『この道の先に』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
街がある
光がある
大切な人が待っている
今まで険しい道を辿ってきたから
抜けた先には自分の望むものがあると願って
一歩一歩が速くなって
とうとう駆け出して
手を伸ばした
『この道の先に』
もしこの道の先に君がいるのなら
僕はこの道では無い道を歩くよ
だって同じ道を歩いていたら
比べられちゃうでしょ?
君も僕もそれは嫌だって知っているからさ
この道の先に君がいないのなら
君の横に並べられるような
そんな人になってみせるから
覚悟しておいてね
180テーマ【この道の先に】
ポエム好きね(
この道を歩けば、どこにたどり着くのだろう。希望?絶望?幸福?不幸?何にせよ、進まなければ。この道は一方通行。後戻りはできない。立ち止まることもできない。分かれ道ならある。自分で選ぶ。他の人はいない。誰一人として。
この先に何があろうとも、恐れず進むんだ。前を見て。きっと素敵な出会いがあるはず。
(ここからは読まなくてもいい)
ただ、いつかは終わりがある。そこまで辿り着けたら、僕が沢山褒めてあげる。
「えらい、よく頑張った。辛いこともたくさんあったろう、楽しいこともたくさんあったろう。よくここまでもがいてきた。よく役割を果たした。本当にえらかったぞ。満足できたかい?幸せは見つかった?まぁ、どんな結果であろうと、楽しめたなら100点満点。あとはゆっくり、休むといい。」
辿り着けなかったら、僕は皮肉を言うかも。
「なにしてんだ、弱虫。諦めたのか。負けたのか。ほんとお前は困ったやつだ。もう遅い、過去には戻れないのだから。」
…Path of Life…
「この道の先にラピュタはあるんだ」
「なにそれ?」
「……」
「ねぇ、今のなに??」
「いや、好きかと思って」
「……好きだけどwwそんだけ?」
「 うん 」
少し恥ずかしそうに、いやだいぶ恥ずかしそうに、ぎゅっとハンドルを握りしめて、じっと赤信号とにらめっこをしている彼の横顔をにんまりと笑いながら見つめていた。
小さい頃、信じ続けていればいつか[天空の城ラピュタ]に行く機会が巡ってくると思っていた。だけど、現実は残酷なほど現実だった。
小、中、高と大学をそれなりの時間を経て、社会人になった今。ル・シータ症候群になんてかかっていられない。私はシータになるチャンスをもう失ったのだ。赤信号で止まるわけにはいかない。
「ついたよ」
「え、あ。ほんとだ」
豊橋駅20:26新幹線の出発まではあと約40分。駅直結の地下駐車場にいつの間にかついていた。車内には彼が10代の頃にまとめたというプレイリストが流れている。
「サヨナラCOLOR、懐かしい」
「そうだね」
________________
そこから旅立つことは
とても力がいるよ
波風たてられること
嫌う人ばかりで
サヨナラから始められることが
たくさんあるんだよ
________________
そうだねと相槌を打ってみたけど初めて聞いた曲だった。だからこそ耳を澄ませてしまった。ダメだ、泣きそうだ。
本当は離れるために閉じていくこの時間がきらいだ。車内ではもう次の曲が始まっていた。
「ほら、行く準備して?」
頭にポンと置いてくれた手がすき。その手に甘え続けられたなら。
「うん」
ゴソゴソ、ガサガサ。
助手席ではこれ以上時間を稼げそうにない。もう席を立たないと。シートベルトを外し、ドアノブに手をかける。
だけど……。
振り向いて彼を見る。
きょとんとしている彼の懐に飛び込んで思い切りぎゅっと抱きついた。
「どうしたの、寂しくなっちゃった?」
「……」
「よしよし、いいこww」
「ちがうもん!フラップターで助けに来てくれたパズーから離れないシータの真似だもん」
ぎゅっに対して、ぎゅっを返してくれる彼の腕の中を抜け出すと、さっきまでの私みたいなにんまり顔の彼がいた。
「バルス!!!」
「照れ隠しが物騒すぎるでしょっww」
「だって!」
「さっきの仕返しだよ」
優しいハグと同じ気持ちのキスをして、車を降りた。まだ少し早いからタリーズコーヒーで季節限定品をおいしいおいしい!と飲み、明日は晴れるかなとか距離があることも忘れて話した。あっという間に時間になり、改札の前で次も早めに予定合わせられるといいね、なんて言って手を振った。
