『たそがれ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
たそがれた道を君と歩くその時間が好きだった
君と並んで歩くだけで僕は幸せだった。
今はもう一緒に帰れないけど
君が大好きでした。
─────『たそがれ』
夕焼けの中で音楽を聴く。
目が
耳が
この肌寒さが
脳を安らかに
私を幸せにする黄昏。
たそがれ(2023.10.1)
茜色を背にして、君は「じゃあね」って、軽く手を振った。まるで、また明日も当然会えるよと言うかのように。
校門を分岐点に、君の家と私の家は真反対。もう、偶然会うなんてこともない。
逆光の影に塗りつぶされて、君が笑っているのか、泣いているのか、わからなかった。黄昏時は、別れの思い出すらくれないんだね。
「誰そ彼」なんて言うなら、君じゃない、誰かを連れて行ってくれたらいいのに。
ある人にとって
それは始まり
それは終わり
寂しさであり 嬉しさでもある
あの空は教えてくれる
一人一人に 今が「何の時」なのか
黄昏は 静かに語る
/たそがれ
「ねぇ、パパ。たそがれってなーに?」
「そうだなぁ~、僕たちを照らしてくれていた昼のお日様が、夜を連れてくる時間帯のことかな」
「お日様がお仕事をお月様に交代するの?」
「・・・・・・ん、まぁ、そういうことかな」
「それじゃあ今度たそがれの時間のお日様に会ったら、お疲れ様って言ってあげなきゃね」
そう告げる我が子はどこか決意したように頷くと、こちらの疲れが吹っ飛びそうなほどの眩い明るさで、ニカッと笑った。
【たそがれ】
たそがれ
何を見るでもなく、ぼんやりと窓の外へ目を向けると枯れた樹木が眼に入り嫌気が差す。
世話はちゃんとしていた。
今年の夏は暑すぎたのだ。
影も用意して、水はたっぷりやったけどだめだった。
どんどん枯れて、葉が焼けて落ちた。
ごめんね。
そう思いながらも枯れ枝を抜くでもなくただ見る。
誰彼が、罪の色に変わるまで。
たそがれんの、厨二病っぽくて嫌だったけど
小学まではクラスで一番人気者だった
中学に入ってから一人でいることが増えた
高校へ進学すると、頭の出来の悪いところだったから、さんざんいじめられた
会社員になった今、誰からも期待されなかった
それが助かった時もあったけど
今ぐらいは、海に映る夕陽を浴びながら、たそがれてもいいよな、?
_2023.10.1「たそがれ」
【たそがれ】
シャランと響く鈴の音が、僕の耳を打つ。沈んだはずの太陽が、空の一番低いところを赤く染める時間帯。淡い影が地面に長く伸びている。
友達に声をかけられて、後ろを振り返った。その瞬間目の前に現れた黒々とした化け物は、僕の前に立つ狐面の人影の手で既に地へと倒れ伏していた。
「いけないよ、異形の声に応じたら」
涼やかな声だった。シャラン、シャラン。狐面の男の歩みに合わせて、鈴の音が凛と反響する。
「黄昏どきは境界が緩むんだ。声に応じれば容易に怪異の領域へと引き摺り込まれてしまう」
たそがれ。聞き馴染みのない言葉を、口の中で転がした。男の手が僕の肩へと触れる。促すようにトンっと、彼は軽く僕の肩を叩いた。
「さあ、わかったらもう帰りなさい。黄昏には気をつけて」
一つ瞬きをした刹那、僕は通学路に立ち尽くしていた。あの化け物の骸も、狐面の男の姿も、どこにもない。まるで幻でも見ていたみたいだ。
気がつけば空はすっかりと夜の闇に覆われ、たそがれは終わりを告げていた。
ふと、気づけば
日没もだいぶ早くなったものだ。
まだ、感覚的には
明るい時間帯なのだが
外は思いのほか、黄昏れている。
今日から、10月か。
まだ、9月のままだった
カレンダーをベリベリと剥がす。
10月の、私の誕生日の日付けには
じーじーおたんじょおび!と
色鉛筆で、大きくはみ出した文字が
すぐに飛び込んできた。
ふふっと、笑いが込み上げる。
そしてなんとも言いがたい
愛おしさに包まれた。
【お題:たそがれ】
たそがれ
薄暗くなった綺麗な景色を目の前に
誰だかわからない遠くの人をぼーっと眺めて
どこかかちょっと感傷に浸っているような
雰囲気を醸し出す。
だけど実は、
そんな自分にただ自惚れているだけだったりする
まぁそんな日があってもいいじゃんね
だってその綺麗な景色を見れるのは
今日という一日を頑張って乗り越えたから。
この人生の主役は自分しかいない。
だから少しくらい感傷に浸って
かっこいい感じだったり
儚い感じだったりの雰囲気くらい
醸し出しちゃえばいいんだ!
