シュテュンプケ

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 視界が歪む。頭が痛くなる。いてもたってもいられなくなって踵が何度も床を叩いた。椅子の上で縮こまる。丁寧にセットした髪を両手がぐしゃぐしゃにする。

 今しがた食べ終えたばかりの昼食が喉から出そうになって、さすがに吐くのはまずいと口元を押さえたはずがいつのまにか爪を噛んでいた。切り揃えた爪がガタガタになっていく。

 今日はあなたとのデートの日だった。

 あなたが恥ずかしがるから同じテーブルには座れなかったけれど、近くの席でお互いを眺めながら同じものを食べて、一緒に帰るはずだった。

 わたしはあなたとならそれでいいと思っていたのに。距離の空いたお付き合いでも、あなたがわたしのものでいてくれるなら。

 その人は誰。ううん知ってる、同じ大学の人だ。同じ講義を受けてる、同じサークルに入ってる人。

 わたしが言いたいのはそういうことじゃなくって、そう、つまり、どうしてその人がここにいて……あなたと同じところに座ったのかって言うこと。

 すうっと胸が冷えていく。浮気された? そんなはずない、だってあなたもわたしのことを好きでいてくれている。ならあの人が、……あいつが誑かしている。

 わたしは震える手でスマートフォンを掴んだ。

 情報収集は一週間もあれば完璧にできる。

 一週間後、邪魔者はあなたの側からいなくなる。待ってて、わたしの恋人。もう一度ふたりきりになろうね。




4/4/2023, 4:37:38 PM