ホームに降りてまもなく、新幹線は定刻通りにきた。手元のチケットと自分の指定席の番号が合っているか3回確認して、席に着く。スマホの充電は特に必要ない。
新幹線は発車する。
赤信号が青に変わった。
私も同じく、前を向いている。
彼も同じく、きっと前を。
この道の先に何があるというのでしょう。
生きてそれを見るだけの価値がありますか。
明日も、明後日も、その次も、今までと同じ暮らしの繰り返しなんでしょう。夢も、希望も、持つことはとっくに諦めました。期待しても願いをかけても何も変わりませんでした。
誤解の無いように言っておきますが、自分の力は尽くしたつもりです。現実は想像以上に残酷なもので、予想を遥かに超えてくるものです。もちろん、時折感じるささやかな幸せもあります。けれど、それだけで生きていけるほど容易くはないんです。
弱い?それが人生?仕方ない?皆そういうものだと受け入れている?…だとしたら私がこの先を望めないのも当然ですね。私からすればどうしてあなた達が絶望せずに生きていけるのか不思議で仕方ありません。あなた達の「死んではダメ」「生きていたら良いことがある」ほど頼りにならない言葉はないですから。
…私が道を逸れるのを見届けなくても大丈夫ですよ。あなたはどうぞ先に、ただ前を見て、続く道を歩いていってください。
じゃあ。さようなら、
「この道の先に」
「ねぇ!勝負しない?」
そう話題を持ち掛けて来たのは彼女だった。
同じクラスの女の子、初めて同じクラスになったから名前なんてまだ覚えちゃいない。
「普通に嫌だけど」
初めましての子と遊べる程、僕は出来た人間じゃない。だから少々素っ気なく返した。
「えー!何でよ。つまんないなぁ、」
コッチをチラチラと見ながら言うその言葉。
少し落胆した声、それとは真逆の期待してる顔。
どうやら彼女は嘘をつくのが下手らしい。
「はぁ、少しだけね。」
純粋な顔に潔く折れる事にした。
今日は早く帰りたかったが、彼女に捕まってしまったのだ、今日はのんびり帰るとする。
彼女に歩幅を合わせながら僕は聞いた。
「で、勝負って何するの?」
彼女は期待してました!と言わんばかりの顔で答える
「この先の並木道まで全力ダッシュ勝負!」
予想していたものとは大きく逸れた返答が返ってきた。こんな夏日に走りたくは無いのだか、彼女の顔を見ると僕は断れなくなってしまった。
「いいよ。」
承諾の意を込めた言葉を飾らず発する。
「じゃあ、3秒後よーいスタートね!」
「さーん」
蝉がミンミンと鳴いている。
「にー」
アスファルトからくる熱が、鬱陶しい。
「いーち」
足に、力を込める。
「スタート!」
力を込めた足が力強く、1歩を踏み出した。
言葉を皮切りとした僕と彼女が全力疾走をした。
だが、男女の差など明確で、僕は彼女をどんどんと離して行った。
離して行く途中、何処からか風鈴がチリンと音を奏でた。
それと同時位に並木道に着いた。
後ろを振り返り、彼女を確認する。
風鈴が寂しげにチリンと鳴く。
彼女の姿は、忽然として、無かった。
当時の記憶に浸りながら、僕はあの並木道に向かう道を歩いている。
久しぶりの通学路は何1つ変わっていなかった。
当時から、もう随分と時間が経ってしまったが
きっとまだ、大丈夫。時間遡行は行える。
そう思っていた矢先、丁度彼女に話し掛けられた、当時の場所に差し掛かった。
あの時の彼女の言葉を頭で反芻する。
「さーん」
当時と変わらず蝉がミンミンと鳴く。
「にー」
あの時と同じ、あの熱が伝わってくる。
「いーち」
足にゆっくりと、力を込める。
「スタート!」
力を込めた足が力強く、1歩を踏み出した。
走っている最中、あの風鈴がチリンとなった。
そして、全ての条件は当時と等しくなった。
「この道の先に、あの時の続きがある。」
そう信じて、あの並木道に向けて、走った。
「その道の先すらも」
この道の先に何があると言うの?
そんな問さえ夜空に散って
誰の言葉にもならずに終わるだけ
人の生きるはなんなのか?
人の成長はなんなのか?
頼みの綱である神様も、もしかすると知らないのでは?
知らないのならば、見つけるしかないということなのだろうか?