沢山自惚れて自分が自分を愛さなきゃね。
意外と大事なことなんだよね。
#たそがれ
十五夜の夜、俺は煙草を吸いながら月を見ていた。
丸いまぁるいお月様。
月なんて、久しぶりに見たな。
普段は何か用事がない限り部屋から出ないで仕事をしてるから、空なんか一々気にしてなかったけど、こんなに綺麗だったんだな。
久しぶりに月を眺めながら吸った煙草は、随分と美味かったかもしれない。
学校が終わって、僕はいつもの土手にたどり着くと、道路の脇に自転車を停めて身体を投げ出した。
時計はみていないが、時間は18時を少し過ぎたところだろうか。
緩やかな坂の上に寝っ転がっていると、僅かな風に吹かれた雲が視界をゆっくり右へ流れていく。
夕焼けというよりはもう少し暗い。もうまもなく夜になるので帰らなくてはならないのだが、僕はここで日が暮れるまでこうして時間を潰すのが好きだ。
身体を起こす。目はいい方だが、少し遠くを歩いている人の顔は判別できない程度には暗い。犬を二匹連れた女性がやや引きずられるようにしながら川向こうを散歩していた。
ガサガサ。
ふと、物音がした。いや、外なので色々な音がして当然なのだが、その音は異質で、僕の耳に突き刺さった。
音は橋の下、橋と土手の隙間から聞こえた。橋の下より隙間の狭いそこは今の時間、先に訪れた夜のようだ。草を掻き分けるその音は、だんだん大きくなっていく。
犬ではない。不規則なその音は明らかに意思を持っている様子だ。恐らく人間だろう。こんな時間にずっとあの隙間にいたのか。僕は今より少し明るいときにその隙間を確認していなかったことを後悔した。
この付近は決して治安の悪い場所ではない。そしていつものように訪れる公共の場所だ。誰がどこにいようと構わない場所でわざわざ隈無く警戒なんてするやつはスパイにでもなればいいんだ。
ともかく周囲の警戒を怠っていたせいで、今不気味な物音に脅かされている。
少し坂を登れば自転車がある。鍵を外してチェーンをとって。ああ、こんなことを考えている暇があったら早く立ち上がらないと!
物音は更に大きくなっていく。
橋の下の暗闇から僕までは10メートルもない。なのに草むらをこちらへと進んでくる何者かの姿は一切見えないのだ。
「ーーっ」
手だ。か細い白い手が草を掻き分けて飛び出す。この辺りを縄張りとしている浮浪者だろうか。いずれにしても関わって良いことは無さそうだ。
僕は自分でも記録的な俊敏さで自転車に戻ると鍵を開け、チェーンを外して自転車に飛び乗った。草むらから少し頭が出てきたがこの暗さのせいで、顔は見えない。恐らく相手からも僕の顔は見えないはずだ。
ペダルに力をいれるとすぐに自動感知型のライトが点灯する。もう一こぎ。自転車が軌道にのり始める。
僕は後ろを振り返ることなく土手を後にした。
【たそがれ】#62
その頃の空に
君の横顔と太陽の指輪が見えた。
それはとても君に似合って
今からですらも、贈りたいと思わせる。
金色に輝く太陽と争わず
それと調和して新たな美しさを生み出す
君の器の広さを感じた。
やはり、君は美しい。
黄昏時、学校の屋上から夕焼けに染まる街を見ていた。遠くの山に太陽が沈んでいく。もうすぐ闇夜が訪れる。
「いけないんだ。立入禁止だよ、ここ」
背後から突然声をかけられた。
この声はクラスメイトであり幼馴染のあいつだろう。
そのまま横にやって来て、並んで夕焼けを見始めた。
「綺麗だねぇ」
隣からはしゃぐ声が聞こえる。
「立入禁止だぞ」
「先にいたあんたがそれ言う〜? それに私が先に注意したんですけど!」
からかうと、一瞬で不満そうな声に切り替わった。
あぁ、やっぱりこいつといると楽しいな。一人でいたって、簡単に見つけ出してくれる。
美しい夕焼け。二人しかいない空間。
もしかしたら、今なんじゃないのか。ずっと胸に仕舞っていた気持ちを伝えるのは。
「好きだ」
