『また会いましょう』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
別れのあいさつが嫌いなあなたへ贈るのはこの言葉。
毎年言ってるけど、そうね、来年はいないかもしれないけど、やっぱり同じ言葉にしておきましょうか。
幾星霜分の愛しさと恋しさを込めて、冷たい石の下のあなたへ。
「また会いましょう」
今度はきっと、空の向こう側で。
「あの、私、死んだんですか」
「さあ」
「何ですかさあって」
「私にも分かりません」
何だこの糸目の男。この列車の車掌を名乗った上に制服まで着ているようだけど、どうも胡散臭い。
「何ですかそれ」
「まあ、そうかっかしないで。窓の外の星でも見ていてください」
「星で機嫌が取れるとでも?」
「ええ。お好きでしょうから」
そうこうしている間に列車は終点まで来てしまった。この胡散臭い男と話をしていたせいで時間が短かったように感じる。
「それでは、またお会いしましょう」
見上げればネイビーブルーの空に星が瞬いている。男はどこか懐かしいような笑みを浮かべると、そのまま制服のマントを翻し消えてしまった。
「誰だったっけ、あの人」
私はいつも、思い出せないままだ。
お題:また会いましょう
また会いましょう。
明日か、その先か、未来かで。
風の吹く雪山で。
蛇口をひねった水道の前で。
蜃気楼を隔てた向こう側で。
すれ違う列車の間で。
また。
また会いましょう
また会えると、心の何処かでそう思えると、
少しは寂しさを紛らわせるのかな。
「私たち、どうも今世では一緒になれないようね。」「え?」
「結婚するの。私。」
いつものお茶会のはずだった。
「えっ……と、」
「だからこうして会えるのも今日で最期。ごめんなさい、急に決まったことなの。」
「急にも程があるよ……。」
「仕方ないのよ。」
「……おめでとう……で、いいのかな……」
「ありがとう。」
「その……ど、どなたと……あっ!差し支えなければなんだけど……!」
「誰でしょうね。私が一番知りたいわ。」
「あっ……!ご、ごめん。」
「なぜ謝るの。貴女は何も悪くないでしょう。」
「ご、ごめん……。」
「……どこかの伯爵らしいわ。私より一回り以上、上のね。」
「そっ、か……」
腹の奥がずんと重くなる。あとから冷静になって、これが“絶望”だと知った。
「……今まで良くしてくれてありがとうね。」
私が男に生まれていたら。
「明日から挙式までは屋敷に幽閉されるから。会いに来ても無駄よ。幼い頃からやんちゃしすぎた天罰ね。今更逃げも隠れもしないのに。」
「……優しい人だといいね。素敵な人であること……心から願ってる。」
「……そう。」
「……ごめんこれ以上は無責任なことしか言えない。」
男だったら、今すぐこの娘を奪い去ってしまったのに。
「今世は運がなかったわね。神様も意地悪ですこと。少しくらい、甘やかしてくれてもいいのに。」
「……ほんとだね。」
「貴女も他人事ではなくてよ。遅かれ早かれ縁談はつくのだから。……私の方が早かっただけ。それだけよ。」
生まれ変わったら。
「あ、あのさ!」
生まれ変われたら。
「なに?」
「来世は、ちゃんと奪いに行くから。」
「……馬鹿。」
「え……?」
「今世でもちゃんと奪いに来なさいよ。馬鹿。」
揺れる瞳の奥の底知れない悲しみは、計り知れないほど暗くて、深くて。
いつも強気な彼女が途端に頼りなく映り、今にも消えそうな少女を堪らず抱き留めた。
「ちょっ……!」
「必ず迎えに行くから。ちょっとだけ待ってて。」
「…………本当?」
「うん。だから、生きて。お願い。」
「……うん。」
「元気でね。」