そんな力すらない僕達に一体
なにを望めと言うんだ。
→短編・最重要案件 (2024.7.4 改稿)
夜中、低い唸り声で目が覚めた。唸り声の正体は隣で眠る夫だ。どうやら悪い夢を見ているらしい。
仕事のストレスかもしれない。彼の話を聞くに、大きな案件が動き出しているとか。彼も関わっているそうで気の張る場面が多いと言う。
薄暗闇の中でも夫の眉間に深いシワが刻まれていることに気がついた。鼻についた眼鏡跡も歪んでいる。
夫が「うぅん!」とひときわ大きく唸った。「こんな決定が株主総会で通ると思っているんですか?……」
案の定仕事の夢を見ている。かわいそうに、起こしてあげよう。寝ぼけながらもそう思った矢先、夫は声を荒げた。「この道の先には、ラッコバトルしかありません……」
ん? 何か聞き慣れないファンシー且つ荒々しい単語が聞こえたような? ラッコバトル?? イヤイヤ、まさか!
私の寝ぼけていた頭はもうフル回転だ。
寝言にも関わらず、夫は周囲を諭すことを意識した低い声で言った。「これは我が社の最重要案件です。ラッコちゃんから貝殻を奪わないでください」(キリッ)
やっぱりラッコかい! どんな業務内容なのよ? 取引先、水族館なの? ストレスで現実逃避的してるのかな?
それだけ言い切ると、彼は健やかな寝息を立てだした。やり切った感があふれ出ている。私は完全に目が覚めたというのに!
スマートフォンで時間を確認すると早朝4時だった。
苛立ち紛れに夫を起こしてやろうかと思ったが、ある考えに私はニヤリとした。冷蔵庫の食材を脳裏に思い浮かべる。
「及ばずながら、その最重要案件お手伝いしましょう」
眠る夫にそう囁いて、私はベッドから起き出した。
昼休み。私は自分のデスクでメガネを外し、目頭をきつく指で摘んだ。
午前中は散々だった。上役と現場の睨み合いが続いている。中間管理職の私は板挟み状態で、体の良いサンドバッグにされている。多くの人間が関われば、それだけ意見の数も増える。この道を行けばあの道が立たず、あの道を行けばこの道が立たず。シンプルな解決策のある仕事なら、こうも悩むことはないのだが。
気持ちを切り替えよう。今日は久しぶりに妻が弁当を持たせてくれたのだ。新婚時代、料理が趣味の彼女は毎日弁当を作ってくれた。いつしか得意先と昼食をともにする機会が増え、子どもたちの弁当作りがなくなり、妻の仕事に外回りが多くなり、気がつくと私の弁当はなくなっていた。
懐かしい弁当箱を前に気分が高まる。妻の弁当にハズレはない。それに甘えた結果、私の料理スキルは未熟のままだ。そう遠くはないセカンドライフのために料理を習おうかと妻に相談するも「そのうちに教えてあげる」とかわされてしまった。
「何だこりゃ?!」
弁当箱を開けた私は素っ頓狂な声を上げた。隣のデスクの部下が身を乗り出して、私の弁当を覗き込んだ。
「あ、すっげぇキャラ弁。なんとかバスターズってヤツっすか?」
禁止マークから2匹のラッコらしき動物が顔を突き出し、それぞれが手(ヒレ?)に持つ貝殻をぶつけ合っている。
何だ? どうした? なぜラッコ??
