手紙が届いた
未来の私を名乗る便箋
居並ぶは沢山の数字
それはどうやらこれから先の
宝くじの番号であるとか
万馬券の番号であるとか
株価の動きであるとか
世間の流行に関することであった
つらつらつらつら書かれた最後
追記文に笑ってしまった
そうそうそれでこそ私だろう
「でも、答えを知った賭け事なんて
これ程つまらぬことは無いな?」
「安心してくれ、半分くらい
この手紙は嘘だって!」
‹10年後の私から届いた手紙›
たくさんたくさん食べれる日と
君は楽しそうにチョコを頬張る
美味しいか、と問えば
思ったより、なんて
「君が美味しそうにしてたから
ずっと興味があったんだ」
黄金の日射しに燦めいた
もう無い尾耳を幻視した
‹バレンタイン›
待ち合わせをしようか
あのゴールテープみたいに
できれば一緒にいきたいけど
でもきっとそうもいかないから
待ち合わせをしようか
あの川の前 船に乗る前に
どんな人生だったかきっと
たくさん話してから来世に行こう
‹待ってて›
新しい店ができて
そこのケーキが美味しくて
新しい家ができて
そこがすごく心地よくて
新しい道ができて
そこを色んなモノが通って
新しい国ができて
そこもやがて滅んでいって
新しい星ができて
そこに次の生命が芽生えても
あなたに会いに行けなくて
あなたに巡り会えもしない
‹伝えたい›
ここで一つ約束をしよう
忘れてしまっても構わない
誰にも誰にも見えないように
たった一つだけ指切りを
もう一度ここに来た時は
もう一度ここに来れたなら
約束約束その時は
その時こそは必ず
‹この場所で›
一人残らず平和を愛し
一人残らず命を惜しみ
一人残らず他者を愛し
一人残らず時を惜しみ
一人残らず聖者のように
一人残らず賢人ならば
この世の誰もが一人残らず
確かに幸せになれたかな
‹誰もがみんな›
好きな色を知ったから
その色の花を贈ってみた
チューリップにカーネーション
ダリア ダンジー クレマチス
マリーゴールド キンセンカ
オトギリソウにゲッケイジュ
さてさてどうか
さてどうか
気が付くことができるかな
‹花束›
笑っていれば楽しくなって
笑う門には福来る
だからって口端を吊って
三日月に唇縫い合わせ
喜びの歓声も親愛の吐息も
零れないよう封された
静かな美しい人形と
並ぶ人だけが幸せに
‹スマイル›
わたしの書いたお話が
たくさんの人に読まれました
とても良く出来たお話だと
とても人気になりました
イラストになって
マンガになって
アニメになって
ドラマになって
とてもとても読まれました
とてもとても好かれました
わたしはひとり原稿の
ぽっかり空いた空間に
入れるはずだった二文字を
呑み込み呑み込み泣いていた
‹どこにも書けないこと›
昔は意味があったけど
今は要らないものがある
例えば時を刻む針
例えば紙を渡す赤
例えば声を繋ぐ線
例えば今を映す箱
例えば人を祈る柱
昔は意味があったけど
今は要らないものがある だから
今はどんなに必要でも
いつか要らなくなる時が来る
いつかいつかこの も
‹時計の針›
石を一つ 柿を一つ
花を一つ 手を一つ
うすらぼんやりした意識
それでもひとをあいしてた
社を一つ 餅を一つ
金を一つ 手を一つ
うすらぼんやりした視界
それでもひとをあいしてた
時が一つ 時が一つ
時が一つ 時が一つ
うすらぼんやりした願い
それでもひとをあいしてた
穴が一つ 穴が一つ
声が一つ 悪意が一つ
とってもはっきりした気持ち
そう ひとなんて
‹溢れる気持ち›
場所で意味が変わるのだと
蠱惑的にあなたは笑う
額は祝福 頬は親愛
瞼は憧憬 髪は思慕
手甲は敬愛 足甲は服従
手指は賞賛 足指は崇拝
どこにするかとあなたは問うた
問われずとも決まっていた
小さなあの子の似姿に
祈りを込めて口付けた
‹Kiss›
もし本当に遠い未来
君が生まれて来るのなら
探してはあげない
追いかけてあげない
君の力で辿り着いて
でも本当に遠い未来
君が生まれ変わるなら
隠れたりしない
逃げたりしない
君が望むなら辿り着ける
‹1000年先も›
旅立つ友に花束を
その道程に晴天を
振り返る友に花束を
並んだ初心を無くさぬよう
消え行く背中に花束を
まことの友よ願わくば
その身に満ちたる愛の音を
‹勿忘草(わすれなぐさ)›