『それでいい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
1.
朧月夜だったあの日、私は空の神様に向かって願い事をした、。
すると、薄い白いモヤのかかった空から神様が舞い降り、私にこう告げた。
『月とは残酷なものじゃ。満月であれば狼男が牙をむき、三日月であれば吸血鬼が飛び回る。新月になれば魑魅魍魎が闊歩する。不吉不吉と言われ続けた月でも、光輝く姿はほかの何よりも美しいものじゃ。君もいつか月みたいに輝ける日がくるじゃろう。自分で輝くことが出来なければ、太陽を見つけるのじゃ。月は太陽でも輝くことができる。君にとっての太陽は月にとってかけがえのない存在にもなるのじゃよ。』
とても綺麗に輝く月が、私に似ている月が本当はだいきらいだった。
1人じゃ何も出来ない自分が大嫌いだった。
ならば神様が私に告げた通り、太陽を見つけよう。
太陽さえ見つけることができれば、私は誰よりも輝くことが出来る。
あの朧月夜の日、神様が私に告げた言葉で、私の人生は大きく変わった。
幸せだと思える日が増えた。
どうか、どうか神様、もう1つだけ私の願いを叶えてください。
「この幸せを、永遠に。」
『それでいい』
近所の自治会の剣道教室に通っていたことがある。講師を勤めていた先生は普段はまあまあ優しそうに見えるけれど、道着と袴を身に着けるときは厳しい先生だった。竹刀を雑に扱ったり、試合ではないときに竹刀でチャンバラごっこをやった時には泣くほど怒られたものだ。
剣道は物に対する姿勢、所作に対する姿勢、そして相手に対する姿勢に気を配るものだ。剣の振りがおろそかになっていることをよく叱られていたが、竹刀の扱いにも慣れてくると耳にタコができるほどに聞かされていたことがある日にわかるようになった。竹刀の振り方も蹲踞も礼も身を入れるとまったく違うものになる。
「それでいい」
初めてそれを実践できたとき、先生が満面の笑みで褒めてくれたことが今でも忘れられない。
「それでいい」
今日は休日。自称マッドサイエンティスト特製の昼飯「親子丼の唐揚げ」を食べたせいか眠い。久しぶりに昼寝でもするかな。
ベッドの上でボーっとしていると、突然あいつが部屋に飛び込んできた。
「おい!!!キミ!!!あ、昼寝中悪いね!!!」
「第217宇宙……えーっとこの星が本来存在しているべき宇宙、とでもいうべきかな!!!とにかく貴重なデータを取得できたぞ!!!昼寝なんかしている場合じゃない!!!」
突然驚かすな!心臓に悪すぎる!
「この宇宙を吸収する未知の存在、ヤツの目的がわかったかもしれん!!!」
よりにもよってこんな眠い時に……。
まあいい。とにかく話を聞こう。
「こほん。では改めて!!!今回取得できたのはヤツの『感情』に関するデータだ!!!これ、キミに見せても分からんだろうが、いちおうキミの国の言葉に翻訳しておいたよ!!!」
「取れたデータをキミにでも分かるように図式化したが、どう思う?」
愛、そして少しの悲しみと怒り。
「ほぼ純度100%の『愛』でできている。そうだろう?」
「この宇宙は少なくとも712兆年くらいの間、ボク以外管理していない。だからこの宇宙を相当愛している、なんてことはおそらくありえないだろう!!!しかも、吸収されるようになったのは最近になってからだ!!!」
「ということは、なんらかの方法でヤツはこの宇宙に侵入し、そこで何かを見つけたんだろう!!!そしてその存在に対して『愛』を抱いた!!!」
「だが、なんらかの理由でそれを失った!!!というわけで宇宙ごと吸収してしまおうと考えた!!!んじゃなかろうか?!!」
規模が大きすぎて理解が追いつかない。
だが、宇宙ごと吸収するなんて正気の沙汰ではない。
その感情は「愛」と呼ぶべきものなのか?
