『たとえ間違いだったとしても』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
教卓の前に立って、プレゼンテーションで一つの教室のくうきを担う、負けない自分を想像しながら、ページを一枚々々描きあげる、一ヶ月弱の準備期間が過ぎた。
今日は本番の日だ。
グーグルスライドの文を肝にワンバウンドさせてから口で詞をつむぐ、実はこれは私のずっと共に育った言語を使ってではない、私の一言一句が私の口内にしがみついて詰まり続ける、まだ学習中の難しい言語だった。
それなのに圧力をなぜか感じていなかった。知見をシェアしたい一心を持ってたら、おおらかさが私を味方していた。口は動き続けていた。たとえ間違いだったとしても、間違えてる自分のこれ以上に完全な自分を目指さなかった。
たとえ間違いだったとしても、それ以上に目が向く何かがあったほうが、気楽なのかもしれない。
「あいつが、虫だ」
それは正しくはなかった。けれども誰一人、それを疑いはしなかった。
虫。穢れや厄を振り撒く悪いもの。
この村では年に一度、虫を追い出す祭りを行っている。
それは紙や藁で作った人形を村外れの川に流すもので、実際に人を追い出すことはない。
それなのに何故、あの時彼女を虫だと決めたのか。何度も繰り返す後悔は、今はただの意味のないものだ。
あの頃。村では原因不明の病気が広がっていた。
薬を飲んでも下がることのない熱。静かに村中に広がって、学校内でも皆不安に表情を曇らせていた。
「――きっとこの村に、虫がいるんだ」
誰かが言った一言が切っ掛けだった。
「虫を追い出せば、きっと病気はよくなるはず」
今まで祭りをただの行事として信じていなかったはずなのに、クラスメイトの誰もが信じていた。
「虫を探さないと」
その一言で、互いが互いを疑い始めた。
ただでさえ皆家族が熱で苦しんでいるのを見ており、そしてそれは自身にも感染するかもしれない不安を抱えていたのだ。不安は一瞬で虫という犠牲者を探す執念に変わり、クラスには疑いや怒りの言葉が響き渡った。
恐ろしかった。どうにかして止めたくて、その方法を求めてクラスを見渡した時、彼女を見てしまった。
クラスメイトと言い争うこともなく、教室の隅で悲しげな表情をしていた彼女。その様はクラスの中であからさまに浮いていた。
気づけば、彼女を指さしていた。
「あいつが、虫だ」
それは正しくはなかった。けれども誰一人、それを疑いはしなかった。
彼女も、何も言わなかった。
そして祭りを真似て、彼女を村の外れまで連れて行った。
彼女の背を押し、川を渡らせる。川を渡り切った後も、その姿が見えなくなるまで誰一人動こうとはしなかった。
「虫は、いなくなった」
誰かがそう呟いたのを覚えている。
彼女は虫ではないと、否定する言葉は一つも聞こえなかった。
次の日。彼女は学校に来なかった。
一週間経って、街から届いた薬が病気を治してくれた。
半月経って、村は元の日常を取り戻した。
けれど。
一か月以上経っても、彼女がクラスに戻ることはなかった。
何故、彼女を虫だと決めたのか。それはきっと感情のはけ口を誰もが求めていたからだ。
不安を吐き出し、見える形で安心を得たかった。たとえ間違いだったとしても、そうしなければ皆耐えきれなかった。
でも間違いだったと踏みとどまることができたのならば、きっと今も彼女は隣にいてくれた。
彼女へのプレゼントとして密かに作った押し花の栞が、今も手元に残っていることはなかったはずだった。
後悔している。彼女を虫だと追い立てたことも、春先の冷たい川を渡らせたことも、姿が見えなくなった時点ですぐに迎えに行かなかったことも。
あれからそろそろ一年が経つ。
彼女はまだ、戻ってこない。
「兄さん、ただいま」
笑顔で戻ってきた妹の姿に、境内の掃除をしていた兄は眉を顰め歩み寄った。
彼女が村を離れて一年が経つ。社の巫女として村の穢れを引き受け、流すためだとは理解してはいたが、それでも連絡一つしなかったことはそう簡単に許せるものではない。
「遅い」
