『ところにより雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ぽつり。
冷たい滴が肩に落ち、首を傾げて空を見上げた。
薄い雲がかかる空は、それでも雨が降るほどではない青が広がっている。
天気雨だろうか。深く考えず、視線を下ろし歩き出す。
暦の上では春が来ているというのに相変わらず風は冷たくて、思わず身を縮めてしまう。
やはり上着を一枚持ってくるべきだった。そんな後悔をしながら、腕をさすりつつ足を速めた。
ぽつり。
冷たい滴が、手の甲に落ちた。
足を止めず見上げた空は、先程よりも雲が厚くなってきている気がする。
天気予報では一日晴れだと言っていたが、もしかしたら雨が降るのかもしれない。
生憎、予報を信じて傘は持ってきていない。溜息を吐き、天気を気にしながら進んで行く。
天気のせいか、朝よりも体が重い気がした。晴れか雨かで気分が変わるのは昔からだが、結局今もそれほど変わっていないことに我ながら呆れてしまう。
手にした紙袋が、かさりと音を立てた。はっとして袋に視線を落とし、苦笑する。
雨が降っても降らなくても、目的地はすぐそこだ。帰りに雨が降るようならば、傘を借りればいい。
そんなことを考えながら曲がり角を曲がる。目的地である幼馴染の家が見え、雨に降られる前に辿り着けたことに内心安堵した。
ぽたり。
冷たい滴が、頬を伝った。
空を見上げようとして、違和感に気づいた。
天気雨や通り雨だとして、一滴しか降らないのはおかしい。周囲の地面を見て、どこにも濡れた場所がないことに、さらに困惑する。
肩、手、頬。体が重く感じることも重なって、まるで自分の後ろに誰かがいて泣いているような幻覚が浮かんだ。
ただの気のせいだ。随分滑稽な想像だと笑いながら、何気なく後ろを振り返る。
何もない。あるはずがない。
そう、思っていた。
はずだった。
「いい加減、離れてくれないかな」
背中に張り付きぐすぐすと泣く幼馴染に、何度目かの溜息を吐いた。
「女……女の人、が……」
がたがたと震えながら、呻くように同じ言葉を彼は繰り返している。
呼び鈴を連打され、何事かと思ってドアを開けた瞬間の、彼の恐怖に歪んだ顔が浮かぶ。
何を見たのか、あるいは何に出会ってしまったのか。要領を得ない彼の断片的な言葉を拾い集めると、どうやら白い服を着た女性に会ったらしい。その時に何があったのか分からないが、今も離れない所からして相当怖い思いをしたのだろう。
「女の人が……」
「一応、私も女なんですけど」
聞こえてはいないと分かってはいるが、それでも不満が口をついて出る。
いくら幼い頃からの付き合いだとはいえ、ここまで意識されないのも悲しいものがあった。
「一体何を見たんだか」
肩に落ちる涙の冷たさに眉が寄る。泣き声は弱くなっていく。落ち着いたのではなく、泣き疲れたからだと分かった。。
「おん、な……の……人……」
段々と体にしがみついている腕の力が抜けていき、しばらくすると微かな寝息が聞こえてくる。
ようやく解放された。ほっと息を吐きながら、彼を起こさないように、そっと腕を外し固まった筋肉をほぐすように伸びをする。
「――着替えようかな」
肩に触れれば、まるでそこだけ雨に濡れたかのように濡れている。ちらりと彼に視線を向ければ、泣きながらも完全に寝入っているように見えた。
これなら、着替える間部屋を出ても問題なさそうだ。クローゼットから着替えを取り出し、音を立てないようにゆっくりとドアを開けて部屋を出る。
「疲れた……」
隣の部屋で着替えながら嘆息する。まだ午後を過ぎたばかりだというのに、強い疲労感に戻るのが億劫になる。
大切な用事があると言っていた。だからこうして待っていたのだが、結局要件を聞かずに終わってしまいそうだ。
何の話だったのだろうか。気にはなるけれども、聞かないままでいられたことを幸運だとも思う。
例えば、この距離の近さをおかしいと思うようになったとしたら。気になる人ができて、距離を置きたいと言われたら。
考えるだけで胸が苦しくなる。幼馴染の距離に甘えて何も言えないでいる自分が悪いというのに、どうしてと周りに原因を求めてなりふり構わず泣き叫びたくなる。
「バカみたい」
自嘲して、洗濯物を手に部屋を出る。当分は起きる様子はなかったが、早く彼の元へ戻りたかった。
ぽたり。
不意に洗濯物を持つ手が濡れる感覚がした。
視線を落とせば、小さな丸い滴。雨のようなそれに、後ろを振り返った。
「おひいさん、どうしたの?」
自分よりも背の高い、白装束を纏った人形。無表情ながら、はらはらと泣く彼女の頬に手を伸ばす。滴を拭い問いかけるが彼女は何も答えず、ただ腕を広げて抱きしめられた。
彼女の優しさに苦笑する。彼に用事があると伝えられてから落ち着かない自分を慰めてくれているのだろう。
「大丈夫だよ。いつものように勇気が出ないだけだから」
笑ってみせるものの、彼女の涙が晴れる様子はない。晴れない自分の悲しみを移して泣いているのだから当然かと、不甲斐ない自分に歯噛みした。
