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木陰の下、蝉たちが奏でる耳障りな歌に耳を傾けていた、あの日。

「ほんと、暑いね」

「暑いし、うるさいし、夏っていい事ない」

「夏は、アイスが美味しくなるよ」

「うーん、一理ある」

暑さでお互い頭がやられてて、会話も成立しているか分かってない。でも、こんな平和ボケな会話ができるのは、お互い今年の山を超えた小休憩の時期だったから。

「ね、アイスでも食べようよ」

「ここら辺、コンビニあったかな?」

「ちょっと歩くけど、大した距離じゃないよ。いいでしょ?」

この時断っておけば、貴方は今でも私の隣にいるのだろうか。

「いいよ」

私の返事に貴方は、まるで夏休みに旅行に行くことが決まった子供のように喜んだ。

あなたは一目散に木陰から出て、太陽に照らされながら私に手招きをした。

私も木陰から出ようとした時、木陰が優しく揺れた。

揺れる木陰の下、私はなんの根拠のない不安感に襲われた。

でも、アイスの誘惑と、貴方の笑顔で手招きをする姿に一目散に飛びつきたくて、私は揺れる木陰から身を離してしまった。

7/17/2025, 11:24:01 PM