頭に感じた硬くもべとりとした感覚。
反射的に空を見上げれば、一面のカラフルに思わず舌打ちした。
こっち、と呼ぶ声のまま潜った軒の上、がらがらべたべたと騒がしく。
「今日は一日晴れじゃあなかったか」
「その筈。通り飴だといいんだけどね……」
まだ硬い内の破片を払う横、重く粘る甘さに早々拭うのは諦めて、せめてと髪を解きながら。
「うわ、家の方チョコボンボン降ったって」
「は?チビ共庭遊びの日だったろ」
「チョコの時点で屋内に間に合ったみたい。でもやっぱりアルコール臭やばくて、みんな寝かせたらしいよ」
「また拗ねるな……。次の雨は?」
「予報通りなら明日。チビちゃん達のご飯が終わる頃には」
「はー……了解」
がらりがらりと飴が降る。
硬いままに転がり積もればまだ良いものを、地上にぶつかる度べたりべたりと溶けていく。
日頃は鬱陶しい雨も、コレを洗い流してくれるなら待ち遠しいばかりだが。
「どうしよっか、傘と靴買ってく?」
「……いや」
差し出されたハンカチを押し返して、少し先の自動ドアへ視線を向けた。
「明日に帰ると連絡しといてくれ」
「それは、」
ひとつ、ふたつ、息をする間。赤らんで見える耳。
「……そういう言葉は、期待、しちゃうよ?」
「は、抜かせ」
喫茶店も商店も、東屋だって近くにあったくせに。
「『この軒』を選んだのはお前だろ。なあ?」
つり上がった口許を、隠せても居ない癖に。
<ところにより雨>
3/25/2024, 10:01:50 AM