『ないものねだり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ないものねだり
周りを見たら分かる。周りは私が無いものを全部持ってる。例えば、人付き合いのスキルだったり。
私が持ってるのは其の場凌ぎの嘘だけ。
かわいこぶってるあの子は何もしてないのに、
掃除を押し付けられた私を評価してくれる人は居ない。と思ってた。だけど、優しいあの子は私を褒めてくれた。
…ううん。違う。私が愚痴として優しいあの子に話したから。話さなければ気づかれなかったの。
この感情はきっと、ないものねだり。
貴方のどこまでも真っ直ぐな瞳や
誰にも負けない芯の強さが羨ましかった
貴方と一緒にいれば私もそうなれるかなって
だけど結局はないものねだりだった
もう私これ以上ないものねだりしたくない
ないものねだりをしてばかりだとは思う。みっともないとも思う。だけど、なにも欲しがらなくなった私は私なのだろうかとも思う。ないものねだりは解脱からはもっとも遠い、人間らしい感情の一つだ。
あの時もっとがんばれてたらな、とか
やっぱり違う道を選べば良かった、とか
ないものねだりなんだ
今を生きるしか道はないんだ
若返る事もできない
過去に戻ることも出来ない
目の前の道を進んで
選んで生きていくのは
自分しかいないから
今あるもので十分だよ
ないものねだり
いいな、
ちっちゃくて可愛くてふわふわしてて愛されてる。
いいなぁ!
大きくて!かっこよくて!しっかりしてて!頼られてる!
ないものねだりだけど
君に
なりたかった。!
【ないものねだり】
もっとお金があれば…
もっと時間があれば…
もっと、
もっと…
いつまでないものねだりをしているのだろう。
未来を変えたいのなら、
ないものねだりではなくて、
今を受け入れること。
そこから始まる
欲しいものは手に入るとは限らない
運良く手に入る者もあれば
手に入らない者もいる
けど僕の欲しいものはもう無い
たった一つはもう亡くなってしまった
あれが欲しい
これが欲しい
すべてないものねだり
これもあれも全部欲しい
だって俺は
強欲だもの
※また長くなりました。
「ごめんなさい」
彼女はすまなそうな顔で謝った。
「君とは友達だと思ってた」
その言葉は、どんな刃物よりも鋭くて、
僕の心は滅茶苦茶になった。
2年前の出来事だ。僕は幼馴染に告白した。
理由は勿論、僕に気があったというのもあるし、彼女が思わせぶりな態度を取ってたからというのもある。きっとそれは思春期少年特有の淡い恋心、いや第二次性徴の発達の見せた幻想に過ぎなかったのだろう。
あれから酷く態度を気にするようになった。発言一つ一つに気を遣い、相手の動作を逐一観察した。その人がどう生きて、どう思っているか、わからないときは聞いた。
でもそのやり方は、探偵やFBIがやるように、決して相手にとって居心地のいいものじゃなかった。
嫌われた。社会に出ても一人だった。
「人の心がわかるようになりたい」
そう願った。
ここは街外れのドヤ街、治安の悪さで日本一有名だ。すれ違う人の目つきは鋭いか、焦点があってないか、昼夜問わずに嬌声が飛び、時たま赤い何かを見つける。
そんなおかしな場所に私は来ていた。
「交換屋って知りませんか?」
比較的話が通じそうな人を見つけては、私は同じ質問を繰り返していた。
「知ってるよ、あんたそこに行きたいのか?」
「はい」
「三丁目の通りの二本目の路地を左に曲がって、あとはまっすぐ行けば、つくはずだよ」