「痛っ!?」
べちりと、呑気に笑う妹の頭を叩く。痛みに頭を押さえ、不貞腐れたように頬を膨らませて妹は兄を見上げた。
「遅いって……だって、村中の病だよ!それ全部引き受けて、ついでに街のお医者さんにお薬手配してもらってからお山に籠ったんだから仕方なくない!?」
「だとしても、お勤めの合間に連絡はいれられるはずだ。そもそも何で周りにしっかりと説明をしないんだ」
「え?だって皆が始めたんだよ?分かってやってたんじゃないの?」
「分かるわけがないだろ。少しは考えろ」
驚く妹に、兄は疲れたように嘆息する。
妹がいない間、どれだけの人が心配し心を痛めていたのか。彼女は少しも理解してはいなかった。
「理不尽……にしても、何ていうか村中が暗くない?厄とは違うみたいだけど」
文句を言いながら、そういえばと妹は不思議そうに首を傾げる。
やはり、何も理解していない。兄は眉間の皺を濃くしながらどう話したものかと悩む。
巫女としての資質が強いためか、妹は人よりも村として物事を見ることが多い。そのため人の機微に疎く、彼女がいなくなった後の残された者たちの想いを伝えても、そう簡単に理解することはないのだろう。
彼女を虫として送ったクラスメイトの子たちが、その当時どれほど追い詰められていたのか。そしてそれを後悔し続けているなど、想像すらしていないはずだ。
「そうだ!ちょうど虫送りの祭事が近いことだし、また虫として厄を流せば何とかなるよね?」
思わず、兄は頭を押さえた。
どうして妹はこうも察しが悪いのだろうか。
たとえ間違いだったとしても、心を守るため悲壮な決意で彼女を追い遣ったクラスメイト。
たとえ間違いだったとしても、それを本当にして引き受けた厄を流し祓えばいいと気楽に考えている彼女。
すれ違い、少しも交わることがない。
痛むこめかみを揉みながら、兄は石段へと視線を向ける。
ちょうど参拝に来たのだろう。妹のクラスメイトたちの姿が見えた。
「とりあえず、一回泣かれてこい」
「え?それってどういう……?」
何も分かっていない妹の体を反転させ、背を押した。
同時に駆け寄ってきたクラスメイトたちに囲まれ、泣かれ心配されて困惑している妹を見ながら、少しでも人に興味を持ってほしいと兄は切実に思っていた。
20260422 『たとえ間違いだったとしても』
会社の負債を期日内に返せなかった。努力はしてきたし最善を尽くしたはずだった。でも金額が大き過ぎた。残った額もそれなりの金額。倒産や差し押さえの可能性が高い。ここから立て直すのは今の自分ではかなり厳しいことは長年の経験から分かる。諦めるわけではないが手放す覚悟を持たなければいけないと思った。それはこの会社じゃない、彼女のことだった。
彼女と出会ったのは3年前、俺が働く電気屋にふらっと現れたお客さんだった。最初はよく顔が見えなくてそこらのお客さんと同じに見えたけれど、何やら困っているようでこちらから声を掛けた。顔を上げた彼女に一目惚れをした。彼女は一人暮らしをするとかで家具を見にきていたらしい。新生活用のお得なものを紹介する俺に彼女は「家電って長持ちしますよね?そう簡単に買い替えないですよね?」真っ直ぐな眼差しで質問をしてきた。「そうですね10年は余裕で使えます」「でしたら、新生活のではなくて二人暮らしくらいので揃えて欲しいです。金額は構わないので」彼女のその言葉に俺はまた惚れた。でも彼女はまだ18歳だった。未成年に手を出すのは良くない。彼女が成人するのを大人しく待とうと思った。彼女には好印象を抱いて貰えたようで彼女のお母さんや弟妹も紹介してくれていたからいくらでも方法があると思った。彼女が成人して彼女の代の成人式が終わったタイミングで彼女がお母さんと軽く家電を見にきていたからチャンスだと思って彼女の職場を聞いた。ファミレスで働いてるってこれはチャンスすぎる。しかも俺の職場からも近いし夜も遅くまでやっているらしい。行くしかないと思ってシフトを軽く聞いた。重くならないように意識させないように。彼女は可愛げな笑顔で「もしシフトのことで分からないことがあればぜひご連絡ください」と言ってくれた。