『それでいい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
君を救っている。
この救われない身体で。
君を慰めている。
この醜さがとれない心で。
精一杯の声をかけている。
似つかわしくない優しく澄んだ言葉を。
僕の外面ばかりに触れて、君は笑顔になる。
それを見て僕は、少し傷つく。
騙してしまったかのような罪悪感が込み上げ、僕を沈める。
苦しくなる。
でも、それでいい。
どうせ報われないんだから。
なんでもいい。
それでいい。
どっちでもいい。
つまりなんだよ。
自分のその瞬間の気持ちも言葉にできないのかよ。
なんでたったそれだけのこともできないのに、じゃあと出したものにケチをつけられなきゃならない。
いちいちいちいちいちいち、お前がさっさとどっちかはっきりさせてたらこんな鬱憤、蓄積なんてしなかった。
「――しなかったよ、ちゃんとぜんぶ、言ってくれてればさぁ」
「……ぁ、ヒッ、や、やめ……」
「なんでもいいんでしょ? どれでもいいんでしょ? なら、これでいいじゃん。なんでいっつもあたしが決めてから文句ばっかり言うわけ?」
おかしいってこと、まだわかんないの?
なら死んで治すしかなくない?
#それでいい
貴方にとって私はただのクラスメイト。
だけどそれでいいの。
ううん、そうじゃないといけないの。
貴方がもし友達になったら、恋人になったら、家族になったら…って考えた時もあったよ。
だけどそれはきっと神に逆らう行為だから。
私と貴方は結ばれちゃいけないってなんとなくそう思う。
だから離れるしかない。
最後に一度だけ微笑んでくれたら…思い残すこともなかったのかな。
「こんなところで、何を」
海風が吹き響くなか、薄着を心配したのか。それとも不審に思ったのか。きっとそんな程度の理由で月明かりの下、海風と共に会話は始まった。
「寒いでしょ、早く戻った方がいいよ」
「大丈夫。寒くない」
いくら夏でも、夜は冷える。少し肌寒い上に半袖半ズボンでは温まる手段もない。一点張りの言葉にため息をつき、彼は横に座り込む。
「私と話すつもり?」
「まあね」
満月はどこ一つ欠けることなく完璧なほどに光り輝いている。それに比べて私だけに伸びる影はとことん暗く濁っていた。
「あなたはなんでのぞみ壮に?」
そんなの分かりきっている。ここはそういう場所なはずだ。
「…ごめん。野暮だったね。けど、あなたの事情を聞きたいな」
「人って言うのは自分勝手なの。私も、君もね」
見るなり私より年上の彼は、何故か深く事情を知りたがった。全て話す義理もない私は気が向くだけの過去を話した。
「目の前には水平線しか見えないけど、後ろを見てみて。宿には光が灯ってて、あそこじゃ色んな人が支え合って生きてる。あなたはきっとそう言う場所に戻る方がいい」
「私はその水平線に行きたいの。支え合って、関係が生まれれば、いつかそれは消滅するの。それに依存するから人は醜くなるの」
ただ淡々と、コンクリートの壁に打ち付ける波を感じながら、水平線の向こう側を見つめながら、口は自然と動き始めた。あともう少し、手に力が入れば私は水平線へと吸い込まれていくのに。
「のぞみ荘の人たちはそんなこと知ってる。ここが嫌でも、何処かにきっとあなたを受け入れてくれる人は必ず…」
彼の口はそこまで軽くは動かなかった。
「じゃあ、君は私とずっと居てくれる?空っぽで、醜い私と」
「…ごめん。出来ない」
「知ってる」
彼のことは理解した、つもりだ。彼の口が重たくなった理由も、海風と共にここに現れた理由も。それでも、私の望みは。
「本当は、海だって、空だって、人だって、みんな助け合って生きてるはずなんだ。けど人ってのは不思議なもので、自分勝手に飲まれていくんだ。僕も、そうなんだ」
「私も君も、勝手ね。こんな寛容な世界でも生きられないなんて」
言っていて悔しさが込み出してしまう。きっと後ろの世界も、揉まれていけばなんてことないようになる筈なんだ。それでも海や空のように、受け入れてくれる世界に身を投じたくなるんだ。
彼はそれ以上私の過去について言及しなかった。気付けば私は抽象的な意見ばかりを述べて、具体的な過去は一切話すことはなかった。
