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11/2/2024, 3:13:36 PM

この気持ちが一晩で消えないように(テーマ 眠りにつく前に)

眠ってしまうと、今抱いていること気持ちが、眠りと共に消えてしまう気がして。

せめて、伝えるために、筆を執る。

この気持ちは、一言では伝えられない。

言葉にすると、気持ちは変質してしまうから。


物語として残して、読んだ人が、私と同じ気持ちを共有来てもらえたら、そう思って意識が切れる前に書く。

眠って、起きたら、今のこのはかない気持ちは、眠気とともに消えてしまうと思うから。

今日の私の今の気持ちは、明日には消えている。

だから書く。

命みじかし、私の心。

10/9/2024, 9:57:25 AM

体力回復の夜(テーマ 束の間の休息)


 22時過ぎ。
 会社から出て、眠い頭を抱えつつ、行きつけの24時間スーパーへ向かう。

 軽くお腹に入れるものを買い、半分寝ながら自宅へ。


 独身中年男の、誰も待っていない家。

 ゴミがそこかしこにある、荒れた部屋。

 寂しいとか、汚いとか、時間があれば考えるのかもしれないが、とにかく、さっき買ってきた夕飯を胃袋に詰め込む。

 これで後は寝るだけだ。

 シャワーの一つも浴びたいところだが、そのまま寝る。

 早朝に起きるためには、自分的にはいくつかコツがある。
 寝るときに疲れを身体に覚えさせないことと、起きた後の熱いシャワーと、冷水。
(これで何とか目覚めをよくして、5時起き、6時に会社へ行く。これで朝礼までの貴重な作業時間を確保するのだ。)


 気分は戦場の兵士だ。
 僅かな休憩をキチンと体力の回復に使うことで、少しでも生存率を上げる。

 早速ベッドに倒れ込む。

(あー。学生の頃にゲームでキャラを酷使した罰が下ったのかな。)

 よくプレイしたそのゲームは、夜は限界なら翌朝6時まで活動できた。そして8時からまた活動できたので、キャラクターを訓練に次ぐ訓練で酷使して、能力を向上させていた。
 

 今は、自分が死なないために、睡眠時間を確保するのだ。

 12時から5時までの5時間。

 体力回復し、脳の老廃物を洗い流して、翌日の仕事に備えるのだ。

 明日も仕事が詰まりに詰まっている。

(あー、ワークライフバランスが取れた職場に転職したい。もうなんか、バイトでもいい。)

 そして、明日のために、意識を手放した。

 束の間の、僅かな休息。

7/31/2024, 9:51:14 AM

見る者、見られる者(テーマ 澄んだ瞳)


 物心ついた頃、あるいはつく前。

 その子の瞳は純粋で、見るものすべてが不思議に満ちていた。

 おもちゃはもちろん、机も椅子も文具もお菓子も、両親も、すべてが不思議。

 周囲の大人は、その子の澄んだ瞳を、子どもらしい無邪気な表情だと感じ取っていた。

 ただし、その瞳の向こう側にある脳で、本当は何を感じているのかは、周囲には当然伝わらなかった。


 エレメンタリースクールに入り、彼は澄んだ瞳のまま、やはり不思議な世界を見続けた。
 知らないことを教えてくれる『先生』という人がいたので、知らないことをどんどん聞いた。
 最初は機嫌良く答えてくれていた『先生』は、段々とうんざりしてきて、嫌な顔を隠そうとしなくなり、最終的にはその子を相手にしなくなった。

 それでも質問を繰り返すその子を、スクールはついに退学にしてしまった。


 学校を退学しても、その子の瞳に映る世界が不思議であることは変わらなかった。
 その子は、疑問を解消するために実験を繰り返し、ずっと何かを研究する生活になった。

 周囲は、エレメンタリースクールを退学になった変わり者として彼を見るようになった。


 時が経ち、彼はいくつかの発明をして、発明家として世に知られるようになった。

 周囲は彼の瞳を、あれが人とは異なることをする顔つきだと噂した。


 さらに時が経ち、彼は他の学者とトラブルになったり、裁判で争ったりするようになった。

 争った相手は、これだからエレメンタリースクールも出ていない奴は、と、彼の瞳を低学歴者の証のように見ていた。


 さらに大きく時が過ぎ、彼は最後の研究をしていた。
 最後の研究は、幽霊と話ができる電話機であった。

 現代の私たちは、さしもの発明王も、歳で耄碌したかと思ってしまう。

 しかし、しかしである。

 彼自身は、幼い頃から変わらず、自分の周囲の世界が不思議で、その世界を実験して、新しいことを知って、何かを作る。
 それをただ繰り返してきただけだった。

 変わったのは、周囲であった。

 彼の瞳は変わっていない。

7/7/2024, 10:15:45 AM

笹飾り(テーマ 七夕)


子どもの頃「○○になりたい」

高校生「○○大学合格」

大学生「彼女が欲しい」

社会人「昇給」「時間が欲しい」

30代「結婚相手」「ワークライフバランス」

40代「両親の健康」「ワークライフバランス」

50代「自分の健康」「ワークライフバランス」

60代「引退したい」「活力」「ワークライフバランス」

70代「引退したい」「活力」「ワークライフバランス」

 何一つかなうことはないけれど、自分が何を望んで、何に苦しんでいたかを思い出すことはできる。

 大切なのは、何を願うかではなく、限られた時間とコンディションの中、何をするかである。

6/9/2024, 6:46:56 AM

今日、この道を曲がらなければ(テーマ 岐路)