「ありがとうございます」
スマホで検索をかけ、言われた通りの道を探す。相変わらず向いてる方向はわかりにくい。画面と周りを交互に確認しつつ、薄暗い路地裏を進んでいった。
悪趣味なネオンの看板に古臭い丸ゴシックの字で書いてある。
「交換屋…」
正直、ここが噂の場所とは思えない。
確かに怪しい雰囲気は満載で、普通ではないが、そんなのこの町にはいくらでもある。
単なる金属製の扉の一室で人の個性を入れ替えるなど可能なのだろうか。
しかし、ここまで来た以上戻るのは時間の無駄だ。おそるおそるドアノブを捻り、扉を開ける。
「いらっしゃいませ」
いやに無機質な声が聞こえてきた。
「交換屋にようこそ」
立っていたのは、妙な格好の老紳士だった。
シルクハットにステッキ、顔はヤギの仮面で隠され、その僅かな隙間からにやついているのがわかる。
「ここが噂の交換屋で合ってるんでしょうか」
「はい、お客様のお求めになっていた、交換屋で間違いございません」
そう言うものの、中には家具ひとつ見当たらない、あるのは赤い絨毯が一つだけだ。
「本当にここが私の求めた場所なのでしょうか」
「それにしては何も見当たらないのですが」
「ええ、ええ、間違いございませんよ、お客さまは”心が読めるように”なりたいのですね?」
一瞬、引き下がるがすぐに尋ねる。
「そうですが、なぜわかったんですか?」
「こういう商売をしていますと、自然と感じることができるようになるのです。
要件もわかっていることですし、早速、交換といたしましょう」
「ちょっと待ってください、もう少し説明していただけませんか?」
「いいでしょう」
ステッキを指で遊ばせながら、紳士は言う
「質問をどうぞ」
「そもそも交換屋とはなんでしょうか?」
「あなたの知る噂どおり、才能や能力を交換し、望む人に与える店です。」
「どうやってそれをするのですか」
「企業秘密となっております」
「私の場合は何を交換するのですか?」
「企業秘密となっております」
「流石に説明していただかないと、こちらとしても納得ができません。そこをなんとかお願いできませんか?」
「企業秘密となっております」
機械か何かと話してるんじゃないかと思えてくる。
「何も説明できないじゃないですか」
「そうですね、生活に支障がでるものは交換いたしません。あなたの持ち余しているーーつまり、不要な能力をいただくかわりにあなたの望む能力を提供します」
「なるほど」
「納得していただけましたか?」
腑に落ちない部分は多いが、少なくとも生活に支障が出ないなら問題はないだろう。
「じゃあ、さっそく交換をお願いできますか?」
「ええ、勿論です」
「ご利用ありがとうございました」
ーー臨時ニュースです。
今日未明、○○株式会社の社員、
……さんが自宅で首を吊っているところを発見されました。……さんは二週間前から会社に来ておらずー
自宅の本は全てビリビリに破かれていたとのことです。警察は事件性も高いと見て、調査を進めています。
『ないものねだり』
もう前に進むって決めたから 明日も本当は会いたくて話したくて仕方ないけど会いに行かないね
そんなに学校いってたら未練ありまくりだもんね,
気軽に会える存在になっちゃうような気がして
だからもう会えないやごめんね
まるで海を閉じ込めたみたいだ。
身を焦がす陽の光に、宝石のようながらくたを翳した。
珊瑚礁の森に、オキアミの群れ。
陽射しを遮るほどに大きなシャチ。
