NoName

Open App
3/15/2026, 10:34:52 AM

星が溢れる

春の闇 星が溢れる 夜明け前

           春咲 小梅 

3/15/2026, 4:01:46 AM

「安らかな瞳」

あとは死ぬだけ
死ねないから生きている
死ぬために生きている
必死で…。

広美は空を見上げて
声にならない心の声を呟いた。

その言の葉がスーッと春まだ浅い仄かに温い空気の中に吸い込まれ白く空に昇って行った。

弥生三月春彼岸。

見渡す限り雲ひとつない

碧色の広く美しい空に白い飛行機雲が渡った。

「空が裂けるようだ…」今度は声に出して呟いた。

すると、その切り裂かれた碧色の空と白い飛行機雲の白い線が垂れて一本の雲の糸のように
広美の目前に広がった。

少し氷に触れるような冷ややかさを感じる風に揺れる白い雲の糸。何処からともなく声が聞こえた。

汚れちまった 悲しみに 
今日も小雪の 降りかかる

汚れちまった 悲しみに
今日も風さえ 吹き過ぎる

汚れちまった 悲しみは
たとえば 狐の革裘

汚れちまった 悲しみは
小雪のかかって縮こまる

汚れちまった 悲しみは
なにのぞむなく ねがふなく

汚れちまった 悲しみは
倦怠のうちに死を夢む

汚れちまった 悲しみに
いたいたしくも 怖気づき

汚れちまった 悲しみに
なすところもなく 日は暮れる

          山羊の詩 中原中也

はっと、目が覚めたように我に返る

温かな午後の日差しが、その部屋に伸びていた。

古本屋の裏にある書庫。

広美が育った海辺の街の古い古い監視塔その脇の辻から商店街に続く路にその店はあった。

昔は薬屋を営んでいたそうで、何代か前の主人の道楽で古書店も始め、今じゃあ集めた古書は
石蔵の書庫に眠っている。

そこは、広美の母方の実家であった。

広美は物心ついた頃からこの書庫にある古い本を絵本代わりに育った。

その中の一冊の中に挟まっていた便箋に認められていた詩が中原中也という歌人の有名な詩だと知ったのは、それから後のこと。

十四歳になる春彼岸。
白日夢のような思春期の霧がかかった世界にいる広美には空から降った白い雲の糸のような詩であった。

便箋には二枚目があり

こう綴られていた。

僕は、明日大刀洗陸軍飛行学校知覧分教所に向かいます。

ただ倦怠のような僕の人生が、後にこの忘れ去られた手紙を読む誰かに届きますように。

僕は、そのために逝きます。

安穏とした春彼岸の碧色の空を切り裂いた飛行機雲その後にぶら下がる白く輝く雲の糸は電光石火広美を撃ち抜いた。

胸に抱きしめた便箋
石蔵の小窓から外を見つめる、穏やかな瀬戸内の凪の浜辺にある丸いテトラポットに生える苔を広美は見つめ続けた。


いつかの海神たちの
傷ついて剥がれた鱗がつもり深い碧色に輝いて見えた。

広美は白日夢の扉を自分の手で開けた。


ちょっと、梶井基次郎の「檸檬」にインスパイアされてます(笑) 


            碧色 曽良


















12/19/2025, 7:42:56 AM

心の片隅で 〜ショート・ショート〜

「クリスマスの贈り物は、奇妙な果実」

熱心に祈る母に
クリスマスの日司祭が言った
今夜8時になれば貴女の願い事が叶うと

それから彼女は夢を見た、その夜玄関のベルが鳴り、赤いリボンが掛けられた一本の木の鉢植えが届く。

配達人は何故か喪服姿で、彼女にこう告げた

「おめでとう御座います。明日朝この木に実る果実をもぎ取り息子さんの待つ病院へお行き下さい、息子さんは助かります」

そう、もう長い間、彼女の息子は心臓を病んで
彼女は夫とは離婚、そして今は息子の治療費を稼ぐ為に昼夜働きあらゆる媒体に泣き縋っても足りずに体を売っている。医者からはもう心臓移植しか助かる手立てはないと宣告され、彼女は人に頭を下げ身を任せ金策に奔走し、スポンサーとなってくれる情け深い金持ちの男の情婦となり心臓移植ドナー待ちに息子の名を連ねた。最後の最後は神頼みでこうして、この一年は教会で祈りを捧げているのだった。