「それでも、言うよ。君はまだ行っちゃいけない」
「ありがと。それでもね」
私は礼を言うと立ち上がった。
ここへ来た時から決まってる。
望みを叶えるための、この場所だ。
「私は、死ぬためにここに来たの」
きっと、この涙も大きな海の一部になっていく。
海風が消えると共に、もう彼は見えなくなっていた。
【それでいい】
そのままずっと周りの人と明るく生きて
俺の事を忘れるくらいに楽しく生きて
それでいい
ずっとそのままでいい
君が私の存在を知らなくても、
私はそれでいいんだ。
それでいい
それでいいはず
自信はない
これからどうなるか、僕には分からない
正直なところ
後悔している自分がいる
それでいい、なんて
自己暗示に過ぎない
でも、このまま前を向かなかったら
行動を起こさなかったら
僕は死ぬまで後悔していただろう
だったら、良かった
僕というたった一つの命の意見だけど
行動を起こしたことへの後悔は
起こさなかった時の後悔よりも大きい分
長続きはしない
僕は今、10年後のことを考えれている
「俺さ、最低なんだ。」
絞り出された言葉は、想像もしていなかった言葉だった。
動物たちも寝静まる夜。
風を受け佇む君の表情は分からなかった。
『最低って…?』
「俺、みんなのこと大好きなんだよ。
この愛は誰にも負けない、って自信ある。
でも、みんなが褒められてるとすっごいムカつく。
俺だってできるのに、って。
俺ならもっとすごいことできるのに、って。
そんな自分に1番ムカつくのに。」
____なんだ、そんなことか。
なにが【最低】だ。
至極真っ当で、【普通】のことだ。
『…ンなの普通だよ。』
「は?」
『普通だっつってんの。
仲間だって言い方を変えればライバル。
ライバルが褒められてムカつかないやつなんていない。
お前が最低だと思ってる行為は
俺からしたら普通の行為。
なんも最低じゃない。』
君は目を大きく開く。
こぼれ落ちそうな瞳はまだ少し燻んでいた。
夜風が頬を撫でて行く。
前髪を揺らす。
『なんも最低じゃない。お前は、』
___________それでいい。
零れ落ちたダイヤモンドは、知らん振りしておいてやろう。
それでいい
それで良いの?
それはそれとして今はいいけど
これからはいいのだろうか?
これまではどうだったんだろう?
善悪なんて分からない
でもね
これから次第で良し悪しは変わる
いまはまだ分からないし
例えば死んでも決まらないとは思う
よくわからないけどそれはそれでいい
その時々で良くも悪くもなる
だけどそれがいい
自分で決められたならそれがいい
ほとんどのそれでいいは
今はまだとりあえずは良しとすることで
これから決めれる時が来たら変えればいいんだから
それでいいのかもね
視界が歪む。頭が痛くなる。いてもたってもいられなくなって踵が何度も床を叩いた。椅子の上で縮こまる。丁寧にセットした髪を両手がぐしゃぐしゃにする。
今しがた食べ終えたばかりの昼食が喉から出そうになって、さすがに吐くのはまずいと口元を押さえたはずがいつのまにか爪を噛んでいた。切り揃えた爪がガタガタになっていく。
今日はあなたとのデートの日だった。
あなたが恥ずかしがるから同じテーブルには座れなかったけれど、近くの席でお互いを眺めながら同じものを食べて、一緒に帰るはずだった。
わたしはあなたとならそれでいいと思っていたのに。距離の空いたお付き合いでも、あなたがわたしのものでいてくれるなら。
その人は誰。ううん知ってる、同じ大学の人だ。同じ講義を受けてる、同じサークルに入ってる人。
わたしが言いたいのはそういうことじゃなくって、そう、つまり、どうしてその人がここにいて……あなたと同じところに座ったのかって言うこと。
すうっと胸が冷えていく。浮気された? そんなはずない、だってあなたもわたしのことを好きでいてくれている。ならあの人が、……あいつが誑かしている。
わたしは震える手でスマートフォンを掴んだ。
情報収集は一週間もあれば完璧にできる。
一週間後、邪魔者はあなたの側からいなくなる。待ってて、わたしの恋人。もう一度ふたりきりになろうね。
「薔薇なんていらないよ、特に貴方からなんて」
僕が愛してやまない彼女は僕のバラを受け取ることを拒んだ。