「……えぇ。」
また、会いましょう。
楓の葉が
ひらりひらり
枯れた葉っぱが
さくさく音を立てる
優しい眼差しが
ぽかぽかと温かった
黄昏れの空に
ポツリとつぶやく
「またあいましょう」
「また会いましょう、--さん。それまでお元気でね」
生まれ育った故郷は田舎で、大学が近くには無い。
電車で通えないこともないが、それでも1時間以上はかかる。
だから大学へ進学するにも、就職するにもほとんどの子どもたちが地元から離れることが多い。
中学から地元を出る人は数えるほど少なかったが、実は私もその一人だった。
卒業して旅立つ私に、恩師からその言葉を受け取った。
大変お世話になったことは確かなのだが、無情にも頭の中では、新生活についてワクワクとして期待いっぱいな気持ちで溢れていた。
今思えば、恩師も、親も寂しく感じてたのかもしれない。その一方で、私は地元にも、小中の友達にも未練もあまりなかった。
子どもというのは全く、本当に自分と未来のことしか考えていなかったのだなと今更ながら自分に呆れる。
私もいずれは、旅立つ人を見送る側になるのだろう。その時は必ず、この言葉は伝えようと思う。
また会いましょう。それまでは、あなたも私も元気で過ごしていきましょう。
「もうお別れか……」
「そうだね。」
親友のリイが悲しそうに呟いた。今日はリイがこの町から引っ越して行く日だ。少し前まで、一緒に笑いあって、泣いて、時には喧嘩した。大切な思い出が次から次へと溢れてくる。それと同時に涙がこみ上げてきたが、ぐっと飲みこんだ。
『間もなく、一番のりばに電車が参ります。ご注意ください。』
電車がくるアナウンスが聞こえてきた。そして、電車がホームに入ってきた。
「じゃあ、もう会えないけど、今まで親友でいてくれてありがとう。今日まで楽しかったよ」
「私も。引っ越しても元気にしてね。」
「……うん」
リイが電車に乗り込む。その顔は今にでも泣きそうな顔だった。
「……これからも。」
気づいたらそう呟いていた。リイが驚いた顔でこちらを見てきた。
「これからも、離れていても、もう二度と会えなくても私達は親友だよ!私達の絆はそう簡単に消えないから!」
今まで我慢していた悲しみが一気に爆発した。泣き叫ぶようにリイにこの想いを伝えると、リイも目に涙を浮かべて笑っていた。
「……ありがとう。」
その時、電車の発車する音がなった。電車のドアが閉まる直前。
「また、いつか会おうね。」
小さかったがはっきりとリイの声が聞こえてきた。電車が発車すると同時に私は電車の方を見て叫んでいた。
「いつか会いに行くからー!それまでも、それからも、私達は親友だよー!」
涙を流しながら、電車が見えなくなっても手を振り続けていた。
青空は、春を迎えていた。
題:また会いましょう
昨日の自分にはもう会えない。
明日の自分を理想の自分にする努力をすることはできる。
過去の自分に会いたくなる時がたまにある。
その時の自分はとても小さくて無邪気に笑っていて、
今よりももっとみんなから愛されていたと思うから。、
でももうあの時の私とは会えないから、
また会いましょうって嘘をつく。
この気持ちはなんだろう。
昨日からあの言葉が頭から離れないでいる。
何度も、何度も。
頭の中で、君の声が木霊する。
放課後、屋上。
夕焼けに照らされた世界はどこまでも真っ赤に燃え上がっていて、それでいてとても美しかった。
「あ、飛行機雲」と呟く君は、はるか彼方へ飛んでいく飛行機を指差しながら、その手を銃のように構えるなり撃ち落とす真似をした。
「何それ」
「んー、なんか飛んでるもの見るとさ、撃ち落としたくなるじゃない?」