それから俺は彼女のファミレスに通い親しくなってデートに誘った。ここだと思って告白したが無惨なまでに振られた。それから半年たったある日彼女のお母さんから連絡が来た。「〇〇さん今がチャンスですよ!」その連絡を受けて彼女に連絡をしたらデートの約束ができた。デート中、俺は抑えきれなくなって他のことを聞いた。他にもかなりアプローチを受けているとのこと。何がなんでも俺が彼女を幸せにしたいと思った。だから再度彼女に結婚前提で告白をした。彼女からようやくYESを貰えた。ここで終わりじゃない。ここからが幸せの絶頂だと思った。
彼女との日々は想像通り最高だった。俺の腕枕で寝るのが好きなところ、俺のために毎朝おにぎりを作ってくれるところ、ころころと表情を変えながら毎日いろんな話をしてくれるところ、俺の料理を美味しそうに食べるところ、言い合いをした後には必ずごめんねって謝ってくれるところ、家ではずっとくっついてくるところ、無防備に薄着で寝転んでは俺を悩ませるところ、言い出したらキリがないくらいに全部の時が幸せで癒しで最高だった。だけど今回のことに彼女を巻き込んではいけないと思った。俺は彼女が愛おしくて愛おしくて仕方ないから一緒にいたいと思うけどそれは俺のエゴでしかない。彼女は可愛くて知性があって誠実で可憐だ。借金まみれ家無し金なしの俺が捕まえておくには勿体なさすぎる。俺が手放せば今の俺よりも幸せにしてくれるんだろう。そう思って彼女に事情を話した上で別れを告げた。「終わりにしましょう」彼女は感情を必死に押さえ込んだような表情で何も言ってこない。これ以上何かを言う必要はないのかもしれないけど、彼女が諦められるようにこの間の些細な言い合いのことを引っ張り出した。「あの時言われたのも正直傷ついたから。」言い合いで感情に任せて彼女が吐いた言葉に傷ついたのは本当だった。でも別れを切り出すほどのことでもない。それに彼女は必死に事の経緯をしっかり説明しようとしたのを俺が拒んだからどちらかと言えば俺の方が悪いわけで、彼女はこんな引っ張り出すほど悪くなかった。彼女の表情を見ると彼女はものすごく落ち込んだような表情をした。「ごめんね、傷つけてしまって。でも誤解をされてるからそれを弁明したいと思うのだけどそれは私のエゴで〇〇さんからしたら言い訳にしか聞こえなくて不愉快になるよね、、本当に傷つけてしまってごめんなさい」彼女の精一杯の謝罪を俺はそうじゃないんだと言いたいけど、言ってしまっては彼女のことだから「なら別れなくていいんじゃない?」と言い出しかねない。彼女が俺のことを好いてくれてるのは一緒に暮らしてる中でよく感じた。でも感情だけでは乗り越えられない。故にこの選択がたとえ間違いだとしても俺は愛してる彼女が不幸にならない方法を選びたい。
君といると楽しい。
君といると落ち着く。
君がいるから何でも挑戦出来る。
君がいてくれるから笑っていられる。
君がいないと寂しい。
君が誰かと楽しくしてると、ちょっと面白くない。
何もかもが君中心。
優しく触れてくるその手や近すぎるスキンシップ。
いつの間にか入られてたパーソナルスペース。
友だちなのかと言えばそうで、それ以上なのかと思う時もある。
心地よすぎる君の隣り。
たまに感じる熱い視線。
それが気恥ずかしくもあり嬉しくもある。
きっとそれは、おれの都合のいい勘違い。
そうであるはずはないんだ。
この想いがおれだけの錯覚だとしてもこの関係を大事にしたい。
一方的に思われても気持ち悪いだけだろう男同士なんて。
おれはただこのままずっと君の隣りにいたいだけなんだ。
この感情に、おれはあえて名前を付けずにいる。
(たとえ間違いだったとしても)
こんな夢を見た。
「そうか、この世界は偽物なんだ!」
私がそう叫ぶと、半分寝ぼけていた親友は驚いたのかイスから転がり落ちそうになった。
「な、何?急にどうした?」
「今更、白を切らないで。この世界はあんたが作ったんでしょ?それで本物の世界はあんたが壊したんだ!」
「…大丈夫か?疲れてるんじゃないのか?」
