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7/14/2025, 9:08:31 AM

そろそろかと見渡して、そうして初めて首を傾げた。
集まる面子は雰囲気の違いこそあれど、
おおよその面影はみんなあったから。
アイツは、と声が上がった。
見ていない、とあちこちから返される。
企画立案も実行リーダーも
今日の集合すら旗振った、
たった一人が見当たらない。
もう始めようよ、と声が上がった。
帰れなくなる前に、と口々に。
元より集合時間は遅かった、
これ以上延ばせば夜になる。
何かでうっかり遅れたか、
やがてそのうち来るだろうと、
用意していたシャベルを取った。
記念樹の根本、小さな石碑、
昔にタイムカプセルを埋めた場所。
掘り返そうと刺した土は
不思議な程に柔らかく、
金属でも植物でもない塊に、
鋭利に柔らかく刺さっていった。

‹隠された真実›

7/13/2025, 10:01:11 AM

金属を打ち付け合う音が、どうにも好きになれなかった。どうしてか体が鈍く痛むような気がした。
硝子を叩き鳴らす音が、どうにも好きになれなかった。どうしてか頭が酷く痛むような気がした。
涼し気で美しいと皆が喜ぶ、ソレがどうにも昔から苦手だった。
忘れてしまって良いんだよと、何処かから声がした。

‹風鈴の音›


例えばソラを行き遠く神秘を目にするように
例えばソラを行き遥か星々を触れるように
例えばウミを行き深く暗闇を覗くように
例えばウミを行き広き煌めきに踊るように
例えばマチを行き長閑な日々を愛でるように
例えばマチを行き雑多な人々を見守るように
例えば天に例えば地に
あついばかりのおもたいにくを
抜け出せたならいつか
捨てられたならいつか

‹心だけ、逃避行›


水と砂埃に烟る道
青く抜ける空と沈黙の緑
私の好きな冒険譚
地続きに似た冒険譚

光と闇に大翼が舞い
魔法と刃を打ち鳴らす
僕の好きな冒険譚
どこか遠くの冒険譚

‹冒険›

7/10/2025, 9:23:39 AM

拝啓

やぁお久し振り、元気にしてたか。
靴を先に贈っていたが、ちゃんと届いているかい。
錦木の件だが、例の事象以外は一先順調だ。
現場の方も早々に戻って片付け中なところ。
手が空いたら連絡を入れる。君はそのままで頼んだ。

‹届いて……›


皆で歩いた帰り道に、赤く燃える街の異様な事。
皆で繋いだ祭の夜に、灯火の消え散る恐怖の事
皆で続けた光の朝に、重奏で響く悲鳴の事。
皆で逃げ出したさいごの日に、
なくしてしまったもののこと。
大事な事ほど変わり果て、
忘れたい事ほど妙に鮮明、
思い出のページだけはしたくない、
皆と皆と、居た日々の事

‹あの日の景色›

7/7/2025, 12:50:04 PM

素敵な人と出会えるように
大切な人と共にいれるように
家族友人といつまでも
君に一目だけでも会いたい
逢いたい愛したい
居たくて痛い
ひとといるのはいたいから
一人で生きたい独りで居たい
静かに平穏に十全に

‹願い事›

7/6/2025, 10:18:46 AM

恋をしてみたいのだと
憧れた目でそう言った
きらきらでふわふわで幸せで温かなのだと
夢見る目でそう言った
どんなひとがいいだろう
容姿か心か得意か趣味か
あるいはそういったすべてか
そうしたらきっと恋をして
ぽかぽか幸せになれるんじゃないかと
ぼくたちにそんな機能はないのに
そんな機能はないのに
冷たい水槽でうっとりとうたう
その唇が艶めいて見えた

‹空恋›

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