海の底に沈んだ都は、どんな世界を見ているのだろう。
僕らの知っている海の天上よりもきっと大らかで、
ずっと冷たい世界の底で永い時を過ごしている。
小さな海は、掌の中で小さな熱を得た。
海は、僕らの知らない目を持っている。
盲目の魚は、優しい陽の光を知っているんだ。
「いいなあ、こんなパフェ食べてみたい」
一緒に遊びながら見ていた夕方のニュース番組。テレビ画面に映る色鮮やかなパフェに目を輝かせる君を見て、それを叶えてあげたいと思った。きっとそれが僕の初恋だったのだろう。
パフェに必要なのはフルーツとクリームとあとは色々。だけどもお小遣いでは生クリームを買うのが精一杯で、毎朝食べてたコーンフレークにクリームと余り物のチョコスプレーをかけたもので精一杯だった。テレビで見たものとは全然違ってきらきらしていなくて、こんなもので喜んで貰えるはずがないと落胆した。
もっとお小遣いを貯めていれば良かった。自分で作ろうなんて考えなければ良かった。幼いながらにそんな事を思ったものだ。
だけどもそんな考えに反して、君はテレビで流れた鮮やかなパフェを見たときと同じくらいきらきらした笑顔で喜んだ。カラフルなフルーツも、冷たいアイスクリームも、ウエハースも、何も乗ってないパフェもどき。それをひと口ひと口大事そうに食べて「美味しい」と言ってくれた。何だかそれがこそばゆくて、嬉しくて堪らなかった。
君はパフェもどきをいたく気に入ったらしい。何かあるごとに僕にねだるようになった。あろう事か10年以上経った今でも。
「他のパフェ、食べれば良いのに」
「これが好きなの」
「なんで。フルーツもなんにも乗ってないのに」
「だって、君が私に作ってくれた、思い出のパフェだもん」
「……そう」
そう言ってパフェを口にする君の左手には、きらりと光る銀の指輪。大きくなって出来ることも増えて、僕以外の人と恋をして……あのきらきらのパフェも食べられる様になったのに、僕のパフェを食べに来る。それはきっと親戚のよしみもあるのだろう。だけどもこの時間だけは夢想してしまうのだ。指輪を送った相手が僕であったなら、と。
「ほら、君も食べなよ」
促されて僕もパフェを口に運ぶ。クリームもチョコレートもフレークも、何もかもが甘ったるくて胸焼けしそうだった。
【ないものねだり】(少し逸れたかもですが…)
羨ましい
まるで、清水を濁す黒
嫌いよ。あなたなんて
一滴はひとすくいに
ひとすくいは溢れて…
鏡合わせのワタシ
#ないものねだり
夜空に懸かる満月を見上げると、ふと年の離れた友の顔が思い浮かんだ。そして、年甲斐もなく焦がれてしまう。彼のように、自由で大衆を楽しませる作品が自分にも書けたなら、と。それが如何に水中に火を求む真似だと分かっていても。
夜道を照らす満月を見上げると、ふと憧れの人の顔が思い浮かんだ。そして、痛いくらいの憧憬が僕に願わせる。先生のような、崇高で不変の美しさを持つ作品を自分も作れたら、なんて。そんなの、ないものねだりだって分かっているけれど。
『月下の羨望』
―ないものねだり―
あぁ、考えているうちにもうすぐ次のお題になっちゃう~。
書くことが何も浮かばなくてスルーする事多いのよね~。
アイデアがパッと思いつく脳が欲しいな~。
🍀ないものねだり
先生からの先生から表出される全ての感情が欲しい。
ないものねだりしても良いですか!!
前回の
『好きじゃないのに』
のお題が消えちゃったんですが、
そのお題で投稿しても良いですか!!
良いですね!しますね!!はい!!!
