけると
迷子の子が母親を見つけた時のような
ほっとしたあたたかい気分になる。
まぁ、でも私の家はマンションだから
かぼちゃのランタンの代わりに
母の作ったかぼちゃのスープが
心まであたためてくれよう。
「やわらかな光」良いですよね。まず語感がいい。誰も傷つけなさそうな言葉。光の感触がやわらかいなら、温度は絶対に「あたたかい」だと思う。「熱い」なわけが無い。熱いならその感触は「鋭い」だろう。
自論はこれくらいにして、春の日差しはまさに「やわらかな光」だと思う(最近は夏が前のめりになって春でさえも陽の光は柔らかくないですが、今回は一般的な春の話)。ぽかぽか陽気と称されるのも当然で、適度にあたたかい陽の光が木々の間をくぐり、木漏れ日になって私たちに差し込んでくる。これ以上の贅沢があろうか。冬の間に積もった雪が解け、日向が暖かくなったと感じ、外に出て太陽から降り注がれるやわらかな光に目を細めて、私はようやく春が来たと感じる。
やわらかな光
写真家は負けたと思った、何人もの女をファインダー越しに見つめる、やわらかな光につつまれる彼女たちが無垢なベールから妖艶な肌を輝かせて世に出るそれを導き探り創り出す巨匠老写真家は、その少女のはにかんだ笑顔で真っ直ぐな瞳で、その眼差しを目が合った
恥ずかしさに少し外す一瞬を覗き込んだようにシャッターを切り、少女は驚いたように唇に手を当てて恥じらいで、それでも他の誰にも見せることがないだろう、はじめての秘密のような笑顔を向けているのだ、巨匠老写真はため息を深くつき、自分の長いキャリアを越える若い彼女の為だけの巨匠写真家に負けたと思ったのだ
少女のやわらかな光につつまれ、はにかんだようななんとも例えようのない初々しい青春の一瞬を覗き込むようにとらえた写真家は少女の彼だった、この写真はプロには撮れないと巨匠写真家は呟いた、素人には素人にしか写し得ない一瞬があり切り取れない表現出来ない一コマがあると言うことだ、けれどそれを何時でも満遍なく小出しに尽きぬ泉に湧く湧き水のように出し続ける事が計算で出来るのがプロである、プロを甘く見てはいけないし、素人を侮ってもいけないという事なのだ老人は教えてくれた。
やわらかな光につつまれて
踊るように笑う君の鈴の音のような笑い声
やわらかな光につつまれて
風を纏い走る君はキラキラ輝いて眩し
ファインダーを覗く僕は
君の光につつまれた君を瞬きもせず
シャッターを切り続けた高鳴る鼓動
輝く君は呆れるほどチャーミング
僕はこの情熱を震える指に込めるよ
僕の気持ち受け取って太陽もおそれいる君
出会ったのは互いに14輝きはじめる前の君
僕だけは知っている臆病なはにかみ屋さん
15の夜は二人で弾けた跳ねる盛の君の躍動感
僕の胸に届く熱い鼓動二人で迎えたやわらかな光の朝
花盛りの16、17君に差すやわらかな光
より輝きながら大人への扉をあける艷やかな白き腕 指先
君の気持ち掴もうとくるくる舞う僕の真夏
君といればいつだって熱い夏 雨雲も逃げて
光差す空さ
もしや 弾けて君のやわらかな光を見つけて
追いかけて掴んで掴まれて18エイティーン
輝きます君と
そんなド素人だけど、彼女への愛だけは誰にも負けない彼が向けたファインダーに応える彼女のプロには写し得ないやわらかな光を彼女は信じて微笑むから、今その一瞬、彼は巨匠写真家を凌ぐ写真家になり、彼女はピカピカのモデルになり得るのだ。
令和6年10月16日
心幸
あーあ。
朝起きたら、眩しいんだね。
当たり前か。
なんで私の瞳には鋭い光しか写せないんだろう。
やわらかな光が今は欲しいのに。
カーテンの隙間から、やわらかな光が差し込む。
世界が終わっても、いつも通りの朝は来る。
…いや、この営みが続いているうちは、世界は存続していることになるのかな。
いずれにせよ、のどかな朝だ。
鳥のさえずりさえ聞こえないけれど。
20XX年。地球は滅亡の一途を辿る。
原因は世界規模のパンデミック。
コロナの比じゃなかった。
人類はその数を減らし、文明はみるみるうちに廃れてゆく。
都内の電車は動きを止め、オフィス街からはスーツ姿が消えていった。
スクランブル交差点を野良犬が群れをなして、我が物顔に渡ってゆく。
カーテンを開けると、暖かくやわらかな光がこの身を包んだ。
生きている。その実感が湧いてくる。
窓の外には、眼下に広がる人気の消えた街。
こんな感じで世界が黄昏てゆくが、生き残った人達はそこかしこにいて、かろうじて繋がっているライフラインを希望に、日々を生き長らえている。
君からのLINE電話。
「どーしてる?」
「どーもしてないよ。日なたぼっこかな」
「もーしょーがないよね。やることないもんね」
「今日、配給があるみたいだよ。そっちはどう?」
「うちの方は昨日あった。なかなか豪華だったよ」
「ホントに?お腹空いてさ。コンビニ漁りに行こうかと思ってたところ」
「やめた方がいいよ。感染源が疑われてるらしいから」
コンビニのおにぎりが感染源だと騒がれたのも今は昔。