親友は疲労で私が狂ったと思ったのか、哀れみの目を向けている。そんな目をしても、もう騙されないぞ。
「私は疲れていないし、狂ってもいないよ」
「ちょっと待てよ、俺はただの人間だって。分かってるだろ、生まれたときからずっと一緒なんだから」
彼は慌てて弁解し始めた。そう言うと思って、私は彼の口元を指差した。
「だったら、あんたの口元のほくろはどうして左についてるの?生まれたときから右の口元についてるのに」
すると、彼はアッと声を上げ口元を隠した。
「しまった、反対に真似しちゃった…」
ぐにゃぐにゃと粘土のように彼の体が伸び縮み丸まったかと思うと、大きな黒い影になった。
「えへへ…もうバレちゃった。そんなに睨まないでよ。何で気づいたの?」
「一年経つのに、カレンダーやテレビの西暦が去年のままだったから」
「あ、そうか。四季が一周したら一年か。調整しとくね。…ところで、何か言いたそうだね」
影はこちらに近寄ってきた。私の鼻先に影の爪がツンツンと当たる。
「あれでしょ?どうして偽物の世界なんか作ったのかって聞きたいんでしょ?」
言い当てられて、目を丸くする。
「どうして、知って…」
「もう何度目か分からない質問だもの。長い付き合いだからね、君とも。ねえ、今回も知りたい?」
質問の意図が分からず、口ごもる。今回も、ってどういうこと。もしかして、今まで影に同じ質問をしている…?
「どうせ、結果は変わらないから教えてあげるね。世界を壊したのは、ぼくじゃなくて君の選択。壊れた世界に君だけは可哀想だから、偽物の世界を作ってあげたんだ」
「え」
「でも、人間って一人じゃ生きてけないでしょ?だから、ぼくの複製体が君の周りの人たちを真似してるの」
こーんな風に、と影は先ほどと同じように親友の姿を真似してみせた。今度は、ほくろの位置が合っている。説明が頭に入ってこない。
「私の選択が世界を壊した…?」
「うん。まあ、元気出しなよ。住めば都って言うじゃない。君の選択がたとえ間違いだったとしても、ぼくは全く気にしないよ」
影からの慰めも心に響かない。ただ自責の念がぐるぐると頭を回り続け、ぐらぐらと意識が遠くなってくる。
「あ、眠い?寝ていいよ。寝たら何もかも元通りだから。寝かしつけてあげよっか?」
影に無理やり寝かしつけられた。頭を撫でられ、ポンポンと背中を叩かれる。こういうおままごとも良いね、と影が呟くと同時に意識が途切れた。
たとえ間違いだったとしても
一度しっかりと距離を取るべきだと思った。
精神的に離れることはできそうもないから、まずは物理的に。体を無理矢理にでも遠ざければ、きっと心の方もそれに合わせるように正しいはずの距離に収まることができるはず、そう縋るように思い込むしかなかった。
物心がついた頃には隣にいるのが当たり前の人だった。
初めての記憶は手を引かれて歩いた夕暮れの道。一回り大きな柔らかい子どもの手に包まれて、今はもう埋め立てられてしまった川辺りの道を歩いていた。
歩くたびに夕日に染まったその人の髪がきらきらと輝いて、飽きもせずにじっと見上げていた。
どこかのスピーカーが少しひび割れた夕焼け小焼けを流していて、それに混ざるように頭一つ上から振ってきていた声はもう忘れてしまったけれど、優しい響きが大好きだったことは覚えている。
大きいと思っていた背中は、その背を追い抜いてもなお広く逞しく。ずっと憧れて、焦がれて、追いかけ続けていたせいで、気がついた時にはすっかりと目の逸らし方がわからなくなっていた。
このままではいずれその人なしでは真っ直ぐ立つことすらできなくなってしまう。漠然とした危機感は日常に忙殺され、結局初回割引で半額になった占いに背を押してもらう形で、その日の内に片道分の航空券のチケットを予約した。
帰らないつもりではないのだ。ただその人にしがみついた心を剥がすための時間がどれ程必要なのか、自分でもわからなかった。
幸い大学生の夏休みには無計画な放浪を許すだけの時間がある。金の方は少し心許ないが、元々浪費癖がある訳でもない。将来一人暮らしをする時のためにと貯めていた金に手を付ける躊躇いさえ振り払えれば、後は何も問題なかった。
