『ところにより雨』
「ただいま戻りました、、、」
悠人さんの声。
なんだか声に元気がない。
振り向こうとして別の驚く声に驚いた。
「雪村!?」
「あーーうん、急な雨で濡れちゃって、、、」
は?
勢いをつけて振り向く。
いつもセットしている髪の毛と、ジャケットは着ていないので、その下のベストとYシャツがずぶ濡れだ。
おそらく、もうすぐ会社に着くからって、面倒くさがって、コンビニで傘を買わなかったパターンだ。
天気が怪しい時は折りたたみ傘を持ち歩けって言ってるのに。
そう思う僕の顔は険しくなっていたらしい。
「なんとか会社までは持つって思ったんだけど。
会社前の横断歩道で待ってたら、ホントにすごいスコールでしょうがなかったんだよ、、、」
驚いた声をあげた同期の桜井さんに向けてではなく、これは明らかに僕に向けてのセリフだ。
現に横目でチラチラこっちを見ている。
「にしても、ずぶ濡れすぎるだろ、、、。
あーえーっと、、、」
桜井さんはそう言いつつ、周りを見渡した。
そして、僕に気づいて、苦笑いをした。
正式には、『険しい顔』の僕にだ。
「夏目。休憩室一緒に行ってやってよ。
ついでにさっきの資料も資料室で探してきてもらえたら助かる」
「、、、了解」
返事の声が思っていたより低い声だったせいか、雪村さんの肩が少しビクッと動いた。
「行きましょうか、雪村さん」
「は、はい、、、」
3/25/2024, 10:21:53 AM