SNSで流れてくる、キラキラした青春。
仲間と眩しい笑顔をカメラに向けて、手には花束と卒業証書を持って。
「3年間ありがとう」
って、在り来りな言葉を並べてる。
そうは言っても、羨ましくて、目頭が熱くなった。
3年前、新しい環境に怯えていた時、それでも青春を謳歌することを、楽しみにしていた。
新しい環境なら、自分は輝けるとどこかで思ってた。
でも違った。
私は、所詮は傷物。腫れ物。余り物。
選ぶ側じゃなくて、選ばれる側。
気づいてしまった。それから、人の目を見ながら話すのが出来なくなった。それを出来るようにするのが目標だったのに、残念。
どんどん、自信をなくしてく。
私なんか居なくてもいいんだと、気づいてく。
ただ、SNSにのせるほど輝いていなくても、俯いていても、見えるのは、指に繋がった糸。絆。
貴方たちは、きっと知らないだろうけれど。
唯一ちぎれなかった、絆。
私はそっと、自分の指にキスをした。
貴方の口癖は、「たまには」だった。
「たまには、あそこの道から帰らない?」
「先週もそこ通ったし、それにその時迷子になったの忘れたの?」
「今度こそ大丈夫だって。最終的にはたどり着けたんだから」
貴方はいつも通る道から外れて、あまり見慣れない小道を進んでいく。
私はため息をつきながら、ゆっくりと貴女の後ろをついていった。
「たまには、いつものように過ごすのも悪くないと思うけどね」
「じゃあ明日はそうしよう!たまには、それも悪くないね」
たまには、たまにはって、うんざりするけれど、貴方との刺激的な毎日は、私にとっては宝物だった。
プレゼントなんて滅多にくれない貴方から、手作りのお菓子を貰った。
「なぁに、急に」
「作りすぎただけだよ」
「そう?まぁ、有難く貰うけれど」
タッパーを開けてみると、そこには形が歪なマドレーヌが数個、綺麗に並べられていた。バターの甘い香りが、ふわっと優しく香ってきた。
「マドレーヌ!好きなの、教えたっけ?」
「だいぶ前に言ってたの覚えてたから」
「やっぱ、私のために作ってくれたんだ」
「違う」
貴方はぶっきらぼうにそう言って、スマホをいじり始めた。覗いてみると、検索履歴に、
「大好きな友達に送るプレゼント」
と、1番上に表示されていたのが見えた。
私もスマホを開いて、検索アプリを開いた。
『大好きな貴方に送るプレゼント』
28歳の私です。
私は今、なんとか夢を叶えて社会に出て働いています。想像もつかないでしょうが、何とかなりました。
でも、そんな憧れていた社会に打ちのめされて、自分だけが住んでる家でめそめそと泣いています。
そういえば、一人暮らしを流石にし始めました。と言いつつも、もう4年も経っていますが。
18歳なら、小説を、まだ書いている時期ですかね。
今では、思考が凝り固まってしまったので、もう読むのも書くのも、嫌になってしまいました。
人間の嫌なところを、小説で感じるのすらも嫌になってしまいました。
でも、貴方が買った本たちは、捨てずに取っといてあります。
貴方が欲しがってた大きな本棚に、綺麗に収納しています。
こんな暗い人生を生きてる私からの手紙なんて、欲しくなかったかもしれませんね。
それでも、貴方が積み上げてきた本たちは、今では私の人生の先輩です。
心強いですよ。孤独ですが、ちっとも寂しくありません。
だから、安心してください。貴方が思ってる以上に、私は元気にやってます。
それでは。
10年後の貴方より
貴方の言葉に傷ついた日。
貴方を言葉で傷つけた日。
そんな日の夜は、なかなか自分の心と意思疎通が取れなくなって、思うように明日の準備が出来なくなる。
それでも、明日のために、鞄を整理して、明日のやるべき事を考えて、アラームをセットして……。
あとは、明日のために、明日に備えて、寝るだけなのに。
貴方との思い出にしがみつく私が、それを許してくれない。
時計を見る。もう日付は変わっている。
つい最近の貴方との思い出が、1日という壁で隔てられた。
今日はきっと、貴方とのいい思い出が、増える日に。