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11/7/2025, 9:55:22 AM

冬になったら
冬になったら
あたたかそうな服を着て
あたたかそうな器を並べて
あたたかそうな色で飾って
あたたかそうな灯りの下で
あたたかいと嘯いて
あたたかいと思い込んで
あったかい振りをして
あったかい振りをして

‹冬支度›

11/6/2025, 9:15:55 AM


手を組む事が目を閉じることが
対価を徳を積むことだけが
必ずしも祈りの形では無いから
どうかどうか一度きり
これが最期で構わない

‹時を止めて›


きらきらくらくら
花が降る
ひらひらふわふわ
花香る
甘い砂糖漬 金花茶に散らし
弱い陽射しでティータイム
それだけそれだけ強ければ
五感に刻み込めるなら
きっと君を忘れない
きっと今を忘れない

‹キンモクセイ›


アレを止める為に一晩話して、
アレを止める為に泣いたって?
馬鹿を言うない、止まる訳なかろ。
たったがそんな、一人分で。
アレを止める為にゃせめて、
街一つぶっ飛ぶ位の災害か、
皆倒れる位の災厄か、
最低その位は必要だ。
ずっとそうさ、止まっちゃくれない。
どうしたってアレは行く。

‹行かないでと、願ったのに›


小振りの苺と大粒の葡萄
一口サイズの果物たち
ペンを数本 紙一掴み
写真も少し数えるくらい
皆の残した21g
些細な些細な魂の形
私の時はきっと花弁
何枚分になっただろう

‹秘密の標本›


赤い掌を擦っていた
寒い寒い朝のこと
雪も霜もまだ遠い
風の吹き付ける朝のこと
道が赤く染まっていた
朝日だと思い地に触れた
冷たく冷たく粘ついた
掌が赤く染まっていた

‹凍える朝›


暗闇の中に花一輪
輝くからこそ価値がある
光明の隅に雫一つ
落ちるからこそ価値がある
未踏の大地に足跡一人
誰かの勇気に希望に未来に
導くからこそ価値がある
この全力に意味がある

‹光と影›

10/30/2025, 10:16:35 AM

幸せに暮らしました。と
在り来りに締めたいの
並べた最後に君の名を
当たり前に続けたいの
日常みたいに当然みたいに
君が
未来を歩んでほしいから
どうか顔上げて
どうか気付いて

‹そして、›

10/29/2025, 11:38:34 AM

君は沢山に愛された
君は一人を愛していた
君は誰にも愛されなかった
君は何人も愛していた
愛の程度は人それぞれ
ソレ自体に貴賤は無いけれど
明日の目覚めの一呼吸
ソレを満たせるだけあれば

‹tiny love›


いらっしゃいませお客人
さぁ靴を脱いでコートは置いて
鞄もアクセも大事に仕舞って
手を洗って体も洗って
良い香りの石鹸で
優しいタオルと柔い服
お手入れはオイル?それともクリーム?
お好きな方をたっぷりと
さぁさぁおしまい
これにて最後
それでは目の前の
扉を開けて

‹おもてなし›


例えば死しても潰えぬ願いを
魂魄尽きても刻まれた意思を
祝福と言うには痛々しく
呪いと言うには純真過ぎた
その輝きをなんと呼ぼう

‹消えない焔›


貰って食べて、書いて貰って、食べて書いて、
なんてお馬鹿な山羊でも無いのにね
ほらほら手遅れもう手遅れ
それに気付いてもいないけど

‹終わらない問い›


水面が揺らぐ
ふわふわと
空から降る羽に
撫でられて
大きく羽撃いた君は
果たして何処まで行けただろうか
私は立ち止まり空を見る
飛ばないままに
空を見る

‹揺れる羽根›

10/25/2025, 9:43:23 AM

甘く透き通る琥珀色
手に少し余る宝箱
向こうの景色は見えるのに
中身は濃く薄く曇りがかって
それを大層大切に
度々光へ翳していた

甘く透き通る琥珀色
本当に
舐めたら甘いと手の主が言う
潰してしまった鍵穴の
代わりにいつか開くかもと
譲られた鍵も大層甘く
一晩保ちはしなかった

‹秘密の箱›


「本当に一人きりになりたかったらさ、
 全部捨てて無人島にでも行くしか無いのかね」
「別にそんなことをしなくても。
 いつだってお前は独りだろ」

‹無人島に行くならば›


あまり好きじゃないの、と彼女は言う
枯れ葉を空に吹き飛ばし。
熱も骸も奪うばかりで、
何も与えられやしないのだと。
それでも好きだよ、と彼は言う
上着の裾をひるがえし。
暑を奪って寒を呼ぶ、
一時穏やかな休息を。

‹秋風🍂›


息を吸った 空が広い
きっと昔も未来も同じように
息を吐いた 心地よい風
きっと善きも悪しきも同じように
息を吸った 生きている
きっと植物も動物も同じように
息を吐いた 生きていた
きっと明日は 明日には

‹予感›

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