【※ちょっと、前半一部R15くらいの表現が
あるかもしれないので、大丈夫な人だけ
読んでください。…そこまででも無いかな…?】
よろしくお願いします🌟
---------------
※文中に出てくる「汎」という単語は、
男性でも女性でも無い、汎性という性別のことです。
(『あなた』は私の好きな作品に出てくる子をイメージして書いており、汎性については原作内の設定です。)
---------------
好きじゃない、のに、どうして。
最近、困っていることがある。
例えば。
夜寝ている時、あなたは寝ているはずなのに、
わたしをあやすように頭を撫でてくることがある。
最初は、起きているのかな?と思って、
控えめに声を掛けてみたことがあったけれど、
返事は無く、健やかな寝息が聴こえるばかりで。
それだけならまだ良い。
むしろ、寝ているのにそんな風に…だなんて、
わたしのことを本当に大切に思ってくれて
いるんだな、と思えて。
あまりに優しくわたしに触れてくるその手に、
無意識下でのあなたの行動に。
まるであなたの愛に直接触れたような心地で、
心がきゅうっとするような思いがして。
心の底からあなたのことを愛おしいと感じる
気持ちが溢れて来て、
すごく嬉しくて幸せな気分になる。
わたしも頑張らなくちゃな…
あなたのためにわたしは何が出来ているだろうか。
…話が逸れました。
そう、それだけならむしろ良かったのだ。
それだけにとどまらず、あなたは意識無く
私を抱き締めることさえある。
これが困る。
いや、嬉しいのは変わらない。
ただ…嬉しすぎるのか、
困った現象が起きている。
あなたに抱き締められて。
でもあなたは寝ているから、
起こしてしまわないようにと思って
意識的にじっとしようとしていると、
どうにも寝るに寝られず。
あなたの腕はわたしの背と腰に回り、
脚は絡み、胸は密着し。
あなたの体温を全身で感じながら、
あたたかいベッドの中で二人、
同じ布団にくるまっていると。
どうにも幸せで、心がほどけてくるように
ゆったりとした気分になって来たかと思うと、
…なんだか、おなかの奥が。
じわじわと痺れるような心地がして、
温かい熱が広がっていき、
何かが蕩け出しそうな感覚がして来て。
最初は、身に覚えの無い知らない感覚を
不思議に思うだけだった。
でも、何故なのか、
だんだんと息まで上がってくるような感じがして。
これは…?と思った。
何かの病気かも知れないと不安に思って
端末で調べてみると、
とんでもないことが書いてあった。
ショックだった。
ただ大好きな、愛しいあなたと
ぴったりとくっついているだけ、
抱き合っているだけなのに。
自分の浅ましさに眩暈がした。
こんなの、
あなたに対する裏切りだと思った。
だって、あなたは汎で。
わたしはあなたのことを愛しているし、
あなたもわたしのことを愛してくれているけれど、
あなたは恋愛や性愛や、
そんな意味でわたしのことを好きなはずがなくて。
わたしだって、そのはずで。
わたしがあなたのことを、
そんな目で見ているなんて。
そんな意味で、好きだなんて。
…好きじゃ、ない、はずなのに。
認めたくなかった。
だって、もしそうだとして、汎であるあなたが、
わたしのこの気持ちを喜ぶはずがない───・・・。
わたしは、あなたと出会うより前の記憶が無い。
記憶が無いと言っても、
自分に関する情報を名前以外に思い出せないだけで、
読み書きは出来るし、
ナイフやフォークなどの使い方もわかった。
…ただ、フードプリンターや
空間転移、概念伝達等の機械や装置の扱い方は
てんでわからなかったけれど…。
相当な機械音痴だったのかも知れない。
…とある惑星で、
事故か事件にでも巻き込まれたのか、
何があったのかはわからないが
私は大怪我をしたらしく、
その衝撃で記憶を失ったらしい。
危うく命さえ失いそうだったところを
--が助け出してくれたのだ。
運ばれた病院ですぐさま医療ポッドに入れられた
らしく、治療が終わって目を覚ましたわたしが
最初に見たのは、心配そうにわたしを覗き込む
あなたの綺麗な顔だった。
「…、目が覚めた?」