止まらない滴を拭いながら、五年前の川岸を思い出す。あの日もこうして彼女は自分の悲しみを引き受けて泣いてくれた。
形代として厄を引き受け、流されてきた彼女。動けないほど溜まった厄を抱えながら、それでも自分に手を伸ばしてくれた優しさに惹かれた。
こうして自由に動けるようになった今。けれど彼女はどこかに行くこともなく、寂しい自分の側にいてくれる。
きっと彼に気持ちをすべて伝えるまで、ここにいてくれるのだろう。
「私は大丈夫だから、心配しないで」
そう言いながらも、ぽたり、ぽたりと滴が頬を伝って落ちていく。彼女の涙ではない。
これは自分の涙だった。
「何だかここだけ雨が降っているみたい」
ところにより雨。
おどけてみせれば、彼女は優しく頭を撫でてくれた。
目を閉じて、深呼吸を繰り返す。
まだ雨は止まない。けれど無理矢理止めることはできる。
彼が起きてしまう前に、いつもの自分に戻らなければ。
もう少し。せめてちゃんと彼の目を見て気持ちを伝える勇気が出てくるまで。
「もうちょっとだけだから。ちゃんと伝えるから」
涙を拭い、今はまだ作った笑顔で、そう彼女に告げた。
20260324 『ところにより雨』
ところにより雨
ザーーーーーー………
はっ!
ハ!
真っ黒で雷が鳴き響く中
日本刀で刀を振り回す若い男
首、腰、身体を狙って次々と男たちを殺害する
返り血が飛び散る。そして血の海ができる
男たちの死体がバラバラになって複数人が倒れている
ザッザッザッザッ………
[僕は奪われた………全部]
[俺は全部やっていない]
少年と大人の声が交互に混じる
土佐藩によって牢獄へ入れられた死柄木弔
ガチャン
相澤消太『明日、外に出ろよ死柄木』
死柄木『は?』
俺は相澤の護衛を行ったことがある
暗殺者が相澤を狙いに襲ってきて1人を切り捨て一喝
他の奴らは俺の顔を見て怯えて見ながら逃走した
なんで相澤が俺を牢獄に?
相澤は俺のことを………
[君は、人を殺すことを嗜んで(たしなんで)
はいけない。先月のような挙動を改めたがよかろう]
俺は全部知らなかった
絶望も恐怖も……………全部知らなかったんだ
俺は俺の先生[オールフォーワン]から
逃げ出したことがある
そして〇〇に出会った
〜7歳の志村転孤〜
彼は前を向いておらず、前から歩いてくる少女に
ぶつかり尻をついた
転孤『いてて………』
私は彼に言う
『痛い気持ちにしちゃてごめんね…痛い?』
彼は唖然としていた
『あぁ、痛くない』
男の子は焦っている顔だ
『慌てた様子の顔だけど…誰かに追われているの?』
『あぁ追われているさ』
と、私の手を引っ張った
あの時の2人
相澤消太が俺を牢から外へと呼び出した
『何のようだ?』
相澤が俺の手首を後ろに、後ろ手拘束されたのだ
『おい!何をする!』
『見てのお楽しみだ』
最初は、後ろ手拘束されたまま鞭打ちされたのだ
相澤『おい、吐け!』
死柄木は痛みに耐えながら苦痛の表現を浮かべて
無言で相澤を睨んで終わった。後日は、石抱という
拷問を受けた。後ろ手拘束されては、ギザギザの板を
ひかれて正座で座る
死柄木『…ッ!?』
〜7歳の志村転孤〜
転孤と〇〇は仲良くなり
やがては、恋愛するようになった
『てんこでいい…転孤でいいから』
相澤は死柄木弔逮捕する前、彼の近くまで
迫っていたが、ちょうど〇〇が死柄木の前で現れた
そして盗み聞きを開始しようとすると………
チュッ………
相澤(キスしやがって………)
〇〇は、相澤消太の従兄弟だったのだ
相澤は死柄木弔[志村転孤]が去った後に、
死柄木弔逮捕の為に〇〇に近づてきた
相澤『死柄木って、ホントはどんな人だ?』
〇〇『彼はね、実は優しい人なの。私が転んでも
彼が私の怪我跡を手当してくれたり』
と、私と相澤は死柄木弔[志村転孤]がいない部屋で
2人きり
暗殺を続ける死柄木弔は暗殺の仕事をしている間にも
〇〇に会っていた
彼は彼女に会うと笑顔を取り戻しては、
時には涙を流して号泣していることもあったのだ
死柄木弔[志村転孤]『暗殺…天誅したくない』
『弔くん、君は、この人を倒したら褒美に
お金をあげよう』
本名不明のオールフォーワンからの指令が入れば
入るほど俺は一寸の迷いもなく人を殺害して
〜可哀想に汚れ仕事ばかりされて〜
オールフォーワンの恩を返す為、褒美の為に
自らの手で俺は、敵を斬って斬って斬りまくった
しかし、人を殺害する度に、俺を恨みを持つ人が
増えていく
幼少期から仲が良かった佐野万次郎が
『おっ!転孤じゃーん!!あっ、人斬りじゃなくて
護衛してみない?』
と、誘われて相澤消太の護衛担当になった
そして、あの言葉だ
[君は、人を殺すことを嗜んで(たしなんで)は
いけない。先月のような挙動を改めたがよかろう]
俺は言う
『俺が居なかったら貴方の首が飛んでいたぞ!』
相澤消太は転孤の言葉により無言になってしまう
次の日、
部屋の片隅で私は地獄に案内された
(…此処が地獄の私の居場所?)
