九至 さら

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『やわらかな光』


鼻に抜けるこの香りを、私は知っている。

唯一知っている花の香り。

刺すようだったあの光は、
緩やかに変化していたみたいだ。
どことなく、
太陽が優しくなったように感じる。

いつも煩く鳴いていた蝉の音を、
私はもう思い出せない。

隣で目を擦っている君は、
瞳が潤んで、瞼が少し赤い。

季節の変わり目を、
私たちは知っているようで知らない。

10/16/2024, 1:32:24 PM