一面の白飯が敷き詰められた上に海苔やら紅生姜やら椎茸の佃煮やら使える食材全てを使って作られた可愛らしい2匹のラッコ。
見ているうちに笑いがこみ上げてきた。どういう意図か分からないが、彼女らしいユーモアあふれる作品だ。
なぁ、ラッコたち? そう争うなよ。私は弁当の蓋に彼らの武器である貝殻を取り除き、手を繋がせるよう海苔で小細工を施してみた。禁止マークの斜め線も外してしまう。
今や2匹のラッコは手に手を取って仲よさげだ。
「あれはオバケじゃなかったか?」
部下にそう答えた私の声は驚くほど軽快だった。何かの重みから解放された気分だ。
弁当に箸を入れると、白飯の下におかずが仕込んであった。私はラッコの貝殻をいちばん最後まで残した。なぜかはわからないが、ラッコたちに貝殻を食べる自分を見せたくなかった。貝殻はかまぼこでできていた。
午後もまた戦場だ。しかし今ならどんな厄介事もやり抜けそうな気がしている。
テーマ; この道の先に
この道の先に
いつもと違う道
見たことの無い風景
この道の先に何があるのだろう
心に響く何かが有ると信じ
一歩足を踏み出した
【この道の先に】
◀◀【現実逃避】からの続きです◀◀
畑が延々に続くのどかな光景のなかを、鼻唄まじりでアランは車をひた走らせる。たしかこの道の先には小さな町があったはず ―― 記憶をたよりに頭の中で地図を思い浮かべる。そろそろお昼時、休憩を兼ねてその町で食事をしよう。どんなレストランがあるだろう?おもしろい観光スポットはあるかな?期待を膨らませながらしばらく行くと、前方に荷物を積んだ小型トラックが道からはずれて停車しているのが目に入った。傍らには作業着姿の若い男が立っていて、アランの車に向かって大きく手を振り呼び止めようとしている。なんだろう……なんだかかなり困った顔をしている。ガス欠でもしたのだろうか?新手の路上強盗の可能性もある、用心しながらスピードを落とし、アランもトラックの近くに車を停車させた。すると作業着の男は急いで駆けつけてきた。
「どうしました?なにかトラブルでも……」
ほんの少しフロントドアのウィンドウを下げて訊ねると、男は必死にウィンドウに縋りついてアランに訴えかける。
「お願いします、どうか助けてください!いますぐ、大至急、納品と病院、両方行かなきゃならないんです!!」
「……え……?」
思いもよらない懇願要請に理解がすぐには追いつけず、束の間アランは、ひよこ色の男の髪が陽光を受けてキラキラ輝くさまを、丸くした目で呆然と見つめ返すことしかできなかった。
▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶
今日の朝
DM貴方からのリアクションで終わった
話せないなーって思ってたら
夕方、お昼寝から目さめたらまさかの
貴方からの新着メッセージ
嬉しすぎて
寝ぼけてたのどっか行っちゃったくらい
MBTIに頼る訳じゃないけど
貴方はINFJだってゆーてたから
メッセージくるだけで脈アリなのかな
とか思う私はENFPだよ
相性は悪くないって書いてたの
とりあえずHappyだよね
この道の先に
あの時住んでたあの道から
枝分かれするようにと続く
大きく広いバイパスが作られていたけれど
未完成のあの道のあの先は
もう完成したのかな?
この選択が、人生を左右していたとは思ってなかった
急に押し付けられた選択肢がこんなに大きなものだとは思わなかった
もう引き返せない
絶対にあの人のせいなのに、選んだのは私だから責めることすら許されない
仕方ないじゃない。まだ小さな子供だった…
自分は正しかったんだと自己暗示で正当化して
この道の先が幸せな結末を迎えることを祈って
今日も私は不幸せな現実を呑む
誰か早く、私を、
死合わせにして
私は、いつ創られたのか分からない。
気づいた時には、私は廃墟に居た。
周りは廃れていて、誰も居なかった
私は、探した。この道の先に誰か居ないかと…。
【この道の先に】
このまま突き進んで
私の幸せに繋がるのだろうか
自分の納得できる最終を迎えられるなら良い
良かったと思えたら
他人がなんと言おうが幸せなんだから
この道の先には何があるだろうか。
人生には数えきれないほどの分かれ道がある。
選んだ道の先が真っ暗で見えなくても、私は少ない手がかりを駆使して突き進んでいかなければならない。
時々
この道で合ってたのかな?
あの時に違う道を選んだら今より幸せだったのかな?
って思う時もある。
けれども、
自分がその時しっかり考えて下した決断なら、それでいいんだ。その決断に正解も不正解もない。
選んだ道が思ってたのと違うくても、その道のりを振り返った時に、「案外おもろい道やったわ」って思えたらそれだけでいい。
どんな道でも自分の進み方次第で、「おもろいもの」にできるはずだ。
どんな場所に、立たされても。
時間を巻き戻すことは
出来ないし
失敗や成功から
汲み取れるものが
思ったほど、無いこともあるし
想いとは違った形での
突然の別れだって
いくらでもある。
けれど、目線を変えれば
それを生きていく為の足し算にも
掛け算にも豊かさにも
出来ることを、私たちは知ってる。
この道の先に…
まだ知らない、何があったとしても。
【お題:この道の先に】
俺には彼女がいる。
「美味しいね緑くん」
奏はにっこりと満面の笑みを浮かべながらもぐもぐとステーキを食らう。
高くもない飲食店で二人、ちょっとした贅沢をする。
……幸せだ。
---出来るならあと一時間こうして一緒にいたかった。話したかった。でも、それはお互いに言わない約束をした。だからーー。
あぁ、全てが終わる。
「はっ」
時計を見ると針は7時を指していた。仕事の時間だ。顔を洗い支度をする。朝ご飯はインスタントのカップラーメン。ステーキ、食いたいな。
家を出て会社までの道を見渡す。今日という道の先を乗り越えて俺は彼女に逢いにいく。
夢の中でしか逢えない彼女に逢うために今日も俺は社会の奴隷だ。
この道の先に川が有って、その向こう側に、街があって、ネオンが輝いて、楽しげな若者が、おしゃれなカフェで、今日もよろしくやってる。
でもこっち側から向こう側へ、渡る橋は無いのだね。
たった50メートル。泳ごうと思えば泳げるけれど、僕はもうそんなことはしないのさ。
向こう側へ渡っても、僕は僕であるのだから。
こっち側で、一人のんびり生きていくのも悪くない。
向こう側へ行くなら行けばいいよ。
さようならさようなら
君はまだ若いのだから。
平和にどっぷり浸かるのは早すぎる。
ここもいいとこだけどね。
勇気をだせよ。
さあ!スイム!
