さよならを言う前に』の作文集

Open App

さよならを言う前に』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

8/20/2024, 11:01:56 PM

《さよならを言う前に》

ここのところ、帝国の議会が荒れているそう。
前皇帝の派閥の一人が、彼の汚職を捏造しようと躍起になっているらしい。
彼の正義感は諸国を征服しようとしていた前皇帝の主義に合わず、彼は疎まれ左遷された事がある。
その時から嫌がらせレベルの妨害は続いてはいたけれど、今回は互いに徹底抗戦で行く構えのようで、連日彼は議会での対応に苦慮していた。

ずっとあちこちを駆け回って資料の作成や対応に追われている彼は、徐々に窶れてきているようで。
表には出さないようにしてるみたいだけど、口数も減って来ていて表情にも張りがない。

しかもここ最近は、私の事も責められているとか。
私が表れて職務が疎かになっているんじゃないか、って。

通りすがりの人に当てこすりのように言われたこともある。
私は関係ない、と彼は突っぱねてくれてるけれど、もうそろそろ限界かな。

微かにだけど苦しみを浮かべてる彼の笑顔を見ているのが、辛い。
闇の者として彼の監視を受けている私はもしかしたら、別の誰かに手渡されるかもしれない。

それならば、かつての相棒の所に行こう。
私はそう決めて相棒の許可を取り、今日はこっそり本部を抜け出してきた。

監視と言いつつ私を丁寧に扱ってくれて、ありがとう。
少しずつ私を信用してくれて、ありがとう。
今まで一緒に過ごしてくれて、本当にありがとう。

弱い私で、ごめんなさい。
これ以上、あなたの足枷になりたくないから。
あなたに迷惑を掛けたくないから。

…違う。私は、卑怯だ。

あなたからのさよならを聞くのが怖いから。
さっきまでの気持ちも、本当。
でも、あなたからその一言だけはもう聞きたくないから。

だから、ごめんなさい。
どうか、元気で。幸せでいてね。

影がもうすぐで長くなろうかという時刻。
彼との思い出がたくさん詰まった屋敷を出る。
どんな出来事も、大事な宝物。それを思い、涙が零れそうになる。
私は玄関に立ち、誰もいない屋内に身体を向けて口を開く。

さよなら。

しかし、全てを言葉にすることは叶わなかった。
最後の一文字が音になる寸前、私の身体は背後から強く抱きすくめられ、口を塞がれたから。

「それは…言わせませんよ…。」

荒く乱れた息。全力で走ったであろう、汗のにおい。
私を抱く腕は強いのに、口を塞ぐ手は言葉を紡ぐことは許さないけれど、ひたすらに優しい。

なぜ…どうして…あなたがここにいるの?
午後の議会の時間を狙って抜け出してきたはずなのに。
我慢していた涙が、堰を切って溢れ出す。
口元に置かれた彼の手に自分の掌を乗せると、彼はそっと私の口を解放してくれた。

「ど…して…?」

彼は、切らした息を整えながら答えてくれた。

「貴女の相棒に、通信機で忠告を受けました。」

『あいつから目を離してるんじゃないぞ。
 何しでかすか分からないからな。』

私は、顔を彼に向け目を見開いた。
その連絡を受けたにしても、あまりにも早過ぎる。
議会は? あなたの汚職の疑いは晴れたの?

すると、彼はふっと笑って話し出した。

「議会の方は片が付きましたよ。疑惑の捏造というよりその罪を擦り付けようとしてきていたので、ありとあらゆる証拠をかき集めて徹底的に潰して来ました。」

う。爽やかな笑顔だけど、圧が強い。
これは、さぞや念入りに潰してきたんだろうな。

「貴女を引き合いに出してまで、僕の仕事ぶりを舐めていただきましたからね。どこからも隙の無い証拠を提示する事で、そちらの懸念も払拭しておきました。」

私は、その迫力に涙も引っ込んだ。
この人は、曲がったやり方が大嫌いな人だから。
解決したようで何よりだけど、これは余程腹に据えかねてたんだろうな…。

「よ、よかったです。…にしても、まだ話し合いの時間じゃないんですか?」

私は、少し吃りながら質問した。
その途端、お腹に回った彼の手に力が入った。

「そもそも議題とは関係のない話ばかりでしたからね。後は代理に任せて大急ぎで走ってきましたよ。
 何せ、貴女は目を離すと何をしでかすか分からない。」

あ、え?
笑顔…なんだけど、何やら空気が不穏に。

「そういうわけなので、ご心配をお掛けして申し訳ありませんでした。
 貴女が心配する事は何ひとつ無くなりましたので、どうぞ安心してください。」

いや心配は確かにしたけど、それは良くてですね。
あれ、これ抵抗不可とかそんな感じ?