「いや、ならないと思うけど」
ゆっくりと夕陽が遠くの山の向こうへと落ちていく。
僕は呆れた顔をするフリをして、緊張を腹の底へと無理やり押し込める。
この真っ赤に燃え上がった世界に、まるで僕と君だけが取り残されたような錯覚を覚えたものだから、些か緊張なんかしている。
帰宅部の僕はすることなんてないから、たまに息抜きにここへ来る。そうしたら、珍しく君がやって来たものだから、驚くのと同時にそれがとんでもない幸運を引き寄せたのではないかと思ったんだ。
どうか誰も来ませんように、と神様なんか信じていないくせにこういう時だけ都合よくお願いをする僕は本当に哀れだよな、などと思いつつ。
なんだかご機嫌な様子の君は、今度は僕に手の銃口を向けてきた。
「ねぇ、撃たれるならどこがいい?」
「え?」
「やっぱり頭か心臓かしら?」
「そりゃあ、苦しみたくないし、撃たれるなら急所のほうが……ってなんだよそれ!?そんなもの、人に向けちゃいけません! しまってよ!」
「まじめな奴だなー」
クスクス笑いながら静かに銃口を降ろすと、君は何かを思い付いたかのような顔をして、そのまま持ち上げる。
「私だったら、こうするかな」
自分の頭に向けて、パァン、と呟いた。
多分、日が沈むのと同じくらいの時だったと思う。
君の微笑みが、この燃え上がった世界の中で一際業火のように燃え盛っていた気がしたから。
それはほんとに一瞬のことで、僕の勘違いかもしれないのだけれど。
呆気に取られていた僕は、君を見つめることしかできなかった。
この時何か話せていたら、結末は変わったのだろうか?
「あーあ、終わっちゃったね、夕焼け」
「え、あ、そうだね」
君に見惚れていたのがバレたくなくて、慌ててフェンス越しに校外を見下ろした。
燃え上がっていた世界はあっという間に消え去り、暗い闇がじわりと侵食し始めていた。
「最後に会えたのが、貴方で良かった」
「そ、そうなんだ?」
「うん」
驚いて君の方へ顔を向けると、うーん、と君は両腕を空へと伸ばしながら大きく伸びをした。
すると何か吹っ切れたかのような表情をしたままくるりと向きを変えて歩き出す。
別れの挨拶もなしに行ってしまうのだろうか?
それに先ほどの言葉の意味も気になるし、呼び止めて理由を聞きたかった。
でもそんな勇気はあるはずもなく、見届けることしかできずにいた。
屋上の入り口の扉を開けると、君は静かに振り返って、
「また会いましょう」
と言った。
君の唇が、綺麗に弧を描いていたのがとても印象的だった。
バイバイ!と僕に向かって手を振ると、君は扉の向こうへと消えた。
それに対して、僕は暫く動けずにその場に立ち尽くしたままだった。
次会ったら、聞いてみようかなと思いながら。
けれど、あの日以降、君には会っていない。
君の席には、代わりに花が飾ってある。
今もまだ、君の言葉が何度も僕の頭の中で繰り返されている。
また会おうね。
そう言って別れた相手とはもう随分と会っていない。
数少ない友人達とも、もう何年会ってないのか分からないくらい会っていない。
また会おうね。
そう言って送った猫ともあれから一度も会えてはいない。
夢の中にさえも現れてはくれないので、きっと僕の方がそちらに行くまで会えないんだろうと思い始めた。
また会いましょう。
それは、まぁ、社交辞令だ。
会ったところでどうしていいか分からない相手にかける
さようなら。と同じ意味の言葉だと思えてきた。
会いたい相手なら、会わなきゃいけない相手なら、
言うより先に会っている。
また会いましょう。
また会いましょう。
マタアイマショウ。
また会いましょう。
・・・歌っていたのは誰だっけ?