私は死柄木弔…本名[志村転孤]と地獄に行くために
転孤の身体を、わざと彼の刀で彼を傷を付けた
自分にとって地獄行きの切符になると信じていたからだ
〇〇(転孤を1人にさせない。彼と同じ地獄へ行くならば
何だってする………たとえ、それが罪になるとしても)
その瞬間は鮮明に覚えている。
薄暗い部屋、彼の険しい表情、そして私の震える
手に握られた刀。転孤は抵抗しなかった
ただ私を見つめている。まるで全てを受け入れる覚悟があるかの様に
〇〇『転孤ごめんね……でも、こうするしかないの…』
刀が弔の肌に触れた。そして彼の肌が裂いた
私と胸に鋭い痛みが走った。それは肉体ではなく
心の痛みだった
死柄木弔(志村転孤)
『〇〇、お前らしいやり方だな。でも後悔しないで
くれよ』
その言葉に私は涙を堪えることができなかった
罪を背負い地獄へと行く道を選んだ私
彼は、どこか諦めた様に見つめていた
〇〇(転孤、私は、これで貴方と一緒に地獄に
行けれる…もう離れ離れにならないよ…)
地獄の扉が開き、私は再びその中に足を踏み入れる覚悟ができた。彼に付けた大きな赤い傷は、私が選んだ
地獄の道の証だった。それが私にとっても彼にとっても
深い絆になると信じていたからだ
弔[転孤]『俺もう…地獄行きだ………
人を殺めてしまった』
だが、オールフォーワンの策略によって
死柄木弔[志村転孤]と会う機会が減ってゆき
滅多に会わなくなった
そして物間寧人と緋村剣心が路地裏にいた弔/転孤を
見つけ出し、彼は慌てて走り出した。
2人も走り出す
相澤消太と佐野万次郎が言っていた通り
俺は人生の道を踏み間違えた
悪の道を進んでいたことをようやく分かった
夜神月が死柄木弔/転孤の目の前に現れたのだ
死柄木(はさみうち!?)
夜神『計算通り…』
物間『死柄木!志村転孤を捕縛しろ!』
剣心『逃げるなよ!』
死柄木『あーーーーー!!!!!』
後日、私は転孤が逮捕されたことを知らない
彼女は相澤消太だと気付かずに
死柄木メイクしている相澤に近づいた
『転孤、会いたかったよ』
小さく泣きながら死柄木に化けた相澤は
〇〇をハグしたままコクンと頷き
知らぬ間に刀が〇〇の首元に近づけた
〇〇の瞳をよく見ると相澤消太だと気付いた瞬間には
素早く、かきとられて斬首された
〇〇は、相澤に伝えたかった言葉があったが
素早く斬首された為、伝えられずに涙を流して最期を
迎えた
〇〇の生首が地面に落ちたときに
ソッと
『〇〇……………死柄木と一緒に地獄へ行ってくれないか?彼も……………………きっと喜ぶから……………』
相澤も号泣し、人を殺害した罪の重さを知り
〇〇の生首を優しくソッと撫ぜて
死柄木には〇〇を殺害した。と告げずに
発言しないと決めていた
物間、剣心、その他の複数人によって
京都から護送されて土佐で拷問を受ける死柄木
相澤は涙目で
(もう、自白してくれ!〇〇が待っている)
と、言葉には出さずに、ただ思い続けている一方で
死柄木は釣責の痛さで耐え切れずに自白したのだ
『オールフォーワン………』
涙目の相澤は、こう質問した
『そいつは、今、何処にいる?』
『堺にいるはずだ』と。
(※堺は今の大阪府)
だが、5分後にオールフォーワンが堺の船から
逃げ出した。という報告が物間寧人の情報で分かった
転孤は後ろ手拘束のまま別部屋へと連行された
『斬首と処す』
と、判決を受けた彼は少し悲しい笑みを浮かべて
ホッとしたような安堵の顔で牢獄の中へと連行され
相澤たちに木の手錠で両手を前に出して掛けられた
最後の夜
彼の幼少期が蘇ってくる
父から暴力され、母は転孤が幼い頃に病死
父により毎日暴力されて転孤は子鹿のように怯える日々
同時にオールフォーワンも
(罠に掛けられた…先生…俺を罠に掛けるな。と、
言っただろ………先生………オールフォーワン…)
牢獄の中へと入ってきた相澤消太とステインにより
強引に死装束を着せられ、外に出される。
転孤は相澤消太、物間寧人
ステイン、緋村剣心、夜神月を見て子供のように怯えて
震えている
グイッ
『ンッ!?』
体幹筋ごと後ろ手拘束、猿轡で噛まされて
