残業後対話篇 地球は毎日、ところにより雨~不寛容な社会について~
(天気予報が当たらない。)
現在時刻は23時。
会社から出ようとすると、本降りの雨だ。
(昨日見た天気予報アプリでは曇りで降水確率10%だったはずなのに。)
『今は?』
内心で問いかけてくるのはイマジナリーフレンド。
40代独身の悲しい寂しさが生んだ想像上の人格である。
(100%。昼に見たら60%になっていたからいやな予感したんだよね。)
『あー。つまりあれか。昨日の夜時点では降水確率10%だったけど、夜間から朝、昼と時間が経つうちに雲行きがかわって、天気予報アプリもそれに伴ってジワジワと降水確率が上がり、夜には100%になったと。』
(多分そう。)
少しずつ変わる天気予報に何の意味があるのか。
『いや、雲行きがかわっていくのに、かたくなに降水確率10%を維持するのは、そっちの方が問題でしょ。』
(当たれば問題ない。)
そう。天気予報がコロコロと確率を修正していくのが問題なのではなく、当たらないことが問題なのだ。
『何かさ。』
(何さ)
『不寛容じゃない?』
(・・・そうかな。)
言われてみれば、気が短くなっているというか、過激になっているような気もする。
(23時まで残業して、疲れているから。ここで雨にも降られるなんて、さらに気が滅入ることを増やしたくないのかも。)
『異常気象は近年言われていることだし、予想が難しくなっているんでしょ。そして、何より。君はいつもカバンに折りたたみ傘を入れてるでしょ。』
(そうだったね。)
カバンから傘を出す。
(心の余裕がないと、不寛容になる、か。)
余裕のないときに寛容であろうとすることが難しいことがよく分かった。
(仕事が詰まってプライベートがないから、これ以上わずかな不幸も許せそうにない。)
『自分がわずかなミスも許されないから、相手のミスを許したくないとかね。』
そういうことも、あるかもしれない。
不寛容さは、自らの不幸と比例する。
3/25/2024, 10:38:46 AM