ここ

Open App

私は、雨が嫌い。

「今まさに降ってるけど」

「だから今日は、外出るの諦めたの」

「言い訳ばかりして」

「違うよ。雨の独特な匂いとか、傘をささないといけないところとか、ジメジメするところとか、ほんと、嫌い」

今日は貴方と久しぶりに、ショッピングをしようと思っていたのに、運悪く雨が降ってしまって、仕方なく私の家で何もせずぼーっとしていたのだ。パラパラと無慈悲に降る雨は、私の沈みきった心をさらに叩きつけるようだった。

雨の日は、なんとなく体もだるいし、いいことなんてひとつも無い。

「雨なんて、無くなればいいのに」

「そう?雨があるから、こうやってゆっくりできる日があるんじゃない」

「そんなの、天気がいい日でもできるし。天気がいい方が、日向ぼっこもできて、穏やかに過ごせるし」

「でも、雨上がりの空は、とても綺麗よ。運が良ければ、虹がかかってる事もあるし」

でも……と何か言いかけた時、窓から聞こえてきた雨の降る音が、止んでいることに気がついた。

カーテンを開けると、雨が止んで、代わりに日差しが降り注いでいた。住宅地が綺麗な黄色に染められて、その真上には、アーチ状の虹がかかっていた。

「ほら、今はまだ午後の2時。ね、いいこと沢山でしょ」

といいながら、貴方は楽しそうに荷物をまとめて、私にほほ笑みかけた。

「そうだね」

雨の日も、案外悪くないかも。と思いながら、私も出かける準備を始めた。

6/1/2025, 11:08:36 AM