彼は悟ったように俯いて
幼少期頃の思い出が蘇った
オールフォーワン
『おぉ、こんな所に小さな少年がいる…
寂しかったね…もう大丈夫…僕がいる』
少年転孤『うぅ…』
ザッザッザッ………
既に〇〇は18歳で相澤消太によって殺害
志村転孤は死刑囚として
市中引き回しの後に、公開処刑で斬首
志村転孤は佐野万次郎と親しい友人だった
志村転孤の処刑進行が行われている間、佐野万次郎は
その事実を知らなかった。その日の午後
テテテ………
『佐野万次郎様………死柄木弔の処刑が決まりました
既に、その時が近づいており、貴方に知らせるべきだと
感じて参りました』
万次郎『え?嘘だろ?あり得ない…』
佐野万次郎は、その言葉を聞き言葉を失う
胸が締め付けられるように痛み、息を飲んだ
万次郎『転孤……どうして…彼は、あんなに強くて…』
使者は静かに首を横に振り
『彼は既に、打首、獄門を言い渡され、市中引き回しを
経て処刑される雁切河原へと向かっています。もう
戻ることはありません』
雁切河原は今の高知県。かつて晒し首が置かれた場所
万次郎は、あまりにもショックを受けて強く拳を握った
『転孤……』
死柄木弔…志村転孤が処刑されるという現実が
あまりにも残酷すぎて受け入れなかった
その時の転孤は、市中引き回しされる中、
周囲の人たちは無言で彼を見守る人
罵声、低い囁き声、冷笑が漏れ聞こえ
罪の報いを当然視する者もいれば、彼が
どんな経緯で処刑されることになったのかを
知る人も居たのだ
見る人たちは
『人斬り死柄木!』
『早く殺してしまえ!』
俺に小石を投げる人たち
(黒幕はオールフォーワンだ。俺じゃない)
物間寧人が持つ罪状を書いた捨札には
[死柄木弔、本名(志村転孤)暗殺実行犯
雁切河原にて斬首に処す]
(馬の足音)パカパカ………
一般人、幕府からも死柄木弔/志村転孤は
黒幕であるオールフォーワンに裏切られて
下駄を履いて走り回り幕府たちに追われていた
オールフォーワン
『罪は弔に擦りつける………弔がやりましたってね』
死柄木『あーーーーーーー!!!!!』
オールフォーワン
『日本全国に知れ渡っているよ。弔。もう
逃げ場は無いんだから………諦めた方がいい』
死柄木『黒幕はアンタだったんだな…先生………』
カッカッカッカ………
(先生………お前のことは幻滅したよ………)
死柄木を憐れに思う人たちもいたのだ
『死が待っているんですって』
『処刑されて当然よ』
(先生、俺に罠をかけやがって………)
死柄木弔と呼ばれる理由
・彼の目の前に立つと必ず[死]が待っていること
・絵[柄]のように、彼が人を惨殺すると転孤自身も
死者も美しい工芸品に見えること
・[木]のように大きく振り捌くこと
・そして般若心経を唱えて必ず死者を[弔]うからだ
処刑場に辿り着き
彼を見て涙ぐむ者も、静かな啜り泣き声が響き始める
相澤と物間が俺を馬から降りる手伝いをしてくれた
俺の首が入る大きな穴があるところまで歩いていたのだが………
(〇〇!?)
俺の目の前に彼女の生首が置いてあったのだ
頭が真っ白になり悔し涙に、瞳がさらに真っ赤になった
(俺の彼女に何をした!)
『てんこ、てんこ!』
遠くから泣き叫ぶ佐野万次郎の声だ
『お前じゃないんだろ?オールフォーワンだろ!
黒幕 は!何でだよ!こんな目に………』
転孤は死装束を着て縄で体幹筋ごと後ろ手拘束されて
白い布で口で噛まされて呻き声を出している
近くまで来た佐野万次郎の声に反応した物間寧人は
『処刑は処刑です。黒幕が居たとしても、この人は
たくさんの人を惨殺した暗殺者です』
万次郎(転孤が泣いてる?)
転孤の目線を見ると若い女性の生首
万次郎(!?転孤の彼女………)
〇〇は穏やかな幽霊として彼を見守りながら抱きしめた
死柄木(この温かさは〇〇?)
相澤消太により俺は猿轡を強引に外された
絶世の句を詠んだ
『オールフォーワンに裏切られた。だが
君が為尽くす心は水の泡消えにし後は澄み渡る空』
佐野万次郎の悲鳴声は徐々に小さくなっていく
首と頸を出して大きな穴を見て小さく泣いて微笑む
グハァァ!!!!!