お店は営業をやめ、野良犬や不届き者が根こそぎ商品を奪っていって、ほとんど何も残されてはいない。
それでも、バックルームには未だ商品ストックがあるんじゃないかと淡い期待を抱いている。
まあ、配給が貰えるんなら、泥棒の真似事をする必要もないか。
出来ることなら、こんな世界に生きても、清廉潔白でいたい。
「明日、遊びに行ってもいいかな?」
「いいよ。何のお構いも出来ませんけど」
「君がいればいいよ。他には何もいらない」
「あれ?ずいぶんくすぐったいこと言ってくるね」
「そっちの配給、豪華なんだろ?僕もそっちに住もうかな」
「もしかしたら、そっちの方が豪華かもよ。そしたら、私がそっちに行こうかな。高台に住むの、憧れだったんだよね」
「いつでもどうぞ。妹が使ってた部屋、空いてるから」
「…妹さんの代わりにはなれないけどね」
ツライ出来事もあったけど、今日の空気は温かい。
僕たちはこの世界で、今までと違う人生を送ることになるだろう。
すべてをやり直して、新しい世界を築いてゆく。
君となら出来る気がするんだ。
やわらかな光に包まれたこの部屋に、君を招き入れることから始めよう。
『やわらかな光』
鼻に抜けるこの香りを、私は知っている。
唯一知っている花の香り。
刺すようだったあの光は、
緩やかに変化していたみたいだ。
どことなく、
太陽が優しくなったように感じる。
いつも煩く鳴いていた蝉の音を、
私はもう思い出せない。
隣で目を擦っている君は、
瞳が潤んで、瞼が少し赤い。
季節の変わり目を、
私たちは知っているようで知らない。
朝、光が差した。
手を握りしめた。
生きている感覚がした。
秋の気配がする。
底冷えの朝六時。
まだ少し早いかな。
いや、起きてしまおう。
小さなテーブルに食パンを並べて
今朝の夢を
紅茶にとかして飲み込んだ。
かけたままの風鈴が
夏の記憶を悼んでいる。
八月のままのカレンダーを
ぼうっと遠目に見つめながら
今日という日を夢想した。
カーテンを透過した木漏れ日が
僕の右手を往復する。
やわらかな光が、あたたかい。
(やわらかな光)
: やわらかな光
やわらかな光が肌に溶ける
ふと顔をあげると
朝の日が色を連れて覗いている
ピンクの秋桜が色を重ね
淡い艶を儚げに纏い
にっこりと微笑んでいる
やさしい風に揺らぐ細い体
愛おしそうに絡み合い
変わる朝の色味を眺めている
あの人はどうしているだろうか…
やわらかな光が風に溶け
私の心をするりとすり抜けた
桜月夜
お金と時間をかけて見ようとした景色より、徹夜明けのシャワーで浴びる、やわらかな光が一番美しく見える
【やわらかな光】
樹冠から届く光
雲間から届く光
やわらかくあたたかい
その光を浴びながら猫のように丸まって包まれたい
ふと、町で周りを見渡すと小さい画面にみんな夢中なんだ。
でも空を見上げれば あたたかいひかり 青色の空が私を包み込む
何で空はこんなにも青くて綺麗なのに
そんなに小さい画面に夢中なのだろう
見上げれば もっと大きくて 綺麗で あたたかい
そんな空が広がっているのに
みんな小さい画面ばっかりだ。
どうか損はしないでね。
やわらかな光
食卓を家族で囲む場所を照らしている
やわらかな光
中学校は辛かった。もともとコミ障なのは分かっていたが、友達もできず朝から誰とも話さない日なんてざらだった。だんだん僕の存在はクラスから消え、挨拶さえ返してもらうことはなくなっていた。僕は本当に存在しているのか、自分自身でも分からなくなってしまった。
学校に行かな日が増え、自分の部屋に引きこもり始めた頃、突然僕の部屋を叩く音がした。誰だろう。
でも、僕にとっては誰で関係ない。僕の存在を消すなら消せばいい。僕は本当に消えてもいいのだから。
コンコン。
「こんばんわ。私は北海道で牧場を経営している松田と言います。突然すみません。私の甥はあなたのクラスの松田啓人です。啓人からあなたのことを聞いて来ました。また来ますね。」
松田啓人。誰だっけ。でも何でその人の叔父さんが来たのかな。でも僕に関係ないこと。
コンコン。
「こんばんわ。松田です。僕の牧場では牛を50匹と羊30匹を飼っています。みんな手がかかりますが、どの子も可愛いですよ。でも、その子たちを私は出荷して生計を立ててます。またお話ししましょう。」
コンコン
「こんばんわ。松田です。寒くなってきましたね。北海道の冬はもっともっと寒いですよ。牧場で牛たちが私を待っているので
帰ることにしました。」
「あなたも行きませんか。空港で待っています。持ち物なんていりませんよ。全部手放して来て下さい。大丈夫。待っています。私も牛も羊もあなたを待っています。」
僕を待っている人がいる。
僕を必要としてくれる人が動物がいる。
僕を認めてくれるならここから出たい。
新たな自分になるために全てを手放しても構わない。
やわらかな光を浴びて、飛行機に乗る僕は生きるための一歩を踏み出す。
「やわらかな光」
私は見てしまった、
君はあの時、 一瞬 かすかに光って見えた。
私は、落ちてしまった...