そして、私はそのまま片腕で身体を持ち上げられると屋敷の中に連れて行かれ、懇願か説教かよく分からない話をされました。

そんなわけで。

彼を思って繰り広げた私の逃亡劇は、彼にさよならを言う前に終わりを告げました。

8/20/2024, 10:59:13 PM

さよならを言う前に

学校生活
卒業
別れ
在学期間
別れがいつか知っている

その前に
遊ぶ
語る
喧嘩する
寄り道もして
勉強会はお菓子の交換会になって
いっぱい写真も撮って
後悔をしないように
やりたいことをできるだけやる

でも
卒業した後も一緒に遊ぼう
知っている別れなら、大したことじゃないから
大人になっても
結婚しても
子供ができても
孫ができても
何があっても、良い関係でいよう

知らない別れが来る時まで
本当のさようならを、言わなくちゃいけなくなるまで

8/20/2024, 10:58:46 PM

さよならを言う前にやりたい事はなんだろう。
君と2人で海に出掛けようか、山に出掛けようか。
何でもない会話をしながら買い物をしようか、カフェでお茶でもしようか。
何をするにも2人でやってきたからか君とやらない未来を想像する事が出来ない。
今日もまた別れがやってくる。
今日くらいは言ってもいいかな、まだ一緒に居たいよって。

8/20/2024, 10:58:34 PM

さよならを言う前に

別れの前には感謝の言葉を伝えたい

  『今まで有難う』 と

でも現実には大切な人ほどその言葉を伝えられずに別れてしまう

8/20/2024, 10:57:49 PM

ありがとう

8/20/2024, 10:53:58 PM

※閲覧注意※
拗れかけの別れ話や性欲を彷彿とさせる表現があります。
好きだから離れなきゃとか、思い込み激しめだったりします。
若干のモラル逸脱があります。


【さよならを言う前に】


離れるべきだと解っているのに、傍に居たいと心は藻掻き喘ぐように叫んでいた。
(離れなきゃ。)
気遣わしげな視線は、憐れみに見える。
そんな筈は無いと思っても、嫌な声が耳の奥底から嘲笑してくる気がした。
(いっその事…。駄目だって、巻き込みたくないんだから。決めたのに!)
身近な優しさに縋れる程、もうこの身には価値がない。
(自業自得、馬鹿だったのは自分。解ってるだろう?)
何を、贅沢な葛藤などしている気になっているのか。

「アホらしい。…そう言うの、要らないから。何、グチャグチャこねくり回して考えてるのか知らないけどさ!」
こっちを見ろとばかりに、両頬に手を置いて頭をガッチリと掴まれる。
「オレが、一緒に居たいの!悪いけど、かっちゃんの気持ちは一切関係ない話!オレは、離れる気無いよ。かっちゃんは何も悪くない。今までもこれからも、かっちゃんはかっちゃんだから。だから、一緒に居させて。」
強引な論調も我儘を装った気遣いなのは、もうずっと前から知っているのに。
(甘えちゃ、駄目だって…。)
何処までも燻る心を揺さぶってくるのだ。
(一言、言えば終わり。終わらせなきゃ。)
喉が干上がって、声が出て来ない。
「かっちゃん、もっと早くちゃんと言うべきだった。オレがのんびりしてたから、ごめん。大好きだよ、かっちゃんの事。きっと生まれた時からずっと好き過ぎて、自覚するの遅くなっちゃった。気持ち悪いって言われたくなくて、離れたくなくて、オレもグチャグチャしてた。2人で一緒に、グチャグチャを解して、オレ達なりの答えを見つけられたら良いなって、考えてる。どうかな?」
欲しい言葉ばかり的確に言えるのは、勝手知ったる仲だから。
「…我ながら最低だわ。傷心に付け入って、目茶苦茶後悔してる。さっさと白状しとけば良かった。」
ガサゴソとトートバッグを漁る手が取り出したのは、くしゃくしゃの雑誌の束。
「気持ち悪いなら、そう言って。思春期からこっち、ずっとお世話になってます。って事で、これはオレが拗らせてる証拠ね。引っ叩いても良いよ。グーパンでも致し方ないかな、と思ってる位には自覚しています。」
性欲の対象を匂わせる言い回しに、まさかと思うと同時に、グラグラと心が揺れるのを感じて、目眩がする様だった。
「あのね、かっちゃん。オレを選んでよ。後悔させないから。アイツのこと忘れられるくらい、オレは愛せるよ。愛してる。」
また、流されてしまう。
駄目だと解っているのに…。
結局、縋り付いて足を引っ張る愚者にしかなれない。