斬首された
一年後、万次郎はヒッソリと立つ死柄木弔の墓に
訪れていた
太陽の光が弔の墓に光が差して穏やかな空気もくる
まるで転孤が成仏された様に…
その夜のことだ
佐野万次郎は軍鶏鍋を食べる寸前に刺客に襲われて死亡
万次郎『てんこに………ぁ………ぇ………』
佐野の額から血が吹き出る
万次郎の声[真っ暗だ]
佐野万次郎の声が遠くなる
そして
暗闇の中で志村転孤と〇〇は再会
〜俺の心を支えてくれたのは〇〇だけだった〜
〇〇は優しく微笑む
彼女と俺は一緒に地獄へと堕ちた
【終】
死柄木弔/志村転孤=岡田以蔵
相澤消太=勝海舟、土佐藩
佐野万次郎=坂本龍馬
オールフォーワン=武市半平太(武市瑞山)モデル
でした
4/6日から地元で[龍馬伝]再放送
歴史人物の中で今、一番好きな岡田以蔵2/14日生
死柄木弔4/4日生
三浦春馬4/5日生
次に龍馬伝
岡田以蔵を想像させるような物語にしたかったので
2024年冬に見た岡田以蔵死柄木夢日記を
再び1年2ヶ月後ぐらいに記載しました
ちるらんケンティー岡田以蔵も楽しみ
ところにより雨
※人によっては気分を害する表現が含まれます。
雨が降っていた。
父が死んだ。そう告げられたのは大暑。じめじめとした、セミさえ鳴きやむ茹だるように暑い夏の朝だった。
父の葬儀の日は、曇天の空模様だった。重く黒い雲は空一面を多い、太陽の光を覆い隠してしまっていた。夏の昼間だと言うのに外は暗く、室内は少し眩しいくらいだった。鯨幕で覆われた部屋の中は物悲しさだけが満ちていた。
雨が降っていた。
棺に横たわる父を見た。眠っているようだった。今にも起き出して、「おはよう」と声をかけてきそうなくらいに。穏やかな表情で父はそこにいた。花が苦手だと言って、近寄ろうとしなかった父の周囲を、一際嫌いだったゆりの花が囲っていた。スーツに花粉が着くとなかなか取れないんだ、と珍しく眉をひそめて言っていた父。頬についていた花粉をそっと拭った。いつも柔らかで温かかった肌は石のように固く、冷たかった。
雨が降っていた。
__人は死んだら石になるんだよ。
いつか聞いた父の言葉が頭を過った。額に1度キスをした。冷たい肌。大きくなるにつれてしなくなった触れるだけのキス。脳裏に浮かぶのは馬鹿みたいに喜ぶ父の笑顔。目の前の父はピクリとも動きはしなかった。柔らかく微笑む口元は記憶にある父の笑顔と違いすぎて、まるで別人のように思えた。
雨が降っていた。
ゆっくりと立ちのぼる煙をただただ見つめた。立ち上る煙の中にはきっと混ざっているのだろう。父のからだ。家族写真。昔送った似顔絵に、ネイビーブルーのネクタイ。空へ空へと高く登っていく。手の届かない先へと。
雨が降っていた。
空は相変わらずの曇天だった。空全てを覆った黒い黒い雲は、それでも雨粒をこぼさない。じめじめとした生温い風だけが肌に触れる。これでは、外に出てきた意味が無い。
雨が降っていた。
父が病気であったことを今朝知った。触れた父の頬には私の知らない、いくつものシワが刻まれていた。ごわごわとした白髪混じりの黒髪は柔らかで細い真っ白なものへと変わっていた。眠る私を抱き上げた大きな体は、知らぬ間にやせ細り、小さくなっていた。記憶の中の父とはあまりにも違う姿。田舎を嫌い、出ていった私。顔が見たいと、何度も連絡が来ていたのに。
雨が降っていた。
地面に、服にぽたぽたと落ちる雫。頬を伝う生ぬるい熱。ずっ、と鼻が湿った音を鳴らした。
雨が、降っていた。
その日、止むことは無かった。
【】
枯れ葉がコンクリートの凹凸を引っ掻いていた。
怖くてたまらなかった。
遠くで鳴るサイレンの音が今にも向かってくる気がした。
枯れ葉の爪の音。サイレンの遠吠え。僕たち以外の音や感触が大きな獣となって追いかけてきている。
最悪なシナリオが幾つも積み上げられている。それが増える度、手に募る汗が君を汚している気がした。
次はどこに行こうか。これからどうしようか。
全部守るから、なんとかするから、だからーー
「ねえ」
膨らんだ言葉をパンと潰すように声が響いた
「何を考えてるの?」
「え?」
「ずっと何も言ってくれないでしょ…私にも話してよ」
どこから話せばいいのか、何を言うべきか。言葉が濾過できないまま喉につっかえてしまう。
「…1人で抱えないで。一緒に居るんだから」
濡れた手を強く握り直してくれた。
情けないほど何も言えないままだけど、キツく絞られた喉が緩んでいった。
「…後で話そう」
ぬるついた手で君の手を鷲掴んだ。雑に絡まった指の先が頷いた。
汗をかき分けて皮膚に食い込む爪の感触。それが今そばにいてくれている、何よりの証明だった。
その感覚が滑り落ちないように何度も何度も握り直した。
手の中の雨はずっと降り続けていた。
お題:ところにより雨
【ところにより雨】
「……ところにより雨が降るでしょう」
お天気キャスターの明るい声がテレビ越しに響いた。
弁当を作っていた手を止めて、折りたたみ傘をバッグに入れる。
お気に入りの水色の傘。
降らないといいなと思いながら、弁当の蓋を閉じる。
今日は、卵焼きが上手く巻けた。
食べるのが楽しみだ。
「いってきます」
fin.
