作品No.5【2024/04/05 テーマ:それでいい】
※半角丸括弧内はルビです。
「お昼ご飯、何がいい?」
私がそう訊くと、昌和(まさかず)は、
「なんでもいい」
と、気のない返事をこぼしてきた。
〝なんでもいい〟? 不機嫌に問い返したい気持ちを押し殺す。
「インスタントラーメンでもいいかな?」
「それでいいよ」
〝自分がつくるよ〟もない。どころか、〝お願い〟も、〝よろしく〟も、ない。料理は、自分がするべき家事ではないと思ってるのだろう。
「じゃ、私つくるね」
「おー」
そんな昌和の様子に、私はさらに苛立ちを募らせる。ここまで、昌和は一度も私を見ようとしなかった。夫婦になって二十年、子どももいない夫婦なんてそんなものなのかもしれないけれど、なんだか虚しくなる。
塩味袋麺を調理することに決めた私は、昌和に対する小さないやがらせをすることも決意した。
冷凍庫から、冷凍コーンを取り出す。トウモロコシ嫌いな昌和は、これを見たら怒り狂うかもしれないけれど。
それでいいや、と思った。
4/5/2024, 3:29:11 AM