8/20/2024, 10:48:04 PM

さよなら言う前に

必ずいつか"さよなら"を言わなければいけない時がある。

それはいつくるか分からない

別れの時とは突然くる

さよならも言えないまま会えないかもしれない

私はそんな事で後悔したくない

だから

伝えるね、

『いつも、ありがとう。大好き』

#さよならを言う前に

8/20/2024, 10:43:12 PM

#09 さよならを言う前に

「初めまして」

出会いは別れの始まりだ。

別れが辛くなるから

誰とも関わりを持ちたくなかった。

別れが辛くなるから

あなたに出会わなければよかった。

でも、今日ここであなたに出会った。

幼い頃に飼っていた犬がいた。

産まれた時から一緒に過ごして、
まるで親友のようだった。

「ただいま」

そんなあるとき、いつも通り家に帰ると

動かなくなった親友がいた。

心の準備ができていなかったこともあって
一日中泣いた。

初めて学校も休んだ。

「さよなら」

その一言を発するのにも時間が欲しかった。

その一言じゃ済まされないと思っていた。

だから私は

「ありがとう」

そう伝えた。

それからずっと出会いを恐れていた。

でもあなたに出会って

そんな私を変えてくれた。


しぐれ

8/20/2024, 10:36:48 PM

「さよならを云う前に」(一行詩)

左様を口にしている間は走馬灯が走り出す
        ◆
チューベローズの花弁に君の原液を残してる君の影
        ◆
さよならを云う前にまずはアナタの口をコの字で縫い付けて

8/20/2024, 10:34:09 PM

「ありがとう」と「ごめんなさい」を散々言って
どうやって話を切り上げようか迷っているうちに
だんだん気まずくなっていく空気の中

「またね」

会えるかどうかは分からないけど
会いたくない人には絶対言わない言葉


『さよならと言う前に』

8/20/2024, 10:29:13 PM

ここ数年の間に、大切な人を次々に亡くした

正直今回のお題は、まだ生々しくて正面から向き合えそうにない


ごめんなさい
今回はパスさせてください




『さよならを言う前に』

8/20/2024, 10:24:54 PM

さよならを言う前に

そんなに優しい顔をしないで欲しい。

わざわざさよならを言うなんて

あなたぐらいしかいないんじゃない?

どんな言葉を言ってもあなたは笑顔だから

あなたの事が分からないわ。

さよならを言う前に

もっと貴方を知りたいと思った。




─────『さよならを言う前に』

8/20/2024, 10:19:56 PM

産んでくれてありがとう
育ててくれてありがとう
友達になってくれてありがとう
好きなことをさせてくれてありがとう
旅行に連れてってくれてありがとう
楽しい思い出をありがとう