「一日も早く、息子に合う心臓が見つかりますように」

そうして、彼女は夢を見たクリスマスイブの夜
玄関のベルは鳴り喪服の男に手渡された一本の木の鉢植え🪴 

翌朝見るとその木には喪服の男が言う通り奇妙な果実が実った。

赤い彼女の拳ほどの果実はどくどくと脈打ち
葉には血が滴り落ちて根を緋黒く染める。
幹は風に揺れる黒い躯のようで、垂れ下がったような奇妙な果実が実をつけた。

彼女は、一瞬でそれが何かを理解し、やおら鋸を手に返り血を浴びながらその贈られた聖夜の贈り物に実った奇妙な果実をもぎ取った…ところでけたたましい電話のベルで目を覚ます。

「夢か…」彼女は眠気を抑え電話に出た。

「〇〇大学病院心臓外科です、お探しの息子さんに適合すると思われる心臓が見つかりました、直ぐ病院にお越しください」

彼女の心臓は早鐘をうつように逸る。心を抑えながら病院へと向かった。


息子に、その心臓は移植され、拒絶反応もなく1週間近くが過ぎた。彼女はシルウェステルの祝いに教会を訪れ、夢の話と息子の心臓移植の奇妙な話をした。

司祭は言った。

何方かが召されたという刹那のお話ですね。
貴女の熱心な願いが、2055年に届いたようです。2055年の犯罪者で過去に幽閉された罪人囚人番号045番の心臓が貴女の息子さんに贈られました。その心臓の持ち主は貴女のお孫さんつまり貴女の息子さんの息子さんにあたり非常に貴女の息子さんの躯に適合すると判断されました。

「えっ?なに?なんのこと?何を仰っているのか意味がよく…」と言う彼女に司祭は続けた。

「貴女が、あまりに熱心に息子さんの心臓を望まれたので、私は貴女の愛人〇〇氏に商談を持ちかけました。未来に溢れた囚人を現代に引き受け臓器牧場を作っている。もし未来の罪人の中に血の繋がる者が居れば適合率は数弾上がりますしね、彼は快諾してくれましたよ、そして、おめでとうございます、貴女のお孫さんは罪を犯しこの臓器牧場に落とされ、貴女の息子さんにピッタリの唯一無二の心臓が見つかったのです、神のご加護に感謝下さい」

彼女の顔は見る見る青ざめ、血の気は失せ
紫色の唇をキュッと噛み締め合わせた手はわなわなと震えていた。

しかし、彼女はその慟哭の中、まだ見ぬ会ったことも無い息子の息子よりも消えかけた息子の命が蘇ったことを喜ぶべきか?そもそも、息子が亡くなれば息子の息子も存在しないのだから、所詮未来で犯罪を犯し過去に幽閉される孫。臓器牧場に来るまでの孫の人生はもう出来上がっていると言うことなのだから、愛する我が子の心臓が見つかったことは喜ぶべきことなのだと考えた。

彼女は夕べ見た奇妙な果実🫀の夢を思い出しながら、この罪を生涯他言せず心の片隅に置き背負うと誓って祈りを捧げた。



             葦野 風 


              







9/18/2025, 11:23:54 AM

もしも世界が終わるなら?

なんか、そんなドラマあったね(笑)


碧海 曽良 ロング・バケーション🌬️

そんなドラマもあったね🍃

9/3/2025, 12:24:54 PM

Secret Love

Next