そんな自分勝手な感情。
ひとびとはそれを「執着」と呼ぶ。
「なるほど、執着か……。」
「理解が追いつかないと思いながらも真剣に考えてくれてボクは嬉しいよ!!!消極的だったキミも悪かないがそういうキミもいいね!!!ボクはそれでいいと思うよ!!!いや、正しくは『それがいい』だね!!!」
それがいい、か。
「ほら!!!もっと読み解けるものがないか、ボクと考えよう……おっと!!!もうこんな時間だぞ!!!今日のディナーは何にしようか?!!」
そうだな……。この前食べたコーンスープ鍋でいいか。
「おいおい!!!そこは『コーンスープ鍋がいい』と言いたまえよ!!!ほら、鍋を用意するんだ!!!」
はいはい。
今日も美味いものが食べられそうで嬉しい。
「そうかい!!!喜んでもらえて何よりだよ!!!」
俺の足の間におさまっておとなしくブラッシングされている君は森に住むおだやかな動物のよう。
最初こそ自分で適当にやるとか人形じゃないんだからと言って嫌がっていたけれど、今は気持ちよさそうにうとうとしている。
花の香りがするふわふわな髪。ずっとこうしていたいけど時間がいくらあっても足りなくなってしまう。
「さて、そろそろ。」
「…ん。おわったのか。」
「ブラッシングはね。今度は三つ編みをするよ。
かわいいアレンジを見つけたんだ。」
え、いや、もう、と何やらごにょごにょしていたが
また俺に背を向けた。そうそうそれでいい。
「かわいいお人形さん。これにしてもいい?」
「…うん。それでいい。」
良い休日だ。なんてことない会話。やさしい沈黙。
こういう日常。
それでいい
今日も仕事で失敗した。
でも違う、前までの生活とは違う。
私には帰るところがある。
「あ、主様!!おかえりなさい!」
今日も私の執事が出迎えてくれる。
「ただいま。ラムリ。」
「今日も仕事お疲れ様です!
よく頑張りましたね。」
そう言ってニコニコ笑う彼を見て、
私は、はぁ…とため息をつく
こんな幸せでいいのだろうか、いや、今までが幸せじゃなかった。
いいんだ。幸せになって、これでいいんだ。
………なんて、夢をみて、今日もまた、仕事に向かう。それでいいんだ。
それでいい。
その言葉でようやく及第点に到達したと実感する。
感動。からは遠い。
まだ課題が多くある、と言うことだ。
何処をどうしたら。どうやったら。
「焦らなくていい」
その言葉に無言で答えた。
それでいい
それでいいよ
それでいいんだ
それでいいからさ
もうあの子をさ
何となくで、傷つけないでよ…ッ
そう願ったあの日から、幾年経ったのか。
街は見事に荒れ果て、僕以外に人間はいない。
人の声なんて聴こえない。
動物の鳴き声と、鳴り止まない学校のチャイムと。
それでいいと願った僕の涙が。
永遠の世界に閉じ込められてる。
「それでいい、そう言ったのはあなたでしょ」
「それでいい」 ※実際に体験したお話です。
毎日が息苦しい。 そう呟いてネットに上げた。
優しい言葉が来るのかなと思いながらスマホを見た。
その期待は外れていた。コメントに びっしりと
「病みアピするな」「かまってちゃんやめろ」
「早く死ね」と 暴言が書かれていた。
何やっても 叩かれる世の中が 息苦しい。
友達と遊んでても 楽しいって感じない。
友達に内緒で 屋上に出て「このまま消えれば、
みんな喜ぶよね。生きてる意味なんてないんだよね」
と呟いて ひとつ ひとつ足を運んだ
その時に 友達が屋上に来て
「何やってんの?」って言ってきた。
私は「死のうとしてた」「息苦しい」
弱音を吐いてしまった。
友人は涙目で
「今が辛くても 死にたいほど苦しくても
君はありのままの姿でいていい。
明日も明後日も 息をする。それでいい。
それだけでいいんだよ。」
と 言ってきた。
私は泣いた 我慢した分 思いっきり泣いた。
そんな私を慰めてくれた。
ありがとう。
「それでいい」
“実話”
作品No.5【2024/04/05 テーマ:それでいい】
※半角丸括弧内はルビです。
「お昼ご飯、何がいい?」
私がそう訊くと、昌和(まさかず)は、
「なんでもいい」
と、気のない返事をこぼしてきた。
〝なんでもいい〟? 不機嫌に問い返したい気持ちを押し殺す。
「インスタントラーメンでもいいかな?」
「それでいいよ」
〝自分がつくるよ〟もない。どころか、〝お願い〟も、〝よろしく〟も、ない。料理は、自分がするべき家事ではないと思ってるのだろう。
「じゃ、私つくるね」
「おー」
そんな昌和の様子に、私はさらに苛立ちを募らせる。ここまで、昌和は一度も私を見ようとしなかった。夫婦になって二十年、子どももいない夫婦なんてそんなものなのかもしれないけれど、なんだか虚しくなる。