笑った顔を見るのが好きでした。私と遊ぶとき、楽しそうに笑う顔が好きでした。ご飯をくれるときの、「お手」と言うちょっと真剣な表情も好きでした。お散歩のとき、私に笑いかけてくれるその声が好きでした。あったかいお布団の中で、あなたの腕の中で眠るのが好きでした。いたずらしたとき、呆れた表情をして私が散らかしたものを片付けている背中が、とても優しくて好きでした。仕事で疲れて帰ってきたあなたを少しでも慰めたくてそばに寄り添ったら、あなたは泣きだしてしまった。わたしの首に腕を回して涙を流すあなたを、抱きしめてあげたい、と何度思ったことか。
あなたと共に笑い、泣き、遊び、ときには衝突しながら生きた日々は、わたしにとって宝物でした。
今、わたしの寿命は尽きようとしています。あなたが最後までわたしのそばにいてくれて、本当に嬉しい。
ねえ、泣かないで。わたしは幸せでした。あなたと出会えて、あなたと暮らせて幸せでした。
最後に、あなたの笑顔が、わたしが大好きだったあなたの笑顔が見たい。ほら、笑って。あなたは、笑顔が一番素敵なんですから。
生まれ変わったら、必ずあなたの元へ帰ります。それまで待っていてくれますか?
ああ、あなたの体温が温かい。
愛するただ一人のあなた。また会う日まで、どうか幸せに。
瞬間に浮かんだ人がいる。
マタアイマショウ…。
何故浮かんだか…もう会わないからだよね。
別れてはいない。そんな言葉も交わさないまま
「またね」くらいの温度で別れた。
あれから何年も経つね。
もう会わない貴方をこれからもっと思い出さなくなるね。
それで良かった。
それが良かった。
「ありがとう」すら伝えなかったから
今、それぞれ勝手に自分の足で立てているんだから。
いつか本当のサヨナラが来る。
それすら言えないだろうけど
どうか幸せであって欲しい。
6,また会いましょう
また会いましょう、そう言って、別れたことって今まで生きてきたなかでないし、そう言って会うこともないんだろうなって思う。
けど、来世でまた会いましょうと言って別れた人が、今世で例えば、親や友人となって会えたなら、それはまた会えましたねってことになるんだよね。
それってなんか素敵だなって思う。
2023.11.13
お題 また会いましょう
また会いましょう。
それでは、さよなら。
手を振るあなたが前を向く
僕を忘れて前を向く
知っているんだ、本当は
僕らはもう、会えないのでしょう
あなたの笑顔の裏側で
そう語るのを聞いたから
諦め悪い僕だから、その名を呼び止めたくなる前に
さっさとケリをつけなくちゃ
さようなら。
いつかどこかで、また会いましょう。
いつか、君にこの声が届いたら
振り向いてくれるのを待ってます
「未来は明るいものですか。」
誰かが言った
明るいものだと思いますよ 貴方がそう思うのなら
貴方がそう信じるのなら、きっとそうなります
「感情って大切ですか。」
また誰かが言った
大切なんじゃないですかね なかったら寂しいものですよ
無かったら空の青さに感動もできませんからね
「死にたいけど死にたくないです。おかしいですか。」
またまた誰かが言った
おかしくなんてないですよ
私は死にたくないから生きてます
仕方がないから生きてやるよって、そんなフランクな感じで生きればいいんですよ
「『また会いましょう。』のまたっていつですか。」
誰かが言った
さあ、『また』という単語は実に不可解で不可思議で理解不能な言葉ですからね
難しいですよ 時間の流れが人と違うように
人の感情はメジャーでは測れませんから
「また、会ってくれますか。」
ええ、もちろんですよ。
『また会いましょう。』
また会いましょう
そんな別れ方したかったな
二度と顔も見たくない!
その方が吹っ切れる?