何ヶ月か前のこと、彼女が一人で本を読んでいるところから出会いは始まったんだ。
その綺麗なまつ毛に、立ち振る舞いに、横顔に、この世のもの全てを見透かしてしまいそうなほど透き通ったあの青い瞳に一目惚れしたんだ。
そこから話しかけていったのが始まり。
正直人間相手に話しかけるだけで緊張したことないのに、今回ばかりは勇気をめいいっぱいだした。
最初の君はあからさまに僕を怪しんだけれど、プレゼントをあげたり、話す回数を増やすごとに君の笑顔も増えていった。
僕はそれが嬉しくてたまらなかった。
君が好きっていってたチューリップの花畑に行った時の笑顔は忘れられない。
最初に会った時の表情より、数百倍も美しくて、綺麗で惚れ直してしまった。
だけれどその後から僕のプレゼントを受け取ってくれなくなった。
でも話は聞いてくれるからきらいになったわけじゃないと思ってた。
両思いだって信じてた。
でも彼女は僕からの「愛」はいらなかったみたい。
信じてきた気持ちはただの自分の思い込みだったってのはだいぶショックだけどね
「そうか、すまない
僕の勘違いだったみたい」
君はなぜだかすごく辛そうな表情をしてその場から去っていった。
君と両思いになって、こんどは家でもプレゼントして一緒に住もうかなんて考えてたけど、早とちりしすぎたね。
君の背をまっすぐ見つめては凍てつくように冷たい涙が頬を伝った。
悲しくないといえば嘘になる。
辛くないといえば嘘になる。
僕と付き合って欲しくないといえば嘘になる。
でもいいよ、いいんだ
僕を選ばずにもっと素敵な人と出会えるならそれでいいんだよ。
僕の幸せは君が笑ってくれることだから、それでいいんだから。
そう自分に言い聞かせ、唖然と立ち尽くした。
嗚呼、冷たい涙が降り注いでくる。
今のままで十分だよっていってさ、抱きしてめよ
そうしたら私、あなたの腕の中で可愛く泣いてみせるからさ
「ねぇ今日何が食べたい?」
「ん?」
「ビーフシチュー?」
「うん、」
「麻婆豆腐?」
「うん、」
「肉じゃが?」
「うん、」
「カレー?」
「それでいい。」
もう何百回も繰り返した会話。
なんでそれが良いって言えないのかな?
最初から今日はカレーが食べたいなって言えないのかな?
宇宙から隕石が落下したら
今日は俺がカレー作るよって言えるのかな?
我が家で1番手の掛かる大きな赤ちゃん。
貴方残して私が先に死んだらどうするのかしら?
そしたらやっと自分で立ち上がれるのかな?
私は準備を始めなければ夫の自立を促すために
私がいなくなった後も生活出来るようにそれが愛ってもんよね。
『それでいい』
それでいい
大人なんだから出来て当たり前
何それ
大人なんだから嫌いな食べ物があるのは恥ずかしい
何それ
大人なんだからしっかりしろ
何それ
私は「大人なんだから」という言葉が嫌いだ。
大人だからって何でもできるわけじゃない
悩みがないわけじゃない
むしろ大人になってからのほうが悩みはある
大人だって嫌いな食べ物はあるし、嫌なものは嫌なのだ。
泣きたい時だってある
悩んで立ち止まる時だってある
でも、それでいい
泣きたい時は思いっきり泣けばいいし、泣いてスッキリして、また頑張ろうと思えたらそれでいい。
「大人なんだから」って決めつけるの辞めようよ。
いつも笑ってるあなたが好きで
誰にでも優しくて
特にあなたのそばにいつもいる
あの子には優しくて
愛おしそうに見つめるその目が
とても綺麗に見えるのです
きっとその目にわたしを
うつすことはまばたきをするより
短いのでしょうね
けれど、それでいい
遠くであなたを見ているだけで
わたしには充分なのです
__それでいい
「それでいい」
一瞬気分が高揚したが、すぐにマイナス側へと下降する。
「ボス、せめてそれ『が』いい、素晴らしいって言ってくれません?」
すると、弱くだが頭をはたかれた。
「ひっど! 暴力反対!」
「お前なぁ、自分の実力見てから意見しろ!」
正論を突きつけるなんてずるい。なぜなら私はチーム唯一の落ちこぼれだから。組むパートナー皆がお手上げポーズを取り、あわよくばクビになりかけたところをボスが救ってくれた。
そう、口答えできる立場ではない。わかっている、わかっているけれど、もう少しモチベをあげてくれてもいいじゃないか!
