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「てかさ、本当巫山戯んなって話なんだけど。
 皆で集まろーっつっといて軒並みドタキャンって
 お二人ごゆっくりとかマジ何考えてんの」
とぽんビー玉の落ちる音
静かに温んだラムネは泡一つ零れず
「だぁる。アタシが頑張ったのは
 友達に恥かかせねぇためだけで
 オトコに見せるためじゃねえんだよ」
くるり巻いた一口焼きそば
空のたこ焼き皿の端
「あ?通知?……はードタキャン勢マジクソ。
 なんでお前らが合流出来てんの
 絶対近くで見てた奴じゃんからかい勢じゃん」
人形焼きを濡らすかき氷
差し出した綿飴を、赤い唇が食む
「……何驚いてんの、仕掛けたのソッチだろ」
初めてさわれた指先は
灯籠の火より余程熱く
「アンタも待つつもりーつって隙有らばじゃん。
 かみさまってのは可愛いツラしてコレだから…」
同じ色になっていく瞳を
狂喜と茫然半分に見つめ返して
「は、これ以上アイツ等の相手なんかしてらんねぇわ
 馬鹿らし。
 アンタとくっちゃべってる方がよっぽど楽しいね」
初めて呼べた名前を
初めて届いた言葉に
「なんだ、思ったよりイイ声してんじゃん」
満足気にわらった愛し子を
篝火だけがさいごまで見ていた

‹ぬるい炭酸と無口な君›


あ、と気が付いた時、
既に封筒は手から吹き飛ばされていた。
行く先を追う間もなく、
柵の向こうに降りて行った白の、
着水のような、浸水のような、音の気がした。
ああ、と思ったけれど、
行き先は追わなかった。
どうせ読まれもしない手紙だった。
灰になるくらいなら、
川に流れるくらいなら、
この口で直接伝えてやろうと、
日差しに凍える指先を、
見るとも無く目を閉じた。

‹波にさらわれた手紙›


約束だよ、指切りげんまん
また会おうね、次の夏
ひみつきちがばれないよう
ずっとずっと守ってるから
約束だよ、手紙も電話も
秋も冬も春も超えて
また涼しい日陰の中
ないしょの話をしよう
だから約束だよ、絶対に
絶対にまた会おうね
約束だよ

‹8月、君に会いたい›

8/4/2025, 9:45:34 AM