「………、…誰?」
…それが、わたしとあなたとの最初の出会いだった。
曰く、あなたは人を助ける軍人で、自分が救助したわたしがあまりにも酷い状態だった為、心配して無事が確認できるまで付き添ってくれていたのだという。
驚いたことに、出会った当時は18歳という若さでありながら、軍での階級が中尉であるとのことで、忙しくないはずが無かったと思うんだけど…。
本当に責任感の強い人だ。
目覚めて互いに自己紹介を終えたところで、
わたしが自分の名前以外思い出せないことが判明し、
軍の中尉である--が、
わたしの本来居るべき場所が判明するまで
身元を引き受けてくれることになったのだった。
わたしは自分の持ち物を何も持っていなかったので、
軍のデータベースとわたしのデータを
照合することが出来ず身元が判明しない上、
なかなか記憶の戻らないわたしを心配した--が、
わたしを色々な場所に連れて行ってくれた。
相変わらず記憶は戻らなかったけど、
あなたといる時間はとても楽しくて、
嬉しいことばかりで。時々喧嘩もしたけれど、
その度にあなたの良いところを知ることが出来て。
そうして一緒に様々な体験をするうちに
お互いのことを深く知り合って、
記憶の無いわたしが最初に出会ったあなたは、
いつしかわたしにとって
かけがえの無い存在になっていた。
あなたが何故こんなにも
わたしに良くしてくれるのか。
どうしてそんなにも、
慈しむように優しい笑顔を向けてくれるのか。
本当にわたしたちが出会ったのは
あの日が初めてだったんだろうかと、
わたしたちの関係を疑問に思うこともあったけれど。
そんなことは些細なことに感じるくらい、
あなたがわたしを見る瞳は本当に優しくて。
私たちは強い絆と信頼で結ばれていた。
それは、恋だなんて単純なものじゃなくて、
言うなれば魂で繋がり合っているような。
お互いがお互いにとって、
とても大切で、特別な存在だった。
だからまさか、こんなことになるなんて。
わたしは、自分の心と身体が乖離してしまったように感じて、突然置き去りにされた子どもみたいに、
どうすれば良いのか全然わからなくなってしまった。
これから、
あなたに対してどう接すれば良いんだろう。
今まで、どんな風にあなたと過ごしていた?
そんな目であなたを見てしまっているなんて、
絶対にバレちゃだめだ。
でも、突然距離を取るなんてことをして、
あなたに怪訝に思われたり、
あなたを傷付けたりしたくない。
でも、普段のようにあなたと気軽に触れ合ったり、
あなたを直視できる自信がない。
この手から、視線から、声から。
あなたに、わたしの中にあるかも知れない何かが、
伝わってしまいそうで。
どうすれば良いんだろう。
好きじゃない、はずなのに。
-----
何も知らない人でも読めるように書いているつもり
ではありますが、わかりづらかったらすみません!
原作は宇宙船の中での話なので、
やっぱり若干世界観違うんですが、
3/16投稿の『星が溢れる』の二人の話でも
あったように、現代より結構未来の、
気軽に(と言ってもそれは「あなた」が軍の中尉で財力があるからかもしれないけど)宇宙船を買って色んな星に小旅行ができるようになった時代だと思って、
あまり考えずに楽しく読んでもらえたら嬉しいです🤣
ないものねだりを許してここまで読んでくださった
心の広い方、ありがとうございました\(^o^)/
続きます。
前の『夢が醒める前に』と
『ところにより雨』もまだ書けてないけど、
そっちも書く気ではいます…🫠
また読んでくれる方はよろしくお願いします🌟
※ 「わたし」の記憶が無いのも、
「あなた」が軍人さんなのも、
原作のゲームにある設定です。
フードプリンターとかも原作に出てくる、
今で言う3Dプリンターのように、
食べられるご飯が作れるプリンターです。
一部の二人の関係を表す表現は、
原作にもある表現です。
(ネタバレしたくないのでどの部分かは伏せますが…)
私は愛されたことがない
誰も私を愛してくれない
クラスの人気者の紗良ちゃん
いつも沢山の人に囲まれてる
何をしなくても愛されてる
私は?
私は悪い子だから?
