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10/28/2024, 11:56:19 AM

「此処が暗いというならば」
 「君は光の中にいたのさ」
「此処が明るいというならば」
 「君は闇の中にいたのさ」
「この薄明が安心するなら」
「この薄闇が心地良いなら」
 「それは否定されることでもないさ」
 「生きやすい場所で息をするのさ」

‹暗がりの中で›

10/28/2024, 10:28:25 AM

「お茶言葉って無いのかしら」
カチリと鳴るティーカップ
胡乱な視線の先で笑う瞳
「四つ葉のクローバーにも枯れた薔薇にも
 花言葉はあるでしょう?
 それなら、茶葉にだって有って良いと思わない?」
「はぁ、そうね」
摘んだクッキーを舐めた指
壁に並んだ紅茶缶を一つ
「じゃ、あれ何て付ける」
「特別な時間」
「……あれは」
「あなたと一緒にいたい」
「本体の言葉パクってくんなよ」
「ふふふ」
ついと輝く小さなスプーン
別々の缶から混ぜられた茶葉
「それなら、あなたはこれに何て付ける?」
随分昔に作ったブレンド
ミルクでも砂糖でもレモンでも
どうにもならない香りだけの苦い茶色
好みの違う二人分を
無理矢理一つにした歪を
くるり乾いた皿に混ぜながら
「まあ、一つしか無いだろ」
冷たい指先から奪った葉々を
クリームに掛けて一口に仕舞う
喉を引っ掻く小さな痛みを
幸福そうに見つめていた

‹紅茶の香り›

10/27/2024, 7:27:04 AM

好きなんて愛してるなんて
そんな感情だけじゃどうしようもないよ
本当なんて真実だなんて
そんな言葉だけじゃどうにもならないよ
開けたいならきちんと言って
あの日確かに決めた一言を
君が確かに本物だと証明したいなら

‹愛言葉›


初めての握手は熱くって
びっくりしたのを覚えている
寒い日の握手は冷たくて
びっくりしたのを覚えている
暑い日の握手は乾いてて
びっくりしたのを覚えている
別れの握手は凄く強くて
びっくりしたのを覚えている
再会の握手は酷く繊細で
びっくりしたら君が笑った

‹友達›

10/25/2024, 9:39:38 AM

最初から素直になれていたならば
一緒に逃げてくれたかな

‹行かないで›


生まれ落ちた日に温もりを
成長と痛みの夜に希望を
冒険へ踏み出す昼に輝きを
夢現に揺れる夕暮へ変化を
やがて遠く旅立つ光へ自由を

駆けて翔けて全うするその生へ
遥かな蒼より祝福を

‹どこまでも続く青い空›

10/22/2024, 12:23:28 PM

「祠壊したの?」
「掛布替えよとしたのに引っ掛かって壊れた」
「あらら、ばちぼこ怒ってない?」
「ばちぼこ怒られた。でも直したら良いって」
「……ちなみに今なんの作業中?」
「ロウソク。どうせならかっこいいドラゴンで
 飾る夢を叶えたいんだって」
「……純和に?」
「純和に。」
「あと御神体はリボンでドレスにしたいって」
「純和に」
「純和に。」

‹衣替え›


泣き喚いて
喉裂いて
有らん限りの声で
枯れ崩れる程に
叫んだ所で

前を向いた君には
どうせ届きやしないのだ

‹声が枯れるまで›

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