『ところにより雨』
今日の天気予報は「ところにより雨」。
曖昧だなぁと思いながら、折りたたみの傘を2本用意した。
自分の分と恋人の分。
あの人は少しズボラなところがあるから、きっと天気予報も見ていないだろう。本人に持たせても、すぐに失くすかどこかに置き忘れる。
だから自分で持つことにした。
最近の折りたたみ傘はとても軽くて、2本バッグに入れていてもそれほど負担にならない。
まさか、それをきっかけにして
「押しつけがましい」
「母親みたいで鬱陶しい」
となぜか責められ、文句を言われ、挙句の果てに別れを告げられるなんて思わなかった。
そっかぁ、押しつけがましいかぁ……
せっかく持ってきた傘も開かず、少し前に降り出した雨に頬を濡らされるまま、しばらくそこに佇んでいた。
空を見れば、日々天気は変わっていく
でも自分の心の中を覗くと常にどしゃ降り
前が見えない 息がつまる。こんな毎日でも
乗りこえるなんてできなくても、いつかはパッと晴れて 笑える日がきますように…
「ところにより雨」
最近ずっと僕の心に雨が降っている。
君の心はどうだろう。
無邪気な笑顔を浮かべる子供達はどうだろう。
死んだような目をした会社員はどうだろう。
涙さえも、小さい雨なんだよ。
テーマ:ところにより雨
ところにより雨
『本日の天気は全国的に晴れになるでしょう』
いつものテレビから流れる、お天気情報
いつもの時間に、いつも通りの予報
でも、今日は何だか違う
『ところにより雨が降るでしょう、なので折り畳み傘を持っていると良いかも知れません。』
お天気お姉さんは、いつも通りの和かな笑顔で
なんてことも無いように、雨が降ると言ってる。
なんてことの無い、いつもの時間に
いつもじゃない事を伝えるお姉さんに
少しだけ恨みつつ、折り畳み傘を鞄にしまう。
そんな、何でもない日の朝。
ところにより雨……
二十四節気 雨水に生まれた赤子
手に水かきのようなものあり
水かきのようなものは
成長とともに小さくなり
大人になった今はほとんど目立たない。
頭の上に雨雲を持つ
我は龍神なり
なんちゃってな。
雨男、雨女と呼ばれる人は
龍神様に護られているそうだ。
「本日は全国的に晴れ、快晴となるでしょう」
気象予報士が高らかに言った。
スタジオの外でボードを指した先はすべて太陽のマークが付いていた。
本日は晴れ。しかも快晴。だというのに。
「ぐすっ……。どうしてそんなこと言うの……」
この部屋の天気は「雨」だ。
彼女が手のひらの底で涙を拭いながら、僕に色々訴えかける。
どうして別れるの。ほかに好きな人ができたの。私何かした。
その全てに首を振りながら僕は彼女の様子を見ていた。
話し合うために淹れたコーヒーとココアはとっくに冷めている。
「君を嫌いになったわけでも、他に好きな人が出来たわけでもないんだよ。ただ――」
やりたいことが出来たんだ。誰にも邪魔されずにしたいことが。
そう伝えると彼女は更に涙を流した。嗚咽まで始まった。
ティッシュの塊が1個、また1個と出来ていき、雪合戦が出来そうだ。
(あぁ、外はこんなに晴れているのに)
今日の天気は全国的に晴れ。ところにより雨でしょう。
3/25『ところにより雨』
ところにより雨
春…
心踊る季節の中
誰かの眼差しが私を揺らす
誰かの言葉に心が傷ついた
楽しいことばかりじゃないって
わかってる
知らないことは全て知る必要もないと
思ってる
おおぞらは決して青く輝くばかりじゃない
太陽もあれば雲もわいて
彩りさえも変わるのだから
晴れのち曇り
ところにより雨…
そんな日もあるさ
そんな日も楽しめるひとにまた一歩
近づいた気がする
涙の日も雨の日も
そっと私を見つめる優しい時間
悲しいけれど愛しい時間
おかえり。
海から戻ってきたの?待ってたよ。
ねえぼくのいばしょつくってよ。
つくって、あげる?
