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やわらかな光

写真家は負けたと思った、何人もの女をファインダー越しに見つめる、やわらかな光につつまれる彼女たちが無垢なベールから妖艶な肌を輝かせて世に出るそれを導き探り創り出す巨匠老写真家は、その少女のはにかんだ笑顔で真っ直ぐな瞳で、その眼差しを目が合った
恥ずかしさに少し外す一瞬を覗き込んだようにシャッターを切り、少女は驚いたように唇に手を当てて恥じらいで、それでも他の誰にも見せることがないだろう、はじめての秘密のような笑顔を向けているのだ、巨匠老写真はため息を深くつき、自分の長いキャリアを越える若い彼女の為だけの巨匠写真家に負けたと思ったのだ
少女のやわらかな光につつまれ、はにかんだようななんとも例えようのない初々しい青春の一瞬を覗き込むようにとらえた写真家は少女の彼だった、この写真はプロには撮れないと巨匠写真家は呟いた、素人には素人にしか写し得ない一瞬があり切り取れない表現出来ない一コマがあると言うことだ、けれどそれを何時でも満遍なく小出しに尽きぬ泉に湧く湧き水のように出し続ける事が計算で出来るのがプロである、プロを甘く見てはいけないし、素人を侮ってもいけないという事なのだ老人は教えてくれた。

やわらかな光につつまれて
踊るように笑う君の鈴の音のような笑い声

やわらかな光につつまれて
風を纏い走る君はキラキラ輝いて眩し

ファインダーを覗く僕は
君の光につつまれた君を瞬きもせず

シャッターを切り続けた高鳴る鼓動
輝く君は呆れるほどチャーミング

僕はこの情熱を震える指に込めるよ
僕の気持ち受け取って太陽もおそれいる君

出会ったのは互いに14輝きはじめる前の君
僕だけは知っている臆病なはにかみ屋さん

15の夜は二人で弾けた跳ねる盛の君の躍動感
僕の胸に届く熱い鼓動二人で迎えたやわらかな光の朝

花盛りの16、17君に差すやわらかな光
より輝きながら大人への扉をあける艷やかな白き腕 指先

君の気持ち掴もうとくるくる舞う僕の真夏
君といればいつだって熱い夏 雨雲も逃げて
光差す空さ

もしや 弾けて君のやわらかな光を見つけて
追いかけて掴んで掴まれて18エイティーン
輝きます君と


そんなド素人だけど、彼女への愛だけは誰にも負けない彼が向けたファインダーに応える彼女のプロには写し得ないやわらかな光を彼女は信じて微笑むから、今その一瞬、彼は巨匠写真家を凌ぐ写真家になり、彼女はピカピカのモデルになり得るのだ。


令和6年10月16日

                心幸 

10/16/2024, 1:35:16 PM