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今日は七夕、らしい。

「そんなこと、すっかり忘れてた」

スーパーのお絵描きコーナーには、色とりどりの短冊やペンが用意されていて、大きな笹も立派に立ててある。

「願い事書かないの?」

「思いつかないから、いい」

そう言った後、自分の発言が少し冷たくなってしまったことを後悔した。

「じゃあ、貴方に願い事が沢山舞い込んできますように、って書こうかな私は」

「そんなの、いいよ別に。自分の願い事でも書いとけばいいのに」

「だって、願い事がないと、世界が無彩色に見えてしまうでしょ。そんなのきっと、つまらないわ」

「貴方がいるから、毎日楽しいのに」

「なにそれ、ちょっと嬉しいかも。じゃあ私が居なくても楽しめるように、貴方の幸せを願っとかないとね」

私はその発言に少し、ムッとした。

貴方がいない世界なんていらない。

貴方が短冊に願いを書き終わったあとに、トイレに行ったのを見計らって、私は短冊に願いごとを書いて、いちばん見えにくいところに願い事を吊るした。

『貴方のいない世界がつまらない世界でありますように』

7/7/2025, 1:50:09 PM