前を向いたまま、俺はそう伝えた。
あいつの顔の方を向けない。だって、きっと真っ赤になっている。でもそうツッコまれたって、夕焼けのせいだって言い訳しよう。
あー心臓が今にも飛び出しそうだ。
何か言ってくれ。俺は我慢しきれなくなってあいつの方を向いた。
黄昏は誰そ彼とも書くらしい。夕暮れで人が識別できなくなる時分だと。
そして黄昏時は逢魔時とも言う。読んで字の如く魔物に逢う時分だと。
初めて聞いた時、どちらもなんだか恐ろしい言葉だなって感じたことを、急に思い出した。
夕焼けの太陽の光に目をやられ過ぎたのか、それとも夜が近くなって少しずつ薄暗くなってきたからなのか、あいつの顔が見えなかった。
『たそがれ』
たそがれどきは
諦めの時
夜の闇が来る前に
戻り道があるうちに
失くしたものを
探すことをやめる時
逢いたい
という言葉を飲み込んで
伸ばしかけた手を
引っ込めて
鳥かごに
あのひとへの想いを
閉じ込める
たそがれどきは
そんな時
# たそがれ (292)
大丈夫だよ
君の元に静かな光が舞うように
大丈夫だよ
君の元に当たり前に幸せがあるように
頑張り屋な君だから きっと言い出せなかったんだろう
自分のことを責めてるけど
きっと悪いことじゃなかったんだよ
君の元へと春が舞いますように
静かな光に包まれますように
幸せと君が思えるなら
それをどこかで知れる僕で居られますように
なにより優しい君だから きっとずっと抱えてたんだろう
ありがとう そんな君に救われた人が居るから
君の元にたくさんの花が咲きますように
そこかしこに幸せがありますように
良かったと君が思えるなら
それをどこかで知れる僕で居られますように
ふわりとした風が君を包んでいく
ゆっくりでいいんだよ
君の春の知らせを僕はいつでも願ってる
友人と遊んだ後に何時も行く場所
山に入り、開けた場所迄行く
友人と此処で見る物は
黄昏時
町が夕焼け色に包まれる
其れの景色を二人で眺める
飽きなくて、寧ろ落ち着きがある
静かな山
風の吹く音
虫の鳴き声
鳥が飛んでる姿
微かに見える人の姿
唯、其れだけの事
だけど、その黄昏時は
私と友人の大切な時間
# 139
僕たちはいつも3人だった。
しっかり者の桜とおっとりした菜花、そしてこれと言ってなんの特徴もない僕。
桜と菜花は双子で、その間に僕がいたものだからよくからかわれたなと今になって思う。
小学生の時はいつも一緒に帰っていた。調子に乗ってふざける僕に、桜が叱る。その横で、ふふっと花が咲いたように笑う菜花。
中学に入ってからは男女の距離感が掴めなくなって3人で帰る事は減り、僕と菜花で帰ることが多くなった。菜花は花が大好きで帰りにはよくその話をしてくれた。僕はとても楽しそうに話す菜花の左顔に惹かれていた。彼女はそれを知っていたのだろうか。
僕たち3人は同じ高校に進学した。
桜は生徒会に、菜花は華道部に入ったようだった。
僕は帰宅部と決め込んでいたのだが、桜に「やる事ないなら私と生徒会でもどう?」と強引に誘われ、見事生徒会書記になってしまった。
当然3人の下校時間は合うはずもなく、3人一緒という時間はほぼなくなってしまった。
菜花は部活で忙しく、中学の頃とは逆に桜と帰ることが多くなった。
僕の趣味や今日の出来事を話すと、優しい笑顔で相槌を打つ右顔に惹かれていた。彼女はそれを知っていたのだろうか。
そんなある日、僕は菜花に空き教室へ呼び出された。
生徒会の仕事はなかったので菜花の部活が終わるまで待っていたら窓からはとても綺麗な夕日が見られた。
「ごめんね、遅くなっちゃって。」
とドアを開けながら菜花は言う。
「いいよ、全然。コンクール近いんだろ?」
と僕は言う。
菜花は窓側の自分の席に座って荷物を置くと、僕に向き合った。そして大きく深呼吸をすると
「こんないきなりでごめんなさい。小学生の頃から大好きでした。わたしと付き合ってください。」
