「いいなあ、こんなパフェ食べてみたい」
一緒に遊びながら見ていた夕方のニュース番組。テレビ画面に映る色鮮やかなパフェに目を輝かせる君を見て、それを叶えてあげたいと思った。きっとそれが僕の初恋だったのだろう。
パフェに必要なのはフルーツとクリームとあとは色々。だけどもお小遣いでは生クリームを買うのが精一杯で、毎朝食べてたコーンフレークにクリームと余り物のチョコスプレーをかけたもので精一杯だった。テレビで見たものとは全然違ってきらきらしていなくて、こんなもので喜んで貰えるはずがないと落胆した。
もっとお小遣いを貯めていれば良かった。自分で作ろうなんて考えなければ良かった。幼いながらにそんな事を思ったものだ。
だけどもそんな考えに反して、君はテレビで流れた鮮やかなパフェを見たときと同じくらいきらきらした笑顔で喜んだ。カラフルなフルーツも、冷たいアイスクリームも、ウエハースも、何も乗ってないパフェもどき。それをひと口ひと口大事そうに食べて「美味しい」と言ってくれた。何だかそれがこそばゆくて、嬉しくて堪らなかった。
君はパフェもどきをいたく気に入ったらしい。何かあるごとに僕にねだるようになった。あろう事か10年以上経った今でも。
「他のパフェ、食べれば良いのに」
「これが好きなの」
「なんで。フルーツもなんにも乗ってないのに」
「だって、君が私に作ってくれた、思い出のパフェだもん」
「……そう」
そう言ってパフェを口にする君の左手には、きらりと光る銀の指輪。大きくなって出来ることも増えて、僕以外の人と恋をして……あのきらきらのパフェも食べられる様になったのに、僕のパフェを食べに来る。それはきっと親戚のよしみもあるのだろう。だけどもこの時間だけは夢想してしまうのだ。指輪を送った相手が僕であったなら、と。
「ほら、君も食べなよ」
促されて僕もパフェを口に運ぶ。クリームもチョコレートもフレークも、何もかもが甘ったるくて胸焼けしそうだった。
【ないものねだり】(少し逸れたかもですが…)
3/27/2023, 10:09:57 AM