1

 会社への通勤路。
 この道を左に曲がれば、あとは僅かに歩くだけで、会社が見える。

 会社に入り、ロッカーにコートを入れて、席に着く。

 昨日の終わっていない仕事とまた向き合う。
 メールが届くたびに仕事は増え、催促の電話は鳴り終わらない。
 社の窓口では顧客が、できないサービスを要求する。

 部長は顧客満足度の向上のためか、自分の手柄のためか、次々とサービスを増やしていく。

 課長はそのサービスをそのまま部下に振っていく。
 これ以上下に振るところがない私たちは、家庭と私生活を潰しながら仕事をこなしていく。
 先に潰れるのは心か、身体か。
 耐えられない者から消えていく。

2

 働き方改革とは、どこの話か。
 残業は100時間を越えのが通常で、増え続けるしごとをこなせないのは私たちの効率が悪いから。

 黙って働いていた私も、いつしか忙しさに心を失っていた。

 それでも、後輩が病気で長期に休むと悲しくなる。

 どうしたらよかったのか。
 三人前働けない、情けない先輩で申し訳ない。

 そもそも、自分の能力が低いのが悪いのか、仕事が多いのが悪いのか。
 その区別もつかなくなる。

3

 路の話に戻る。

 この路を曲がらず、直進したらどうだろう。

 会社にはもちろんたどり着かない。

 まっすぐ行っても、ここは田舎だ。ひたすら道沿いを歩くと、山にぶつかる。
 道沿いに曲がって隣町に行き、やがて海に出るのではなかったか。いや、その前に鉄道駅にたどり着くか。

 鉄道駅で電車に乗り、海沿いを進むとかつての高校が見えてくる。

 工業高等専門学校だ。

 しかし、私はこの学校を卒業しながら、全く畑違いの職に就いてしまった。
 この学校を出た後、関連する業界に就職したら、私はどうなっていただろう。

 もしくは、最初の仕事を辞めて今の職場に来なかったら。

 あるいは、今の職場を早めに辞めて、また別の職に転職していたら。

 体を壊しつつ働く今の状態を回避できただろうか。

 あるいは、よりひどい状態になっていただろうか。

4

 頭を切り替える。
 過去には戻れないのだ。

 職場に行かず、直進し、列車に乗り、どこか遠くの町へ行くのはどうか。
 上京してもいいかもしれない。

 もう若さもないが、バイトまで含めれば、何らか仕事はあるように思う。
 甘いだろうか。

 東京に行けばなんとかなる。
 そう思うのは、田舎者の夢見がちがところかもしれない。

 もういい年だというのに。

 しかし、そう。もういい年なのだ。
 本来なら、結婚して、子どもを育てているはずの年齢。

 同級生にはそうやって生きているやつは何人もいる。

 まあ、あれだ。

 結婚してない、子どもも無い。
 だから、すべてを放り出すことができるとも言える。

 どこか遠くの町へ。

 夢がある話ではないか。


5

 どこか遠くの町へ行った場合。

 始業時間になれば、来ない私を不審に思った課長がスマホに電話をするだろう。

 私は電話に出ない。あるいは、退職代行にでも連絡をお願いするか。

 そこまで行かなくても、「今日は体調不良で休みます」でもいい。

 どうにもならない状態だが、一日休んだだけではその破滅は上まで伝わらない。

 逆に言えば、私が永遠に職場に戻らないと仮定した場合。
 数週間後の破滅を回避するためには、一刻も早く代わりの人間を宛てる必要がある。

 もちろん、すぐに同じ動きができるとも思わない。しかし、今日から別の職員が当たれば、大きな破滅は回避できるのかもしれない。

 辞めるのなら関係ないって?

 そう思えるなら、これまで迷わず辞めている。もしくは、どうでもいいと、終わらない仕事を放り出して帰ってしまっている。

 こんなことを考えてしまっているから、未練がましく長時間労働をしている。

 自分の能力が上がれば、もしかしたら人間らしい暮らしを取り戻せるかも、と思うから。

 しかし、その未練が、同僚や後輩を壊した。

 彼らは私よりも前に、この現状で壊れてしまった。

 私は中途半端なのだ。

 さっさと辞めてしまえばいい。あるいは、仕事が回らないことについて、もっと上に掛け合うか。

 ただ自分の仕事を終わらせることだけを考えて、長時間労働をした結果が、今だ。


 きっと、私が体を壊しても、上司たちは言うだろう。

「そこまで無理するなら、言ってくれればよかったのに。」

 しかし、私が人を増やしてほしいと言ったときに彼らは何と言ったか。

『そんなことを言っても人は増やせないよね』

 『よね』とは何か。あなたは私よりも遙かに権限を持っているはずでは無いのか。

 それとも、ないのか。どこまで行っても人を増やせる人間など存在しないのか。

 ・・・そんな経験をしても、まだ会社に行くのか。

6

 この道を曲がるのか、まっすぐ進むのか。

 毎日岐路で考える。

 毎日曲がることができるのか。
 そのうち体を壊して歩けなくなり、道をまっすぐ歩くこともできなくなるのではないか。

 見えないだけであるはずの「体が壊れるまでのカウントダウン」におびえながら、今日も。

 道を曲がる。

 いつか、まっすぐの道を歩くことを夢見て。

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