「でもでも、最初の頃よりかは使えるようになったと思いません? 私、自分でもわかります」
まだボスのサポートが必要なものの、そこそこ難しい案件もこなせるようになってきた。
「アホ、調子に乗るな。俺の教えがいいからに決まってるだろ」
「むー、とことんまでツン対応ですか……まあ、その方が逆に燃えますけども」
なんだかんだ文句を垂れつつ、自分と同じ二十代ながら貫禄十分なボスが恩人なのは変わらない。なんなら尊敬だってしている。
早く一人前になって恩返しするのが、今の目標だ。
「ちゃんと見ててくださいよ! あっという間に優秀になっちゃいますからね」
力こぶを作る仕草とともに宣言してみせる。また調子に乗るな、なんて釘を刺されるかと思ったが、その読みは外れた。
「まあ、あまり焦るな。今のままのペースで、頑張ればいい」
控えめにも、少し悲しげにも見える笑顔を向けて、頭をひと撫でされた。
「ぼ、ボス?」
「よし、休憩終了。仕事一個片付けるぞ」
背中を向けたボスは、もういつもの雰囲気を纏い直していた。
お題:それでいい
勉強が出来ない。
運動が出来ない。
コミュニュケーションが上手くとれない。
わがまま。
短気。
空気が読めない。
たとえそう入れたとしてもそれでいい。
人にはそれぞれ短所があり、
長所も必ずあるんだから。
生きてるだけで充分偉いよ。
お題
それでいい
「それでいい」
身丈に合わない格好しなくても
体を壊すほど自己研磨して追い詰めなくても
無理して笑顔にならなくても
ぼーっとしてていいよ
返事なんてしたいときでいいのよ
愚痴だってこぼそうよ
本音が出てちょっと気まずくなって
苦笑い
それでいいよ
全部好き。
煮えたぎった目が捉えているのは、私ただ一人なのだろう。彼の感情を煮詰め、煮こごらせたのは他でもない自分だ。殺したいほど恨まれているのだろうと言うのに口元が言うことを聞かずにゆるむ。
この安っぽい物語は私の死をもって幕を下ろす。しかし、主人公側のような有終の美は飾れないだろう。私に与えられた役は悪だ。主人公が私を恨みながら生きながらえ、私を断つことでそれまでの苦労が報われるという王道的なシナリオ。勧善懲悪というのは、いつの時代も万人に好まれる娯楽の最たるものだ。
私はそのための舞台装置として生まれたのだから、この結末も致し方ないだろう。
クライマックスに相応しい激闘の末、彼の渾身の一撃が全身を襲う。ああやはり痛いなと顔を顰めるとふと視界に入った哀れみの目。
「ごめん」
そう耳元でつぶやかれた声は何度も私を断つ役目を与えられた主人公で、お互い嫌な役割を与えられてしまったなあと笑って、遠のく意識の中でくちびるを動かしたが、果たして届いただろうか。
今日もまた、どこかでページをめくる音がする。読者が物語を辿るたび、私たちは宿命として出会い別れるのだ。すべては作者と読者のために。
【それでいい】
買おうか悩むってことは
まだ本当に必要ないって事だから
買わなくていいって分かってるのに
つい買っちゃったね。
それでいい。人間だもの。