飛行機のチケット一枚と数日分の着替えだけを詰め込んだリュックサックは随分と軽い。
まだ寝ている家族を起こさないように、口の中だけでいってきますと呟いて、玄関の扉を開けた。
「どうして」
家の前の道路には見覚えのある中古のミニバン。そこに寄りかかるようにして、腕を組んで立っていたのは旅の目的とも言えるその人だった。
できる限り安く済ませるために買った飛行機のチケットのせいで、今はまだ早朝とも深夜とも言える時刻だ。朝日は空の端に薄らと気配を漂わせているだけで、寺の鐘の音どころかカラスの鳴く声すら聞こえてこない。
自分以外の全てが眠りについていると思っていたのに、一番起きていてほしくなかった人が眠気すら見せずにそこにいた。
けれど心は素直なもので、背筋の伸びたその姿を見ただけで嬉しい嬉しいと手を伸ばそうとしてしまう。
頭と心の温度差で目元が熱を持ち、まばたき一つで睫毛が湿った気配がした。
「今日発つって言ったのはお前だろ」
玄関で立ち尽くすこちらに向かってその人が大股で近づいて来る。
その場に張り付いてしまったかのように動かない足に対して、目はその姿を逃すまいと懸命に追いかけている。
玄関までの距離はたったの数歩だ。目の前のその人は、肩に引っ掛けていただけのリュックサックを無遠慮に奪う。
冷え切らなかった風が温く吹き抜ける。
そのまま車へと戻り、助手席のドアを開くと奪われたリュックサックはドサリとその中に放られてしまう。
「送ってく」
それだけ言ってその人は、こちらを見もせず運転席に乗ってしまった。
逃げようにも飛行機のチケットはリュックサックの中だ。向かえる先は一つだけ。
建付けの悪くなった鉄の門扉を閉めると、ギィと聞き慣れた耳障りが静かに響いた。
「何隠してる」
フロントガラスを睨むように運転するその人が口を開いたのは、何個目かの赤信号だった。
八人は乗れるミニバンに二人きり。賑やかな声のしない車内はエンジンの音だけが重苦しく響いている。視線のやり場に困って、流れていく街灯の明かりを見るとはなしに見ていた。
「なにも」
素っ気なく聞こえるように返した言葉で、反射した窓に映ったその人が眉間の皺を濃くする。
長い長い溜息を吐き出して、それでも消えなかった皺を指で解す姿はどこか疲労が滲んで見えた。
信号が青に変わる。
緩やかに加わった慣性に逆らわず、座席に身を沈めた。
「いつ帰ってくるんだ。迎えに行く」
「いいよ。決めてないし」
車に乗ってから初めてその人がこちらを向いた。
見開かれた目が窓越しにこちらを見つめてくる。
危ないよ、と
「」
「決めてないってお前……大学はどうすんだ」
「それまでには帰るつもり」
「……お前がいないとあいつら寂しがるだろ」
昨夜、体力の限り足にしがみついて離れなかった末っ子の姿を思い出す。年の離れた末っ子は
「そのうち慣れるよ」
どうだかな
「俺は無理そうだ」
「お前は一度決めたら曲げないからな」
幼い頃の呼び方で呼べば
「いってこい」
あの時決めたことは、今に繋がってるんだろうか。直結してなかったとしても、実感できなかったとしてもどこかで感じられるときがくるといいな
「たとえ間違いだったとしても」
たとえ間違いだったとしても
厚顔無恥で空想的な主張かもしれないが、たとえ間違いだと言われるようなことであっても、それが私の初信であるならば、私はそれを貫徹したい。妥協も譲歩もしたくない。しかしながら、私には自分のために生きて、自分のために死ねるほどの強さはない。自身の美学を追い続けることのできる人間を、私は羨望する。
『たとえ間違いだったとしても』
古びたカセットテープには、手書きの震える文字で、今は亡き祖母の名が記されていた。
それは認知症を患った祖父が、最後に遺した録音だった。
再生ボタンを押すと、ノイズの向こうから若々しい、けれどどこか心細そうな男の声が流れてくる。
「もし、あのとき君を追いかけなかったら、僕たちはもっと幸せな別の誰かと出会えていたのかもしれない」