塩味袋麺を調理することに決めた私は、昌和に対する小さないやがらせをすることも決意した。
冷凍庫から、冷凍コーンを取り出す。トウモロコシ嫌いな昌和は、これを見たら怒り狂うかもしれないけれど。
それでいいや、と思った。
「『それでいいですか』、『それでいい加減手を打ってくれ』、『それでいいすぎ、とはさすがに言わない』『それでいいように丸め込まれました』。……他には?『それで飯田橋にはいつ着きますか』とか?」
個人的には、せっかく都内の現代風で連載モドキ書いてるから、「それで飯田橋には」書きてぇけどな。
某所在住物書きは地図アプリやネット検索とにらめっこしながら、せっかくの桜シーズンなので、「満開の桜と東京」を執筆すべくアレコレ云々している。
「『それで飯田橋』、飯田、千代田区、神田川……」
物書きは呟いた。
「観光客、マナーとルール……」
外人邦人にかかわらず、ここ数年、撮影を目的とした危険行為を、よく見かけるようになった気がする。
自分の暴挙で事故り自爆したところで、それは個人の自業自得だが、それで、いいのだろうか。
――――――
せっかく桜も満開になったのに、天気予報がイジワルで、向こう数日雨雨々。いかがお過ごしでしょうか。
晴れだろうと雨だろうと花粉気になる物書きが、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
某稲荷神社は森の中にありまして、
そこはなんと、不思議な狐のチカラと、御神木の花粉知らずなヒノキのご利益で、スギの花粉もヒノキの花粉も、勿論イネ科もブタクサなんかも、悪い花粉は全部、ちっとも悪さをしなくなるのでした。
稲荷神社の敷地内にソメイヨシノはありませんが、代わりに今の時期は、山桜やスミレなんかが見頃。
ニリンソウやフデリンドウも、そろそろでしょう。
花粉症持ちにとって、そこは貴重なオアシス。
セイヨウタンポポとニホンタンポポは、互いに互いを害することなく仲良く並び、花粉症から一時的に自由になった参拝者を、静かに観察しておったのでした。
「都合が良過ぎる」?それでいいのです。
「非科学的過ぎる」?それでいいのです。
所詮フィクション。細かいことは気にせぬのです。
さて、そんな稲荷神社の敷地内に、一軒家がありまして、そこでは人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、去年まで餅売りをして、
善き化け狐、偉大な御狐となるべく、一生懸命修行をしておったのですが、
最近になりまして、郵便屋さんごっこも始めた次第。
詳細は過去作3月5日投稿分参照ですが、ぶっちゃけスワイプが面倒。こちらも気にしない、気にしない。
稲荷神社在住のコンコン子狐、久しぶりに郵便屋さんごっこサービスの対象者さんからお手紙受け取りまして、郵便屋さんコスなポンチョを羽織り、郵便屋さんコスなバッグをお腹にマジックテープでくっつけて、
丁度神社に参拝に来てる「送り先さん」へ配達。
送り先さんは、名前を藤森といいました。
冒頭あれだけ花粉花粉と書きましたが、雪国出身の藤森は、何の花粉症も持っていませんでした。
びゅーんと突撃して、くぅくぅ甘えて吠えて、子狐はコテン、藤森にお腹を見せます。
そこにはお手紙入りのバッグがちょこん。なかなかよくできたポンチョです。
「後輩からの手紙か」
藤森は恋愛トラブルチックな諸事情で、自分の職場に先月就職してきた元恋人相手にかくれんぼ中。
長年一緒に仕事をしてきた後輩に危害が及ばないよう、その後輩にも異動先や居候先を告げず、
3月から新しい部署、新しい部屋で、仕事なり生活なりをしておりまして、
後輩とはグループチャットと、このコンコン子狐郵便サービスで、連絡を取り合っておったのでした。
「どれどれ。……『拝啓先輩 先輩もしかして今総務課? 敬具』?」
相変わらず、手紙というより、チャットの中身のような文章だな。短い文章を見て穏やかに笑う藤森。
手紙を届けてくれた子狐の腹と頭を撫でます。
支店在籍の後輩は、昨日全支店・全部署向けに送信されたのメールの、「誰がその文章を作成したか」に気付いたのでしょう。
本店総務課から来たメールに「藤森」を感じ取り、藤森のかくれんぼ先を総務課と予想したのでしょう。
「それでいい。当たらずも、遠からずだ」
かくれんぼの元凶たる「藤森の元恋人」とのトラブル解消はまだ遠く、藤森に手紙を寄越した後輩となかなか会えない日もまだ続きますが、