お醤油だけじゃなくて、色々試してみなさい。
“この道の先に”
一週間後に必ず提出するように、と至極真面目な顔をした教師から渡された用紙にデカデカと書かれた『進路調査』の文字を見て、俺は静かにため息をついた。
ほどよく手を抜き、ほどよく内申点を稼ぐ。昔からよくズル賢いだのと言われてきた要領の良さを最大限に活用して謳歌してきた"テキトーに楽しい高校生活"ともそろそろお別れだ。
空欄にはするなよーと言い残して担任が教室から出た途端ザワザワとお互いの進路についての話で盛り上がりだすクラスメイトをよそに、俺は一人進路調査の紙をカバンに放り込んで教室を後にした。
廊下に一歩足を出した時に辛うじて耳に入ってきた、アイツはいいよな余裕で進路決まってるんだろ?というクラスメイトの言葉は聞き流すことにする。
廊下に出てから数歩先の隣の教室も、同じ様に進路調査の紙を配られたのか、いつもよりざわついている様だった。理系クラスの俺の教室より女子の比率が高い教室の盛り上がりは華やかで羨ましい。
こんな華やかな空間でも一人絶対零度の真顔を貼り付けて、帰りの支度を黙々としているだろう幼馴染の様子を思い浮かべた。いつもなら面白く思えるはずなのに、今日はなんとなくモヤモヤしてしまう。そんなモヤモヤを吹き飛ばす様に勢いよく教室のドアを開けて、幼馴染の名前を呼んだ。
重たそうなスクールバッグを片手にドアの方へ歩いてきていた彼女は、俺が名前を呼んだ途端に真顔をしかめっ面に変えてうるさいと言いたげに睨みあげてくる。どうせフリなのはバレているだろうけど、形だけ少し申し訳なさそうにしておいて彼女が持っているスクールバッグを取り上げた。
「っ……今日は一段と重てーな」
「週末だから仕方ないでしょ。重たいなら返して」
真っ白な細い腕が荷物を取り返そうと伸びてくる。こーんな細い腕があんな重いカバンを持ってよくもまあ折れないものだとその腕をしげしげと眺めてしまう。爪楊枝くらい細いんじゃねーのって指が勢い余ってカバンを持つ俺の手の甲を引っ掻いていくのに猫みたいだなあと思いながら適当にいなして歩き出す。
中学の時からいつも行き帰りは俺が荷物を持っているから彼女も慣れたものですぐに荷物を取り返そうとするのを諦め並んで歩く。彼女の方が少し歩幅は狭いけど、歩く速度はもうわざわざ合わせなくてもぴったりだ。
「……あんた、進路はどうすんの?」
「突然なんだよ」
「さっき、貰ったでしょ」
進路調査の用紙。ちょうど下駄箱が別れていて最後まで聴こえなかったがきっとそう言ったのだろう。俺は都合よく聞こえなかったフリをして靴を雑に床に落とした。彼女は俺が聞こえなかったフリをしたのに気づいているのか、本当に聞こえなかったと思ったのか、ねえと下から覗き込んでくる。それにやっぱり気づかないふりをする。
靴を履くのに手こずっている彼女を置いて、一足先に昇降口を抜けるとまだ湿度の高くない初夏の風が頬を撫でていく。
受験が終わって、卒業したらもう今までみたいに一緒には帰れない。わかってはいてもなんだか受けいられなくてモヤモヤしている。この分かれ道の先で、ただの幼馴染の俺たちが交わることはあるのだろうか。
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お題の文を上手く入れるには文字数が足りなくて少し変えてしまいました、反省
広げた風呂敷のたたみ方が一生わかりません