すっかり迷ってしまった。
私は、柔らかい水蒸気の塊に触られている手をじっと見つめた。
やわらかい光が、私を包んでいる。
先の道も後の道も、やわらかい光にすっかり隠されている。
霧が立ち込めているのだ。
太陽のやわらかい光が霧の水蒸気に乱反射して、辺りはすっかり、クリーム色のやわらかい光に隠されている。
空気が冷たい。
一帯はしんと静まり返っている。
とりあえずで一歩踏み出す。
肩に触れていた霧が、後ろへ流れていく。
前方のアスファルトの道路が、一瞬開けて、また霧の中へ隠れる。
こんな状態で人を探すなんて、とても無理だ。
切実にそう思う。
だいたい、帰り道さえ見つけられないこの霧の中で一体どうやって探せと言うのだ。
バカなことだと、自分でも分かっている。
でも、諦めきれなかった。
私はどうしても、あの人を見つけて帰りたい。
それがどんなに困難でも。
それは私の意地だった。執念だった。
あの人が行方不明になってから一ヶ月が経った。
不思議な人だった。
優しくて、厳しくて、いつも嘯いていて。
根は、正義感が強くてまっすぐな癖に、言動は偽悪的で、戯けていて。
軟派で物腰は柔らかいのに、どこか頑なで芯は頑固で。
忖度や特別な関係などどこ吹く風で、誰にでも分け隔てなく、おんなじそっけない対応を貫いていた。
「どうでもいい」が口癖の、不器用な人だった。
冷たい空気を少しだけ深く吸い込んで、あの人を呼んでみる。
「先生?」
私の声は、冷たい霧の中にゆっくりと霧散していった。
辺りはまた、しんと静まり返る。
「先生!」
ちょっと高めに上げた声も、やわらかい光を纏った霧に抱きすくめ、埋られていく。
先生は、霧に似ていた。
ひたすらに、光も風も声も音も、みんな吸収していく霧を見て、私は思った。
人当たりもやわらかだけど、そのやわらかさは優しさではなくて。
儚げなのに頑固でなかなか消えようとはしなくて。
肝心なことは何一つ見せてくれなくて。
やわらかな光のような、そんな人だった。
霧は相変わらず、やわらかな光を抱いて、私の周りを包み込んでいる。
光も霧も何も答えてくれない。
ただ、周りのものを水蒸気の塊の中に埋めて、沈黙を守っている。
私は先生を探す。
このやわらかい光の中から。
だって、あの人はこの光に似ている。
ここに隠れるくらいできるだろうし。
「先生」
私は呟く。
やわらかな光が私を包んでいる。
一歩を踏み出す。
霧がゆっくりと後ろに流れていく。
やわらかな光は、何も変わらずに、沈黙を守って、私を見つめていた。
涙の影に光を落とす
まぶしいね
新しいね
叶わぬ想いは届かぬまま
寂しいね
哀しいね
窓辺に置いた花が揺れた
愛とは何かわかるかい?
Iとは何か知ってるかい?
あなたの光がもし陰るならば
ぼくはもう少し生きていたいんだ
生きてみたいんだ
やわらかな光。
それは貴方の笑顔を見た時、
私の心に照らされる光。
この真っ暗な世界に希望を与えてくれる
貴方の弾けた笑顔の光。
今日も貴方からもらった大切な宝物を
そっと胸の中にしまう。
私だけが見られるように。
忘れてしまわぬように。
『いつか、貴方の笑顔が私に向けられたらいいのに』
そう思いながら今日も貴方に恋をする。
柔らかな光が彼女の目に宿っていた。正真正銘、母の目。
これまで見てきた中で1番柔らかな目をしていた。
僕はこの人とは一緒にいてはいけないと思った。
なぜかって?
生に希望を持つ柔らかな目を持つ彼女と、死に希望をもつ僕とでは違うから。
彼女が羨ましかった。
柔らかな光なんて、もうどこにしまっておいたかも忘れてしまったから。