それでも、後輩が「自分の先輩は、だいたいこの部署近辺に飛ばされた」と勘付き始めた。
それでいい。藤森は穏やかにため息を吐きました。
今はそれでいいのです。トラブルが解消して、かくれんぼの必要が無くなれば、そのときこそ全部「実はな」と笑って暴露できるのです。
「少し待っていろ。返事を書くから」
尻尾をビタンビタン振り回す子狐に、藤森は優しく語りかけました。
チャットの中身のようだと茶化した後輩の手紙に対して、藤森は明朝体のような筆跡と真面目さで、
手紙というより報告書だの引き継ぎ書だの、社内文書だののようなお返事を書きましたとさ。
もっと良い選択肢があるけど、それが見つからないような感じ。
それよりも、それが良いと言ってくれた方が動く方も気持ちが良いと思う。
それでいいと思う。
お金持ちにならなくたっていい。
並の生活。並の日常。
並の家族に、そして並の恋愛をする。
それで良いんだ。多くは望まない。
生きてさえいればいい
息ができていればいい
生きるための場所があればいい
眠るための場所があればいい
生きるための食物があればいい
喉を潤す水があればいい
生きるための衣服があればいい
自分のための戦闘服があればいい
幸せじゃなくてもいい
苦しんでもいい
嫌われてもいい
迷惑をかけてもいい
周りに何を言われても気にしなくていい
死にたいと思ってもいい
死にたいと口に出してもいい
ただ、死ななければいい
命を繋ぐことだけを優先していい
生きることだけに必死になればいい
あとは何も考えなくていい
生きてさえいればいい
それだけでいい
それでいい
周りに何を思われても、何かを言われたとしても
結論は自分が決めることだから。
それでいい。上手くいかなくても、やってみて後悔しなければ挑戦したらいい。
私は、私だから。自分で決める。他の人の意見なんて
聞かない
それでいい(4月8日)
君の決断は間違っていないよ
周りからどう言われようと
僕はずっと君の味方
君の存在を否定する人は許さない
だって同じ人間だもん
君は君のままでいい
君はそれでいいんだよ
自分のペースでゆっくり生きていけばいい。生きていればいい。それだけで充分。それだけでいい。それでいい。
「あたし、青年雑誌でエロ漫画書いてるんだけど」
「まさか、久しぶりに会った真っ昼間のファミレスでそんなこと言われるとは思わなかったわ」
愛美は向かいでメニュー表を開く祐希奈につっこんだ。
「毎回ネタに困るんだよね」
「えっ、続行するのその話」
「愛美は大きいのと小さいのどっちがいい?」
「え、あ…女の方のこと?それとも男の方?」
「は?パフェのことだけど」
「今の流れで何故メニューの話になった!?」
「ファミレスでパフェの話するのは普通だと思うよ。うーん、パフェはやめてカツ丼定食にしようかな」
「そこじゃないし、悩むメニューのチョイスが全然違うんだけど」
愛美は頭を抱えてジト目を向ける。
「ネタに困るっていうからてっきりその話かと」
「まあねー。困ってるよ。おっぱいからビーム出すか、目からビーム出すか」
「待て、それは本当にエロ漫画か?」
「主人公のペットをコモドオオトカゲにするかウーパールーパーにするか」
「心底どうでもいい設定だから。ってか犬とか猫にしようよ」
「でも飼ってるペットの擬人化エロとか定番じゃない」
「コモドオオトカゲじゃ別の意味で食われそうで怖いわ」
うーん、どうしようと悩む祐希奈に愛美はため息をついた。
「私にはよくわからないけど、そんな奇をてらわなくていいんじゃないの?」
「だってありきたりになっちゃうし」
「祐希奈が好きなものでいいんだよ」
「好きなもの、かあ」
「うん、それでいいんだよ」
祐希奈はしばらく悩んだ素振りをしてから「うん、わかった」と決心する。
「カルボナーラ食べる」
「だからメニューの話じゃないっての」
「あとおっぱいからビーム出す」
「書きたいものそれなんかい」
仕事初日は失敗ばかりで、自己紹介すら緊張してまともに出来なかった。
他の同僚達は要領がいいのか、うまいこと職場に溶け込んでいってる気がする。
初日からこんなに取り残された気持ちになるとは予想してなかった。
もう少し、うまくやれると思ってた。
帰宅して夜、コンビニ弁当を食ってたら不意に虚しくなった。
耐えきれず、地元の友達にLINEする。
調子はどうだ?と。
楽しげな絵文字を使ったら、何だか余計に虚しくなってきたが、すぐに友達からの着信があった。
文字面を打つのが嫌いな奴だった。
どうもこうも、うまくいかねーことばっかだよ。
学生気分じゃバカにされっから、必死で背伸びしてっけどな。
そっちはどーなんだ?