声の主である祖父は、一生を添い遂げた祖母の名前を呼んだ。
二人の生活は決して楽なものではなく、苦労の絶えない日々だったと聞いている。
「でも、たとえ間違いだったとしても。神様が別の正解を用意していたとしても。僕は何度でも、君と共に進む道を選びたい」
録音はそこで途切れている。
祖母が亡くなったとき、祖父はすでに彼女の顔も忘れていた。
けれど葬儀の最中に一度だけ、誰もいない空間に向かって「ごめん、待たせたね」と笑いかけた。
窓の外では、二人が植えた花水木がそよそよと風に吹かれて咲いている。
警告がなる
寒い
暖かい
気持ちわるい
気持ちいい
魅力からは逃れられない
たとえ間違いだったとしても
俺は、この世界を本機で嫌っていた。
小学も、中学も、高校も。
原チャで、バイト帰りに贈ってくれた先輩、10代にして、ビアホールで飲んで潰れて、自宅まで送ってくれた先輩、みんな尊い。
もう30年位前だけど、今でも忘れない。
ロクデナシの俺を親身に思ってくれていてくれたこと、忘れない。
20歳前に、原チャ事故で死にかけてICUに入ってから散々だったな。てか、今でも。顔も変わったし、入れ歯だしw
まぁ、あるよね。若気のいたりとか。
ても、俺は、こんな闇歴史の身だけど、覚えていたい。
たとえ、それが世間一般にクソだとしても。
ありがとう、昔の先輩方・・・
だから、今の俺がいる。
(たとえ間違いだったとしても)
お題たとえ間違っていたとしても
あなたのことを考える 毎日いつも考えてる
あなたの可愛い顔が好きだなぁ
優しく見つめてニコニコと笑う
サラサラの髪も好き キレイな指先も好き
柔らかな身体も好き 何もかも好き
どうしようもなく惹かれる
これは、紛れようもない私の気持ち
この思いが何なのか?
なぜ、あなたにだけそう思っているのか?
そんなこと考えて初めは戸惑っていたのに不思議だね
たとえ間違っていたとしても、男の子には何にも感じないの
たとえ間違いだったとしても
たとえ間違いだったとしても
私はあなたを愛すわ
たとえ間違いだったとしても
私はあなたの隣にいるわ
たとえ間違いだったとしても
私はあなたを見捨てないから
《たとえ間違いだったとしても》
この想い たとえ間違いだとしても ボクは貫く キミも信じて
だったとしても、じゃ語呂悪かった……
2026.4.22《たとえ間違いだったとしても》
『たとえ間違いだったとしても』
最近書いていなくてすみません!!
久しぶりに書きます!!
たとえ間違いだったとしても、許してくれる、慰めてくれる。
そんな優しい人が、僕の近くにいる。
そんな優しい人を、僕は好きだ。
でも僕は陰キャ。
彼女は、みんなに好かれているから、人気者だから、陰キャの僕にかまっている暇なんてないんだ。
たまに遊ぶこともあるけど、恥ずかしくて大体は誘いを断っている…。
他の男子だって、彼女を狙っている。
きっとそんな彼女は、他の子を好きになるに違いない。
そうやって片想いをしているうちに、僕は引っ越すことになった。
学校は変えないけれど、少し遠いところに引っ越す。
「…はぁ…。」
僕は車の中でため息を付いた。
彼女と家が離れてしまうのだ。
悲しいな…。
『着いたぞ!』
お父さんが言った。
「??」
ここは見覚えのあるマンションだった。
そう。よく帰り道に送っていった彼女の家だった!!
それじゃ、彼女と一緒に学校に行って、一緒に学校を帰れる!!
だけど恥ずかしいから、どうせあんまりあわないけど…。
でも遠い存在だと思っていた彼女に、少し近づけた気がした。
部屋は1025号室。
引っ越しの準備をして何日か経った頃、彼女も引っ越したということがわかった。
マンションは変えずに、同じ階に住むおばあちゃんと同じ部屋で住むらしかった。
僕は、その話を書いてから、自分の部屋をもらった。
とてもきれいで、広かった。
僕はそこに自分の机を置いた。
そしてベランダに出ると、1枚の紙が落ちていることに気がついた。
拾ってみると、写真だった。
そこに写っていたのは…。
「…♥」
僕と彼女だった。
でも、なぜ??
