『これからも、ずっと一緒だよ!』
そう言ったのは、あなたなのに。
桜吹雪の真ん中。
今日も私は3時間きっかり、そこに立ち続ける。
あなたが手を振ってくるんじゃないか。
笑いかけてきてくれるんじゃないか。
「、そんなわけないか。」
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
急に走り出すあの子に驚く。
「なになになになに…?!」
『あはははっ!!』
狂ったように笑い出すあの子。
考えていることは何もわからない。
淀んだ目は、私を映してもいない。
『私さぁ…明日死ぬつもりなんだ!』
言葉とは裏腹に快活に笑う。
…あぁ、どうしてこうなってしまったんだろう。
赤赤しい夕日が私たちを照らす。
さよなら、とそっと呟いて歩き出した。
『私、もう長くない。』
_ああ、言ってしまった。
そう伝えただけで彼女の目には大粒の涙が。
…優しいな、ほんとに。
『…ごめんね、伝えられなくて。』
昔からそうだった。
あなたの責めるような目が嫌いだった。
見つめられると、なんでも話してしまう。
泣き崩れる彼女の横を通り過ぎる。
『…じゃあね。』
なにもしたくない。
なにもかんがえたくない。
もう、つかれた。
せきにんなんておいたくない。
普段から強がりが得意な彼女。
弱音を吐くことも少なかった彼女。
そんな彼女からSOSが出た。
応じないわけが無い。
『、大丈夫?』
「…大丈夫じゃない。」
何も見えていないような目。
ずっと、隣で頑張っていたところを見てきた。
ずっと、隣で強がっていたところを見てきた。
大丈夫って聞けば、大丈夫と答える。
辛いと聞けば、辛くないと答える。
____だから、今、凄く怖いのだ。
「誰も認めてくれない。」
『私が認めるよ。』
「誰も褒めてくれない。」
『私が褒めるよ。』
「誰も見てくれない。」
『私が見るよ。』
「誰も、誰もっ…」
荒い呼吸が続く。
彼女をぎゅっと抱きしめる。
『大丈夫、大丈夫。私が見るよ。』
私が見る。
大丈夫。
あなたは大丈夫。
あなたはすごい。
そのような薄っぺらい言葉しか並べることが出来ない。
そんな自分に嫌気が指す。
目の端でキラリと何かが光る。
星空の下、彼女が落ち着くことを祈ることしか出来なかった。
「俺さ、最低なんだ。」
絞り出された言葉は、想像もしていなかった言葉だった。
動物たちも寝静まる夜。
風を受け佇む君の表情は分からなかった。
『最低って…?』
「俺、みんなのこと大好きなんだよ。
この愛は誰にも負けない、って自信ある。
でも、みんなが褒められてるとすっごいムカつく。
俺だってできるのに、って。
俺ならもっとすごいことできるのに、って。
そんな自分に1番ムカつくのに。」
____なんだ、そんなことか。
なにが【最低】だ。
至極真っ当で、【普通】のことだ。
『…ンなの普通だよ。』
「は?」
『普通だっつってんの。
仲間だって言い方を変えればライバル。
ライバルが褒められてムカつかないやつなんていない。
お前が最低だと思ってる行為は
俺からしたら普通の行為。
なんも最低じゃない。』
君は目を大きく開く。
こぼれ落ちそうな瞳はまだ少し燻んでいた。
夜風が頬を撫でて行く。
前髪を揺らす。
『なんも最低じゃない。お前は、』
___________それでいい。
零れ落ちたダイヤモンドは、知らん振りしておいてやろう。