「薔薇なんていらないよ、特に貴方からなんて」
僕が愛してやまない彼女は僕のバラを受け取ることを拒んだ。
何ヶ月か前のこと、彼女が一人で本を読んでいるところから出会いは始まったんだ。
その綺麗なまつ毛に、立ち振る舞いに、横顔に、この世のもの全てを見透かしてしまいそうなほど透き通ったあの青い瞳に一目惚れしたんだ。
そこから話しかけていったのが始まり。
正直人間相手に話しかけるだけで緊張したことないのに、今回ばかりは勇気をめいいっぱいだした。
最初の君はあからさまに僕を怪しんだけれど、プレゼントをあげたり、話す回数を増やすごとに君の笑顔も増えていった。
僕はそれが嬉しくてたまらなかった。
君が好きっていってたチューリップの花畑に行った時の笑顔は忘れられない。
最初に会った時の表情より、数百倍も美しくて、綺麗で惚れ直してしまった。
だけれどその後から僕のプレゼントを受け取ってくれなくなった。
でも話は聞いてくれるからきらいになったわけじゃないと思ってた。
両思いだって信じてた。
でも彼女は僕からの「愛」はいらなかったみたい。
信じてきた気持ちはただの自分の思い込みだったってのはだいぶショックだけどね
「そうか、すまない
僕の勘違いだったみたい」
君はなぜだかすごく辛そうな表情をしてその場から去っていった。
君と両思いになって、こんどは家でもプレゼントして一緒に住もうかなんて考えてたけど、早とちりしすぎたね。
君の背をまっすぐ見つめては凍てつくように冷たい涙が頬を伝った。
悲しくないといえば嘘になる。
辛くないといえば嘘になる。
僕と付き合って欲しくないといえば嘘になる。
でもいいよ、いいんだ
僕を選ばずにもっと素敵な人と出会えるならそれでいいんだよ。
僕の幸せは君が笑ってくれることだから、それでいいんだから。
そう自分に言い聞かせ、唖然と立ち尽くした。
嗚呼、冷たい涙が降り注いでくる。
4/4/2023, 4:36:40 PM