はずかしさにむり。
「別れよう」
「え…?」
雨の日。そう言われた私は言葉を失った。
彼と出会ったのは、ある晴れの日だった。
カフェのテラスで近くの席になり、彼の一目惚れから始まった。
連絡先を交換し、連絡を取り合い、終日に食事に誘われ、レストランに二人で行った。
あの日のオムライスの味を、私は忘れなかった。
この次は私のオススメで、隠れ家カフェに二人で行った。
二人で行ったカフェのコーヒーの味は、いつもより甘く感じた。
ブラックだというのに……おかしいこと…。
この味が恋の味だと気づいたのは、まだ先のことだった。
二人での食事や、お出かけを経て、私達は付き合うこととなった。
付き合ってから5年後。
私は別れを告げられた。
私は悲しみよりも、何かをしてしまったのではないかと、自責の念に駆られた。
別れを告げられてから数ヶ月後。
私は少しだけ気を持ち直していた。
そんなところに、彼の訃報が届いた。
病だった。治らない病だったそうだ。
私と別れた日の時には既に……判明し、投薬のための入院の、前日だったそう。
それほど時間が経たずして、私は彼の葬式に参列をすることになった。
棺桶の中に眠る彼を見た時、気づけば私は、彼との思い出を、最初から全て思い出していた。
涙が視界を埋める。
…………。
彼の親族は私の顔を見つけると、一つの封筒を手渡してくれた。
中を読むと………私は涙が止まらなくなった。
彼の声が、顔が、鮮明に思い出される。
彼は…私のために私に別れを告げたらしい……。
わざと、冷めたような顔をして…。
あの日から数年が経った。
……私の心にはまだ時折雨が降る。
晴れていることもある…けれど……まだ難しい……。
寂しさはこの心に深く残ってしまっている。
ところにより雨
ところにより雨
私ごとですが4月から社会人でして。引っ越しをして数日。まだ生活必需品も整っていない、収納できていない過去の残骸で足の踏み場のない環境の上を歩きながら、どうにかこうにか生活をしています。
本棚がないので、実家から持ってきた本は床に並べるしかありません。クローゼットが思いのほか小さかったので、夏用のシャツを入れるスペースがありません。
洗濯機への給水方法が分からず四苦八苦しました。実家のコンロとは全く違うキッチンを使い、久しぶりに唐揚げを焦がしました。
引っ越して一人暮らしを始めると誰とも接する機会がないので、自分に起こっている事柄のすべてが隔絶された自分の周りにある別空間のことのように感じられます。
本日は転入届のために市役所に行きましたが、広い範囲が生憎の天気で、私もその下におります故、憂鬱な今日この頃です。
今日の機嫌はどうだろうか。日によって違うのだから。いや、その日の中で、時間によっても違う。
今日は、ご機嫌が良さそうだと思って、ほっとするなんて、どうかしている。頭では分かっている。そんな、どうかしている人のことを気にするのは、やめたほうがいい。
でも、時々雨の後の晴れ間のような、すがすがしい笑顔を見せてくる。人並みに優しいことを言ったりして。その感じに、またやられてしまう。
そんな人は、やめておいたほうがいいのに。〝ところにより雨〟みたいな曖昧さが、どうにも気になってしまう。
「ところにより雨」
こんな夢を見た。雨が降るというので、傘を持ち出かけた。だが、一向に降る気配はない。
「何だ、雨降らないじゃん」
「いいえ、降ってますよ」
振り向くと、傘を差しレインコートを着込んだ女性が立っていた。彼女の頭上には雨が降っており、雨粒が傘を叩いている。
「ちゃんと降ってるんです。わたしの頭上には必ず。天気予報の『ところにより雨』ってわたしのことなんですよ」
いわゆる雨女なのだろうか。反応に困っていると、彼女はまた話し始めた。
「わたし、昔は雨女じゃなかったんです。ただ雨が好きで、傘やレインコート、長靴を集めるのが趣味な女だったんですよ」
「はあ…」
「ある時、思ったんです。雨が毎日降ってくれれば、集めた雨具が使えるのにって。そしてそれは突然叶いました。まさか、自分の頭上から降り続けるとは思いませんでしたが」
滅多なことを願うものじゃありませんね。そう彼女が肩を落とすと、雨脚が強まった気がした。
「雨のせいで、住んでいたアパートを追い出されるし、職場も退職する羽目になるし。散々ですよ」
「それで今はどうしてるんです?」
私が尋ねると、彼女は近づいてきた。
「今の話、全て今日あったことなんです。困ってるんです。家も仕事もなくして、これからどうすれば良いんでしょう」
「うーん…」
悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと、中年女性が怪訝そうに見ている。
「あんた、何してんの。その人に関わっちゃ駄目よ」
「え?」