こんな私にも愛をください
【ないものねだり】
#ないものねだり。
、理想いえばキリがなくて、ないもの全部、欲しがって鏡みたらため息。
呟いちゃうの。
“あの顔になりたかった”
そうだったら、この世界をもっと愛せてたでしょ。
…はぁ、あの子になりたい。
神様、ないものねだりで良いです。だから…あの子にして下さい。
ないものねだり
期待するから裏切られた気持ちになり、手に入ると勘違いするから落胆し、たらればを夢想するから落ち込むのだ。
そう、つまり、この世で一番するべきではないことは「ないものねだり」である。
そう朝霧とアプリコットの魔女は確信していた。
かつては魔女らしく自分への自信に溢れた性格をしていた朝霧の魔女は、以前とある魔女に自信やプライドをバキバキに折られた。
結果、現在「魔女にしては落ち着いている」「一歩引いたような態度の」「達観したものの見方をする」魔女だ、と周囲から評価を受けるようになった。野心に満ちていたかつてよりも所属内での地位が上がったのも怪我の功名というか…皮肉なものである。
「いやそれ褒められないから。自分に正直に生きないなんてもうそれ、魔女らしさを失ってんの。退化よ退化。班長なんて面倒なもんまで押し付けられちゃってさあ~」
朝霧の魔女は自身の部屋に勝手に入り込み、ソファに寝転びながら我が物顔で寛ぐ鉄と水飴の魔女の言葉に顔を顰めた。
「押し付けられたんじゃないよフェール、マルクトの魔女様方から任命されたんだ、光栄なことじゃないか」
そこに噛み付いてくるのかと鉄の魔女はうへぇとわざと大袈裟にジェスチャーをする。
「光栄、ね。大層な言い草だわ。そもそもマルクトの魔女たちを敬う気持ちが私には分からないわよブリュイエール。私達は皆対等のはずだもの」
「言葉上ではね。でも実際は違うでしょう?」
「あんたがそう思ってるなら、あんたの中ではそうなんでしょうね」
「…今日はやけに突っかかるねフェール」
文句があるならはっきり言えば?と朝霧の魔女はため息をついた。
「別に。従順な振りして大変そうだなって思っただけ」
鉄の魔女はよいしょと体を起き上がらせると朝霧の魔女と視線を合わせた。
「なんかさぁ、どんな綺麗事並べ立てても実際私には、コクマーで1番になってゼニスブルーと武器庫の魔女を追い抜きたいって行動にしか見えないのよブリュイエール」
「フェール、やめて」
「あんたの言う、ないものねだりの延長なんじゃないの?それ」
「フェール」
ぐん…っと部屋の空気に質量が増す。朝霧の魔女から盛れた魔力がちりちりと音を立てた。
「…はいはい、部外者は口出すなってことね。あんたがはっきり言えって言ったんでしょ」
ぱっと身を翻して去ろうとする鉄の魔女を恨みがましい視線で朝霧の魔女は射抜く。
「…的はずれなことばかりを言えとは言ってない」
「本当に的外れなら一笑に付しなさいよ。…ねぇブリュイエール。自分に嘘つくのだけはやめた方がいいよ」
「何言って」
「んじゃまた来るねぇーん」
最後だけいつもの調子で挨拶し、鉄の魔女は煙になって消える。
残された朝霧の魔女はしばらく自室だというのに所在なしげに佇み、ズルズルとその場に蹲った。
「…自分に嘘ってなに」
*
急に大図書館の受付前に現れた鉄と水飴の魔女に、当番で座っていた杜若とフォークの魔女は「ひょぇあ…?!」と情けない声を出す。そんな杜若の魔女にはお構いなしで盛大な溜息をつきながら鉄の魔女はカウンターに寝そべった。
「あ、あのぅ、鉄と水飴さん…そこ寝るとこじゃ…」
「はーぁ。ないものねだりしてんのは私もってわけ」
「聞いてくれないしぃ…」
しょんぼりしながらもどうしたんですか?と声をかけてやる杜若の魔女に「私は私でもう居なくなっちゃった大好きだった昔のあの子を押し付けようとしてるってことよ」とだけ返して鉄の魔女はふて寝を決め込んだ。
「さらにわけわからなく…って、ちょっと鉄と水飴さんそこでガチ寝はやめてくださいぃ」