お前のこったから、職場で気後れして孤立してんじゃねーのか?
出しゃばらないのがお前のイイトコだもんな。
懐かしい声がする。
弁当の残りはそのままに、缶ビールを開けた。
そーいや、この間、お前の親父さんに会ったよ。
たまには電話してやってくれって…あいつは人に頼るのが下手だからって。
そんなお前から連絡してくんだから、初日は散々だったんじゃねーのか?
でもさ、そんでいーんだよ。
始まりは人それぞれなんだからさ。
散々だったのはお前もだろ、と突っ込んでやろーと思ったが、ここは、励まされる立場でいることにした。
覚えてるか?
俺達が小学生だった頃。
何やってもうまくいかなくて、クラスで孤立して、学校で孤立して、上級生に睨まれて。
俺なんか、母親にも見捨てられてさ。
お前は島を離れて引っ越して行くってゆーし、いろいろとツラかったけど、お互いちゃんと前に進んでたよな。
そんでここまで来たんだ。
この、ダンボール箱の中のどこかに、あの日の遊戯王カードがあるはずだ。
島を出る時にお前がくれた、俺の宝物。
そーいや、お前に送りたいもんがあったんだ。
LINEで送れんのかな。
ちょっと待ってろ。
しばらく時間をかけて、使い慣れないLINEでお前が送ってきたのは、あのお別れの日に神社の境内に隠した、二人で肩を組んで撮った笑顔の写真。
俺達が大人になっても、こんな時代があったことを忘れないように、と。
いやー、今日の仕事がツラくてさ、思わず帰りにあの神社に寄って、この写真をスマホで撮ってきた。
これ見ると、こんなバカでも大人になれたんだな、って安心するんだよ。
もちろん、お前の方な。
そっか…。
おいおい、ツッコめよ。調子狂うだろうが。
不意打ちの写真に泣くのを堪えるのに必死で、それどころじゃない。
あの日の境内では堪えきれなかった涙を、大人になった今は何とか抑えることが出来ている。
これも成長ってやつか?
お前はさ、あの日、親の都合で海の向こうへ越して行ったけど、それでも今がある。
こうして仕事を始めて、その初日に俺とお前が話してる、今がさ。
何も間違ってないだろ。
だから、それでいーんだよ。
俺もお前も、これでいいんだ。
何がいいんだよ。訳わかんねえ。
やっとツッコんだな。それでいいんだ。
涙腺は崩壊寸前だが、まだもう少し、堪えられる。
せめて、この電話が終わるまでは、持ちこたえて欲しい。
あの夏、二人で上級生に立ち向かった武勇伝を、壊したくない。
それでいい
あなたが選んだ選択だから「それでいい!」
こう言えるのはあなたが悩んだり、努力したり、毎日頑張ってる姿を見てきたから…
あなたならきっと選んだ道で頑張れるし、例えダメだったとしても泣きながらも立ち直れるのを知ってる…
だから「それでいい!」あなたの思うようにあなたの人生を進め!
いつも君と親友ににありがとう。
大好き…。(*´ω`*)