僕は頭の中が一瞬真っ白になった。何も考えられなかった。とても混乱している。
僕が返事に困っているのを見て、菜花は返事はいつしてくれてもいいよ。と言ってくれた。
再び彼女の方を向くと、彼女の表情は逆光で全く見ることができなかった。
翌日、生徒会の仕事をしながら昨日の事を考えているといつのまにか最終下校時刻になっていた。
のっそり歩いていたら桜に置いていかれそうになったので急いで靴を履いて昇降口を出た。
そうだ。いっそのこと菜花のことを桜に相談してみようか。彼女はいつもこういう時に的確なアドバイスをくれる。彼女のアドバイスで失敗したことはないのだ。
と思い、桜に話そうとした瞬間だった。
「あんたさ、好きな人いるの?」
ぎくりとした。あの桜が急にそんなこと言うものだから。もしかして昨日の事をすでに菜花から聞いたのだろうか。
いやいないけど。と返すと、少し安心したような声色でそっかとつぶやいた。
「驚かないで聞いて欲しい。私あんたのことが好き。返事はいつでもいいから。私、待ってるから。」
彼女はそう言うと、じゃ、と言って走って帰っていってしまった。
夕日の逆光で彼女の顔は見れなかった。
僕はどうすればいいのかわからなかった。
楽しそうに話す菜花の左側も、優しい顔で相槌を打つ桜の右顔もどちらも好きだったからだ。
こんな事最低だなと思っても答えなんていくら待っても出なかった。
情け無いことに、僕はこのあと熱を出して1週間学校を休むことになってしまった。
そんな時に事件は起きた。
菜花が下校中に何者かに刺されて亡くなってしまったと言うのだ。
僕は信じられなかった。あの菜花が。楽しそうに花の話をして明るくておっとりしていたあの菜花が。
どうしてもっと一緒にいてあげられなかったのだろう。どうしてもっと一緒に帰らなかったのだろう。
後悔しても遅い事はわかっていた。
後悔してもあの花のような笑顔が戻る事はない事はわかっていた。
菜花の葬式が終わった。
桜の目は腫れ上がって真っ赤だった。僕も人のことは言えないが。
桜は僕を気遣って、外に散歩でもしに行こうかと誘ってくれた。その日も綺麗な夕日が出ていて眩しいくらいだった。
「あんたさ、菜花に告白されてたんだって?」
桜はぽつりと呟く。どうして彼女がそのことを知っていたのだろう。
すると僕の心を読んだかのように、桜は
「......菜花の日記に書いてあったんだよ。あんた、なんで返事してあげなかったの?あんたにokされてたら、菜花はきっと、きっと...幸せのままいなくなれたのに。」
桜は僕にしがみつく。あのしっかりもので強気な桜が僕の胸でわんわん泣いている。僕は咄嗟に、
「桜が、好きだったからだ。」と口走った。
最低な人間だ。僕は自分をそう評価した。
桜は目を丸くして僕を見上げる。なぜだろう。夕日に照らされた彼女はいつもより何倍も可愛く見える。
彼女の顔がみるみる赤くなり、僕から少しだけ離れた。
そのあと花のように笑って
「わたしも、大好き」と答えた。
僕は桜を抱きしめたくなったが、彼女は少し先を歩き始めた。逆光が眩しい。
僕はひとつの違和感に気づいた。
彼女は、桜は、花のように笑わない。いつも優しい相槌を打ってくれた桜ではないように感じた。
心にヒヤリとしたものを感じながら、前を歩く彼女にこう尋ねた。
「.............お前、誰だ?」
前を歩く彼女はこちらを振り返る。
「さあ?」
彼女の表情は逆光で見ることができなかった。
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お題 たそがれ
たそがれる暇もないのはきっとトイレに行きたかったからでしょう。
黄昏時は一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のこと。
「たそがれ」