中年女性に腕を掴まれ、近くの喫茶店に連れ込まれた。席に腰を下ろしコーヒーと紅茶を注文すると、彼女に謝られた。
「ごめんなさいね、強引なことをして」
「え、いや別に…」
「あの辺ね、雨女っていう妖怪が出るのよ。あなたが話してた雨具を着けた女がそれなの。ああやって近づいて、自分の雨で濡らして仲間にしちゃうのよ」
まさか、妖怪だったとは。
「あまり変な人に近づかないようにね」
彼女はそんな風には見えなかったが。
「ほら、こっち見てるよ」
促され、窓の外を見る。同じ雨具を着けた同じ顔の女たちがずらりと並び、私たちを凝視していた。
特に予定の無い休日の半分を、何もせず寝て過ごした。
今日は雨の上、することもない。何も予定は無かったはずなのに、何故か少し損した気分になる。
多少何かした感が欲しくて、唸りながら布団から這い出た。そのまま、充電器に刺さったスマホを回収し、のそのそと布団に潜り込む。
意味もなくネットニュースを眺めて、名前だけ知っている芸能人の結婚速報を冷めた目で流し見た。
他人の結婚情報なんて、よくそこまで本気になれるな。そんな俯瞰したような、冷笑する考えが頭に浮かんでいた。
ダラダラとスマホを眺めているこの時間、ぴったりと狙ったかのようにチャットアプリの通知が来た。
『どうせ暇だろ、付き合え。』
あまりに乱暴で、要件さえ分からない。こちらを暇だと団でしているのも腹が断つ。
しかし悲しいかな、面倒事だったら嫌だと思うが、暇なのは事実なのだ。
仕方がないので付き合ってやることにした。
その旨を伝えると、冷たいほど簡潔な文で集合場所と時間だけが送られてきた。
渋々立ち上がって、ようやくパジャマから着替える。雨降りで肌寒い気温を思ってばさりと1枚上着を羽織った。
集合場所のカフェに向かうと、既に見覚えのある顔がそこにいる。予定時刻よりずっと早いはずなのだが、もう既にそこにいた。
「遅ぇ。」
予定より早く来たのにこれである。むっとしながら、彼の方へダラダラ歩いた。
「うるせぇな……早く来てやっただろうが。」
もっと文句をつけたかったが、その前にさっさと彼は歩き出してしまった。
不完全燃焼のまま、むすっとして後ろをついていく。何をするのか、どこへ行くのか。全く分からない。
電車を乗り継ぎ、レンタカーに乗り、思いの外遠くへ連れてこられた。
「ちょ、まだ行くの……?どこまで行くんだよ……」
少し暑くなってきて、羽織った上着を脱ぎ捨てる。
「もう着いた。」
目の前にあったのは、山に程近い、ぽつんと建った神社だった。
静かで、手水の音が遠くに聞こえる。
彼は俺の手を引いて、境内の隅、見晴らしのいい、社の縁に腰を下ろした。
「……最近ずっと疲れた顔してただろ。」
不器用な彼なりの、励ましだったらしい。
確かに、最近は理不尽で古い考えの上司と、自由奔放で現代らしい後輩に板挟みにされて、忙殺されていた。
周りを見る余裕も無かったかもしれない。
改めて見下ろした町並みは、俺がいなくとも穏やかに回っている。それが、酷く安心できた。
雨はもう、降っていない。あの雨は、俺の住む地区の周辺で降った局地的なものだったようだ。
隣に座る友人の、無愛想な肩の上、俺はそっと近付いて体重を預けた。
テーマ:ところにより雨
この本を書いた人はきっと
もうこの世にはいないんだろうな、と
スマホで調べればわかることを
敢えて調べずに
想いを馳せることとした。
この人もいつかのどこかで雨を見ている
と、思ってみたり
----- ところにより雨
ここ数日晴天続きだというのに、彼が持っている傘はびしょ濡れだった。畳まれた傘の先から水滴が流れ落ち、玄関の乾いた三和土(たたき)に黒いしみを描く。
「いやあ、迷い込んじゃったみたいで」
「また行ったの? 近づくなって言ったじゃん」
「放っておけなくて」
ニャー、と鳴き声がした。
彼が左腕に抱えていた白い毛むくじゃらが動いた。
「とりあえず体拭きなよ、ずぶ濡れじゃん」
彼自身も、まるでどしゃ降りの中を駆けてきたように濡れていた。
彼の頭にタオルをかけてやると、彼は「ありがとう」と言って毛むくじゃらを包んだ。
「おのれを拭けって。あーもー」
結局もう一枚タオルを持ってきて彼にかけてやり、私が彼の頭を拭くことになる。
「今度は猫?」
「猫っぽいけど違うみたい。しっぽが6本あるし」
ほら、と彼が差し出したその毛むくじゃらは、確かにしっぽの数は多いし、しかも目が3つある。
「知らないよ、また上から注意されても。今度は減給じゃ済まないかも」
「見て見ぬふりはできないよ」
「心配してるんだよ。並行世界なんかウロウロしてたら、そのうち戻って来れなくなるよ」
「そしたら探しにきてよ」
「は? 巻き添えくらうの嫌なんだけど」
彼は私の方を見て微笑み、子供みたいなくしゃみをした。
【お題:ところにより雨】