また会いましょうってまた会う人って案外少ないよな
って思う。人の出会いがまだない…つか自分から出会いを求めてないからな
また会いましょう
地球から真っ直ぐ、アンドロメダ銀河を抜けてどこまでも。星間1号線に終わりは無い。日々膨張し続ける宇宙と同じスピードで道路は伸び続ける。
終わりない道路の先が見たくて、僕は5年前から軽星間走行車(うちゅうようバイク)に跨っている。
「馬鹿なことを考えるやつだな」
友達の言葉を思い出すには、これまで走った道を双眼鏡で4光年見返さないといけない。もうきっと会えないから、僕は前を見る。
道路を真っ直ぐ横切る道灯の列が見えた。
「交差点か」
星間101号線と唯一の交差点。
交差点には星間走行車のエネルギー補給ステーションがある。僕はエンジンを思い切り吹かして、ステーションに向かった。
「ゴショモウノ サービスハ ナンデスカ」
相変わらず無愛想なロボットだ。
各ステーションには全く同型の補給用ロボットが常駐している。わざと機械音声風に作っているらしく、聞く度なんだか笑ってしまう。
僕はいつも通り光子エネルギーの補充と、1ヶ月分の食料、休憩用にブルーベリージャムベーコンサンドを注文した。
「いい趣味してんじゃん」
背後から声がした。
「ロボ。私にもブルーベリージャムベーコンサンドを頂戴。ベーコンはカリカリにね」
「カシコマリマシタ」
ロボはカウンター奥へ颯爽と抜けていく。
振り向くと、そこには赤毛を肩まで伸ばしたラフな格好の女性がいた。
「誰?」
僕は言った。
「ギンガノ・ワタリドリ。キミは?」
嘘つけ。だから僕は、
「スーツケースノ・ワタリドリ」
と言った。
「スーツケースって呼んでも?」
「勿論。ギンガノ、でいいよね?」
「もちろん!」
フフフ――…………。
ウフフ――…………。
なぜだか分からないけど、僕と彼女の目的は同じで、お互いそれを察した気がした。
「ギンガノは何処から?」
隣に座った彼女に僕は言った。
「森の星から」
「森の星?」
そう聞くと、彼女は人差し指を口の前に立てた。
「それもそうだね」
「分かってくれて嬉しい」
彼女は寂しげに言った。
僕たち旅人は、昔のことをあまり話さない。行き先が帰り道になってしまう気がするから。
「スーツケースはどこから?」
ギンガノは
「水の星から」
「……それじゃ分かっちゃうよ?」
「まぁ、いいじゃんか」
「……それもそうだね」
僕と彼女にブルーベリージャムベーコンサンドが届いた。
「いただきます」
手を合わせ、一礼した。
「丁寧だね」
ギンガノは上目遣いで言った。
「今日は特別だから」
「カッコつけたい相手、いるんだ」
「まぁね」
ウフフ……
彼女も一礼した。
「丁寧だね」
僕は目を逸らして言った。
「特別らしいからさ」
「合わせたい相手、いるんだ」
「まぁね」
フフフ……
僕と彼女は同じタイミングでサンドにかぶりついた。
「なんだ。僕の真似?」
「私の真似でしょう?」
「かもしれないね」
「私も、君の真似な気がしてきた」
「適当言って」
「それがそうでも無いんだよ」
彼女は優しく微笑んだ。
……。
「ギンガノも、宇宙の先が見たいの?」
「うん。それも、101号線の先が見たいの」
「そっか」
「スーツケースも?」
「うん。1号線の先が見たくて」
僕は彼女を見ないで言った。お互い妥協点は無さそうだ。じゃあ、言えることなんてもうないや。
一緒かはともかく、隣を見ながら目指したかったんだけど。
「ロボ。僕のサンド、ホイルで包んでくれないか」
「カシコマリマシタ」
ロボットは僕のサンドをあっという間に持っていく。ちょっとくらい待ってくれてもいいのに。
「私もそうしようと思ったのに。早いのね」
「……」
「……ごめん。言い過ぎちゃった」
彼女は微笑んだ。もちろん、僕も。
「僕も言いすぎても?」
「うん」
「カササギ・ツカサ。本名。ギンガノも、良ければ教えてくれない?」
彼女は視線を下ろすと、少ししてから上げた。
「……ナギウミ・カモメ」
「カモメ」
「なに?」
「また交差点で」
「……うん。また交差点で」
また会いましょう
同じではなく
違っていて
過ぎていく
また何処かにいる
何処にいても同じではなく
何処にいても違っていて
何処にいても過ぎていく
またが
会っても
なくても
きっと此処ではない
過ぎていく日々に別れて
また会いましょう