さよならを言う前に

8/20/2024, 10:19:19 PM

さよならを言う前に

言っていない。言わない。言わなくていい。関わりのある人物を頭に思い浮かべるとそんなにたくさんいない事に行き着く。

そうか。広げなかった交友関係の結果だな。
逆に楽だな。この中に自分に関心がある奴がどのくらいいるんだろうか?言わなくていいか。

荷造りをして、必要最低限の物だけを集めたら日用品と一冊の日記帳だけと改めて認識したからか、サバサバした気分に拍車がかかる。

たった一人の家族の兄があの世に行ってから見つけた日記帳には夢や希望、苦しみ、悩みが記載されていた。

迎えの車が来たらしい。いつもと同じようにバックパックを持って外へ出る。何か騒がしい。マンションのエントランスを出るとたくさんの人がいる。

迎えの車の前には見知った顔がある。

お前、何も言わずに行く気だったのか?
腕組して睨んでいる。

言わなかったはずだが?不思議に思い眉間に力が入る。

新聞に載ってんだよ。世界初の有人単独恒星間飛行へ出発ってな。どうせ面倒くさいから誰にも言わないでいたんだよな?お前の兄貴に俺は何て言えばいい?

新聞の一面のトップ記事を見せつける。黙ってさよならじゃないだろう。覚悟してるなら行ってきますぐらい言え!笑って行け。見送ってやる。みんなが来てくれた。お前がどう思っていても、関わってんだよ。
兄の写真を見せる。
俺じゃない、兄貴に言え。さよならじゃないぞ。

兄の写真に自然と所属している軍の最敬礼をしていた。
行ってきます。みなさん、ありがとうございます。
小さいさよならと添えて車に乗り込んだ。

8/20/2024, 10:16:04 PM

逢うは別れの始まりって知ってる?
長い髪を風になびかせて、あの時彼女は僕にそう言った。
白いワンピース 大きな鍔の帽子 向日葵がふんわり揺れていたっけ

「おじいさん、ご飯ですよ」
「おお、まだじゃったかの?」

食事を準備してくれて、隣で微笑む白髪の老女。全然知らない人なのに、僕の心が穏やかに凪いでいるのは何故だろう。
目の前の箸らしき物を見るけれど、これは一体どう使えばいいのか。少し逡巡していると、老婆がスプーンをそっと差し出してくれた。
嗚呼、ありがたい。
ぎゅっとそれを握りしめ、茶碗に盛られたばかりの白米にザクッと差し込んだ。

窓から外を見てみると青々とした葉っぱ、山が緑に萌えている。夏の風が優しく吹いた。
嗚呼、今年こそあの子に会いたい

8/20/2024, 10:15:59 PM

お題「さよならを言う前に」(雑記・途中投稿)

エロゲの名作に「さよならを教えて」(略称:さよ教)ってのがあってだな。
エロゲならではのストーリー展開と、ゲームならではのギミックがすごいと聞いた(ネタバレ読んで話は全部知っている)からやってみたいんだけど、時間があった去年末はメンタル死に掛けていたし、メンタル復活した今は土日寝て終わるから時間がない……。

パソコン立ち上げずに休日が終わる。いや先週はpomeraにデータ移すためにパソコンちょっとだけ立ち上げたけど。あれ平日だっけ?

一人暮らしでパソコンで遊ぶ人って、睡眠時間が短いのか通勤時間が短いのか残業がほぼないのか家事を何もしないのかどれだ(多分複数に当てはまる人)

まあ「さよなら」だと、レイモンド・チャンドラーだったか推理小説『長いお別れ』の最後の文も思い出したけど。「刑事にさよならを言う方法はまだ分かっていない」で物語が終わる。

「さよなら さよなら さよなら もうすぐ外は寒い冬」という歌詞が出てくる「さよなら」(グレープだっけ? 小田和正)を思い出した。
何を理由に別れたのかさっぱり分からない歌詞が多いあの時代。

「涙を堪えてさよなら 悲しいよね」はZONEの「secret base〜君がいた夏〜」だっけ? 海援隊の「涙が枯れるまで泣く方がいい」と対比している感じあるなぁと思うけど、「涙を堪える」が月並みとして先にあるはず。……そんな古い歌知らないけど。


「さよなら」と「さようなら」はやっぱり雰囲気が違う。

8/20/2024, 10:13:05 PM

「さよなら……」

 二人だけの放課後の教室。いつもの隣同士の席に座って、君は前を向いている。私をからかってばかりの君が、強ばった笑顔でさよならと言った。
 
 隣の席で居眠りする君を、グラウンドを眺めるフリで見つめていた。君がする好みの女の子の話を、気のないフリで聞いていた。
 本当はきみを真っ直ぐに見つめたくて、私のことどう思ってる? って訊きたかったのに。

