「あの、私、死んだんですか」
「さあ」
「何ですかさあって」
「私にも分かりません」
何だこの糸目の男。この列車の車掌を名乗った上に制服まで着ているようだけど、どうも胡散臭い。
「何ですかそれ」
「まあ、そうかっかしないで。窓の外の星でも見ていてください」
「星で機嫌が取れるとでも?」
「ええ。お好きでしょうから」
そうこうしている間に列車は終点まで来てしまった。この胡散臭い男と話をしていたせいで時間が短かったように感じる。
「それでは、またお会いしましょう」
見上げればネイビーブルーの空に星が瞬いている。男はどこか懐かしいような笑みを浮かべると、そのまま制服のマントを翻し消えてしまった。
「誰だったっけ、あの人」
私はいつも、思い出せないままだ。
11/13/2023, 4:57:27 PM