これは、修学旅行の写真だった。
それで僕は思った。
もしかして、ここは彼女の部屋だったのかもしれない、と。
それで、同じ班だった僕と彼女が写っていたのかもしれない。
いや、でも違う人かもしれない。
彼女が、違う部屋のベランダから落としてしまい、ここに来てしまった、という可能性もある。
だけど、たとえ間違いだったとしても、彼女がここに住んでいたと信じたい。
彼女への想いは変わらない僕だった。
たとえ間違いだったとしても
私はあなたに会ったことも、自分が犯してしまった罪も後悔はしていない。
私の行動は誰かにとっては否定したくなるような醜い私だとしても私はこの選択を後悔していない。
前から望んでいたことででも、それは間違いであなたを傷付けた。
だからもう会わない。傷つけたくない。私は心のどこかで人は変わらないと思っている。だから、私は私を信じてあげられないのかもしれない。
夕闇に溶け込むようなドス黒い思考をどうにか押さえ込んでこれからも生きてゆく。
たとえ間違いだったとしても、あのころの私には唯一の正解だったんだ。
『生きる意味を』
「姉ちゃん…」
か細い声に顔を向けると、目に涙を浮かべた弟が立っていた。「どうしたの?」と私が聞く前に彼が口を開いた。
「俺たちは生まれたこと自体が間違いだったの?」
ヒュッと喉が鳴った。急に息を吸ったからか喉が痛い。いや、それよりも弟のそんな顔を見てる方が痛い。心がズキズキと痛んだ。
「どうして?どうして、そんなこと聞くの?誰かに何か言われた?」
「……」
弟は言いにくそうに顔を伏せたが、私にはわかってしまった。
「…またあいつらに何か言われたのね?」
弟は頷くことも言うこともしなかったが、無言は肯定ということだ。私は弟の前に立ち、手を取った。弟の視線が私に向けられる。
「いい?よく聞いて。私たちはこれから生まれる妹や弟たちを守るためにここにいるの。
生まれたことが間違いかだなんて関係ない」
「妹たちを守るため…?」
「そうよ、これからはそれだけを考えて。それを…生きる意味にして」
「…うん……」
何の慰めにもなっていないが、今の私に言えることはこれしかなかった。弟は頷いた後、私の胸に顔を埋めた。そんな弟の頭を撫でる。
私の弟にこんなことを言うなんて…あいつらは後で処理しないとなぁ……
【たとえ間違いだったとしても】
『たとえ間違いだったとしても』
※二次創作 BL セリフのみ
「おい、本当にこっちで合ってんだろうな?」
「多分」
「多分てなんだ。記憶があるからルートは全部把握してるって自信満々に言ってただろうが」
「そうだと思ったんだけど、草木が成長してたり、知らない道が開拓されてたりするんだよなぁ」
「おい」
「まあまあ、方角的に街はこっちだから。大丈夫だよきっと」
「ったく、樹海で遭難とかシャレになんねえ」
「水はあるし、木の実や獣もいて飲食には困らないから、道を間違えてたとしても、死ぬことはないよ」
「ざけんな。いい加減まともなベッドで寝てえ」
「それは確かに」
「覚悟はしてたが、ここまで過酷な旅だとはな」
「……今回の旅が終わったら、どこか住むところを探すかい?」
「は?」
「世界を旅する僕の夢に、きみが付き合ってくれるのはすごく嬉しいし楽しいんだ。でも、きみに無理をさせたいわけでもなくて。僕にとって一番大切なことは、きみと一緒にいること。それで、きみが幸せなことなんだ。だから、きみが望むなら」
「お前みたいな好奇心の塊りが、どっかの町に腰落ち着けられるわけねえだろ。我慢できずに出奔するのが目に見える」
「そこは僕だって我慢するよ、さすがに」
「あのな、オレだってお前とおんなじなんだよ。じゃなきゃ、そもそもこんな酔狂な旅にハナから付き合ってねぇっての。分かれよバーカ」
「そっか、ありがとう。大好きだよ」
たとえ間違いだったとしても、ここまで自分から行動したことはない。
間違いでもいい。
やっと、なりたかった自分に近づけるんだ。
「たとえ間違いだったとしても」