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4/12/2026, 12:13:37 PM

「なんだか、貴方が遠くの空へ行ってしまったみたい」

「別の県に移っただけだよ」

「だって、しばらくまた連絡取れないんでしょ?」

警察学校に入学した貴方。寮生活で、しばらく連絡が取れないらしい。

高校三年生の頃から、貴方が警察を目指していたことは知っていた。でも、いざこうやってバラバラになってしまった時、どうしようもない寂しさに襲われた。

「貴方は貴方で、大学生活楽しんでよ」

「ん、楽しめるかな」

「楽しめるでしょ。羨ましいよ、少し」

「大学、行きたかったの?」

「本当はね。でもこんな頭じゃあ、ね」

私からしたら、夢に一直線な貴方なら、大学だってきっと行けただろうと思う。私みたいな中途半端で優柔不断な人間には、もったいない場所だと思う。

「ごめん、そろそろ切るね」

「うん。頑張ってね」

「貴方こそ」

電話が切れた。虚しさで胸がいっぱいになって、ベッドに横たわる。

窓を見る。綺麗な夜空が広がっていた。遠くの空へ行ったとしても、きっと貴方も、同じ空を見上げているのだろう。

「それなら怖くないかも」

不安になったら、貴方と一緒にこの夜空をまた、見上げようと思った。

4/11/2026, 4:13:00 PM

友達、という言葉が嫌いだった。

親友、恋人、という言葉も。

そう名前をつけられた関係性の人達はみな、離れていったから。結局は、傷つけ合って終わった、そんな関係性だったから。

じゃあ、貴方は?

「周りから見れば、友達、だよね」

貴方は、レモンサワーを1口飲みながら呟いた。

「うん。でも、違う」

「えぇ、友達じゃ、ないの?」

「そうじゃないよ。名前をつけられないくらい、特別な関係性なの 」

「物は言いようね」

そんな言い方をされて、私はムッとした。そんな感情を抱く権利なんて、私には無いのだけれど。貴方とは友達じゃない、だなんて言って貴方を傷つけたかもしれないのに、私が被害者ぶったって仕方がないでしょ。

「いい言葉が、出てこないの」

「じゃあいい言葉が出たら教えてよ」

「それまでは、側にいてよ」

「うん」

短い返事。でも、貴方なら、大丈夫な気がした。

4/10/2026, 12:04:11 PM

「お花見って初めて?」

「うん。そうかも」

「じゃあ私が手取り足取り教えてしんぜよう」

「教わるようなものだっけ、お花見って」

普段のみなれない日本酒を飲んでいるから、貴方はきっと早くも酔ってしまったのだろう。頬の色は、桜、というより梅の花に近いピンクに染まっている。

「まずはね、お花派かお団子派に分かれるんだよ」

「はぁ」

「お花派の人は、桜を眺める。お団子派は今日持ってきたお弁当とかをただ無心に食べる」

「色々初聞きだな……ちなみに貴方はどっち派?」

「断然、桜餅派だね」

「あぁそう。じゃあこのお弁当は私が頂くね」

「ダメだよ!私の好きな卵焼きが入ってるんだから!」

「桜餅派なんだから黙って桜餅でも食べてればいいのに」

私は貴方に、小綺麗な箱に入った桜餅を差し出す。貴方にお花見をすると急に誘われた時、なにか持っていった方がいいだろうと思って近場のスーパーで買ってきた少し高めの桜餅だ。

私は桜餅なんて食べたこと無かったから、味なんて知らないけれど、貴方は喜んで桜餅を頬張った。

「貴方も食べてみたら?桜餅。あ、もしかしてお花派だった?」

「ん、いいや。私はお団子派」

「そこは桜餅派でしょ〜」

「そもそもお餅とか、お団子とか、好きじゃないし」

「全く。じゃあ全部私が食べちゃお〜」

貴方が桜餅を食べている間に、私はお弁当の中身を口に放り込む。桜色のかまぼこ。いつもより、美味しく思えた。

春爛漫の空の下で、私たちはそれぞれお団子を頬張った。

4/9/2026, 12:37:39 PM

「貴方の書く小説って、恋愛小説みたいだね」

「嬉しくないなぁ」

「どうして?」

「だって、恋愛小説嫌いだし」

「それは、失礼しました」

貴方は少し申し訳なさそうな顔をして、ねぎ塩が乗ったタンを美味しそうに頬張った。

貴方のカバンからはみ出してる、貴方と私がモデルの短編小説集がちらりと見えた。

ようやく、渾身の1冊が完成して、それがテレビでも紹介されるような受賞作にもなった。

出版してくれる会社も見つかって、少しづつ活動が忙しくなってきた時、唯一私の活動をずっと応援してくれていた貴方が、お祝いになにか奢ると言って焼肉に連れていってくれたのだ。

「それにしても、テレビで君の名前が出た時はびっくりしたなぁ。私、最近本屋とか行かないから気づかなかったけど、もう見た瞬間すぐ本屋に駆け込んだもん」

「それは、嬉しいね」

「でしょ」

「貴方って、本そんなに読まないのに、ずっと私の活動応援してくれてたよね」

「別に本は読まないけど、好きではあるからね〜。それに、貴方は絶対成功するって思ってたし」

「小説を投稿するアプリに登録したら、すぐ貴方に特定された時は私もびっくりしたよ」

「ふふん、私、君の作品は全部読んだからね。作風で分かっちゃうの!」

貴方はどこか、誇らしげだった。作品が受賞したとはいえ、まだまだ出版された作品はひとつだけ。貴方に自慢できるほどの何かを、まだ成し遂げた自覚はない。

それでも、これだけは、私も自信を持って言える。

「貴方は、誰よりも、ずっと私を応援してくれてる」

「なぁにを当たり前のことを言ってるのよ」

あっけらかんとしている貴方の顔。これだから、私は自分の夢を諦めきれないのだ。

4/8/2026, 11:39:22 AM

久しぶりに貴方と遊びに行った時、とあるチェーン店でお昼ご飯を食べようとしていた。

そこは洋食がメインのレストランで、パスタかハンバーグか……何を食べようか胸を踊らせながら選んでいた時だった。

「じゃあ、一旦これ頼もうかな」

と、貴方が指さしたのは、ほうれん草のソテーだった。

いつもの事だったけれど、あまりに貴方と食事をするのが久しぶりだったから、この恒例行事があることをすっかり忘れていた。

「いつもそれ、頼むよね」

「うん。だって美味しいし」

「いつまで食べ続けるつもり?」

「これからも、ずーっと!」

貴方があまりにも無邪気に言うもんだから、私は思わず笑ってしまった。

その後、私も食べたくなって貴方に内緒で2つ頼んだのは、直ぐにバレることになるのだけれど。





メモ : 作者はほうれん草が大好きです。

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