 普段は教室のすみずみまで届くバカでかい声のくせして、今日の君は消え入りそうな声で言う。
 
「親の転勤でさ、遠くに引っ越すから」
「……さっきなんて言ったの?」
「えっ? さよなら?」
「違う! さよならを言う前!」

「えーと……」
 傾いた日差しが教室のロッカーまでオレンジに染めている。そのせいか君の横顔も色づいて見えるよ。

「好きだった……」

「……ならさ、さよならじゃないじゃん!」
「いや、だってさ!」
 弾かれたように君はこちらを見た。
 
 君と正面から見つめ合う。私だってずっとずっと伝えたかった気持ちを言葉にするんだ。
 さよならになんかしたくないから。

「あのね、私もね…………」



 #16 さよならを言う前に 2024/8/21

8/20/2024, 9:47:01 PM

いつも優しい、君が好き。僕のことを想ってくれる、君が好き。僕のことを考えて叱ってくれる、君が好き。

......だったのに
君は、違ったみたいだ。

さよならを言う前に
飛び出してきたことを後悔した
でも
言ったらもっと後悔する
君を諦めるしかないみたいで
「だめでしょ、あーくん」
もう、優しく叱ってもらえない気がして

#さよならを言う前に

8/20/2024, 9:41:12 PM

さよならを言う前に、
もっと、私のことを知ってほしかった。
もっと、手をつなげばよかった。
もっと、花をあげればよかった。
もっと、一緒に歩きたかった。

もっともっとと際限無く後悔が湧き上がってくるが、一番強く浮かんできたのは、

何故、もっと早く助けてと言ってくれなかったの、

だった。
さよならを言う前に、煙となって空に流れる貴方に私は手を合わせた。

8/20/2024, 9:36:13 PM

【さよならを言う前に】

(魔女と弟子)

師匠は魔女で、僕は魔女の使い魔。
人間ではなくなった僕は、年を取らない。師匠との繋がりがある限り、僕は心臓を貫かれても生きているだろう。魔女は長命、僕もいつまで生きるかもうわからない。

「師匠。もし、いつか僕に別れを告げたくなったら、その前に僕を……」
かなりの決心と共にそう口にしたのに、師匠の表情はいつもと変わらず穏やかだった。
「大丈夫よ。私は一度気に入ったものはそう簡単に手放したりしないから」

そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、もしもの話だ。
「僕は、今更師匠から離れるなんて、耐えられないと思うんです」
「……仕方がないわね」
師匠がちょっと呆れたように言って、僕を見つめた。
「どうしても離れる必要がある時には、さよならを言う前に、あなたを完膚なきまでに消してあげるわ」

僕はホッとして笑った。
「良かった。約束ですよ?」
「ええ」
それから、師匠は小声でぼそりと言った。
「元から様子のおかしい子だけど、更に壊れてきてるわね……」

「聞こえてますよ」
使い魔になってから、聴覚が強化されているので。
「壊れているつもりはありません。僕はただ、師匠のことが好きなだけで」
「それがおかしいのよ。どうして魔女にそこまで尽くすの? あなたも元は人間なのに」

僕は自分の家族のことを覚えていない。
僕が知っている人間は、家族がいなかった僕を冷遇して魔女の生贄として差し出した村の人たちと、魔女の家を襲って僕を殺そうとした襲撃者。
その襲撃者のおかげで師匠の使い魔になれたわけだけど、だからといって感謝する気はない。

たまに師匠に頼まれて町まで買い物に行ったり薬を売ったりもするけど、あいつらは師匠の薬で助けてもらいながら、魔女の悪口はやめようとしない。僕のことも『気色悪い』と言っていた。
僕にとって魔女は優しくしてくれた恩人で、人間はろくでもないものなのだ。

「人間は僕の味方じゃなかったんです」
「それで魔女に捕まるなんて、不憫な子ね」
「僕は自分が不憫だとは思っていませんよ」
こんなにも気遣ってくれる愛しい人が隣にいる。
「好きです。僕のこと、捨てないでくださいね?」
師匠はもう一度「仕方がないわね」と言った。

Next