「俺さ、最低なんだ。」
絞り出された言葉は、想像もしていなかった言葉だった。
動物たちも寝静まる夜。
風を受け佇む君の表情は分からなかった。
『最低って…?』
「俺、みんなのこと大好きなんだよ。
この愛は誰にも負けない、って自信ある。
でも、みんなが褒められてるとすっごいムカつく。
俺だってできるのに、って。
俺ならもっとすごいことできるのに、って。
そんな自分に1番ムカつくのに。」
____なんだ、そんなことか。
なにが【最低】だ。
至極真っ当で、【普通】のことだ。
『…ンなの普通だよ。』
「は?」
『普通だっつってんの。
仲間だって言い方を変えればライバル。
ライバルが褒められてムカつかないやつなんていない。
お前が最低だと思ってる行為は
俺からしたら普通の行為。
なんも最低じゃない。』
君は目を大きく開く。
こぼれ落ちそうな瞳はまだ少し燻んでいた。
夜風が頬を撫でて行く。
前髪を揺らす。
『なんも最低じゃない。お前は、』
___________それでいい。
零れ落ちたダイヤモンドは、知らん振りしておいてやろう。
4/4/2023, 4:44:08 PM